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1.満額回答と屈辱
9月13日、岸田総理は内閣改造を行い、第2次岸田再改造内閣が発足しました。
党内6派閥ごとの閣僚の起用人数は、改造前からほぼ維持するなど、派閥均衡に配慮しています。
茂木派は茂木氏と小渕優子選挙対策委員長で党四役の2ポストを占めたほか、閣僚での処遇を求めていた衆院議員2人を含む3人が入閣。茂木幹事長は「うちは希望通り。満額回答だった」と周囲に満足そうに語ったそうです。
また、主流派を形成する麻生派も閣僚4人を確保し、人選もほぼ派閥の要望通りだったようです。
他派閥の閣僚は安倍派が4人、岸田派2人、二階派2人、森山派0人と、改造前と比べ、岸田派が1人増えた以外は変化はありませんでした。
もっとも、閣僚数の上積みを求めていた最大派閥の安倍派幹部は「所属議員数を考えれば、麻生派と同じ4人ではバランスを欠く」と不満を漏らし。「非主流派」の二階派幹部は、人事の調整過程で、首相側から閣僚起用を1人に減らす打診があったことを明かしています。結果的には2人が入閣したものの、うち1人は派閥が要望した議員とは異なり、この幹部は「屈辱だ」と怒りをあらわにしたそうです。
もっとも、副大臣は安倍派から最多の6人を起用。茂木派と麻生派がそれぞれ4人、岸田派3人、二階派2人。政務官は安倍派が7人と最多。次いで岸田派と二階派がそれぞれ5人で並んでいます。副大臣、政務官を含めたトータルでみると、派閥への配慮はより鮮明になっています。
2.岸田降ろしをさせない人事
今回の改造について、自民元幹部職員で政治評論家の田村重信氏は次のように述べています。
二階派からも2人入閣するなど岸田首相が聞く力を発揮し各派閥幹部の声をよく聴き党内の安定とバランスに配慮した人事。特に首相がこだわったとみられるのは女性閣僚の5人登用で、経済界などにも女性登用を率先した示した格好だ。また、法政大学大学院教授の白鳥浩氏は次のように見ています。
今後物価対策などが奏功し、日本経済に大きなマイナスがなければ、来年9月の自民党総裁選で岸田さん再選の目も見えてくる。
総裁選で岸田首相のライバルとなり得る茂木敏充氏、河野太郎氏、西村康稔氏、高市早苗氏を留任させることで封じ込め、首相候補として国民的人気の高い石破茂氏、小泉新次郎氏を登用しなかったことも再選戦略にみえる。
メディア各社の世論調査で日本維新の会の支持率が下がり始めており、衆院解散を急ぐ必要性はなくなりつつある。
世界各国外交は首脳外交が主流となっており、外務・防衛相交代しても、日本の外交方針に変化・影響はない。
国民目線よりも、来年9月の総裁選を意識して党内バランスを重視した内向きな人事だ。内閣支持率が上がるとも思えず、来年9月まで衆院解散はしないのではないか。改造内閣を見た筆者の第一印象は、岸田降ろしをさせない人事であり、上川外相と木原稔防衛相起用は、アメリカ向けの対策かなと思いました。
総裁選でライバルになりそうな河野太郎氏、高市早苗氏、西村康稔氏は留任させた。
人事の目玉は、岸田首相最大のライバルである茂木敏充幹事長を留任させることで来年総裁選への出馬を難しくすると同時に、茂木派の首相候補である小渕優子氏を選対本部長に登用したこと。小渕氏と茂木氏をほぼ同格にすることで、首相職への意欲を隠そうとしない茂木氏を牽制した格好だ。
外相交代も、岸田派内で首相の最大のライバルとなりそうな林芳正氏を牽制する意味があったかもしれない。
外交・防衛政策はこれまでと大きな変更はないだろう。上川氏はこれまで通り対米追従路線で、木原稔氏の登用は自民支持の岩盤保守層のつなぎ止めを図ったのだとみている。
その中で、小渕氏の登用は対中国、対公明でプラスとなる可能性がある。父親の小渕恵三元首相は親中派で、かつ公明党が連立与党入りした際の立役者だったので、小渕氏も中国、公明とのパイプとなり得る。
実際、ジャーナリストの加賀孝英氏は最近の記事で「米国は『親中派』議員の排除を求めているという」と述べているところをみると、それなりになんらかの要請はあった可能性が考えられます。
3.支持率は微妙
今回の改造で官邸幹部は「支持率は高まるはず」と期待しているそうですけれども、どうなのか。
共同通信が13、14両日に実施した全国緊急電話世論調査によると、岸田内閣の支持率は39.8%で8月19、20両日の前回調査から6.2ポイント上昇。不支持率は39.7%と前回50.0%から10ポイント以上下落しました。
ただ、内閣改造・自民党役員人事を「評価する」としたのは37.6%で「評価しない」が43.9%。岸田総理が人事を「適材適所で決めた」と思うとの回答は15.9%にとどまり「派閥に配慮して決めた」との見方が76.2%に上っています。
一方、読売新聞は13~14日に行った世論調査では、岸田内閣の支持率は改造前の前回調査(8月25~27日)と同じ35%で、7月の前々回調査から3ヶ月連続で、岸田内閣発足以来最低の支持率となり、不支持率は前回調査と同じ50%だった。こちらは内閣改造効果はでていません。
政党支持率も、自民党が31%(前回30%)、日本維新の会が6%(前回6%)、立憲民主党が4%(前回3%)などこちらも横這いです。
共同の世論調査でも内閣改造は「派閥に配慮して決めた」が7割を超えているところをみると、国民を向いた内閣ではないと見透かされているようにさえ見えます。
いずれにしても、G7サミット程のインパクトを支持率に与えなかったと見てよいかと思います。
4.国民の怒りの声
無論、国民は内閣の顔ぶれではなく、その仕事振りで判断しようとしているという冷静な見方もできます。
9月6日、週刊女性は有楽町駅前で街行く女性らに今の「岸田首相の支持率」を独自調査しています。
道行く女性50人にランダムに声をかけたのですけれども、「支持する」と答えた人はなんとゼロ。「わからない」と答えた7人を除いた43人が「支持しない」と回答しています。
女性らは岸田総理に次の厳しい声をかけています。
「最低賃金を上げる前に、まずは正社員を増やすことが先じゃないの!?」(37歳・パート)このように、国民を無視しているという怒りの声で溢れています。
「第3号被保険者制度廃止はどうなっているのか。専業主婦はただの穀潰しとでも思っているんでしょうか。子どもを産めない女性がますます増えます!」(42歳・専業主婦)
「自分の息子や身内にばかり甘く、官邸を私物化するのをやめてほしい。誰もあなたを支持していない」(56歳・会社員)
「増税ばかりで、取れるところから搾り取っているのが許せない。こども家庭庁の予算を増税分にまわせるでしょう」(45歳・会社員)
「炎天下の警備員さんがほとんど高齢の方たちなのを見て悲しくなる。岸田さんやご家族が豪遊している姿を見ると腹立たしい」(29歳・専業主婦)
「ウクライナやヨルダンに何百億も支援している場合か。国内をまず支援してほしい」(37歳・パート)
「“木原事件”はどうなっているの? うやむやにしたまま内閣改造で留任させそうで怖いです」(41歳・会社員)
これでは確かに、「エッフェルなんとか」とか「ブライダル〇子」、ついでに「ドリル×子」など叩かれるのも分かります。国民を痛めつけて、自分達はその上で胡坐をかいていると見られているということです。
5.明日は今日よりよくなるのか
そんな中、永田町では10月に解散総選挙があるのではないかとの風が俄かに吹き始めました。
立憲民主党の泉健太代表は訪問先のワシントンで記者会見し、衆院解散・総選挙の可能性が「高まっている」と指摘。同じく立憲民主の岡田幹事長は「10月中の可能性がかなり高い」と分析しました。
また、公明党の山口那津男代表は中央幹事会で「10月で衆院議員の任期は折り返しを迎える。以後は常在戦場の構えを心がけて対応することが重要だ」と語っています。
岸田総理は13日夜の記者会見で経済対策を10月に策定する方針を示していますけれども、経済対策の財源となる令和5年度補正予算案の編成と国会提出の時期は明言しませんでした。
従って、もし、岸田総理が「秋解散」に踏み切る場合、「10月中旬の臨時国会序盤に解散」か、「臨時国会で補正予算案を成立させて経済対策を実行し、10月末~11月上旬に解散」の二つのケースが考えられます。
もっとも、岸田総理は衆院解散の時期を問われ「まず思い切った経済対策を作り、早急に実行していくことを最優先」すると明言していますから、言葉通りなら後者の10月末解散になります。
ただ、通常は経済対策策定とセットの補正予算編成について、岸田総理は経済対策策定後の「しかるべき時期」に指示すると述べていることから、経済対策のメニューを示して衆院選に臨み、選挙後に補正予算案を成立させる可能性も考えられます。
もっとも、内閣改造後の支持率が爆増している訳ではないことを考えると、もう一発経済対策をぶち上げて、解散に弾みを付けたいところです。
結局のところ、その経済対策が如何なるものかが大事になるということです。
前述の女性自身のアンケートの声を見ると、旧態依然の経済対策は直ぐに見透かされてしまいます。いくら頭に「異次元」という文言を付けたところで「明日は今日よりよくなる」とは思われないのではないかと思います。
今回の内閣改造について、りそなアセットマネジメント 運用戦略部チーフ・ストラテジストの黒瀬浩一氏は次の様に述べています。
内閣改造は非常に小幅にとどまった。改造を通じて支持率が高まれば解散・総選挙にもち込もうとの考えだろうが、サプライズに乏しく、まだ距離があるのではないか。岸田文雄首相は、経済対策に向けて大型の補正予算をまとめる構えを示しているが、経済産業相や政務調査会長、幹事長は留任するため、政策の中身が変わるとは期待しにくい。株価への影響は限定的だろう。
黒瀬氏は経産相や政調会長、幹事長の留任を挙げて、政策の中身は変わらないだろうと指摘しています。岸田総理の10月の経済対策が、財務省にケチられたショボいものであるのなら、仮に解散しても厳しい結果になるのではないかと思いますね。
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