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1.エッフェル塔前撮影写真投稿陳謝
7月31日、自民党の松川るい参院議員は、党女性局のメンバーとともに海外研修でフランスを訪れた際、エッフェル塔の前やリュクサンブール宮殿内で撮影した写真SNSにアップして「観光旅行ではないのか」などと炎上している問題について、自身のツイッターで謝罪しました。
松川議員は「自民党女性局の海外研修についての私のSNS投稿のせいで、中身のあるまじめな研修なのに誤解を招いてしまっており、申し訳なく思っております」と陳謝。今回の女性局の研修が「5年に一度程度、全国女性局の皆さま(地方議員が主)と共に海外視察に行き、課題について見聞を広め政策や今後の活動に生かしていくことを目的にしております」と説明。参加者は38人でうち国会議員は4人とし、費用は「党費と各参加者の自腹で捻出しています」と記しました。
渡仏の目的は、少子化対策、政治における女性活躍、3歳からの幼児教育の義務教育化などについてフランス側と意見交換を行うためだとし「極めて有意義でした」と主張。海外視察の意義に「その国の文化や歴史や価値観に触れることも含まれている」とし、リュクサンブール宮殿での写真については「フランスの上院議員の議事堂に当たります。日本でいえば国会議事堂です……日本でいえば国会議事堂見学に該当することをご理解頂きたい」などと釈明しました。
更に「意見交換などの合間に、エッフェル塔に立ち寄って記念写真も撮りました。そのことが問題だとは思っておりません」と、記念写真撮影自体は問題視していないとする一方で、塔の前で、塔の形をまねたポーズで写真を撮った写真を投稿したことを念頭に「真面目な研修に参加された皆様にまでご迷惑がかかるとしたら本位でありません」とし、投稿を削除したことを明かました。
そして「非常に真面目な内容ある研修であったにも関わらず、『税金で楽しそうに大人数で旅行している』と多くの皆様の誤解を招いてしまったことについて申し訳なくおもっています……今回お騒がせしているのは、研修の意義や内容をうまくお伝えできなかったことにあると思います」と記しています。
今回のが騒ぎになったこともあってか、党内外から苦言が出ています。
自民党の茂木幹事長は記者会見で「女性が活躍する社会をつくるために、さまざまな施策をとっている中、極めて残念だ。真摯に受け止めなければならない。小渕組織運動本部長が『不適切な情報発信で誤解されることがないように』と注意をしたと報告を受けている」と述べ、今回の海外研修の費用については「自己負担と党の負担で賄われているが、党の負担分については政党助成金は使っていない」と説明しました。
立憲民主党の岡田幹事長は記者会見で「写真を見ると、何をしに行ったのか、国民から疑問を持たれてもしかたがないようなものもある。誤解を招くことのないよう十分注意して行くべきだったのではないか」と述べ、公明党の山口代表は、記者団に対し「SNSで画像や映像などを不特定多数に提供する以上、どのような受け止められ方をするかをしっかり見通したうえで責任を持って対応すべきだ。教訓を刻んで対応していくことが大切だと、公明党の議員もみずからに言い聞かせるべきだと思っている」と答えました。
そして、国民民主党の玉木代表は、記者会見で「政治家が研修などで国内外のいろいろなところに行くこと自体は意義があると思うが、説明責任をしっかり果たせるかどうかだ。エッフェル塔の前で写真を撮り、喜々としてアップするのは、政治家としてのセンスの問題で、そういうセンスを持った政治家がいいのか悪いのかは選挙で有権者に判断していただくことになる」とチクリ。
概ね、浮かれていたのではないか、慎め、という注意に見えます。
2.フランスの3歳からの幼児教育の義務教育化
松川議員は渡仏研修の目的の一つに「3歳からの幼児教育の義務教育化」を挙げていますけれども、これは昔から行っていた訳ではなく、2019年秋から実施という比較的最近の話です。
この3歳からの義務教育について、朝日新聞GLOBE編集部員の本間沙織氏は2019年7月に「義務教育を3歳から、その狙いは? フランスの教育大臣に聞いた」という記事を書いています。
その記事を引用すると次の通りです。
【前略】ブランケール国民教育相によると、義務化を始める前の2019年の段階で3歳以上の子どもたちの97%は既に『保育学校』に通っているそうで、残り3%の為に義務化にしたというのですね。97%が学校に通っているにも関わらず、小学校卒業時に20%が期待されている成績に達していない、と述べていますけれども、それが100%義務化して、どんなに上手くいったとしても、20%が17%になるだけではないのか、という気がしないでもありません。
――公教育はどのような役割を果たすべきでしょうか。
ブランケール国民教育相:「学校は、フランス共和国の歴史と切り離せないほど重要な役割を果たしてきました。1880年代、6歳からの義務教育を始めたのは、革命から約100年に及ぶ不安定な時期を経て、共和国の基礎を強化するために学校に力を入れようと考えたからです。学校を通じて国民に知識を与え、フランス国民として育てようという考えです。その目的は皆が人生の平等なスタートラインに立てること。生まれた家庭の都合ではなく、自分次第で将来が決められるように、家庭の経済レベルや社会的な要因をこえた政策をとらなければいけません。実現のため、全体の学力を上げることや、『社会的な正義』を目指すことを目標に掲げました。すべての子どもたちに知識の基礎を身につけさせることが目標の達成につながり、学校への信用にもつながります」
――その考えは現代も変わらないということですか。
ブランケール国民教育相:「私たちは2017~22年までの政策のテーマを『信用の学校』と位置づけました。学校を通じてフランスという社会に所属している人たちが互いに信用しあえるようになることが目的です。決して簡単なことではありませんが、いったん、お互いのこと信用し合えるようになったら、子供たちも自分に自信がつくでしょう。公教育に対する不信感を拭いたいと考えています」
――3歳からの義務教育を実施しているのは欧州ではハンガリーだけで、学習到達度調査(PISA)の成績が上位のフィンランドやエストニアは7歳から義務教育が始まります。「信用の学校」を実現するために、義務教育の年齢を引き下げることが大切なのでしょうか。
ブランケール国民教育相:「保育学校に通う時期は、子どもの成長にとって大変重要です。あらゆる分野の研究で、人生の最初の7年間が大事だという結果が出ています。ですから保育学校の政策、つまり幼い子どもたちを対象にする政策はそれだけ大切なのです。限られた予算を投じてすることですから、大きな効果をもたらしてほしい。ですから、子だもたちが3歳から教育を受けることが必須だと考えました」
「現時点で3歳以上の子どもたちの97%は既に(幼稚園にあたる)『保育学校』に通っています。残りは3%とはいえ、約2万5千人いるので、その数を軽視してはいけません。海外県や移民の多い地域では、保育学校に通う子どもは格段に少ない。午前中だけ、あるいは週に数回だけ通わせる家庭もあって、皆が毎日、朝から夕方まで通っているわけではありません」
「全員を通わせるだけで満足することなく、質を担保しないといけません。認知科学の最新の研究結果なども考慮すると、語彙レベルの差が格差にもつながっているので、特に語彙力を増やすことが重要だと思います。その点で、保育学校の時点でフランス語の習得状況を改善できれば、子どもたちは小学校に入る時点で、より平等なスタートラインに立つことができるでしょう」
――「平等」がキーワードだということですか。
ブランケール国民教育相:「私たちの目的は競争させることではなく、協力的な環境をつくることです。一人で勝利するのではなく、皆で勝利を目指した方がいい。一人で好き勝手に生きていくのではなく、周囲に耳を傾けたり、相談したりすることも大事です。そのためには、子どもたちがフランス語を話せる才能を育てるべきだと考えています」
――4日に開かれたG7の教育相会合でも早期教育を討論のテーマに追加しました。
ブランケール国民教育相:「国によって教育に求めることは異なるかもしれませんが、学童期に入るまでの子どもたちをどのように育てればいいかというのは共通の課題です。どこの国の統計でも、5~15%の子どもたちが学校でいじめに遭っています。これは無視できない社会現象です。いじめ問題は学校への不信感や不登校の原因につながります。子どもたちが保育学校の年齢の時点で協力したり、他者との違いに対する理解度をあげたりするような共和国的な価値観を身につけさせることが大事だと考えています。学校教育の使命は知識を与えるだけではなく、価値観を伝えることでもあります。相手に対する尊重、尊敬の気持ち、共感や連帯感という価値観を子どもたちに身につけてほしい」
――先生も大変ですね。
ブランケール国民教育相:「教師の役割や仕事も国際的な観点で話し合うべき課題です。教師になるための研修中に、世界中に学びに行けるような環境を整えられるようにしたい。人工知能(AI)の導入などで、今の子どもたちが就く仕事は大きく変化すると思います。今後増えていくであろうIT系の職やエコな仕事などに就くために何を学び、どのような資格をとればいいのかを考える必要があると思っています」
――学力の格差はなぜ起こるのでしょうか。
ブランケール国民教育相:「フランスでは現在、学校に通う約20%が期待されている成績に達していません。成績の格差は、社会的背景の格差と相関関係にあります。それを償うのは学校の役割だと考えています。先ほど述べた20%の生徒たちを対象に、小1と小2のクラスの児童数を半分にしました。年間30万人の子どもたちに及ぶ政策で、今後は保育学校まで政策の範囲を広めるつもりです。とはいえ、全体的な底上げには時間がかかります。ですから、3歳からの義務教育という抜本的な改革を施すことにしました」
――保育学校に通う時期は人間形成における重要な時期だということですが、全員がフランス語の読み書きができて、話せるようになることが教育の格差是生につながると考えているのでしょうか。
ブランケール国民教育相:「そうですね。子どもたちが現時点で体感している不平等をなくすことが最終的な目標です。そのためには、『読む』『書く』『数える』『相手のことを尊重する』の四つの能力を身につけることが大切だと思っています。読み書きや計算は小学校1年生で教わることですが、結局は小学校に上がる前の家庭や学校での学びが大きな変化をもたらしています。特に注目したいのがやはり語彙力です。小学生になったら読解のスキルを身につけますが、文字は読めても意味をどのように捉えるかが肝心です。小学校に入る前に一定の語彙力を身につけていなければ、語彙力がある児童との間にギャップが生まれてしまいます」
――全体的な学力の底上げにはなっても、格差は縮まらないという懸念はありませんか。
ブランケール国民教育相:「できるだけそのような状態をやわらげようとしているつもりです。先日、ある寄宿学校のパーティーに出席しましたが、そこの寮生は全員恵まれてない地域で生まれ育っています。それでも高度の学歴を身につけ、学習に集中しやすい環境も提供されています。同じ世代の人の間に存在する『日常の事情の格差』を減らそうとしています。『公』の学校というのはまだまだ捨てたものではなく、逆に21世紀における挑戦の余地があるととらえています」
――アメリカではチャータースクールが急増するなど、他国では公設民営化の動きもあります。フランスは、あくまで「平等」という理念を守るということですか。
ブランケール国民教育相:「フランスにおける義務教育というのは、共和国の保証です。学校間の予算の格差など、大人の世界の不平等を子どもの世界に反映させる訳にはいきません。持続可能な開発やバランスの保たれた平和な社会を望むならば、学校は『共和国らしくあるべき』なのです。学校を通じて、人それぞれが違うことを理解したうえで、お互い協力できる精神を育み、友愛を実現する社会をつくるためには、学校の間に壁や塀があってはいけません」
――基礎的な知識を十分に身につけないと、中学や高校の退学につながるという統計もあるようですが、そういったことへの対策にもなり得ますか。
ブランケール国民教育相:「もちろんです。子どもたち全員に基礎的な知識を与えることが大切です。小学校卒業した時点に、基礎を身につけてない子どもたちが約20%もいるという事態は、あってはならないことです。まさに『革命』並みの改革なのです」
「高校の卒業試験でも口述試験に重きを置くことになったので、先ほどお話しした、語彙力に裏付けられた『話す』能力がより重視されます。今回の施策は将来に向けて、一貫性のある政策だと思います。幼稚園から高校卒業まですべての子どもたちは、歌い、話し、討論し、人の言うことを聞き、同級生と協力しなければいけない。それこそ我らが描いている『信用の学校』像なのです」
ブランケール国民教育相は、基礎学力が水準に達していない20%の生徒たちを対象に、小1と小2のクラスの児童数を半分にしたそうですけれども、要するに一人の先生が見る生徒を少なくして、手厚くしたということでしょう。
これは3歳からの義務化を始める直前の2019年のことですから、あれから4年経って、どんな成果が出ているのかは気になるところです。
3.国会議員の海外研修は専門家集団であるべき
今回の海外研修に対する批判の多くは、「観光にしか見えない」というものですから、松川議員は、ちゃんと研修をして「有意義であった」という証拠というか報告が必要ではないかと思います。
そもそも、研修に参加した38人のメンバーは、それに適したメンバーだったのか、という観点もあります。
今回の研修騒動に関連し、自民党の青山繁晴参院議員は、自身の体験から、研修制度を抜本から改革すべきだと主張しています。
青山議員は民間時代、日仏首脳会談の通訳もしたことがあるという、最上級の通訳を雇い、フランスの国家憲兵隊の人と原子力発電所のテロをどうやって抑えるかについて、議論したそうなのですけれども、どうも質問と答えが合ってない、と違和感を抱き、その理由として、安全保障と国家の危機管理と原子力という3分野で専門用語を使わざるを得なかったのが、通訳がそれを理解できず正確に通訳できなかったからだ、ということに気づいたのだそうです。
青山議員は、仕方がないので、その場にたまたまいた、外交の専門家ではないけれども、原子力に対するテロ防止とか国家管理とか非常に詳しい政府の人に通訳をお願いしたところ、全然中身が変わって議論できるようになったというのですね。
そうした経験から青山議員は、国会議員の海外出張というものを全く一新し、 専門家集団を派閥関係なし、超党派で選んで送り込むべきだと主張しています。
全くその通りだと思いますけれども、裏を返せば、これまでそうした専門家を海外研修に送り込んでいた訳ではなかったのか、と不安になります。
4.海外研修が有意義であったと証明せよ
勿論、今回の自民党の海外研修メンバーが専門家なのかそうでないのか分かりませんけれども、どうであったのか、はその後の報告あるいは政策で見るしかないと思います。
7月31日、実業家のひろゆき氏が自身のツイッターで「自民党女性局議員38人のフランス研修の意義の有無を、現段階で責めるのは間違い。次期国会に「女性が活躍する議員立法案」を出せるか?で決まると思います。案が出なければ、38人は『税金を無駄遣いしてる無能議員リスト』に入ります。議員立法期待してますよー。。と。」と述べていますけれども、そういうことだと思います。
前述した、フランスのブランケール国民教育相は、基礎学力が水準に達していない20%の生徒たちを対象に、小1と小2のクラスの児童数を半分にしたと述べていますけども、日本の小学校の1クラスあたりの生徒数は27.2人とOECDの中で2番目に大きく、フランスの25人を上回っています。
そのフランスに倣うのであれば、日本も1クラスあたりの人数を半分程度にまで減らすことになります。当然ながら教師の数も増やさなければなりません。
また、OECDの国際教員指導環境調査(2018)によると、日本の教員の1週間の仕事時間は、小中学校ともにOECD参加国中最長になっていますから、この改善も必要でしょう。
果たして、自民党女性局議員38人の中から、少子化対策、政治における女性活躍、幼児教育の義務教育化などで有意義な議員立法が出てくるのか。注目したいと思います。
自民党女性局議員38人のフランス研修の意義の有無を、現段階で責めるのは間違い。
— ひろゆき (@hirox246) July 30, 2023
次期国会に「女性が活躍する議員立法案」を出せるか?で決まると思います。
法案が出なければ、38人は『税金を無駄遣いしてる無能議員リスト』に入ります。
議員立法期待してますよー。。と。https://t.co/zFXbwE9IW5
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naga