デンジャーゾーンに踏み込んだ台米日

今日はこの話題です。
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1.ウクライナを巡る日本の地政学的な4つの論点


昨日のエントリー「ウクライナ敗北なら世界大戦」で、HY様から頂いたコメントが興味深かったので、お返事を兼ねてエントリーさせていただきます。

件のHY様のコメントから筆者なりに論点を拾いましたけれども、おおよそ次の様になるかと思います。
・「NATOの東方拡大が戦争をもたらした」という主張は、地政学において「ウクライナはロシアの勢力下にあるべき」という無根拠な前提に基づく偏った見方だ。
・地政学において日本はウクライナと似た立ち位置にある
・中国はアメリカの勢力下にある日本が許せない。
・ウクライナは対岸の火事ではない。
これらについて、考えてみたいと思います。


2.ウクライナと似た立ち位置にある台湾


地理上の位置では、仰るとおり日本もウクライナに似た立ち位置になると思います。ただ、国際的な勢力図を加味すると、ウクライナにより近いのは、台湾ではないかと考えています。

日本はアメリカと同盟結んでいますので、どちらかといえばNATOに属し、駐留米軍のいるポーランド、あるいはドイツに近いのではないかと思います。これに対して台湾は、公式に同盟関係を結んでいる国はありません。これは軍事同盟国を持たないウクライナと同じです。

ただ、中国が自国の一部だと喧伝しているにも関わらず、台湾政府は中国政府とは独立して台湾を統治し、政治体制も異なります。いわば事実上の独立状態に近いわけです。

5月30日のエントリー「台湾の国防体制と金門という名のドンバス」で取り上げたことがありますけれども、特に大陸に近い金門島が、ウクライナ東部のドネツク州やルハンスク州に近いとされていることや、今の台湾にとって、離島防衛の意義が低下しているという指摘があることなど、中国に対しアキレス腱を晒しているような状態であることも現実としてあります。


3.台湾は中国の勢力下にあるべきという前提


NATOのストルテンベルグ事務総長がロシアのウクライナ侵攻を招いたとするNATOの東方拡大についてですけれども、東アジアでそれに当たるものがあるとすれば、それは台湾の独立宣言がそれになるのではないかと思います。

HY様は、「NATOの東方拡大が戦争をもたらした」という主張は、地政学において「ウクライナはロシアの勢力下にあるべき」という無根拠な前提に基づいていると述べられていますけれども、台湾については中国の勢力下にある(中国の一部)、と中国自身が宣言しています。

独立国になるということは主権を持ち、独自で国益を追求できることになりますから、仮に台湾が独立国となった場合、国としての安全保障を考えると、普通に考えれば日米側に付くことになり、軍事同盟を結ぶことになるかと思います。畢竟、台湾にも駐留米軍基地が出来るでしょう。

ここまでいけば、東アジア版NATO(米豪同盟+日米同盟)の”西方拡大”といって良いかと思います。

2017年、ジョン・ボルトン元米国連大使は、「米国は台湾への軍事装備販売を増やし、米軍の台湾駐留によって東アジアの軍事力を強化できる……台湾は地理的に沖縄やグアムよりも東アジアの国や南シナ海に近い。この地域への迅速な米軍配備をより柔軟にする……日米関係を悩ます沖縄から、少なくとも一部米軍を再配置すれば、ワシントンは東京との緊張を緩和するのに役立つかもしれない……海洋の自由を保障し、軍事的な冒険主義や一方的な領土併合を防ぐことは、東アジアや東南アジアでの米国の核心的利益だ」と述べたことを考えると十分にあり得る話です。

その意味では台湾、あるいは北朝鮮もそうかもしれませんけれども、軍事的要素も加味した場合、中国にとって台湾は「緩衝地帯」であり、日米など西側諸国にとっては、中国の海洋侵略を阻む「盾」といえるかもしれません。

けれども、もし、台湾が独立して、駐留米軍が置かれるとなると、中国は自分の喉元に刃を突き付けられることになります。そうなったら、中国による台湾侵攻の危険が一気に高まることになります。

昔、筆者は台湾を独立国にさせて、日米でバックアップすればよいじゃないか、くらいに思っていたのですけれども、ウクライナ戦争を見て、今の台湾の「独立宣言」しない「大陸との特別な関係」という事実上の独立を維持しつつ、台湾海峡の安全を守るというスタンスがベストではないかと思うようになっています。

台湾独立は、中国が崩壊してからでよい。東欧諸国が民主化していったのもソビエトが解体してからですし、台湾は既に民主政体になっています。


4.中国はアメリカの勢力下にある台湾を許さない


仮に、台湾がウクライナの立ち位置であり、独立宣言がNATOの東方拡大に当たるとするならば、台湾有事など直ぐに起こせることになります。なぜならウクライナの例に倣って、アメリカが台湾を国家と認める一方、台湾有事に軍事介入しないと宣言すればいいからです。

まぁ、現実にそれをやれば、流石に台湾を見捨てることが誰の眼にも明らかになってしまいますし、同盟国の信頼を失うことになりますから、そこまで露骨なことはできないし、やらないとは思いますけれども、アメリカがやらずとも、今の中国の動きを見るまでもなく、今や、台湾有事の危険が高まっていることを疑う余地はありません。

日本が中国の侵略を受けなかったのは、日米同盟(東アジア版NATO)があったからだというのは論を待ちませんけれども、アメリカが、台湾関係法に基づいて兵器供与はしても、防衛義務が定められていない台湾は微妙な立ち位置にあります。

故に、建前では「大陸との特別な関係」を標榜しつつ、裏で、事実上の軍事同盟に近い協力・支援をするのみならず、台湾防衛の意思を明確にすることで、中国に台湾侵攻を躊躇させると同時に、消耗を強い続けるというやり方が現時点では最適ではないかと思います。

その意味では確かに、ウクライナは対岸の火事ではありませんし、日本は「デンジャーゾーン」の真っただ中にいるのだという認識を強めなければならないと思います。


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この記事へのコメント

  • HY

     この度は私ごときのコメントのために記事を書いて下さりありがとうございました。
    2023年09月21日 21:42
  • yoshi

    ランキング押しておきました。応援しています。
    2023年09月22日 13:18