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1.岸田総理の経済対策方針を評価した国民民主の玉木代表
9月26日、国民民主党の玉木代表が定例記者会見で、岸田総理が指示した経済対策を「率直に評価すべき点が多い」と称賛したと報じられているようです。
件の定例会見動画から、玉木代表が経済対策について触れた部分を抜き出すとおおよそ次の通りです。
・総合経済対策の策定について、総理から関係閣僚に対して指示が出た。税収増を国民に適切に還元すべきということを提案するなど、率直に評価すべき点が多いと思う。単に「称賛した」だけだと、諸手を挙げて賛成した風に捉えらえてしまうかもしれませんけれども、玉木代表が評価したのは、その大方針であって、その中身については、これからだと注を付けた点は見逃してはならないと思います。
・大きな方向性としては評価すべき点があると思うが、問題は中身なのでこれから具体的にこの内容がどうなっていくのかしっかり見ていきたい。
・国民民主党としても、速やかに経済対策を策定して政府にも申し入れをしていきたい。
・我々としてはですね今やるべき政策としていくつかの減税策も打ち出していきたい。
・一つは例えば、成長の成果である税収増で、増えているのは消費税と源泉所得税。つまり物の値段が上がってますからそこから生じる消費税収は増える。
・あと賃上げが行われていることによって、特に給与所得者の給料が増えればより高い税金がかかる税率の所得税かかるようになる。賃金の上昇率以上に所得税収とりわけ源泉所得税収が増えている。結果なかなか手取りが増えないということになっている。
・還元すべきは消費税と所得税だろう。
・まず消費税を少なくとも8%に減税して、例えば全ての財サービスを軽減税率の対象にすればきれいに8%に揃う。
・単一税率だとインボイスがなくても、仕入れ税額を確認できるのでインボイスがいらなくなる。
・2つ目は、賃金の上昇あるいは所得の上昇率以上に 所得税収が増えているので、これを還元する。
・税をかけている税率の範囲がだんだん上方に移っていくことによってたくさんの税金が国に入ってくるということになっている(ブラケットクリップ現象)ので、こういったことを是正するための所得税の減税。
・3つ目はいわゆるガソリン減税。トリガー条項の凍結解除あるいはもう抜本的に暫定税率及び二重課税の廃止という意味でガソリンの減税する
・4つ目公約にも書いているが、成長分野への投資を促していくためのハイパー償却税制。投資額以上の償却を認めて集中的に重点的に投資を拡大していく。
・以上4つぐらいの減税項目をパッケージにした経済政策をすれば成長率も向上につながるし、当面物価高に苦しんでいる中小企業も含め賃上げの環境は整っていくといくと思う。
・政府の大きな方向性としては評価をするが小粒になったりあるいは既存制度の焼き直しのようなことにならないように、それにふさわしい政策をやってもらいたい
というのも、玉木代表が指摘しているように、税収増の中味は消費税と源泉所得税であり、国民の側からみれば、現在は所得の上昇率以上に所得税が高くなっていて、結果、手取りが増えていないことになるからです。
玉木代表が「還元すべきは消費税と所得税」と指摘しているように、国民の側(向こう側)に直接還元せず、補助金だなんだと企業側(こっち側)に還元するようでは、国民の所得にまで反映するのに時間も掛かるし、額も目減りする可能性があります。
2.財務省は税収増の財源化を死んでも認めたくなかった
ただ、今回、岸田総理が税収増を還元する、と語ったことが画期的だと評価する人もいます。経済評論家の上念司氏です。
これについて上念氏は、自身の動画チャンネルで次のように述べています。
・キッシーがついに税収増を財源にすると口を滑らせてしまった(わざとやったと思う)上念氏は、これまで頑なに税収増を財源と認めなかった財務省を抑えて、税収増を財源にすると発表した岸田総理を評価すべきだと述べています。
・SNSで増税キッシーとか言ってなんか叩かれてるの結構気にして増税のイメージを払拭したかったみたい。
・生田さんのチャンネルに出られた木原誠二さんが、増税増税で言われてるからもう減税してそのイメージを払拭するしかないって話した。
・木原さん、その後官邸に言って、岸田さんを説得したかアドバイスしたかで今回税収増を財源にという話が出てきた
・まあこの減税がしょぼいとか本当の減税になってねえとか批判する向きもあるが、今回注目するのは、財務省並びにその周りにいる色んなポチどもが隠したかった税収増をついに財源としてですね認めざるを得なくなったというところがポイント。
・今まで経済成長すると税収増えるって当たり前。税収=名目GDP×税率なんです。
・どれぐらい増えるかというと名目GDPが1%増えると税収3%増えちゃうんです
・この間のね、GDP速報では名目GDP成長率12%だったんで、今年は36%税収増みたいなそんな話。
・まああくまでもね年率換算値なんで1年間そこで行くかどうかわかんないですけど、仮に名目成長で10%だったらね税収3割増えちゃうんですよ。
・そうすると大抵の問題解決しちゃうと思うんです。
・一昨年6兆増えました。去年7兆円増えました。今年8兆増えそうです。この3年間で21兆円も増えちゃうそうなんですよすごいでしょ。
・これに加えて、例の外為特会ね外国為替資金特別会計。円安の恩恵を思いっきり受けまして、含みが軽く20兆、多分今もっとあると思う。
・あれ一応ね130兆とかぐらいあってで100兆円ぐらい借金してる。がっちゃんこすると差し引き30兆残るみたいなそんな感じです。
・さらにコロナ対策で使わなかったお金が残ってます。
・こういうのもあるとまざっくりね60兆から70兆ぐらいのお金があって、これどこ消えたんだ。
・同じこと言ってた人結構いっぱいいて、この金のことを何にも言わないで、この間の加藤愛子さんが少子化対策結構だけどさ、財源をどうするかという問題について国民の皆様にご議論いただかないとって始まるわけですよ。それ増税認めろって話だろ。加藤愛子てめえ何言ってんだみたいな感じ。
・岸田さんはね実際にはそんな増税してないんですよ。まあせこい増税みたいなことあるんですけど、象徴的なのは金融所得課税。首相に就任当初金融所得課税だってぶち上げたら、てめーって言ってもう袋叩きになって引っ込めました。
・その後もう1回出てきてもう1回叩かれて引っ込みましたよねって感じで、結局やってない。
・やってないのにも、こいつは増税してるってイメージで、もう岸田と言えば増税みたいな感じになっちゃった。
・それは稚拙なアドバルーンの上げ方をするからだ。
【中略】
・財務省は、税収増を財源にするっていうことを頑なに拒否する。
・彼らのロジックは、それは偶然だ。あの安定財源としてはイマイチなんだ。来年も経済成長するとは限らないでしょみたいなそういう言い方。
・税収の公式もう一回よく見てみろよ。税収=名目GDP×税率なんだよ。名目GDPが伸びてれば基本的には税収も伸びていくわけだから何が問題なのって話。
・名目GDPだから、物価が上がっても増える。物価上昇率がプラテンしたら、経済成長っての安定財源になるわけ。
・経済が1%大きくなったら税収3%ずつ増えていくわけだから、何が問題なのって話。
・財務省は頑なにこの税収増を財源にすることを拒否してきた。
・あの財務省のポチのさ経団連の十倉会長っているでしょ。消費税増税とかのことばっか言ってる人。こういう人の口を借りて、増税増税増税言わせてた。
・それが今回、岸田さんねはっきりと、税収増を国民に還元っていうことで税収増というものが存在するということを公式に認めた。
・もともと税収増があることは認めてたんですけどそれを財源として、活用できるということを岸田さんがね認めた。
・これはねある種大きな転換点だと私は思う。
・まあ減税のねあり方についてはまあこれはいろいろしょぼいよ、しょぼいよで文句言いたい気持ちも分かります。
【中略】
・もう一気に減税して、もう全員に減税しちゃえば早いんですけどまあそこまではちょっと無理だったということ
・まあこういう補助金も組み合わせたねしょぼいやり方でも、そもそもこういうことしようともしてなかった。
・キッシーは基本的には官僚に飴、国民に鞭ってのが定常状態で、国民がうわーってそれてめえとか言って騒ぐとこうやって官僚に鞭打つんですよ。
・財務省としては、税収増が財源になるって事は死んでも認めたくなかったと思うんで、これを認めさせたっていうのはキッシーは頑張ったかなという風には思う
・まあ補正予算の審議でいろいろ出てくるんでしょうけれども、大盤振る舞いすると、後でがっぽり増税みたいな風に言ってたのをまあ今回は、税収増を財源にしますということを高らかに宣言した。
・どれだけ本気かっていうのはこの後の国会審議でぶち上げてはいいけど結局こんなんなんか。今までと何が違うんだと、なんかちょっと見え方変えただけじゃねえかみたいなことは、過去にキッシーは1回ある。
・定額給付金で、安倍さんとこ行って、定額給付金獲得しましたとか言ってね記者の前でイキってみたけど、上限が付いてて実際にそれやると2割ぐらいの人しかもらえないような変な条件ついててこんなんじゃだめじゃねえかって感じで全部ひっくり返された。
・最後公明党がねあの上限つけないで全員に出せって言って。キッシーはその前科あるのであの補助金方式で色んな条件グダグダグダグダつけて中々降りないみたいなことになると、国民もてめえと、また絵に描いた餅かとこんな予算作ったってまた使えねえじゃねえかみたいなことで怒ってしまうので、そういうことないように。
・まあとりあえずね一歩前進うんここはね素直に評価しましょう。
もっとも上念氏も、その国民への還元のやり方については、しっかり見る必要があるとしており、ここは国民民主の玉木代表と同じです。
3.真水15兆が合格点
一方、今回の経済対策の中味について、疑問を呈している識者もいます。嘉悦大学教授の高橋洋一氏です。
高橋氏は、自身の動画チャンネルで次のように述べています。ポイントだけ拾うと次の通りです。
・今回の経済対策について、岸田総理は政調で揉まずに先に言った。官邸主導でやりたいんだろう。高橋氏は、日本経済には未だ15兆円の需給ギャップがありそれを埋める必要があると指摘。真水で15兆円だせれば合格点だと述べています。
・スケジュール的には、政府与党と擦り合わせて、10月の中旬に補正予算を作り上げると思うが、これから中身がどんどんどんどん決まってって、だんだん小出しになっていく
・成長の結果である税収増っていうのを国民に還元したいという話があったが、大前提としてはいい話。税収増って国民に還元するという話と未来の投資するっていうのは悪いことじゃない。
・だったらどういう風にしたらこれが達成できるかは簡単に出てくる。
・税収どのくらいあのね増えてるかっていうとちょこっと計算しちゃうと15兆円ある。
・もちろん補助金を撒いて半減っていうのはあり得るが、一番簡単なのは取りすぎちゃったから返します。そうすると一番最初に15兆円ぐらいの減税が出てくる。
・今は需給ギャップが15兆円くらいある。政府はないというが、私が計算したところ、政府は2%サバ読んでた。
・更に、今年の最初の時にGDPも改定し、ここでも1%サバ読んだ。
・合わせて3%。これで丁度15兆円のギャップ。
・最初の15兆円減税で、ギャップを埋めると「NAIRU」といって、失業率が一番下がる状況になる。
・それ以降から賃金が上がってくるから、人への投資ができるようになる。
・政府の投資についての投資基準金利は4%で計算している。しかし今の低い金利に合わせて1%ぐらいにすると、政府投資はね3倍ぐらいになる。
・だから15兆円減税+政府投資の方もの見直しで3倍以上になるからこれで実は政策終わり。
【中略】
・今の需給から計算すれば真水15兆円、それにプラスして投資の国債で全部出来る。
・経済対策で真水で15兆円なら〇。真水が10兆円だったら△で、真水が5兆円だったら×。そういう評価になる。
9月19日、自民党の世耕参院幹事長は記者会見で、政府の経済対策について「GDPの3%前後の規模、少なくとも15兆円、できれば20兆円規模が必要だ……消費が外需頼みになっているうえ、世界経済の先行きが不透明だ。設備投資も弱い」と述べていますけれども、高橋氏の指摘をみると世耕参院幹事長の主張も納得できますし、あるいは、高橋氏からレクチャーなりなんなりを受けているのかもしれません。
4.ポイントは税収増の還元先と規模
岸田総理は経済対策5本柱の中で「持続的賃上げ」を挙げていますけれども、先の内閣改造で、「賃金・雇用担当補佐官」として、元国民民主党の矢田矢田稚子を任命しています。
これについて、先述の嘉悦大学教授の高橋洋一氏は、夕刊フジへの寄稿記事で次のように述べています。
政府が国民民主党に所属していた矢田稚子元参院議員を首相補佐官に起用したが、その背景や狙いは何か。このように高橋氏は、矢野氏の起用は、自民と国民民主との間で、擬似的政策連立を生み出すのみならず、将来の連立も有り得ると指摘しています。
まず首相補佐官(内閣総理大臣補佐官)だが、「国家として戦略的に推進すべき基本的な施策その他の内閣の重要政策のうち特定のものに係る内閣総理大臣の行う企画及び立案について、内閣総理大臣を補佐する」とされ、定員は5人以内と内閣法で定められている。
要するに、首相補佐官は、首相直属のスタッフであり、内閣官房長官以下の内閣官房のラインに対する指揮命令権を持たず、あるいはこれを補佐するものではない。
定数5人なので、これまでほとんどが現役国会議員であり、閣僚予備軍、準閣僚の位置づけだ。まれに、元官僚もいるが、ほとんど事務次官等経験者だ。
そうした狭き門に、元国民民主党の矢田氏が就任したので、筆者は驚いた。今回の岸田文雄首相の改造人事で一番のサプライズは、矢田首相補佐官といってもいいだろう。
矢田氏はパナソニック労組出身で、2016年の参院選で、民進党の公認候補として比例区で当選した。18年に国民民主党に参加して副代表を務めたが、22年の参院選では15万9929票を獲得しながら落選した。
野党出身の元国会議員が自民党政権の職に就いた例はある。民主党の鈴木寛氏だ。鈴木氏は経済産業省出身の官僚で、慶應義塾大学助教授を経て、01年の参院選で民主党の公認候補として東京選挙区で初当選した。2期12年の任期の中で文科副大臣を2期務めたが、13年の参院選で落選。その翌年10月に安倍晋三政権で下村博文文部科学相に請われ、文科省参与に就任し、15年から文科大臣補佐官を務めた。
もっとも、文科大臣補佐官と首相補佐官ではまったく格が違う。筆者は、官僚時代に総務大臣補佐官をやっているが、課長職相当だ。一方、首相補佐官は、事務次官以上だ。鈴木氏は、専門性を生かして文科行政を行ったが、その後は政界復帰することなく、学会に身を置いている。
矢田氏はどうなるだろうか。自民党にくら替えして政界復帰する可能性もなくはないだろう。それとも国民民主党でまた政界復帰するかもしれない。その場合、自民党と国民民主党の連立の可能性もある。
もちろん、政界復帰しないこともある。いずれにしても、今回の人事に対し国民民主党はエールを送っており、自民党も歓迎していることから、矢田氏は両党の架け橋を期待されているかのようだ。岸田首相は矢田氏を「賃金・雇用担当補佐官」に任命したので、国民民主党が掲げる「給料を上げる」政策そのものであり、疑似的政策連立にもなっているとみてもいい。
この人事でビックリ仰天したのは、公明党と立憲民主党、連合だろう。有能な人材が引き抜かれてしまった。地味であまり目立たないが、岸田首相も玄人好みのなかなかエグい人事を行うものだ。
冒頭で述べたように、国民民主の玉木代表は、税収増の還元先は「消費税と所得税」だと述べ、政策パッケージをまとめて提案すると明らかにしています。元国民民主の矢田氏が賃金・雇用担当補佐官として任命されたということはそれなりに国民民主の政策が取り入れられる可能性もあります。
これらのことを考えると、これから岸田政権が纏める経済対策について、税収増の還元先がどこになるか、そしてその規模は15兆円以上になるか、この2点がもっとも注目すべきポイントになると思いますし、上念氏ではないですけれども、国民がしっかりと監視して騙されずに声を上げていくことが重要になるのではないかと思いますね。
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