減税しない財務省に追い込まれる岸田総理

今日はこの話題です。
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1.最低賃金1500円


8月31日、岸田総理は、官邸で開かれた「第21回 新しい資本主義実現会議」で、最低賃金について、2030年代半ばまでに1500円に引き上げることを新たな目標にすると表明しました。

岸田総理の発言は次の通りです。
「我が国の実質GDPは4~6月期の速報値で、年率換算6パーセントの成長率となりましたが、エネルギー食料品価格が高騰する中で、内需主導の経済成長を実現していくためには、賃上げが当たり前となる経済、そして投資促進が鍵となります。

今年の賃上げ率は3.58パーセント、中小企業に限っても3.23パーセントであり、30年ぶりの高水準となりました。また、今年度の最低賃金額は全国加重平均1004円となり、目標の1000円超えを達成いたしました。最低賃金については、さらに着実に引き上げを行っていく必要があります。引き続き、公労使三者構成の最低賃金審議会で、毎年の賃上げ額についてしっかりと御議論いただき、その積み上げにより2030年代半ばまでに全国加重平均が1500円となることを目指してまいります。

賃金及び最低賃金の安定的な引き上げが必要であり、そのためには中小・小規模企業の労務費の円滑な転嫁が必要です。政府・公正取引委員会は実態調査の結果を踏まえ、年内に発注者側のあるべき対応を含め、詳細な指針を策定・公表し、周知徹底を行います。

また、賃上げに向けた中小・小規模企業の支援のため、直ちに、事業再構築補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金及び業務改善助成金について、要件緩和を実施いたします。また、現場の意見を踏まえ、今後取りまとめる新たな経済対策において省人化・省力化投資の支援措置などの抜本強化を図ります。

さらに、国内投資促進に向けたさらなる政策的対応として、戦略的に重要な分野であるが、初期投資コストやランニングコストが高い分野について集中的に支援する税制や、知的財産の創出に向けた研究開発投資を促す税制を検討するとともに、新たな経済対策において、地方において賃上げが可能となるよう、中堅・中小企業による投資促進策を強化いたします。

これらにより、賃金や投資を含む成長と分配の好循環を拡大してまいります。

委員の皆様方及び関係大臣に引き続きましての協力をお願い申し上げます。以上です。」
会議ではこのほか、賃上げに向けた中小企業などの支援策として、全体の10%以上の従業員に3か月以上、地域の最低賃金より最大50円高い賃金を支払う企業を対象に、新たな分野に設備投資を行う際の補助金を増額していくことなどを申し合わせしたとのことですけれども、様々な論点について議論されたようです。

会議資料で提示された論点案は次の通りです。
論点案
• 我が国の実質国内総生産は4-6月期の速報値で年率換算6%の成長率。3四半期連続の成長であり、コロナ禍からの回復傾向にある。他方で、内容的には、消費が物価高の影響等でー0.5%と弱含み。民間企業設備投資も前期比0.0%で横ばいであり、内需が不安定な状況。新しい資本主義との関係では、春闘及び構造的賃上げによる実質雇用者報酬の改善の継続と、これによる消費拡大を見込む民間設備投資の向上を中心とした民需主導の経済への移行が鍵ではないか。
• デフレギャップが縮小しつつあることを考えると、供給力の向上が重要ではないか。すなわち、①いかに能力を勘案した投入労働を上昇させるか((1)リ・スキリングによる能力向上、(2)新たな人材マネジメントへの改革、(3)成長分野への労働移動の円滑化)、②いかに投入資本を上昇させるか((1)国内民間投資促進、(2)社会インフラの整備)、加えて、③いかに生産性を上昇させるか=イノベーションを進めるか((1)スタートアップ振興・労働移動円滑化など企業の参入・退出円滑化、(2)創造性を喚起するエコシステムへの構造改革)といった点が論点になるのではないか。
• 労働力については、第一に、人口減少による労働供給の不足が日本経済の成長を制約しつつあるのではないか。我が国の労働生産性=就業1時間あたりの付加価値は5,006円で、米国の6割弱、OECD38か国中27位。これを改善するため、人への投資を促進するとともに、中小企業の省力化投資を支援していく必要があるのではないか。
• 第二に、我が国の労働者のエンゲージメント(労働者の士気・熱意)は他の主要国と比較して低い水準にある(士気・熱意がある従業員の割合は世界平均20%に対して日本は5%)。若手も適材適所で抜擢される、ベテランも、50歳後半での役職定年、60歳以降の継続雇用といった年齢による一律の雇用制度から、やる気とスキルさえあれば、活躍の機会が得られるよう、ジョブ型の人材マネジメントなどへと改革していく必要があるのではないか。
• 第三に、消費を回復させるためには低迷してきた我が国の実質賃金水準を引き上げていく必要があるのではないか。またDXやGXなどの潮流が労働需要や必要とされるスキルを大きく変化させ、産業の入れ替わりのサイクルも短期化することも勘案し、生涯を通じて新たなスキルの獲得に努めれば、やりがいのある仕事と高い賃金を得られる社会に移行する必要があるのではないか。その際、リ・スキリングについては、離職期間中だけではなく、働きながら取り組む制度や慣習を定着させていく必要があるのではないか。
• 最低賃金については、本年、全国加重平均1,000円を達成したところ(1,004円)。最低賃金法に定める3要件の状況を公労使三者構成の審議会で毎年審議しながら、国際的な水準等にも鑑み、更なる引上げを行っていく必要があるのではないか。
• 賃金・最低賃金の引き上げについては、中小・小規模企業の労務費の転嫁が1つの鍵になるため、政府・公正取引委員会は実態調査の結果をとりまとめ、年内に詳細な労務費の転嫁指針を公表すべきではないか。また、人手不足の中小・小規模企業の労働生産性向上のため、省力化・省人化投資の支援の強化が必要ではないか。
• 物価上昇の中で、特に処遇水準が低い方々のため、非正規雇用労働者の正規化促進を図るとともに、このための支援制度を強化すべきではないか。
• 国内投資促進について、米国・欧州等では、初期投資コスト及びランニングコストが高いが国として戦略的に長期投資が必要となる分野について、国内立地・投資を促進するため、インフレ抑制法(米国)やグリーンディール産業計画(EU)といった制度を設けつつある。我が国においても、国として戦略的に重要な分野であるにも関わらず、初期投資コスト・ランニングコストが高いため民間での事業採算性に乗りにくい分野の中で、特段に国として不可欠な投資を選んで、税制等で集中的に支援する制度を検討すべきではないか。
• 併せて、賃上げのためにも、地方で中小企業・スタートアップ等による工場立地を加速するため、支援制度の充実や規制制度の見直しについて検討すべきではないか。
• AIの利用・開発の促進や先端半導体等の製造基盤の更なる拡大を進めていくべきではないか。サーキュラーエコノミーへの移行を進めていくべきではないか。
• イノベーションを加速するため、スタートアップのストックオプション関連の法制度や税制を早急に使い勝手の良いものにすることが必要ではないか。
• 利益の源泉たるイノベーションについても国際競争が進んでいる。ヨーロッパ等では、研究開発拠点の国内立地を促進するため、特許権やソフトウェアといった知的財産から生じる所得について優遇税制を適用する制度を導入しており、OECDも、自国で研究開発が行われたものであれば、知的財産から生じる所得に対する税制優遇を許容している。我が国においても、海外と比べて遜色なく民間による無形資産投資を後押しする観点から、知的財産の創出に向けた研究開発投資を促すための税制面の検討をすべきではないか。
• 企業の参入・退出を促進するため、親族や長く務めた従業員が事業を承継する場合の事業承継税制について、延長・拡充を検討すべきではないか。また、M&A・事業承継等の幅広い選択肢について、早い段階から相談・支援できる体制を整えるべきではないか。
• 社会的起業家を育成するため、インパクトスタートアップの認証制度における企業選定を年内早期に実施すべきではないか。
• アニメ・ゲーム・エンターテイメント・漫画・映画・音楽・放送番組等の分野について、慣行是正を含め、官民連携で一体的な施策を立案すべきではないか。
論点案をざっと読む限り、経済活性化と投資推進のために、賃上げと税制の見直し議論が行われたようです。


2.他の先進国の賃金より低い時給を十年後の達成目標にする岸田政権


この岸田総理の最低賃金1500円発言について、8月31日、経団連の十倉雅和会長は、記者団に「そんなにむちゃな話ではないと思う。そうなるように経済環境を持っていかなきゃいけない」と語り、翌9月1日には、日本商工会議所の小林健会頭も「政府が目標感を出すこと自体は、特に否定しません。そういうものがなければ、なかなか引っ張っていくのも大変でしょう。1500円を払える企業体にしていかなければいけない」と述べました。

ただ、現時点で日本の最低賃金の伸び率は主要国に比べて大きく見劣りしているのも事実です。

日本総研『全国平均1000円超時代の最低賃金の在り方』によると、2023年1~4月の為替相場で各国の最低賃金を比較すると、日本は961円で最低レベル。フランス1386円、ドイツ1386円、英国1131円、韓国の991円よりも下。アメリカ・カリルフォルニア州の2000円、オーストラリアの2230円とは比べるべくもありません。

こうしたことを受けてのことなのか、ネットでは岸田総理の「最低時給1500円」に批判的な意見が数多く寄せられています。

「X」では、インフルエンサーのちきりん氏が、「現時点での他の先進国の賃金より低い時給を10年後の達成目標にするなんて、本当に日本て余裕があるというか呑気というかスピード間の欠如した国というか、腰が抜けそう」と酷評したほか、「もうその頃には、先進国は、2,000円はゆうに超えてるよ! 高いところなら2,500円くらいかもね?差が開く一方や!」など批判的な声が寄せられました。

また、ニュースのコメント欄でも、「12年で500円アップって毎年40円ぐらいだからなあ。停滞してた時期が長すぎて、そんな額の賃上げでもビックリしちゃう所もあるんだろうか」「岸田さんは、どう言う根拠で、目指すのか言ってくれよ…。この様な話の時は何時も中身がないと言うか…。「どうやって」と言う話がまるでない…」など、疑問視する意見も目立ちました。



3.ガソリン高は財界の意向だと主張する週刊誌


岸田内閣の経済政策について、巷の評判は今一のようですけれども、週刊誌辺りも岸田内閣を叩いています。

8月14日、日刊ゲンダイは「マイナ保険証問題とガソリン高は「財界」の意向…岸田首相は「消費増税」も言いなりか?」という記事を配信。ガソリン高について、次のように述べています。

……15年ぶりの水準のガソリン高がこたえたはずだが、これにも財界の意向が反映されている。

政府が7月20日に開いた経済財政諮問会議で、経団連の十倉雅和会長や経済同友会の新浪代表幹事ら民間議員が、エネルギー価格の高騰を抑える「激変緩和対策」を段階的に縮小・廃止するよう提言。財界の提言通りに9月末で補助が廃止になれば、10月からガソリンや電気・ガス代の家計負担は一段とハネ上がってしまう。

国民生活を顧みない新浪氏らの傲慢とも取れる発言の数々には批判が殺到し、SNS上では「#サントリー不買運動」という不穏なハッシュタグを付けた投稿も目立つ。

「30年ぶりの賃上げを実現したから激変緩和対策は不要というのが財界の理屈のようですが、賃上げは大企業だけの話だし、物価上昇に賃上げが追いついていない。実質賃金は15カ月連続でマイナスが続いています。ところが財界は43兆円に防衛費を増やすことが最優先で、困窮する国民生活など眼中にありません。岸田政権が台湾有事をあおったり、武器輸出解禁や原発推進に熱心なのも、米国と財界の意向に沿った流れです。首相は米国と財界の言いなりですから、いずれ消費増税も強行するつもりでしょう」(政治評論家・本澤二郎氏)

経済同友会が2021年5月に発表した試算では、財政健全化のためには「消費税率を26~34年度に毎年1%ずつ引き上げて19%にする必要がある」という。異次元の少子化対策の財源についても、財界は「社会保険料ではなく消費税で賄うべきだ」と言っている。
ゲンダイの記事では、7月20日に開いた経済財政諮問会議で、経団連や経済同友会の民間議員が、エネルギー価格の高騰を抑える「激変緩和対策」を段階的に縮小・廃止するよう提言したと述べていたのですけれども、先日、岸田総理が補助金継続を表明し、「激変緩和対策」の縮小・廃止は先送りされました。

件の7月20日の経済財政諮問会議ではどのような発言がなされたのか。

経済財政諮問会議の資料をみると、「激変緩和対策」の縮小・廃止を提言したのは、東京大学大学院経済学研究科教授の柳川範之氏で、次のように述べています。
(柳川議員) 資料3-1、資料3-2をご覧いただきたい。「令和6年度予算の全体像に向けて」という民間議員ペーパーをまとめている。

「今が正念場」と書いてあるように、単なる来年度の予算を作るということではなくて、しっかりと構造を変えていく予算にしなければいけないと考えている。
具体的には、資料3-1の最初に書いたように、構造的な賃上げをしっかり実現していくこと、民間投資の拡大を継続させていくこと、財政政策に当たっては歳出構造を平時に戻していくこと、それから、供給力強化に向けて政策の軸足を移していくことが重要である。

(2)で「当面のマクロ経済運営で重視すべきポイント」ということで、まず書いているのが、持続的な賃上げ、それから、物価高対策である。

30年ぶりの高水準となった賃上げの流れを全国津々浦々に広げて、分厚い中間層を作っていくことが重要で、価格転嫁対策を強化するとともに、中小企業あるいは多くの企業にとっての生産性向上をしっかり促進していくことが重要。その結果として、最低賃金については、全国加重平均1,000円達成後も、地域間格差の是正を含めて継続的な引上げをしっかりしていくべき。非正規労働者の方の正規化、あるいはキャリアアップにつながるような転職をしっかり後押しすべき。

さらに、年収の壁を意識せずに働く時間を延ばしたいと考える方が実際に延ばせるような環境作りを後押しするということが重要。物価高対策に関しては、激変緩和対策を段階的に縮小・廃止するとともに、影響を強く受ける低所得者・地域等に重点を絞ってきめ細かく支援すべき。
確かに、柳川教授は、「激変緩和対策を段階的に縮小・廃止する」と述べていますけれども、同時に「影響を強く受ける低所得者・地域等に重点を絞ってきめ細かく支援すべき」とも述べています。

9月1日のエントリー「ガソリン補助金で取引した岸田総理」で、筆者は日経新聞の「ガソリン補助金の出口なき延長はやめよ」という社説を取り上げ、そこでは「低所得世帯や零細企業、農漁業従事者や物流事業者、バスやタクシーなどの公共交通機関など、とりわけ燃料高の打撃が大きい対象もある。支援策はそうした層に的を絞るべきだ」と、野放図なバラマキはやめろと主張しています。

これは、柳川教授の経済対策は影響を強く受ける低所得者・地域等に重点を絞ってきめ細かく支援すべき、との提言と同じです。

その意味では、日刊ゲンダイの「激変緩和対策」を段階的に縮小・廃止するよう提言したという記事は、間違いではないですけれども、「影響を強く受ける低所得者・地域等に重点を絞ってきめ細かく支援すべき」の部分は抜け落ちている訳で、ミスリードとは言わないまでも、偏向した記事の気があります。


4.トリガー条項を意地でも凍結解除しない財務省


岸田内閣が今後、「影響を強く受ける低所得者・地域等に重点を絞ってきめ細かく支援すべき」という政策を行うのかどうか分かりませんけれども、仮にそうなったところで、補助金行政の域を出ることはありません。

岸田総理が、ガソリン補助金延長を表明した後でも、世間は、ガソリン高についてトリガー条項の凍結解除を求める声が続いています。

ただ、財務省にはその気は全く無いようです。

8月29日、鈴木財務相は、閣議後記者会見で、トリガー条項について問われ、改めて凍結解除しないと表明しました。

件の会見でのやり取りは次の通りです。
【前略】

問)政府がガソリンの価格について、支援を継続して価格を一定に下げるために補助金を出すという方針を決めたということなんですが、一方でガソリンについて、ガソリン税を取りながら補助金を出すという形を続けるのがいいのか、減税の方をするべきではないかという声がありますが、そこについて鈴木大臣のお考えをお聞かせください。

答)総理指示を踏まえて、これから与党との検討を踏まえて、所管省庁であります経産省とも十分、協議をして決めていきたいと思いますが、基本は今ある激変緩和措置、これの期限をどうするのか、あるいはその内容をどの程度にするのかであると、そのように思っております。したがいまして、何か別のものを別のアプローチでガソリン価格の高騰対策を考えるということにはならないのではないかと、そのように考えています。

問)減税について検討すべきでない理由について改めて。ガソリン減税ですね。

答)要するにトリガー条項をということですか。それは再三再四、国会でお答えしているとおりでありまして、トリガー条項につきましては、昨年4月の自民党・公明党・国民民主党による3党検討チームにおいて、補助金と異なりまして、トリガー条項の発動では、揮発油税・地方揮発油税、軽油取引税がかかっていない重油、灯油について対応することができない、それから発動・終了時に大幅な価格変動が生じて、発動前の買い控えでありますとか、終了前の駆け込みでありますとか、それに伴います配送の乱れや品不足といった流通や販売の現場に与える影響が大きい、それからガソリンスタンドと元売りの顧客対応を含めた事務負担が大きいと、こういったような課題が3党の協議の中でも指摘をされて、そしてそれを解決するための具体的な方策について結論を見出すことに至っていないと、こういうことでございます。

そういうことで、従来も政府としてはこうした課題が解決されない以上、トリガー条項の発動は見送ると、こういうことでありまして、そうした方針は今も継続しているということであります。
鈴木財務相は、トリガー条項凍結解除すると、発動前の買い控えや終了前の駆け込みで、流通や販売が混乱するからやらない、という理屈を持ちだしました。けれども、その理屈が通用するなら、消費増税を始め、各種増税も出来ないことになります。ご都合主義もいいところです。

当然ながら、SNS上では「何があっても発動しない条項って何? 数年前と今では状況が大きく違うけど」、「トリガー条項を発動しない理由が毎回、同じ説明って説明になっていないでしょ》《オウムのように同じ説明を繰り返しているが、これならだれでも政治家になれる」などと「ならばいつ、どういう状況なら発動できるのか」といった怒りの声が飛び交っています。


5.怒りのJAF


こうした何が何でもトリガー条項を発動しない政府に対し、JAFが怒りの声明を出しました。
声明は次の通りです。
JAF(一般社団法人日本自動車連盟 会長 坂口正芳)は、ガソリン小売価格の高騰を受けて次のとおり声明を発表しました。

現在、ガソリン小売価格は高騰を続け、それにともない石油元売り会社などに支給していた補助金の期間延長の検討やトリガー条項の発動も議論されております。これまでも政府や行政機関である関係省庁へ訴え続けて参りましたが、この機会に以下の事項についてJAFは改めて強く要望します。

1.ガソリン税等に上乗せされ続けている「当分の間税率」を廃止すべき。
2.ガソリン税に消費税が課税されている「Tax on Tax」という不可解な仕組みを解消すべき。
JAFでは、このような自動車ユーザーが到底理解・納得できない仕組みを一刻も早く解消するべきと考えます。
面白いことに、JAFの声明はトリガー条項発動云々には一言も触れず、1970年代、道路整備の財源として適用された暫定税率である「当分の間税率」と、ガソリン税に消費税が課税されている「二重課税」を止めろ、と主張していることです。

JAFは、次のようにガソリン価格の内訳を提示して、そのおかしさを指摘しています。
ガソリン1リットル=185.6円(税込)の場合
・ガソリン自体の価格=114.9円
・本来の税率分のガソリン税=28.7円
・上乗せ税率分のガソリン税=25.1円
・消費税(10%)=16.9円
リッター185.6円のうち、70.7円が税金。小売価格はガソリン自体の価格の約1.6倍とは、流石に国民は怒ります。タバコは吸わないで我慢できても、ガソリンは使わないで我慢しようにも、生活を直撃するからです。

案の定、この声明を投稿したJAFの公式X(旧Twitter)は、9月1日18時時点で、1.9万回リポストされ、3.1万件の「いいね」がつき、「JAFさんありがとうございます 岸田首相は10月から175円になると自慢げに話していましたが175円ではまだまだ庶民には高過ぎます」、「そうなんです!補助金ではなくガソリン税の廃止を国民は求めています」、「JAFさんの言う通りや!田舎のドライバーにはマジで大打撃や!!」など多数のコメントがついています。



6.財務省の突かれたくないポイント


経済産業省が8月30日に発表した、レギュラーガソリン1リットルあたりの全国平均小売価格は、8月28日現在で185円60銭と過去最高値を更新しました。都道府県別では、もっとも高いのが長野県の194円。続いて鹿児島県の191円60銭、長崎県の191円10銭などとなっています。

岸田内閣の補助金政策について、嘉悦大学教授の高橋洋一氏は、「負担軽減策としては、減税と補助金のいずれもあり得る。ただ、減税の場合は消費者だけにメリットがあるのに対して、補助金の場合はお金を交付される流通業界にもメリットが生じる……政府の財布からお金が出ていくのは同じですが、官僚にとっては業界への差配力が強まる補助金のほうが、逆に弱まる減税より好まれる。特に減税を嫌うのが財務官僚で、岸田政権はその言われるがままやっているのかなとは思います。(価格変動による混乱があるという)デメリットを政府は言いますが、それが理由なら、徐々に減税幅が拡がり、価格高騰が落ち着いたら縮小する、という経過措置の作り方で対応すればいいだけ」と指摘しています。

トリガー条項を発動すれば、買い控えなど混乱が起こるという政府の説明に対しても、徐々に減税幅を拡げ、価格高騰が落ち着いたら縮小するという段階的対応をすればよいと述べています。ガソリン補助金にしても段階的に縮小してきたのですから、出来ない筈がありません。

また、政府が、減税を選ばないことについて法政大学大学院の白鳥浩教授は「確かに、減税をやるには法改正が必要で時間がかかるから、現段階において補助金で対応するのは現実的なやり方ではあります。ただ気になるのは、国会が閉じている間に場当たり的に決める岸田流の政策決定のスタイル。一度法律で決めたことは変えないし、国会が開いていない時に重要なことを決める。非常に問題が大きいと思います……ウクライナ危機は長期化しそうで、場当たり的に延長した期日である今年12月でガソリン価格が落ち着くとも思えません。それなら抜本的な対策のあり方を国会で議論して仕組みを見直すべき。さもなくば際限のない税金の垂れ流しになる」と指摘しています。

白鳥教授は、国会が閉じている間に場当たり的に決める岸田流の政策決定のスタイルは問題があると述べていますけれども、その理由について「最大の懸案である防衛費増額の財源として、政府は、本来は被災地復興のために上乗せしている復興特別所得税を転用しようとしています。ガソリン減税を巡る議論から、“震災復興のための税金”の使い途に注目が転じ、本格的な増税批判へと飛び火するのを恐れているのではないでしょうか」と述べています。

前述した経済財政諮問会議にしても、「激変緩和対策」の縮小・廃止と同時に、低所得者・地域等に重点を絞ってきめ細かく支援すべきと、野放図なバラマキを止めて、効率的な税金の使い方をしろ、と言っている訳です。

岸田政権、というか財務省の突かれたくないポイントはここにあります。

昨今、Colabo問題など、世間でも税金の使われ方が注目され、既得権益を見直せという方向に世論が流れているような印象を受けているのですけれども、ガソリン行政に耳目が集まるのも道理なのかもしれません。

ガソリン補助金で取引した岸田総理」のエントリーで、岸田総理は、トリガー条項凍結解除を諦め、補助金でいくということで菅・二階氏と手打ちをしたのではないかと述べましたけれども、このまま岸田政権の経済政策に批判が集まり、支持率が低迷を続けるなら、トリガー条項凍結解除に手をつけるしかないところにまで追い込まれるかもしれませんね。


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この記事へのコメント

  • yoshi

    本当に最低賃金が1500円になるなら早く上げて欲しい。
    2023年09月05日 13:41