

1.日本人は世界一ツイッターを使っている
7月15日、ツイッターCTO(会長兼最高技術責任者)のイーロン・マスク氏が、ツイッターの利用時間のデータを公開し、話題となっています。
マスク氏が公開したデータは、2023年7月13日のツイッターの利用時間を秒単位で計測したとみられるもので、マスク氏は「前週と比べて3.5%伸びた」と説明しています。
ITジャーナリストの山口健太氏は、ツイッター利用時間について、日本の利用時間が最も長いと伝えています。
なんでも、1日あたりの利用時間の合計は、日本が約686億秒と、日本より人口の多いEU(約637億秒)やアメリカ(約564億秒)を上回っていて、更に個別の国として集計されているアメリカ、日本、イギリス、カナダの4ヶ国について、人口1人あたりの利用時間を計算してみたところ、アメリカは2.8分、イギリスは3.8分、カナダは2.4分であるのに対し、日本は9.0分と断トツなのだそうです。
もっとも、人口に対するツイッターユーザーの比率は国や地域によって異なり、日本のツイッターユーザー数が相対的に多いこと知られていますけれども、ユーザー1人あたりの利用時間でみても、シンガポールの調査会社Kepiosによる2023年4月時点での広告主向けデータに基づいて計算すると日本での1日の利用時間は22.1分で、アメリカの14.4分やイギリスの15.9分を大きく引き離しています。
なぜ日本でツイッターが人気なのかという点について、山口氏は「世界的にはFacebookのほうがユーザー数が多いものの、日本ではハンドルネームや匿名のネット文化があり、実名制のFacebookとは相性が悪かったという声があります。最近ではZ世代向けのSNSが次々と登場しているものの、実名を出さずに使えるTwitterは「大人」に見つかりにくく、若い世代でもインスタとTwitterを使い分けている印象があります。あるいは、短歌やポケベルのように短文を送り合う文化との親和性や、少ない文字数でも情報を詰め込める日本語との相性の良さもありそうです」と説明しています。
山口氏の指摘どおりだとすると、今後日本のツイッター人気は衰えることはないだろうと思われます。
2.コミュニティノートは口汚くないクソリプ
そんな中、先日リリースされたツイッターの新機能「コミュニティノート」が国内で話題になっています。
「コミュニティノート」については、7月13日のエントリー「ツイッターが生み出す野生のファクトチェッカー」で取り上げましたけれども、「コミュニティノート」は、誤解を招く可能性のある投稿に対し、ユーザーが「ノート(注釈、注記)」の形で指摘を追加できる機能です。
ともすれば、SNSに対し、匿名アカウントによる、デマや誹謗中傷を投稿する卑怯な行為が取り沙汰されていますけれども、今のところ、この「コミュニティノート」で被弾しているのは、もっぱら新聞やテレビ、政治家などの投稿です。
例えば、東京新聞の望月衣塑子記者や日本共産党の志位和夫委員長、毎日新聞や東京新聞、朝日新聞の公式アカウントによる投稿に対し、「ツイートに記事内の重要な情報が欠けています」などの「ノート」が付加され、その間違いや抜けが指摘されまくっています。
この「コミュニティノート」による指摘に対し、彼ら「リベラル」系アカウントは、指摘の中味に反応せず、無視するか罵倒するかです。
7月18日、NHKが「マイナンバーカード 本人希望で廃止 4割近くが自主返納」と題するツイートをすると、「本ツイートに含まれる記事のタイトルの「4割」の母数は「総返納件数(247件)」ですが、明記されておらず「総発行件数」と誤認する恐れがあるので注意が必要です」という「ノート」が付加されたのですけれども、NHKは無反応です。
マイナンバーカード 本人希望で廃止 4割近くが自主返納 #nhk_news https://t.co/uBDEEuDZTu
— NHKニュース (@nhk_news) July 18, 2023
また、日本共産党の小池晃書記局長は、保険証によるなりすまし被害が発生しているとする河野太郎大臣の発言を批判する報道を引き、「確かに聞いたことありませんね」と投稿したのですけれども、これに対し「小池氏の選挙応援演説を行った人物が会長を務めていた団体が、偽造保険証を使った野球場の施設利用登録証詐取の疑いで逮捕者を出した過去がある旨」のノートがつくと、小池氏は断りなく自らの投稿を削除しています。
けれども、そこはそれネットです。しっかりと魚拓がとられて拡散。「ケストフエール」の法則が発動しています。
一方、神奈川新聞の柏尾安希子記者は、「コミュニティーノートって、見ている限り口汚くないクソリプって感じですね。」とか、「コミュニティノート支持の人々を見ていると、ああやっぱりなと。」とか”口汚く”罵っています。
また、沖縄タイムスの阿部岳記者は「なんか客観を装っているけど、「あなたの感想ですよね」「問題解決の妨害ですよね」「風評被害ですよね」というただの匿名ネトウヨコメントが公的な装いで表示されていて、まさに今のツイッターを煮詰めた感じの素敵な新機能です。」と皮肉っぽく罵っています。
私のツイートに付いた「コミュニティーノート」。
— 阿部岳 / ABE Takashi (@ABETakashiOki) July 19, 2023
なんか客観を装っているけど、「あなたの感想ですよね」「問題解決の妨害ですよね」「風評被害ですよね」というただの匿名ネトウヨコメントが公的な装いで表示されていて、まさに今のツイッターを煮詰めた感じの素敵な新機能です。 https://t.co/MNgiPHFaMq
更に、ジャーナリストの津田大介氏は「なんでモデレーションもろくに機能してない日本のツイッターで、匿名でほぼ自由に書ける形で導入したのか。嫌がらせに使われるに決まってるだろ。」とツイートしたところ、「コミュニティノート機能についての誤解も含まれています」という以下の指摘とともに、しくみの解説とソースのリンクがノートに貼られる始末です。
★筆者は津田氏に一度も絡んだ覚えがないのですけれども、いつの間にか津田氏にブロックされていました。
3.コミュニティノートは実名にすべきでしょう
左界隈の人にとって、「コミュニティノート」機能は余程都合が悪いのでしょうか。7月22日、立憲民主党の蓮舫参院議員は自身のツイッターに「コミュニティノート、これは実名にすべきでしょう」と投稿しました。
コミュニティノートは、「役に立つ背景情報をツイートに追加し、他のユーザーへ十分な情報を提供するためのプログラム」です。コミュニティノートへの表示は、偏りのないユーザーからの一定以上の支持がなければ、表示されませんし、表示後も役に立たないと思われた情報は淘汰される仕組みになっています。もし、蓮舫議員が「コミュニティノート」が匿名の誰か一人によって書かれているのだと思っているのだとしたら、コミュニティノート自身を理解していないことになります。
当然ながら、蓮舫議員の件のツイートには「重大な誹謗中傷、名誉毀損にあたらない限りは追加の措置は不要であると考えられる」とのコミュニティノートが付され、「「執筆者を実名にすべき!」って怒る人、中身で反論返せないの?「誰が」でしか考えられないんだろうな」とか「コミュニティノートが正してるのは、人物ではなく論です。なので、不満があれば、論には論で対抗を。それでも政治家なの」とか「コミュニティノートに憤慨してる暇あるなら、コミュニティノートに論理的に反論すればいいのよ。政治家のお仕事ってそこも含まれるでしょ?」など、批判的な声が多く寄せられているようです。
★筆者は蓮舫氏に一度も絡んだ覚えがないのですけれども、いつの間にか蓮舫氏にブロックされていました。
蓮舫氏のツイートにはこのほかにも、コミュニティノートがどんどん付いていったそうで、自身の発言が次々と突っ込まれてしまうことに腹を立てたのかもしれませんけれども、政治家であるならば「万機公論に決すべし」で、中身で反論すべきでしょう。
一方、国民民主党の玉木雄一郎代表は7月12日、『Twitter新機能「ファクトチェック」で “公開処刑” 続々』という記事に対し、「いわゆる「フェイクニュース」の拡散を防ぐためのファクトチェック機能をTwitter社が提供はじめたことは画期的だ。この「コミュニティノート」の登場で、テレビのコメンテーターや政治家などの不正確な情報発信も抑制されることになるだろう。私自身も十分に気をつけたい」とリツイートしています。
このツイートに対しても「コミュニティノートはあくまでもツイートに書かれていることを補完するのが主目的であり、「フェイクニュースにファクトチェックを行う」ものではありません」というノートが付加されていますから、何もあっち系のリベラル左派の投稿ばかりにコミュニティノートがついている訳ではないと思います。
★筆者は玉木氏に一度も絡んだ覚えはありませんし、全然ブロックされてもいません。
いわゆる「フェイクニュース」の拡散を防ぐためのファクトチェック機能をTwitter社が提供はじめたことは画期的だ。この「コミュニティノート」の登場で、テレビのコメンテーターや政治家などの不正確な情報発信も抑制されることになるだろう。私自身も十分に気をつけたい。 https://t.co/OLc74sKQUm
— 玉木雄一郎(国民民主党代表) (@tamakiyuichiro) July 12, 2023
4.コミュニティノートは本当にデマ拡散を防げるのか
このようにリベラル左派が嫌がっている「コミュニティノート」は本当にデマ拡散を防げるのか。
これについて、7月12日、「gigazine」がコミュニティノートのアルゴリズムの仕組みを解説する記事を掲載しています。
件の記事を一部引用すると次の通りです。
【前略】gigazineの解説によると、「コミュニティノート」は、公開前と公開後それぞれで有用性が判断され、公開されるされないが決まるようです。民主的といえば民主的ですけれども、例えば、公開されたあるノートに対し、何某かの団体が組織的に「役に立たない」評価を公開直後から2週間以内に入れまくってしまえば、有用性ステータスは「役に立たない」で決定され、削除される可能性があるということです。このあたり、仮想通貨のブロックチェーン技術で課題となっている「51%攻撃」を思わせるものがあります。
◆コミュニティノートとは?
コミュニティノートは、誤解を招く可能性のあるツイートに対して、ユーザーがツイートの文脈を説明する「ノート」を残すことができる機能です。例えば、以下の「赤色40号はADHDを発症させる」と主張するツイートには「発達障害に関する誤った情報を拡散しています」というノートが挿入されています。
各ノートはTwitterユーザーによって作成&評価されており、ルールに違反していないかぎりTwitter運営チームが介入することはありません。しかし、悪意あるユーザーや間違った知識を持つユーザーが作成したノートが広まってしまうと、誤情報の拡散防止を目的としているはずのノートが誤情報の拡散に寄与してしまうことにつながりかねません。誤情報を含むノートが拡散することを防ぐために、コミュニティノートには「ユーザー同士でノートを評価する」という仕組みが搭載されています。
ノート内の「評価する」をクリックすると、各ノートの信頼性を評価できます。評価は「はい」「少し」「いいえ」の3段階です。
◆ノート公開前の有用性判断
ノートは作成直後に世界中へ公開されるわけではなく、まずは「Twitterのルールに違反していない」「Twitter登録後6カ月以上経過」「電話番号認証済み」といった参加資格を満たして「コミュニティノートの協力プログラム」に参加したユーザーのみに公開され、「役に立った」もしくは「役に立たなかった」の評価が行われます。
ノートには「ノートは現在のところ『役に立った』と評価されています」「ノートはさらに評価が必要です」「ノートは現在のところ『役に立った』と評価されていません」という3段階のステータスが存在します。作成直後のノートには「ノートはさらに評価が必要です」というステータスが割り当てられ、評価が5個以上付けられた後に肯定的評価を多く獲得したノートは一般公開され、否定的評価を多く集めたノートは非公開となります。また、否定的評価を多く集めるノートを繰り返し作成したユーザーにはノート作成機能を一時的にロックするなどの措置が取られるとのこと。
◆ノート公開直後の有用性判断
一般公開後のノートは、「行列の分解モデル」によって求められる有用性スコアによって「役に立つ」か「役に立たない」かが判断されます。有用性スコアが0.40以上になったノートは「役に立つ」ノートであると見なされ、-0.04未満のノートは「役に立たない」ノート、0.40~-0.04のノートは「もっと評価が必要」に分類されます。
ノートの表示から2週間が経過するまでは、行列分解の結果などを含むランキングアルゴリズムが実行され、その度に有用性のスコアとステータスが更新されます。ノートの有用性ステータスは公開から2週間で固定されます。
なお、Twitter公式アカウント「役に立つコミュニティノート」では、「『役に立った』ステータスが6時間にわたって維持された」かつ「有用性スコアが0.45以上」という条件を満たしたノートを含むツイートがまとめられています。
【後略】
5.コミュニティノートに求められる事実
勿論、リベラル左派の人達もコミュニティーノートに対する何等かの対策を考えているのではないかと思いますけれども、先述した沖縄タイムスの阿部岳記者は、7月22日に次のような興味深いツイートをしました。
政府や東電が「処理水」と呼ぶ水の中には、取り除けなかった放射性物質トリチウムが残っている。阿部記者は「事実と私の意見」だと述べていますけれども、ツイートの中味を「事実」と「意見」に分けると次のようになるかと思われます。
私は「汚染水を処理したが、まだ汚染物質が残っている水だから、汚染水と呼ぶ方が実態に即している」と考えている。
(事実と私の意見です。コミュニティーノートに関するテストを兼ねています)
事実:政府や東電が「処理水」と呼ぶ水の中には、取り除けなかった放射性物質トリチウムが残っている。このツイートに対し、早速コミュニティーノートがついているのですけれども、その内容は次の通りです。
意見:私は「汚染水を処理したが、まだ汚染物質が残っている水だから、汚染水と呼ぶ方が実態に即している」と考えている
コミュニティノート:
・汚染物質の残存割合に注目して下さい。
・燃料デブリを冷却する際に発生するのが汚染水であり、そこからトリチウム以外の核種を除去したものがALPS処理水となります。
・また、トリチウムについても、放出前に海水で充分に薄めます。これは国の定めた基準の1/4、WHO飲料水基準の1/7となります。
・また、トリチウムは自然にも存在する物質であり、その放射線のエネルギーは弱いものです。
・よって、「汚染水を処理したが、まだ汚染物質が残っている水だから、汚染水と呼ぶ方が実態に即している」という見解は、これらの事実を無視した重大な誤解・風評被害を生む表現です。
政府や東電が「処理水」と呼ぶ水の中には、取り除けなかった放射性物質トリチウムが残っている。
— 阿部岳 / ABE Takashi (@ABETakashiOki) July 22, 2023
私は「汚染水を処理したが、まだ汚染物質が残っている水だから、汚染水と呼ぶ方が実態に即している」と考えている。
(事実と私の意見です。コミュニティーノートに関するテストを兼ねています)
阿部記者は「政府や東電が「処理水」と呼ぶ水の中には、取り除けなかった放射性物質トリチウムが残っている」を事実として提示していると思われますし、内容そのものは事実です。ただし、その事実は「定性的な事実」を述べただけで、「定量的な事実」は何も述べていません。
『定量』『定性』は、ビジネスや研究分野でよく使われる言葉です。
『定量』は、その名のとおり、物事を数値や数量で表すことができる要素のことです。つまり『定量的』とは、物事を数値や数量に着目してとらえることを指します。
数値や数量は共通の概念なので、お互いの認識のズレは殆ど発生しません。
これに対し、『定性』は、定量とほぼ真逆の意味で、物事が数値化できない要素のことを指します。要するに、物事を数値化できない部分に着目し捉えることは『定性的』と呼ばれます。
定性は数値化できない要素を無理やり表現することになりますから、その内容は表現者の主観に委ねられ、彼我の認識にズレが発生する可能性が出てきます。
ビジネスにおいては、少しの認識のずれが致命的なトラブルを招くことがありますから、話者と聞き手が共有認識を持つための工夫が必要ですし、そのために定量と定性を正しく使う必要があります。
阿部記者は、自身のツイートで「処理水の中には、トリチウムが残っている」と定性的な事実しか述べていないのに対し、このツイートについたコミュニティノートでは、「汚染物質の残存割合に注目して下さい」「トリチウムについても、放出前に海水で充分に薄めます。これは国の定めた基準の1/4、WHO飲料水基準の1/7となります」と、見事に定量的な表現で突っ込まれています。
国の定めた基準の1/4、WHO飲料水基準の1/7にまで薄まっている「トリチウム水」を「汚染水」と呼ぶか「処理水」と呼ぶかは、それこそ話者の主観に委ねられる問題だといえなくもありませんけれども、WHO飲料水基準の1/7にまで薄まっているということは「飲める」ということですし、普通の感覚では「汚染水」とは呼ばないだろうと思います。
そもそも水道水とて、河川や井戸水を組んで沈殿・濾過・塩素注入している訳ですから、立派な「処理水」だといえます。その処理水である水道水とて、残留塩素が残っている訳で、定性的にいえば、塩素で汚染された「汚染水」とも言える訳です。
ですから、定性的な議論だけで進めることは、印象操作の議論になる危険性があると思います。
従って阿部記者の「汚染水を処理したが、まだ汚染物質が残っている水だから、汚染水と呼ぶ方が実態に即している」という意見は、定量的観点を抜いた、誤解・風評被害を招きかねない議論ですし、コミュニティーノートの指摘通りだと思います。
このように定性と定量と二つの観点からのデータと指摘があってこそ、身のある議論が出来るのだと思いますし、その意味でコミュニティーノートの機能は非常に意義あることだと思います。
果たして、阿部記者が一体何のテストをしたかったのか分かりませんけれども、是非その結果を、定性と定量の両方の観点から公表していただきたいと思いますね。
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