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1.ツイッターのコミュニティノート
7月6日、ツイッター社は、誤解を招く可能性があるツイートに対し、ユーザーが協力してファクトチェックのような機能を提供する「コミュニティノート」機能を日本で提供開始したことを明らかにしました。
コミュニティノート機能とは、誤解を招く可能性のあるツイートに対し、ユーザーが協力して「役に立つノート」を追加できるというものです。一般のツイッターユーザーがコミュニティノートの「協力者」として登録し、当該のツイートに対して、誤解を訂正する情報を「ノート」の形で返信します。
日本でテスト運用をしていたコミュニティ ノートは、さまざまな観点から人々に役立つことがわかっています。 現在、私たちは日本からのメモを世界中の誰もが閲覧できるようにしています。 日本の協力者に感謝します! 🇯🇵 https://t.co/g794sK5GZe
— Community Notes (@CommunityNotes) July 6, 2023
コミュニティノートの表示は多数決で決まるのではなく、裏で様々なアルゴリズムが走っています。アルゴリズムはノートを評価した参加者の傾向を分析し、その人がどのような思想を持っているのかをおおまかに決定づけます。そして、その結果を元に参加者を分類した上で、さまざまな視点を持つ人々から同様の評価を受けたものについて表示される仕組みとなっています。つまり、大衆から「役に立つ」と判断されたものが表に出てくるわけです。
このアルゴリズムはオープンソース化され、誰でも監査・分析、改善の提案が行なえるようです。
また、当該ツイートの投稿者は、コミュニティノートの内容に対して再審査の依頼も可能で、その内容はツイッター社の見解ではないとしています。そして更に、ツイッター社内メンバーがコミュニティノートを編集・改変することもできないとしています。
この「さまざまな視点を持つ人々から同様の評価を受けたもの」を採用する、というこの機能は、ある意味ファクトチェックを民主化した、といえるのかもしれません。
2.様々な人から等しく評価されるものを採用する
この「コミュニティ ノート」機能は、2021年に「Birdwatch」の名称でテストが開始されていて、アメリカではすでにコミュニティノートとして機能が提供されていました。
それから2年、ようやく日本でも「コミュニティ ノート」機能が提供された訳ですけれども、海外で長期間テストされたおかげか滑り出しは上々のようで、最近のツイッターに導入されたものの中ではもっとも評判のよい機能となっているようです。
今のところ、ツイッターのオーナーであるイーロン・マスク氏のツイートに付いたファクトチェックノートですら、削除されていないことから、恣意性や党派性はあまり感じられず、ツイッターが謳っている「役に立つ」ノートが多いとの声もあります。
現在、ツイッターは、役に立つコミュニティノートとして、@HelpfulNotesJPというアカウントで「評価の高い」ツイートをピックアップして取り上げています。対象は「役に立った」ステータスが6時間にわたって維持され、かつ高い有用性スコア(0.45以上のインターセプトスコア)が付与されたもの」とのことで、それなりの質は「民主的」に担保されているとみてよいかもしれません。
コミュニティノートの評価の仕方をみていると、筆者はその昔、話題となった「ペイジランク」を思い出しました。
11年前のエントリー「ペイジランクと人気ブログランキングの相関」で、ペイジランクのランキングは「多くの良質なページからリンクされているページはやはり良質なページである」というアルゴリズムに基づいていることを紹介しましたけれども、ツイッターのコミュニティ ノートの、「多くの様々な見解を持つ人から等しく評価されるものを採用する」というアルゴリズムでも「役に立つ」ツイートが抽出されていくというのは興味深いと思います。
協力者が「役に立った」と評価したコミュニティノート(@CommunityNotes)を自動的にリツイートします。コミュニティノートがこのアカウントに表示されるには、「役に立った」ステータスが6時間にわたって維持されていて、なおかつ高い有用性スコア(0.45以上のインターセプトスコア)が付与されていな…
— 役に立つコミュニティノート (@HelpfulNotesJP) July 7, 2023
3.野生のファクトチェッカー
このコミュニティノート機能は、早速メディアの記事に対する訂正・背景情報の提供に威力を発揮しています。
例えば、6月15日に「同性婚訴訟 傍聴の対応巡り批判、福岡地裁、同性婚訴訟で傍聴人に」というライブドアニュースのツイートで「虹色柄の靴下をはいて傍聴に訪れたところ、法廷の入り口で職員に止められ、職員が用意していた粘着テープで虹色柄を覆うように求められたという」と部分に対し、コミュニティノートで「ツイートに記事に関する重要な背景が欠けています。この措置は法廷警察権で定められており、裁判の公平さに影響があるため通常の手続きをとったものです。傍聴席には、特定の思想や主張を意味する衣服などを身に着けて入場することはできません。たとえば傍聴席にそうした衣服の人間を大量配置し、圧力をかけることできてしまいます」と突っ込みをいれられ、なんと党外記事は「提供社の都合により削除」されています。
『背景情報機能』、わかりやすいですね
— 兎月オリちゃん🌙🐰ྀི (@oriii_chance) July 11, 2023
もちろん何でも鵜呑みにしてはいけないのは当然として、虹色がLGBTQにとって政治的意味がないわけないんだから
あと『提供社の都合により削除』されてた pic.twitter.com/a2f4yb72jD
また、7月5日にツイートされた、毎日新聞の記事「日本人なのに不法滞在と宣告されました」で「『あなたは不法滞在の外国人です』。大学教授の50代女性=京都市=はある日、いきなり国からそう宣告された。両親は日本人で、自分も日本で生まれたのにだ。日本のパスポートも発給されず、今も海外に出られない状態が続いている。『時代遅れ』とも言われる国籍法の規定がすべての原因だった」となっているのに対し、コミュニティノートで「ツイートに記事内の重要な情報が欠けています。この人物は、自らの意思で2007年に日本国籍からカナダ国籍に移行しています。国籍法11条1項によって『日本国民は、自己の志望によって外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失うと規定する。』と定められています」と追加情報が挙げられています。
「日本人なのに不法滞在と宣告されました」 国籍法問う教授の闘いhttps://t.co/JJCOGYANtX
— 毎日新聞 (@mainichi) July 5, 2023
両親は日本人で、自分も日本で生まれました。
教授は「家族の介護のために日本へ戻ってきたのに、不法滞在のような扱いを受けるのは理不尽だ」と思い立ち、裁判に打って出ました。
こんな感じで、大手メディアの記事であっても次々と背景情報が付加され、訂正されたりしています。この現象にネットでは「『背景情報機能』、わかりやすいですね」とか「もう面白すぎて笑いが止まらん」など、歓声が上がっているようです。
ただ、中には「毎日新聞さん、たぶんTwitterのノート機能についてたくさん会議が行われてるんだろうなあ。どうしよう、デマ記事書けなくなるぞ、これからどうしたらいいんだ…とみんなで頭抱えてるのかな」とか、「いや~、人海戦術で自分たちが
『背景情報を追加』することで、デマを事実のごとく改竄する作戦立ててると思いますよ。(※例えば大量のバイト雇うとか)」といった工作を懸念する書き込みもあります。
ただ、とってつけたように、「サヨク思考」のバイトを大量に雇って書き込みさせたとしても、コミュニティノートのアルゴリズムから考えると、「偏っている」と判定されて採用にまでは至らないのではないかと思います。
ともあれ、コミュニティノートによって、市井の人がファクトチェックできるようになった訳で、今後「野生の調査員」ならぬ「野生のファクトチェッカー」が生まれていくことになるかと思います。
いや~、人海戦術で自分たちが
— しおタンメンちゃん© official account (@sio_tanmen_chan) July 11, 2023
『背景情報を追加』することで、デマを事実のごとく改竄する作戦立ててると思いますよ。(※例えば大量のバイト雇うとか) pic.twitter.com/JQyD72ejQM
4.ツイッター使いにくくなった気がするんだが
今回実装されたコミュニティノート機能ですけれども、これにより筆者が個人的に興味あるのは、河野太郎デジタル相のツイートがどうなるか、です。
河野太郎デジタル相はネットに強いことを自負しながらも、気にいらないリツイートを寄越すユーザーを次々とブロックし、一部では「ブロック太郎」という異名まで冠されています。
また、武漢ウイルスワクチンについても「反ワクチンの人は「何千人死んでるーーー」みたいなということを言いますが、それはデマです」など、いわゆる「反ワク」の言説はデマだと発言しています。
けれども、コミュニティノート機能が実装されたことにより、今後、河野デジタル相のツイートに対し、訂正や背景情報が追加されていくことが考えられます。もっとも、コミュニティノート機能をレビューしたツイッター社員やブルームバーグ社は「賛否両論を巻き起こすようなうそには対応しきれていない」と指摘しているところを見ると、果たしてどこまで機能するのかは未知数です。
では、現在河野デジタル相はどうなのかというと、実に興味深い反応を示しています。
7月7日、河野デジタル相はツイッターに「ツイッター使いにくくなった気がするんだが、イーロンに電話繋がらないし、とりあえずアカウント作ってみた」と、InstagramやFacebookで有名なメタ社が7月6日にリリースした、最新のSNSアプリ「Threads(スレッズ)」のアカウントを作ったことを投稿しています。
「ツイッター使いにくくなった」とは実に意味深なもの言いだと思いますけれども、コミュニティノート機能実装により自分のツイートに次々と突っ込みが入れられてしまうことが嫌で逃げ出す準備をしているのか、と思わず勘繰ってしまいます。
「Threads(スレッズ)」については、こちらのサイトでも紹介されていますけれども、このサイトでは「TwitterとInstagramを混ぜたようなアプリ」と評価しているようです。
「Threads(スレッズ)」の登録者数は、サービス提供開始後5日足らずで1億人を突破したそうですけれども、河野デジタル相によっては、国内ユーザーが増えてくれないと、自慢の「発信力」とやらも空回りしてしまいます。
今後、河野デジタル相がツイッターでの発信を止めて「Threads(スレッズ)」に移行していくのか。注目したいと思います。
ツイッター使いにくくなった気がするんだが、イーロンに電話繋がらないし、とりあえずアカウント作ってみた。 https://t.co/pbpzHYbpFC
— 河野太郎 (@konotarogomame) July 6, 2023
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