経済学者と国民と板挟みの政府

今日はこの話題です。
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1.令和6年度税制改正に関する提言


9月12日、経団連は、「令和6年度税制改正に関する提言~持続的な成長と分配の実現に向けて」を公表しました。

提言の目次は次の通りです
Ⅰ)はじめに

Ⅱ)企業の持続的な成長に向けた税制
1.法人税制
2.その他

Ⅲ)サステイナブルな経済社会の実現に向けた税制
1.分厚い中間層の形成に向けた税制
2.GX推進に向けた税制
3.自動車関係諸税

Ⅳ)国際課税(企業のグローバル活動を下支えする税制等)
1.経済のデジタル化に伴う課税上の課題への解決策「第1の柱」、

Ⅴ)「第2の柱」の円滑な実施等
2.「第2の柱」の国内法制化
3.外国子会社合算税制の見直し
まぁ、経団連の税制提言ですから企業目線になるのは当然なのですけれども、19日に行われた会見で経団連の十倉会長は、税制改正提言について、次の主旨を述べています。
【税制改正提言】
〔経団連が令和6年度税制改正に関する提言(9月12日公表)において、社会保障財源としての消費税の引き上げを中長期的には有力な選択肢の1つとしていることについて問われ、〕先般のこども未来戦略会議でも申し上げたとおり、少子化対策として取り組むべき中長期的な課題の1つは、全世代型社会保障制度の構築により、若い世代に蔓延する漠然とした将来不安を払拭することである。少子化・高齢化が加速するなか、現行の社会保障制度がいずれ成り立たなくなることは明白である。社会保険料は現役世代に負担が偏重する性質のものであるため、社会保障財源を社会保険料だけに求めていては賃上げの効果が減殺される。社会保障制度の持続可能性を堅持するためには、経済情勢を踏まえながら、基幹3税(消費税、法人税、所得税)などを含めた、税と社会保障の一体改革を行う必要がある。

経団連は、こうした考えをわかりやすく、粘り強く国民の皆様に発信していきたい。

〔消費増税は、経済基盤の弱い層にとって将来不安を増長させるのではないかとの指摘を受け、〕消費税には確かに逆進性の欠点があるが、社会全体で広く薄く負担できるという利点もある。経団連は、今後のわが国の人口構成も踏まえたうえで、様々な税目を議論の対象とし、応能負担のあり方を検討すべきであると提言している。
この会見で十倉会長は、「若い世代が将来不安なく、安心して子どもを持つには全世代型の社会保障改革しかない。それには消費税などの増税から逃げてはいけない」などと発言し、ネットの一部で「国民を殺す気か」などと炎上しているのですけれども、経済ジャーナリストの荻原博子氏は「消費増税すれば、お金のない若い人の負担も増え、結婚や子供をつくることに後ろ向きになりかねない。企業は日本経済を盛り上げる役目もあるのに、自分たちのことしか考えず、消費を冷え込ませるような提言をするのは逆行する動きにみえる。企業の少子化対策としては、従業員の奨学金の返済を肩代わりするなど他の施策もあるはずだ。岸田文雄政権も企業ではなく、国民に目を向けるべきだ」と指摘しています。


2.財政赤字の原因は何だと思いますか


5月15日、東京財団は「経済学者及び国民全般を対象とした経済・財政についてのアンケート調査」を行いました。

東京財団は、このアンケートを行った動機について、次のように述べています。
東京財団政策研究所「多様な国民に受け入れられる財政再建・社会保障制度改革の在り方」研究プログラム(代表:佐藤主光研究主幹)では、「経済的実現可能性」と「政治的実現可能性」との両立の観点から、財政・社会保障制度のありかたについて検討してきた。

財政再建及び社会保障制度改革は、数十年先を見越した厳格な推計をベースとした、経済的に実現可能なものでなければならない。同時に、日本は憲法で財政民主主義を採ることを明記しており、民主主義の究極の担い手である国民に受容される、政治的に実現可能なものでもなければならない。

少子高齢化が進むわが国の厳しい現状を踏まえた、経済的に実現可能な財政再建策、社会保障制度改革案は、経済・財政学者などにより提案されてきた。しかし、それらの多くは政治的に黙殺されてきた。改革案に含まれる増税、年金改革といった政策が政治的に不人気とされるからだ。一方で2022年の英国トラス政権が実施しようとしたような財政バラマキ策は、政治的実現可能性はあっても経済的実現可能性を失わせるため、市場からときに強い反発を受ける。

経済的実現可能性と政治的実現可能性の領域はどこで重なり合うのか?研究の一環として、われわれは経済学者及び国民双方に対して、経済・財政について、共通の質問項目13問を含むアンケート調査を行った。本稿は踏み込んだ分析に立ち入ることなく、その結果の紹介に主眼を置く。
経済的な制度改革案は往々にして、政治的問題で実行されない点に着目し、経済的実現可能性と政治的実現可能性の両方が満たされる領域があるのかを調査するという面白い着眼点のアンケートです。


3.財政再建は必要だが方法論が異なる


このアンケートでは、経済学者と国民の両者に13の共通の設問を投げかけ、その上で、設問別に両者の乖離度を測っています。

共通の設問は次の通りです。
Q2 :日本経済の将来的な成長可能性についてのお考えを教えてください。2030年度までを念頭にお答えください。
Q3 :財政政策についてお伺いします。他の条件が変わらない場合、あなたは現時点で日本が財政の歳出規模をさらに拡大すべきだと思いますか。以下の中からご自分の考えに最も近いものを1つ選んでください。
Q4 :日本の財政状況についてお伺いします。財政赤字についてどのようにお考えですか。以下の中から、あてはまるものを1つ選んでください。
Q5 :あなたの消費税に対するイメージとしてあてはまるものを2つまで選んでください。(2つまで)
Q7 :あなたは、他の条件が変わらないとした場合、日本は今後、消費税率を引き上げるべきだと思いますか。以下の中からご自分の考えに最も近いものを1つ選んでください。
Q8 :社会保障等、今後の財政支出の財源をどこに求めるのが適切だとお考えですか。あてはまるものを2つまで選択してください。(2つまで)
Q10:日本の金融政策についてお伺いします。これまで日本銀行が取ってきた非伝統的金融政策(金融緩和)は、低迷脱却に総体としてどの程度効果を発揮したとお考えでしょうか。以下の中からご自分の考えに最も近いものを1つ選んでください。
Q11:円安やエネルギー価格の上昇などにより物価は上昇基調にありますが、その中で財政・金融政策はどうあるべきと考えますか。以下の中からご自分の考えに最も近いものを1つ選んでください。
Q12:国民負担と歳出改革との関係について、今後政府はどのような方針で臨むべきだと思いますか。あてはまるものを1つ選んでください。
Q13:財政赤字の原因は何だと思いますか。あてはまるものを2つまで選択してください。(2つまで)
Q14:このまま国の借金が増加の一途を辿るとして、将来的に何が起きると思いますか。
Q15:福祉のサービス水準と負担のあり方について、あなたはどうお考えでしょうか。以下の中からご自分の考えに最も近いものを1つ選んでください。
Q16:日本経済において成長と分配(格差の是正)のどちらを重視するべきだとお考えになりますか。最もあてはまるものを選んでください。
そして、その乖離度は次の図の通りです。

東京財団は、このアンケートについて、全体として、経済学者と国民の意識の乖離は、当初想定していたより小さかったとしながらも、設問によって乖離度は大きく異なるとし、乖離度の小さかった設問と大きかった設問について詳述しています。

その中で乖離度の小さかったQ15およびQ4と、乖離の大きかったQ7およびQ13について引用すると次の通りです。
(1) 乖離の小さかった設問

経済運営の基本的方向性
経済学者と国民の意識の乖離は全般的に小さいことが明らかとなった。福祉水準と負担との関係についての問い(Q15)の乖離度は、全質問中で最も小さかった。経済学者の66.7%、国民の56.6%が「中福祉・中負担」が望ましいと答え、他を大きく引き離した。成長と分配の関係についても(Q16)全体的な方向性については共通性が見られた。ただ、経済学者の方が国民よりも成長を重視する傾向がある。

財政赤字問題への認識
日本の財政赤字についての問い(Q4)の乖離度は、全設問中2番目に小さかった。経済学者及び国民の双方とも、財政赤字は「大変な問題」と答えた者が最も多かった(経済学者 44.3%, 国民 40.4%)。「大変な問題」「ある程度問題」と答えた割合は、経済学者が86.5%、国民が65.5%だった。一方で、「まったく問題ではない」「あまり問題ではない」と答えたのは、経済学者の6.7%、国民の11.6%に過ぎない。

さらに、国の借金がこのまま増えた場合にどうなるかという問い(Q14)について、経済学者及び国民の双方が最も多く選んだのは「増税や歳出カットなど厳しい財政再建を強いられる」という回答だった(経済学者 44.3%, 国民30.5%)。

近年、財政赤字や公的債務を問題視しない現代貨幣理論(MMT)などの考えが、一部の政治家や論者の間で強く支持されるようになっている。しかし今回の調査結果を見る限り、経済学者・国民のいずれにも、今のところはさほど浸透していない。両者の多くは、財政赤字の問題を深刻に捉え、借金が増え続けた場合、厳しい財政再建が必要となると考えている。


(2) 乖離の大きかった設問

消費税についての認識
すでに見たように、経済学者と国民の間では、経済運営の基本的方向性のあり方、日本の経済・財政の現状認識、財政赤字に対する問題意識、などにおいて両者の意識の乖離は小さい。しかし、問題の要因や対応策(用いるべき政策ツール)となると乖離は大きくなる。特に両者の乖離が大きかったのが、消費税に対する意識である。

経済学者と国民との間で最も乖離度の高かった設問は、消費税の引き上げについての問い(Q7)である。経済学者、国民の双方とも現状維持と答えた者は多かったが(経済学者 30.9%, 国民 40.9%)、他は、税率引き上げ(経済学者)の方向と、税率引き下げ・廃止(国民)の逆方向に大きく分かれた。経済学者の選択で最も多かったのが「15%への引き上げ」(経済学者 31.9%, 国民 5.4%)であり、全体では経済学者の56.7%が消費税の引き上げを選んだ。これに対して国民で消費税引き上げを選んだのは7.8%に過ぎない。対照的に、国民の44.2%は消費税の廃止あるいは消費税率引き下げを選んだのに対し、経済学者でそれらを選んだのは8.5%である。

消費税のイメージ(Q5、2つまで選択可)でも、経済学者と国民の認識は大きく分かれた。経済学者の選択で最も多かったのは「安定財源」(60.3%)であり、以下、「投資や雇用への歪みが少なく効率的」(35.1%)、「世代間で公平」(34.0%)とプラスのイメージのものが続く。これに対して国民の最も多くが選んだのは「景気に悪影響」(44.1%)であり、次が「逆進的で不公平」(23.8%)とマイナスのイメージが上位を占めた。3つ目に多かったのが「安定財源」(22.0%)である。

財政赤字の原因
財政赤字の原因についての問い(Q13, 2つまで選択可)でも、経済学者と国民との間に大きな意識の乖離が見られた。経済学者が最も多く選んだのが「社会保障費」(72.0%)であり、次が「政治の無駄遣い」(41.1%)、その次が「公共事業」(19.5%)となる。これに対して国民に最も選ばれたのが「政治の無駄遣い」(71.5%)であり、次が「高い公務員の人件費」(40.4%)、さらに「社会保障」(17.5%)となる。「高い公務員の人件費」は、全設問の全選択肢中で経済学者—国民間の意識の乖離が最も大きかった選択肢である。経済学者でこの選択肢を選んだのは1.7%に過ぎない。

少子高齢化が進む日本の現状、社会保障費は、削減どころか現状を維持することも非常に困難であり、今後も大きく増加していくことが予想される。そのため、経済学者のように社会保障費が財政赤字の最大の原因と考えれば、それを賄う大きな財源を、消費税など他に求めることが必要となる。政府の無駄遣いの削減や公務員の人件費削減では、規模的に社会保障費は賄えないというのがおそらく多くの経済学者の考えであろう。

これに対して、国民は「政府の無駄遣い」や「公務員の人件費」などが財政赤字の主因と認識しており、であれば、無駄遣いの抑制や公務員の人件費削減などの歳出削減により、財政赤字問題には対応できると考えている可能性がある。こうした財政赤字の原因についての認識の違いも、消費税に対する認識の違いに結びついていることが推察される。
このように、国の借金については、国民も経済学者も財政再建が必要と考え、MMTは浸透していないとの結果となっています。一方、財政赤字については、経済学者が社会保障費に問題があると答えたのに対し、国民は政治の無駄遣いが問題だと考えているという乖離が見られています。

つまり、国民も経済学者もどちらも、財政再建は必要だとしながらも、その方法として、社会保障費改革か政府の無駄遣いを無くすかという方法論に違いがあるといえます。

その意味では、冒頭で取り上げた「税と社会保障の一体改革」を訴えている経団連の税制改正に関する提言は、このアンケートでいう経済学者寄りの回答ではないかと思います。


4.天下りで自分たちの利益を貪っているのではないか


この東京財団のアンケートで、消費税や財政赤字について、経済学者と国民との間で乖離が大きかったことについて、経済ジャーナリストで千葉商科大学教授の磯山友幸氏は次のように述べています。
なぜこんな意識の乖離が起きているのだろう。少子高齢化で社会保障費が増え続けていることを国民が知らないはずはない。単に誤解していると考えるのは早計だろう。それよりも政治家や官僚の姿勢に問題があると感じているに違いない。

というのも、国民の多くは「社会保障費」を賄うために負担増を強いられてきた、という思いがある。財務省が発表している国民負担率(国民所得に占める税と社会保障負担の割合)を見ると、「社会保障負担」は1970年代からほぼ一貫して上昇を続けている。1970年度に5.4%だった社会保障負担は2021年度19.3%にまで上昇した。2000年では13.0%だったので、この20年の上昇率も大きい。給与袋を開いて、厚生年金や健康保険料の引き去り額がどんどん大きくなっていることを実感してきたのだ。

また、1980年代から2000年頃にかけては所得減税などで低下していた「税負担」も2000年以降は増加に転じている。消費税率の相次ぐ引き上げは「社会保障財源を賄うため」と説明されてきた。つまり保険料としても、税金としても、社会保障費は応分の負担をしてきたと国民は感じているのだろう。それに比べると、政治の無駄遣いは酷過ぎるということなのではないか。

そんな意識が昨今の政治情勢にも跳ね返っているのではないか。日本維新の会が躍進しているのも、財源確保を先送りしたまま歳出拡大に走る政府・自民党の対抗軸として批判票の受け皿になっているのだろう。

旧民主党が政権を奪取したのも、政官財の利権構造による政治の無駄遣いに国民が反発したことが大きかった。「事業仕分け」などによる無駄の撲滅を訴えたが、政権を取ると「ばらまき」を優先する結果になり、国民の失望を買ったということだろう。経済学者も4割以上の人が「政治の無駄遣い」を挙げており、歳出改革を行わなければ財政赤字は収まらないという点では一致している。

もちろん、経済学者が言うように社会保障費が最大の赤字要因だという立場にたてば、年金支給開始年齢の引き下げや、医療費の自己負担割合の引き上げなどが必要になる。そんな痛みをツケ回しされるのは御免だという国民側のエゴ的な部分がもちろん無いわけではない。

最大の開きがあった公務員人件費はどうだろう。数字を見ている経済学者は、公務員人件費が財政の大きな割合を占めているわけではないことを知っている。一般会計予算114兆円のうち、国家公務員の人件費は5.3兆円と5%に満たない。そのうち2.2兆円が自衛官や裁判所職員などの人件費である。行政機関だけで見ると30万5000人が働いているが、人口比にすれば他の先進国に比べて人数も多いとは言えない。つまり、人件費が財政赤字の原因だということにはならないというのが、数字から見た場合の結論だ。経済学者はこの筋に忠実な答えをしているわけだ。

国民の多くは国家公務員の人件費総額がいくらかなど知らないので、無知のなせる回答だと切り捨てることも可能だ。だが、国民はさらに深く「感じて」いるのではないか。結局、さまざまな政治の無駄遣いも、それを御膳立てしている官僚のせいではないのか。外郭団体に無駄な予算を付け、天下りで自分たちの利益を貪っているのではないか。

小泉純一郎内閣や安倍晋三内閣では、「身を切る改革」が繰り返し叫ばれた。政治家自身、あるいは公務員制度改革で、永田町や霞が関の無駄を排除していく。まずは政治家と官僚が姿勢を正すことから財政再建は始まると訴え、国民は高い支持率を与えたのではないか。岸田内閣になって「改革」や「身を切る」という言葉はほとんど聞かれなくなっている。

岸田内閣は公務員制度改革にはまったく関心を示さず、むしろ公務員給与の引き上げや、定年の延長などに理解を示す。天下りにも寛容だと霞が関では見られてきた。

現役官僚が天下りの斡旋を行うことは法律で禁じられているが、役所を離れた大物OBが中心になって天下り先を調整していることは公然の秘密だ。国土交通省の元事務次官で東京メトロの会長に天下っていた本田勝氏が、東京メトロとは何ら業務上の関係がない民間企業、空港施設の役員人事に介入、国交省出身の副社長を社長にするよう要求していたことが朝日新聞の報道で明らかになった。

当然の事ながら国交省の現役官僚たちは「知らなかった」と口を揃えたが、公表前の人事情報が省外に多数メール送信されていたことが明らかになった。結局、空港施設の副社長も本田会長も辞任に追い込まれたが、ほとぼりが冷めれば「国交省の利権」を人知れず復活していくのだろう。

小泉改革を受け継いだ第1次安倍内閣は、天下り規制に踏み込んだ。成田空港を運営していた新東京国際空港公団のトップは運輸省(国交省)OBの指定席だったが、株式会社化した成田国際空港の社長には国交省の抵抗を押し切って住友商事の副社長を務めた森中小三郎氏を据えた。2012年にはJR東日本の副社長だった夏目誠氏に引き継がれたが、2019年には国交省で航空局長などを務めたOBの田村明比古氏が就任、国交省は失地を回復している。

そうした官僚のやりたい放題に国民の厳しい目が注がれているということだろう。もともと官僚の給与水準は「民間並み」が基本ということになっているが、幹部になれば別枠で、局長の年収は2000万円を超えるとされる。天下れば高給のほか高額退職金が待っており、かつての役人天国が復活しつつある。

政治家も官僚も、自らの利権を拡大するのではなく、身を切る改革に挑んでこそ、財政再建が達成できる、と多くの国民は考えているのだろう。ちなみに同じ調査で、消費税については経済学者の半数以上が税率を引き上げるべきだとしたが、国民は4割が現状維持、4割が税率引き下げか廃止を求めていた。政官が身を切らずに国民に負担を押し付けるのはけしからん、ということだろう。
磯山氏は「さまざまな政治の無駄遣いも、それを御膳立てしている官僚のせいではないのか。外郭団体に無駄な予算を付け、天下りで自分たちの利益を貪っているのではないか」と述べていますけれども、筆者もこの見方は当たっていると思います。


5.板挟みの政府


9月19日、岸田総理は、アメリカ・ニューヨークで行われた国連総会の一般討論演説を行い、「核兵器のない世界」に向けた現実的で実践的な取り組みを強化すると表明。核軍縮の議論促進を支援するため、海外の研究機関・シンクタンクに30億円を拠出すると明らかにしました。

自民党関係者は、「岸田首相は唯一の被爆国である日本の広島県出身ですから、核兵器廃絶への思いは強いものがあります」と説明していますけれども、国民からは「またバラマキかよ」と批難の声があがっています。

ニュースサイトのコメント欄では「本人は、何かをやったつもりで満足だろうが、国民からすればこんな得体の知れないものに、何の説明もなく金を出すだけの岸田には怒りを覚える」、「今後5年間で防衛強化費に43兆円が必要、いろいろかき集めても1兆円が足りないので、国民の皆さん、増税をよろしく。これが現世代の責任でもあると確か言っていたよね。お金がないはずなのに、一方で海外には気前良くポンポンとお金を出す」、「増税メガネ、話を聞いてもらうがためのバラマキ30億円。成果無し。日本国民のための税金をなんだと思っている。無駄遣いもいい加減にしろ。そこまでして目立ちたいのなら私費でやってくれ」、「またしても海外に現金拠出かい。結局岸田総理は自国民には興味ないんだ 日本の国民がどれだけ苦しんでいるのか全く興味ない!日本人をどの様に考えているのか?理解に苦しむ人だよ!」などと書き込まれています。

岸田政権発足後、海外への資金援助が増えているのは事実です。主だった拠出だけでも、インドに約5兆円、途上国のインフラ投資に約9兆円、アフリカに約4兆円、フィリピンのインフラ整備に6000億円、インド太平洋地域に約10兆円などなどです。

国民が政府の財政赤字の原因が税金の無駄遣いだと感じているのに、身を切る改革についての言及もなく、自国ではなく、他国への援助ばかり目立つのでは、国民の不満は溜まる一方です。

財界や経済学者など識者からは、税と社会制度改革を求められる一方、国民からは税金の無駄遣いやバラマキを止めろと突き上げられる、ある意味、板挟みにあっているといえるのかもしれません。

けれども、磯山氏がいうように、岸田内閣になって「改革」や「身を切る」という言葉はほとんど聞かれなくなっているのであれば、国民の不満は溜まりこそすれ減ることは望めません。

仮に、秋の経済対策で国民へのなんらかのバラマキ政策が打ち出されるとしても、その中身にも拠りますけれども、それだけでいつまでも黙らせるのは難しいのではにないかと思いますね。


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