破産するかもしれないチャットGPT

今日はこの話題です。
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1.破産するかもしれないチャットGPT


8月12日、インドのニュースサイト「firstpost」は、ChatGPTを開発したOpenAI社が2024年までに倒産の可能性があると報じました。

件の記事の概要は次の通りです。
・技術者ではない一般の人々の間でAIをめぐる会話を実質的に始めたAIスタジオであるOpenAIは、大きな問題を抱えているかもしれない。

・サム・アルトマンのAI開発スタジオは、AIチャットボット「ChatGPT」を通じてジェネレーティブAIの顔役になることを目指したが、Analytics India Magazineの報道によれば、近いうちに破産宣告をしなければならないかもしれない状況に追い込まれている。

・どうやら、OpenAIのAIサービスの1つであるChatGPTを運営するだけで、毎日約70万ドルのコストがかかっているようだ。その結果、サム・アルトマンのOpenAIは現在、資金を使い果たしている。さらに、GPT-3.5とGPT-4を収益化しようとしているにもかかわらず、OpenAIは現時点で収支を合わせるのに十分な収益を生み出していない。これが憂慮すべき事態を招いている。

・OpenAIとChatGPTは、オープン当初は記録的な数のサインアップを獲得し、ワイルドなスタートを切ったが、ここ数カ月で着実にユーザー数が減少している。SimilarWebによると、2023年7月のユーザー数は6月に比べて12%減少し、17億ユーザーから15億ユーザーになった。このデータは、ChatGPTのウェブサイトを訪問したユーザーのみを示しており、OpenAIのAPIを使用しているユーザーは含まれていないことに注意して欲しい。

・OpenAIのAPIも問題の一部だ。当初は従業員にChatGPTの利用を控えていた多くの企業が、今ではOpenAIのAPIへのアクセス権を購入し、様々な異なるワークフローで独自のAIチャットボットを作成している。

・しかし、アナリティクス・インディア・マガジンが指摘するように、問題は、ライセンスの問題がなく、無料で使用でき、再利用が許可されているオープンソースのLLMモデルがいくつかあることだ。その結果、それらを適切にカスタマイズし、組織が持つ可能性のある非常に特殊なユースケースのシナリオに適応させることができる。

・このような場合、とりわけ特定のシナリオにおいてOpenAIの方が優れている可能性があるにもかかわらず、より適応性が高く無料で使えるLLaMA2ではなく、どうしてOpenAIの有償で制限付きのバージョンを選ぶのだろうか?

・OpenAIの収益性へのシフトは、サム・アルトマンの最近の公の発言と相まって、多くのことを示している。アルトマンは利益を優先していないかもしれないが、OpenAIは利益を優先している。OpenAIがGPTLLMをより強力に、より賢くするために日常的に資金を投入している一方で、サム・アルトマンは、基本的にAIは政府によって規制されなければ、悲惨なことになると言うような公の発言をいくつか行っている。

・実際、アルトマンはAIの開発方法に関するガイドラインの必要性を声高に主張している。アルトマンは、AIが現在の形で何百万もの雇用を奪うと予測した例が何度もある。

・技術専門家の中には、アルトマンはフランケンシュタインのような瞬間があり、自分が作り出した怪物を多少後悔している、とまで言う者もいるが、それは状況をかなり飛躍させた読み方だろう。

・このような状況にもかかわらず、オープンAIはGPT-4 LLMを収益化する新しいより良い方法を模索してきた。しかし、黒字化には至っていない。ChatGPTの開発以来、その損失は5億4000万ドルに達している。

・マイクロソフトの100億ドルの投資と他のベンチャーキャピタルの投資によって、OpenAIは今のところ存続している。しかし、アナリティクス・インディア・マガジンが報じているように、2023年に年間収益2億ドルに達し、2024年には10億ドルを目指すというOpenAIの予測は、赤字が膨らんでいることを考えると、野心的なものに思える。

・OpenAIがIPOを目指す場合、大手テック企業やコングロマリットに買収される可能性がある。これは現在の投資家にとって素晴らしい出口戦略になるだろう。しかし、IPOに支障をきたす可能性のある問題がいくつかあり、ひいてはそれほど大きな価値をもたらさないかもしれない。

・OpenAIは現在、引き抜き率の高い時期を迎えている。他のテック業界のようにレイオフしているわけではない。しかし、従業員というか、一部の優秀な人材は競合他社に引き抜かれ続けている。

・立ち上げからわずか数ヶ月後の2022年12月、アルトマンはAI企業とChatGPTの運営コストが目を見張るほど高いことを認め、そのため同社は収益化を選択した。報道によると、ChatGPTの運営には毎日約70万ドルのコストがかかっているという。これらの費用は現在、マイクロソフトや他の最近の投資家によって賄われている。しかし、経常的なコストと、OpenAIがすぐに十分な収益を上げることができないことから、OpenAIが状況を好転させることができなければ、困難な状況が生まれるだろう。

・グーグルやメタのような企業がOpenAIの主なライバルと見なされることが多いが、人々はマスクとxAIのことを忘れがちだ。マスクは、主にテスラのために、長い間AIに関わってきた。しかし、ChatGPTが大流行して以来、マスクはAI分野で大きな動きを見せている。 そもそも彼は、OpenAIのChatGPTほど偏見や幻覚にとらわれない「TruthGPT」と呼ばれる競合チャットボットを作ると公言した。さらに、Firstpostは以前、マスクがAIプロジェクトのために1万個以上のNVIDIA GPUを1個1万ドルで購入したと報じていた。さらに、xAIのアルゴリズムを訓練するための人手とデータセンターの運営コストもかかる。

・さらに問題を複雑にしているのは、エンタープライズレベルのGPUが不足し続けていることだ。米中技術戦争のせいで、中国のAI企業やインターネット企業は、仲介業者を通じてエンタープライズレベルのGPUを買い占めている。中には、大手AIチップ製造企業と直接取引する企業さえある。

・最近のSCMPの報道によると、中国の様々なハイテク企業がエヌビディアにA800とA100のAIチップを発注しており、その総額は50億ドルにものぼり、2024年までに納品される予定だという。

・アルトマンは、市場におけるGPUの不足が、同社が新しいモデルを強化・訓練する能力を妨げていると述べた。OpenAIが最近『GPT-5』の商標を申請したことは、モデルのトレーニングを継続する意向を示している。しかし、この追求はChatGPTの出力品質の顕著な低下を招いている。

・財務上の損失の拡大、ユーザーベースの減少、一貫した意味のある収益を生み出すことができないこと、スター製品の質の低下など、これらすべてをまとめると、単純なことが一つ言える。OpenAIは苦境に立たされており、早急に収益を上げる方法を見つける必要がある。
このように、OpenAIは「運営コストの高さ」、「収益化の難しさ」、「競合サービスの台頭」によって倒産する可能性があるというのですね。


2.ノイズがAIを混乱させる


昨年リリースされ、世の注目を集めたChatGPTですけれども、まだまだ開発途上のものであり、収益化には至っていないのは事実です。

なにせ、「firstpost」が指摘しているように、多くの企業がOpenAIのAPIへのアクセス権を購入して独自のAIチャットボットを作成している状態です。この例えが合っているか分かりませんけれども、料理人(各企業)が食材(OpenAIのAPI)を仕入れて、自分達の料理を作っているようなもので、原材料費以上の料金を貰えていない訳です。

既に、ChatGPTの競合サービスとして、Google AIの「Bard」や、Microsoftの「Bing AI」などがあり、彼らはその資本力と技術力に物を言わせて、独自の「料理」を提供しています。

ただ、ChatGPTを初めとするAIとて、全知全能という訳ではなく、ネットに散らばっている情報を搔き集め、アルゴリズムでそれっぽくまとめ直しているだけですから、ネット上で、元々の情報量が少ないものについて、「嘘」をつかれることがままあるようです。

例えば、自分の氏名を検索する「エゴサーチ」をしてみれば、有名人でない限りとんでもない結果が出てくるそうです。因みにGPT-3.5で、拙ブログの「日比野庵」について教えてください、と問うと、次のような答えが返ってきました。
日比野庵(ひびのあん)は、日本の禅宗寺院であり、京都府京都市東山区にあります。日比野庵は、鎌倉時代に建てられたとされており、禅宗の開祖である中国の僧侶・達磨大師を祀っています。また、庵内には、茶人・千利休が使用したとされる茶室「雪舟庵」があり、国の重要文化財に指定されています。

日比野庵は、四季折々の自然が美しい庭園を有しており、特に紅葉の時期には多くの観光客で賑わいます。また、庵内には、禅の修行に必要な座禅堂や、書院などの施設もあり、禅の修行に興味のある人々にも訪れられています。
まぁ、予想はしていましたけれども、やはり、「空想のお寺」が建築されてしまいました。

要するに、一般的ではない「ニッチな情報」を調べた場合、ChatGPTは多くの「ノイズ」も取り込んでしまいます。ウェブ上のあらゆる情報を引っ張り、それらを組み合わせてしまうからです。

こうしたノイズを除去するためには、データそのものから「ノイズ」を削除するか、データを取り込む対象を、自分達が欲しい”比較的”正しい情報が網羅されているウェブページに限定するしかありません。

おそらく、各企業がOpenAIのAPIへのアクセス権を購入して独自のAIチャットボットを作成しているのも、これらの処理を自分達が求める答えになるように、調整し、精度を上げるためではないかと思われます。


3.ノイズ訂正できるツイッター


ただ、「ノイズ」を除去するといっても、どれもこれも同じように除去できるとは限りません。特に情報の世界では。

電気信号なんかだと、回路(フィルター)を組んで、一定以上の周波数は信号を通さないようにできますけれども、ChatGPTが扱うネット情報の世界では、そのフィルターをどう作るかという問題があります。

ノイズがノイズだと判断できるためには、「正しいもの」が分かっていないといけないからです。

企業が独自のAIチャットボットを作成できるのは、その企業が自分の手の届く範囲でAIを作成するからです。その分野の専門家だからこそ、何が正しくて、どこにそれがあるかが分かっているからです。

ところが門外漢の分野になると、そうはいきません。それを無理やり誰かが、個人の判断で行うと、ときにそれは「検閲」ともなりえる危険があります。ChatGPTがその精度を高めようとすればするほど、この問題に突き当たる筈です。

その意味で、これを「民主的」な方法で解決しようと模索しているのが「X(旧ツイッター)」です。

7月13日のエントリー「ツイッターが生み出す野生のファクトチェッカー」で、「X(旧ツイッター)」のコミュニティーノートについて取り上げたことがありますけれども、あれは、一つのツイートに対し、様々な人から等しく評価されるものを追記する機能です。これなどは正に多くの様々な考えの人から等しく評価されるものが「正しい」ものに近い筈だ、という極めて「民主的」な方法でノイズを除去しようとする試みだと筆者は考えています。

ChatGPTにコミュニティーノートのようなノイズ除去機能を実装できるかどうか分かりませんけれども、食材だけ提供して、その鮮度や無毒を保証しないやり方では限界は近いのかもしれませんね。


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