財務省に踊らされ現状を破壊する政権

今日はこの話題です。
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1.頭の隅っこにもありません


7月25日、自民党の宮沢洋一税制調査会長は、いわゆる「サラリーマン増税」について自民党内では検討していないとの考えを明らかにしました。

これは、先月30日、総理の諮問機関である政府税制調査会がまとめた「税のあり方」についての答申案で「退職金」の増税や「通勤手当」の課税の検討が盛り込まれていたことから、SNS上などで「サラリーマン増税だ」などと反発の声が上がっていたことを否定した形です。

この日、宮沢税調会長は、岸田総理と官邸で会談したのですけれども、岸田総理から直接る「サラリーマン増税」について問い質されたのだそうです。

宮沢税調会長によると、岸田総理は「自分が全く考えていないサラリーマン増税云々といったような、一部マスコミの報道があると。それこそ通勤手当ですとか、控除のいくつかといったことについて、岸田政権が増税を考えてるというような、全く自分が考えてないような報道があるんだけれども、税調の方はどうなんだ」と、問われたのに対し、宮沢税調会長は、「自民党の税調の中でそういう議論をしたことは一度もないし、また税調会長の私の頭の隅っこにもありません」と答えたとのことです。

それを聞いた岸田総理は「それなら良かった」と語ったそうですけれども、筆者は甘いと思います。というのも「サラリーマン増税」なんて報道が出ること自体、岸田政権は、増税政権だという負のイメージを生みさせ、内閣支持率を下落される原因となっているからです。

税制調査会がまとめた「税のあり方」についての答申案については、7月22日のエントリー「増税総理に庶民の声は届くか」で取り上げましたけれども、非課税所得を列挙した後に「他の所得との公平性や中立性の観点から妥当であるかについて、政策的配慮の必要性も踏まえつつ注意深く検討する必要があります」なんて書かれている以上、「サラリーマン増税だ」という連想が働くのも当然です。


2.財務省に踊らされている岸田総理


今回のいわゆる「サラリーマン増税」について、元総務官僚で政策コンサルタントの室伏謙一氏は、「岸田総理自身は長期政権を目指しているようだが、政権の行方など昨今の国内外の状況を踏まえればまったくわからない。だとすれば財務省が『岸田総理のうちに、岸田政権のうちにやれる増税はやっておかなければ』と考えるのも自然な流れだ」と指摘しています。

更に、室伏氏は、「世に言われる『サラリーマン大増税』は、実はかつて(2005年)、石弘光会長(当時)のもと、政府税調において検討され、『個人所得課税に関する論点整理』として報告されたものと軌を一にする」と指摘し、通勤定期、退職金、失業・生活保護給付、高齢者、フリーランス、フリマサイトでの売上、ギャンブルの払戻金まで課税対象になり得ると警鐘を鳴らしています。

室伏氏によると、2005年に纏められた政府税調の案は「翌2006年9月に成立した第一次安倍政権において、石弘光氏が政府税調の職を事実上解任されたため実現せず、お蔵入りとなっていた」とのことで「財務省からすれば、”リベンジ”の絶好のチャンスが再び到来したといったところだろう」と述べています。

この室伏氏の指摘通りだとすると、財務省は岸田総理の考えなどそっちのけで、増税を匂わせる表現を散りばめた税調の答申、世間の反応をみるためのいわゆる「観測気球」として使ったのではないかという疑念も出てきます。

その意味では岸田総理は財務省にいいように踊らされているといえるのかもしれません。


3.来年秋という期限にこだわる必要はない


そんな中、マイナンバーをめぐる相次ぐトラブルを受け、来秋の健康保険証廃止の延期を求める声が、与党内からもあがり始めました。

7月24日、自民党の萩生田政調会長は、熊本県合志市で記者団に対し、マイナンバーのトラブルについて、「システムの不具合ではなく、入力段階での人的ミスが積み重なって起きている」と指摘した上で、マイナ制度について「何があっても進めていく基本的な姿勢は必要だが、国民が不安に思っている以上、不安を払拭してこそ信頼あるシステムになっていく……無理に最終的なお尻の時間を切らず、しっかり啓蒙し理解していただく機会をつくる必要がある」と、スケジュールありきではなく、国民に丁寧に説明し理解を求める必要があるという認識を示しました。

26日から、マイナンバー問題を議題に参院特別委員会の閉会中審査が開かれるのですけれども、前日の25日、自民党の世耕弘成参院幹事長は記者会見で「政府には閉会中審査も含めて、徹底的に説明責任を果たして対処策を打ってもらい、ぜひ信頼を回復してほしい……なお信頼回復につながらないのであれば、必ずしも来年秋という期限にこだわる必要はない」と強調しました。

度重なるトラブルに、流石に自民党内から期限に拘るなという声が上がってきた訳です。

また、既存の保険証廃止については、医師会も懸念を表明しています。

7月11日、東京都医師会の尾﨑治夫会長は定例記者会見の中でマイナンバーカードの保険証利用について報道陣の質問に対し次のように述べています。
・マイナンバーカードそのものはインフラというか制度、仕組みとして将来的に日本で必要なものだと私は思っています。税の問題、社会保障の問題、我々が今後目指している医療DX事業の基盤となるカードであることは間違いないので、これをやめるべきだとはまったく考えていません

・ただし、日本には漢字とカタカナと平仮名がありますし、たとえばオザキの『ザキ』でも『崎』の人もいれば『﨑』の人もいる。タカハシならタカハシで戸籍上の字にみんな違いがあります。住所表示でも『1-1-14』と書く場合と『1丁目1番地14号』と書く場合、いろいろな書き方をしていて、その入力を間違えると個人にたどり着けないことがたくさんあると聞いている。マイナポイントの付与などで、マイナンバーカードを取得する人が一気に3500万人ほど増加したので、そういう中で内製作業が困難を極めていることは事実

・政府のほうも見直していただけるということですが、じゃあ秋頃までに見直せるかというと、自治体の方々は本当に頑張っていると思いますが、私はかなり厳しいのではないかと思います

・現在の健康保険証による国民皆保険制度の中で、診療所や病院で医療を受診するということに関して、今までこれといったトラブルは少なかったわけです。今のようにマイナンバーカードで受診され、なかなか個人が特定されなかったりということが続くと、将来的に必要なマイナンバーカードに対する国民、都民の方々の信頼が取り戻せなくなってしまうのではないか。保険料をきちんと払っている方の保険証が使えないということになると、それはそれでまた問題になる

・廃止するまでの間に資格証明書を交付するという話もありますが、新たなものを出すにあたってそれなりに負担が生じてきますし、そこに間違いが起きないわけではありません。マイナンバーカードの内製作業がしっかりできて、現行の医療機関の体制の中で全国的にきちんと保険診療ができる仕組みになって、受診される方も ”これだったらマイナンバーカードを使って受診できるね”という状態になった時に、初めて従来の保険証を廃止していくのが一番だと思う

・マイナンバーカードが制度上の仕組みとして、きちんと成り立つことを見計らいながら従来の保険証を廃止していくという順番を取ることが、我々医療機関にとっても被保険者の方にとってもいいこと。日本の皆保険制度をしっかり運営していくためには、あまり拙速に急がないで、十分信頼がおける制度になってから従来の保険証についてどうするか考えていくのが道筋ではないか
このように医師会も、信頼できる仕組みを先に作るのが先だ。慌ててやる必要はない、と注文しています。


4.現状を破壊する政権


マイナカード問題について、閉会中審議をやったり、健康保険証廃止の延期を求める声が、与党内からあがり始めたのも、このままでは政権に大きなダメージになりかねないとみる向きがあるからです。

岸田政権の内閣支持率は下落を続けていますけれども、マスコミはその原因として、いの一番にマイナカード問題を挙げています。

下げ止まらない内閣支持率に、とうとう自民党内からも悲嘆の声が上がっているそうです。

ある永田町関係者は「読売新聞と日本テレビの直近調査だと、岸田内閣を支持する答えたのは前回(6月23日~25日)から6ポイント下落して35%でした。毎日新聞社が7月22日、23日に実施した世論調査だと支持率が28%。岸田首相は支持率回復のために地方から車座集会をスタートしたが、実を結ぶのかは不透明な状況です」と漏らしています。

自民党内では先送りした衆院解散・総選挙について「岸田首相は支持率が急落したことに『厳しいな』などと弱気な発言を漏らしたと伝わってきています。今秋はおろか、来年の総裁選任期まで本当に断行できるのか。まさか、このまま来年9月の総裁選までずるずる続けて、退陣するのではないか」との観測すら持たれているとのことです。

ある自民党議員は「9月に予定の内閣改造と自民党役員人事がカギになるでしょう。安倍内閣では菅義偉元首相が“女房役”の官房長官を務め、安倍晋三元首相の側近として命がけで支え続けた。岸田首相のネックは、菅氏のような”側近”がいないことです。党内には”ポスト岸田”の存在が見当たりません。どうなるのか……」と不安を口にしたそうですけれども、筆者は内閣改造をしたとしても大して支持率には寄与せず、ずるずる続けて来年9月の総裁選には出馬せず、そのまま辞任になるのではないかと思い始めています。

政権発足当初から岸田内閣の支持率が比較的高かった時期、その理由として、国民は現状維持を求めているからだ、と述べたことがあります。

ところが、増税にせよ保険証廃止にせよ、岸田総理がやろうとしていることは、その「現状維持」を破壊する政策です。まぁ、それが良い方に破壊していくならまだしも、現状では「悪い方に」破壊するのが目につきます。だから支持率が下がってしまう。

あるいは、内政の失敗を外交で取り返すなんて考えているかもしれませんけれども、その「外交」とて、国民が求めている「現状維持」の破壊を止めるものでなければ、支持率回復はあまり期待できないと思います。

7月20日のエントリー「脱炭素に動き出した中東」で、岸田総理が中東歴訪で「エネルギー外交」をしたことを紹介しましたけれども、そのエネルギー外交とて、「脱炭素」という、2020年代後半から2030年代を見据えた技術です。

それが日本に還元されるまでの間、中東外遊で行ったエネルギー外交とて、「現状維持」には殆ど寄与しないと思われます。

ウクライナ戦争以来、ガソリン価格高騰に対し、政府は、「ガソリン補助金」を出すことで「現状維持」を支えてきました。けれども、それも今年6月から段階的に縮小し9月末で終了することになっています。ガソリン分野でも現状維持が崩れる可能性が高まっています。

要するに、岸田内閣がこれから支持率を回復するには、国民が望む「現状維持」の確保が大切であると思うのですけれども、今、政府がやっていることはその真逆です。当然ながら、支持率が上がる筈もありません。

岸田総理が、これから劇的に政策を変えることができるのか。来年秋の総裁選がそのタイムリミットになるような気がしますね。


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この記事へのコメント

  • HY

     岸田文雄首相は戦後日本でありがちな「とても弱い宰相」です。国家観、歴史観、経済観さえなく柱と呼べるものを持っておりません。防衛費増額やキーウ訪問、処理水放出決定などやることをやっていますが、それは安部さんが8年かけて作った花道を歩いているだけにすぎず、彼の信念によるものではありません(彼の信念が関与しているといえば広島G7サミットの原爆記念館観光くらいでしょう)ゆえに財務省も「押せばいける」と考えて増税をもくろむのも当然です。
     ただ悲観ばかりではありません。一昔前ならなあなあで済んだことがもはや通用しなくなっていることが徐々に明らかになってきています。日比野様もご指摘なさっているように支持率低下はマイナカードだけではありません。古い自民党政治の限界がすぐそこに近づいてきています。
    2023年07月27日 10:31