中国による台湾への軍事圧力と融合発展計画

今日はこの話題です。
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1.中国軍は9月まで統合軍事演習を行っている


9月24日、台湾国防部は中国・福建省の沿岸部にある東山大テイ湾の周辺に中国軍の地上部隊が集結する動きを確認したと発表しました。

台湾国防部は、海上だけでなく衛星や哨戒機を使い、対岸の中国軍の地上部隊の動向も常時監視していると明かし、中国軍を牽制。台湾の邱国正国防部長は「最近の中国軍の行動は異常だ」と話し、警戒を強めています。

そして、遡ること21日夜、台湾国防部は、この日のべ20機を超える中国軍機が台湾周辺の空域で活動し、一部は台湾海峡の「中間線」を越えるなどしたと発表。更に、「中国のロケット軍や、福建省の大テイ湾付近の地上部隊などの動向を同時に監視している」と述べました。

これについて、翌22日台湾の邱国正国防部長は、報道陣の質問に対し「最近の敵情は確かに普通ではない……今のこの状況はすでに長く続いている。われわれの検討判断によれば、中国軍は9月まで統合軍事演習を行っている。それには陸、海、空の3軍と、水陸両用部隊や陸軍航空部隊が含まれている」と、中国軍の動向を把握していることを強調しています。

台湾国防部は、毎朝ほぼ決まった時間に、直近の24時間に確認した中国軍の航空機や艦艇の数を発表するほか、台湾に接近する軍用機が多いなど特異な動きが見られた場合は臨時に発表しているのですけれども、今回のように中国軍の地上部隊が配置されている場所を名指しして警戒を示すのは異例のことです。

これについて、台湾の中央通信は、複数の専門家の話として、中国軍の部隊が比較的大規模に集結した可能性のほか、中国軍の細かな動向を監視できていると台湾の市民に示す意図や把握している情報をあえて開示して中国軍の動きを抑止するねらいがあるといった見方を伝えています。


2.アメとムチを使い分けたい中国 


このように中国は台湾に対し、軍事的示威行動を行っています。

一方、中国の本音は軍事侵攻ではない、という見方もあります。

ジャーナリストの長谷川幸洋氏は、24日、夕刊フジのコラムで次のように述べています。
中国が17日から18日の24時間に、延べ103機もの軍用機を台湾周辺の上空に飛ばした。近年では、過去最多だ。翌19日にも、延べ55機の軍用機を出動させた。一体、中国の意図は何なのか。

これだけ見ると、いまにも人民解放軍が台湾に攻め込んでくるように見えるが、実は、そうとも言えない。中国は直前の12日、軍事的威嚇とはまったく正反対の平和的な「台湾統合プラン」を発表しているからだ。

計画は、中国沿岸部の福建省を台湾との融合を図る「モデル地域」に指定し、中国との同化を目指す台湾企業や市民を優遇する21項目の政策を掲げた。

例えば、福建省に投資した台湾企業は、中国の証券取引所に上場できるようにする。経済の融合を後押しする基金を設立する。台湾市民に住民サービスへのアクセスを保証し、子供たちも福建省の学校に入れるようにする、といった具合だ。

そんな中国のプランを台湾の人々が歓迎するかどうかは、まったく別の話だが(実際、台湾政府は拒否した)、中国にとっては、これが「アメ玉」を意図しているのは間違いない。中国は「アメとムチ」を使い分けて、台湾を何とか屈服させたいのだ。

私は、せっかくアメを用意しながら、直後にそれを台無しにするような大規模演習を展開するところに「習近平氏の焦り」を感じる。習氏の本音は武力侵攻ではなく、できれば「平和的手段で統一したい、と思っているのではないか」とみているからだ。

なぜか。

まず、「平和的統一」であれば、米軍が介入しにくい。

1979年に施行された米国の台湾関係法は「平和的手段以外によって台湾の将来を決定しようとする試みは、西太平洋の平和と安全に対する脅威であり、米国の重大関心事」と規定している。

ジョー・バイデン政権は「台湾は米国の利益を守るうえで、決定的に重要」と台湾の戦略的重要性を強調しているが、法的には「米国は平和的統一に反対できない」のだ。

それはそうだ。たとえ、見せかけにすぎなくても、台湾自身が中国との統一を望むなら、いくら米国にとって台湾が重要でも、反対しにくい。

次に、中国自身の国力が弱っている。

不動産バブルの崩壊や新型コロナ政策の失敗、外国企業への弾圧などで、経済が上向く見通しがない。加えて、先週のコラムで指摘した外相更迭に続く国防相の失踪や、相次ぐ軍幹部の粛清が示すように、習体制自体が大きく動揺している。

そんななかで、武力侵攻に動く体力があるかどうか。「だからこそ、暴発する危険がある」という見方もあるが、私はそうだとしても、大規模上陸作戦ではなく、特殊部隊による内乱を装った攪乱作戦ではないか、とみる。それを「平和的統一」と強弁して、米国の介入を防ぐのだ。

こうした偽装作戦は、2014年のロシアによるクリミア半島侵攻でも実行された。

台湾は来年1月に総統選を控えている。世論調査では、現状維持を訴える民進党の頼清徳候補(副総統)が優勢だ。それも、中国の焦りを加速させているに違いない。

ただ、いくら「偽りの平和的統一」であっても、台湾が中国に奪われる事態に変わりはない。日本は中国の狡猾さに警戒すべきだ。
このように長谷川氏は、アメリカの介入を難しくすることと中国自身の国力が弱っていることから、中国の本音は台湾の「平和的統一」にあるのではないかと述べています。


3.福建と台湾の融合発展計画


長谷川氏はその証拠として、中国が12日に発表した平和的な「台湾統合プラン」を挙げ、その計画は、中国沿岸部の福建省を台湾との融合を図る「モデル地域」に指定し、中国との同化を目指す台湾企業や市民を優遇する21項目の政策を掲げていると述べていますけれども、この計画について、中国国営中央テレビ(CCTV)は、党中央委員会と国務院は「海峡と両岸の総合発展の新たな道を模索し、台湾工作で独特の役割を果たすことを支援する」と伝えています。

これを受け、福建省のモデル地区建設の関連当局である中国国家発展改革委員会は会見を開いています。

この中で、委員会の叢亮副主任は、「我々はともに努力し、両岸の人々が高速鉄道で台湾海峡を気軽にまたぐ夢を早期に実現させなければならない」とし、モデル地区の開発は「平和統一の基礎を強固にするための重要な措置だ」と強調しました。

そして、人の交流と往来を促進するために両岸を結ぶ高速鉄道を早期につなぎ、台湾の商品をユーラシア市場に届け、ともに利益を得られるよう促進すると説明。更に、クリーンエネルギー分野での協力や福祉・食品安全などの標準を共有することで、両岸の「融合」を推し進めたい考えを示しました。

今回の発表を受けて、関連する福建省企業の株価が13日に上昇。台湾島に最も近い中国の平潭にある国営企業、海峡創新インターネットは制限値幅いっぱいの20%高となっており、このプランは好感を持って受け取られたようです。


4.連携・恩恵・感情


もっとも、この福建省を台湾との融合を図るという構想は今になって急に打ち出されたものではありません。

その切っ掛けはもっと前にあります。

2019年3月10日、習近平主席は、福建省全国人民代表と会議を行っているのですけれども、習近平主席は「海峡両岸の融合発展について新たな道筋を模索する必要がある。両岸は経済と貿易協力の円滑化、インフラ施設の連結、エネルギーと資源の相互調達、産業標準の共通化を高めて、福建省を台湾同胞が大陸に入る際の最初の家にしてほしい」と述べ、「大陸の民衆に奉仕するのと同じように台湾同胞に福祉をもたらしていく。関連の措置を実行すると同時に、台湾同胞の声に耳を傾け、台湾の民衆にプラスになる政策や措置の更なる導入を引き続き研究していく」と表明しています。

そして、2021年3月24~25日にかけて、習近平主席は、福建省福州市を訪れ、都市建設、歴史文化街区の保護、企業のイノベーションの状況等を視察しているのですけれども、その際次の内容を述べています。
(1)新たな発展枠組の構築に融合する位置づけを探り、産業構造の高度化を図り、デジタル産業化を加速する。イノベーション支援に注力する。「一帯一路」共同建設に深く融合し、自由貿易試験区をよく運営し、高水準の開放型経済新体制を構築する。各方面の連携・恩恵・感情で融合を促し、海峡両岸融合発展の新たな道を模索する。

(2)郷村振興の推進を加速し、農業資源と気候の優位性に立脚し、特色ある優位産業を育成する。郷村建設行動の実施に着手し、農村の居住環境を改善し、生活と産業に適した美しい郷村を建設する。炭素排出量ピークアウト・炭素中立を、生態環境重視の省建設に組み込み、工程表を科学的に定め、人・自然が共生する現代化を建設する。
このように習近平主席は、台湾について「各方面の連携・恩恵・感情で融合を促し、海峡両岸融合発展の新たな道を模索する」と明言しています。

これを受け、それから6日後の2021年3月31日、国務院台湾事務弁公室の朱鳳蓮報道官は定例記者会見で、「われわれは習近平総書記が福建省を視察した際の重要講話の精神を深く貫徹し、海峡両岸が往来をもって融和を促進し、優遇することをもって融和を促進し、感情をもって融和を促進し、両岸関係の平和的発展、融合的発展を絶えず深化させていく」と述べました。

この往来、優遇、感情を持って宥和を促進(以通促融、以恵促融、以情促融)するというのは、まさに習近平主席が言った「連携・恩恵・感情で融合を促す」に対応しているのですけれども、これらについて、朱報道官は次のように説明しています。
「以通促融」:われわれは両岸の経済貿易協力の円滑化、インフラの相互連結、エネルギー資源の相互連結、業界標準の共通化を絶えず向上させ、金門、馬祖と福建沿海地区の通水、通電、通気などを推進し、両岸の往来を積極的に推進していく

「以恵促融」:われわれは『31条』、『26条』、『11条』、『農林22条』などの台湾とその住民に恵みをもたらす政策措置を実行しつづけ、台湾同胞の幸せを保障し、大陸で同等の待遇を享受する制度と政策を充実させ、台湾同胞と台湾企業が『第14次五カ年計画』に参画して新たな発展の枠組みに溶け込むことを支持し、台湾同胞に対して、新たな発展のチャンスをより多く分かち合えるようにしていく

「以情促融」:われわれは両岸の経済と文化の交流と協力を絶えず拡大し、中華の優れた伝統文化を共に伝承し発展させ、両岸の社会の基盤層と青少年の交流を強化し、同胞の連帯感を促進していく
翻って、今回の「台湾統合プラン」を見てみると、両岸を結ぶ高速鉄道を繋いで人の交流と往来を促進し、台湾市民に住民サービスへのアクセスを保証し、子供たちも福建省の学校に入れるようにする「以恵促融」や、台湾の商品をユーラシア市場に届けてともに利益を得られるようし、福建省に投資した台湾企業は、中国の証券取引所に上場できるようにする。経済の融合を後押しする基金を設立するといった「以恵促融」。そしてクリーンエネルギー分野での協力や福祉・食品安全などの標準を共有する「以通促融」と、2021年に打ち出された方針を踏襲していることが分かります、

ただ、福建省の沿海部に中国軍の地上部隊を集結させ、中国軍機を台湾周辺の空域で活動させるなど軍事圧力を掛けておきながら、感情でもって融合する(以情促融)とは何の冗談なのか。

言っていることとやっていることが違い過ぎて、本当にやる気があるのかよく分かりません。

まぁ、これが「中華式」なのかもしれませんけれども、台湾有事はいつ発生してもおかしくないと受け止め備えを進めておく必要があると思いますね。


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