イギリスのTPP加盟について

今日はこの話題です。
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1.イギリスのTPP加入正式承認 


7月16日、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)に参加する11ヶ国による最高意思決定機関であるTPP委員会がニュージーランドのオークランドで開催され、TPPへのイギリス加入を認める協定に署名し、正式に承認されました。

TPPが発効して以降、加盟国が拡大するのは、初めてのこと。イギリスの加入で、TPPは12ヶ国による体制となり、経済圏はヨーロッパにも広がることになります。12ヶ国を合わせた人口はおよそ5億8000万人、GDPはおよそ15兆ドルと全世界のおよそ14.8%を占めることになります。

では、なぜ、ヨーロッパの一員であるイギリスがTPPに参加するのか。

イギリスがTPPに参加を表明したのは2021年なのですけれども、その前年にイギリスはEUを離脱しているのですね。

EU離脱後のイギリスは、「開かれた英国(グローバル・ブリテン)」を国家戦略に掲げ、EUの一員としては実現できなかった国や地域とも自由貿易協定(FTA)を締結することを目指し、成長著しいアジア地域と、歴史的な関係が深いイギリス連邦諸国、そして最大の貿易相手国であるアメリカを重視しました。

実際、TPP加盟国の半分以上がイギリス連邦諸国であり、イギリスは、日本と経済連携協定(EPA)、シンガポールとデジタル分野の協力協定、オーストラリア、ニュージーランドとFTAを締結しています。

こうした背景を考えると、イギリスはヨーロッパといえども、TPPにとって、全くの門外漢とはいえない訳です。


2.ブレグジットは主権回復のため


イギリスがEUを離脱(ブレグジット)する大義名分は主権の回復でした。

御存じのとおり、EUに所属する国は自国の政策を100%自分達で決められるわけではありません。EUは加盟国から独立した立法権をもち、加盟国の法とは別個のEU法を独自に制定できる権限が与えられています。

実際、EUは、EU域内の経済活動の自由化と円滑化のために域内市場での商品、サービス、資本、人の自由移動を保障する法や競争法、規格基準の調和立法などを中心に立法がなされてきました。このほか共通農漁業政策、環境政策、通貨(ユーロ)政策の実施法、域外からの移民規制法などにも及び、1990年代以降は、国際テロや国際組織犯罪に対抗するための法など、外交・安全保障や警察・刑事司法協力の実施法、EU法が適用される範囲での基本的自由・人権を保護する法にも立法がなされています。

要するに、EU加盟国は、ブリュッセルのEU代表部やストラスブールの欧州議会が決めた法律や規制を守らないといけなくなるのですね。

これにイギリスは民主主義の国だから、自分のことは自分で決める、自分たちの身近な民主主義ではなく、EUの官僚たちに支配されるのは我慢できない、と反発しました。

そうしたことから、イギリスは、主権の回復をブレグジットの大義名分に掲げ、EUから独立して他の国や地域と通商交渉を行うことを主権回復の大きな柱と位置付けました。


3.EUのような規制がないTPP


かといって、EUから離脱したらしたで、そのデメリットをカバーしなければなりません。そこで、オーストラリア、ニュージーランド、日本など旧英連邦を中心とした関係を強化することでそれを補おうとしたのですね。ある意味TPP参加は必然だった訳です。

それにTPPには、イギリスが嫌っているEUの厳しい規制や条件がありません。

TPPは、自由貿易圏構想ですから、イギリスにとっても望むところです。関税同盟、単一市場ながら、統一通貨のユーロというものはありません。日本は円を使い、イギリスはポンドを使えます。

またTPPにはEUのシェンゲン協定、つまり国境検査なしで国境を越えることができるという協定がなく、国境検査なしで国境を越えることは出来ず、各国がパスポートをコントロールできます。

こうしてみると、TPPはイギリスにとって望ましいものだともいえる訳です。


4.威圧的な国は対象外


今回、TPPにイギリスが加盟したことは、大きな意味があります。なぜなら、TPPへの参加を希望する他国に対する先例になるからです。

現在、TPPには中国、台湾、エクアドル、コスタリカ、ウルグアイなどが加盟申請していて、その他にも加盟申請する方針を打ち出している国がいくつかあります。

今回のイギリスのTPP加盟交渉では、農業分野を含めた高い関税撤廃率、投資、サービス、貿易円滑化、労働分野での厳しいルールの採用が求められましたから、これらのTPP参加希望の国にも同じ基準を要求することになります。

16日に行われたTPPの会合後、日本の。後藤茂之TPP担当相は記者会見で、「威圧的な対応や法令順守に的確な対応をしていないエコノミー(国・地域)は対象にできない」と強調しました。無論、中国を念頭に置いた発言です。

中国は世界第2位の経済規模を謳い文句にTPP加入を目論んでいますけれども、国有企業への不透明な補助金や電子商取引(EC)でのデータの囲い込み、知的財産権の不十分な保護など、数々の問題が指摘されています。それらを捻じ曲げてでも加入はさせないということです。

同じく、オーストラリアのティム・エアーズ貿易副大臣も、中国のTPP加盟申請について、特定の国への言及は避けたいとした上で、新規加盟を認めるに当たっては「ルールを順守してきた確固たる実績があるかどうかを確認する」と釘を刺しています。

中国は、武漢ウイルスの発生源を巡って調査の必要性を主張したオーストラリアを標的に、大麦やワインへの制裁関税を発動。その後、両国は関係修復に乗り出し、制裁解除に向けた交渉が続いています。一部からは、オーストラリアが制裁解除と引き換えに中国のTPP加盟交渉入りを容認するとの見方がでていたのですけれども、エアーズ貿易副大臣はこれを否定した形です。

まぁ、イギリスの加盟を認めた手前、それよりも低い基準で新規加入を認めることは出来ませんからね。当然です。

これまで世界の工場として、海外からの投資を呼び込み輸出貿易主導で経済成長してきた中国ですけれども、TPPの基準をクリアできるまでに成熟する日がくるのか。注目したいと思います。

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