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1.チャイルドアビューズは認めない
ジャニーズ離れが加速しています。
帝国データバンクによると、テレビCMをはじめとした広告などにジャニーズ事務所のタレントを起用した上場企業のうち、9月20日時点で放映中のCMなどを「中止する」と表明した企業が、13日から11社増加し、17社にのぼることがわかりました。
また、契約期間満了後に「契約を更新しない」などの対応としたのは15社で、先週から5社増加。これで、ジャニーズ事務所のタレントを起用した上場企業65社の約半数の32社が「起用の見直し」をしたことになります。
更に、23日には、ジャニーズ事務所の所属タレントが主演する、来年放送の複数のドラマの制作がストップしていることが明らかになりました。テレビ各局から共演者側に撮影の延期や企画の見直しが伝えられているそうです。
共演者の事務所関係者によると「テレビ局から”スポンサーが難色を示している。ドラマのスケジュールをいったん白紙にする”と連絡が入った。局がかなり力を入れていた作品だったので驚いた」と語り、テレビ局関係者も「ジャニーズタレントが出演するドラマに広告出稿を控える動きが出ている」と述べています。
9月12日、経済同友会の新浪剛史代表幹事がジャニーズタレントを広告起用することを「チャイルドアビューズ(子供への虐待)を企業として認めることになる」と述べると、それ以降、大手企業を中心にジャニーズタレントの広告起用撤退が続出。民放関係者は「財界トップの一人の発言として強烈なインパクトだった。新浪ショックだ」と零したそうです。
現在、企業側は自社のCMを別のCMに切り替えている段階なのですけれども、一部ではACジャパンの公共広告にするケースも出ているそうで、今後はタレントが出演す番組やドラマへの提供を控える流れも出てくるのではないかとも言われています。
一方、経団連の十倉雅和会長は、各企業の対応を理解できるとしつつも「タレントの活躍の機会を奪うのは少し違うのではないか」と、救済策を検討すべきだと語っています。
これについて広告代理店関係者は「今の流れは企業やテレビ局の安易な責任逃れのようにも見える。10月2日の新体制発表で、ジャニーズ事務所がどのような報告をするか。被害者への補償の内容や再発防止にどれだけ真剣に取り組んでいるかが判断材料になってくる」とも話しています。
2.商品に罪はない
ジャニーズ問題発生このかた、「タレントに罪はない」というフレーズをよく耳にするようになりましたけれども、これは要するに所属タレントを「社員」とみるか「商品」とみるかの違いに起因する問題のように思えます。
9月24日、落語家の立川志らく氏は、この日、出演したフジテレビ系『ワイドナショー』で、「ジャニー喜多川氏がやったことは許されるものではない。みんなジャニーズをたたきますよね……ジュリーさんも、東山さんも、なんとなく知っていたけど言えなかった。我々メディアも言えなかった。じゃあ同罪じゃないか……今いる現役のタレントがCMを持てて、冠番組を持てて、とできるように、知恵を出し合うというのを芸能界がやってあげればいいのに、一緒になってたたいてどうするんだ、同罪だろと思います。ジャニーズのファンたちはみんな悲鳴をあげてる」とコメントしました。
更に志らく氏はSNSで「会社のトップが不祥事を起こしたら当然社員にも被害が及ぶ。ジャニーズのタレントだけ罪がないというのはおかしいという論調が出てきた。それに賛同する人が多いが、待てよ。……タレントは社員じゃない。言ってみれば商品だ。例えば美味しいパンでも、よく効く薬でもいい。愛用者が凄まじくいた。その企業のトップが不祥事を起こした。もうそのパンも薬も手に入らないのか!とファンは嘆いているわけだ。その商品で人生が救われた人も沢山いる。その商品が生き甲斐だという人もいる。だから商品には罪がないのだからこれらを今まで通り流通出来る方法はないのか、って事だ。スター達を商品に例えて申し訳ないがそう言えばわかってもらえるか」と述べた上で、「我々落語家、芸人、タレントもどこかに属している商品だ。無力な商品ではあるが仲間を助けたいと声をあげているのです。叩くなではない。それより同業者は現役タレントに手を差し伸べてあげなよ。名称を変えても叩く奴は叩く。新名称〇〇(旧ジャニーズ)とか書いてまるでX(旧Twitter)みたいにしていじめるんだろ」と力説しています。
この志らく氏の意見について、筆者にはその前半と後半で、違うことを言っているように見えます。
前半では「ジュリーさんも、東山さんも、なんとなく知っていたけど言えなかった。我々メディアも言えなかった。じゃあ同罪じゃないか」と罪があるとしながら、後半では「タレントは商品なのだから罪はない」論を展開しています。
前半は、タレントを含め関係者がジュリー氏の犯罪を咎めることができなかったという点で「罪」があるとしていますけれども、これは彼らを「社員」として見た場合の見解だと思われます。それに対し、後半では「タレント=商品」だと定義して論を展開するという、前半の論を後半で否定する訳の分からないロジックになっているように見えます。
これは、おそらく、ジャニーズ事務所、あるいは日本の芸能界という業態において、社員と商品の区別が曖昧であることに原因があるように思います。
3.自家製パンと卸売り
志らく氏はタレントを「パン」とか「薬」に喩えて、タレントには罪はない論を主張していますけれども、仮にこれが成立する場合があるとするならば、それは、パンならパンの製造元と販売店が完全に独立している場合ではないかと思います。
例えば、どこかの販売店が自家製パンを作って売っていて、その経営者が不祥事を起こしたとする、その場合、その店のパンに罪はあるのかないのか。確かにパンそのももには瑕疵はないかもしれない。けれども、そのパンを買うことは、不祥事を起こした経営者を間接的に是認することになってしまう。したがって、倫理的観点からも、その店のパンを買わないことで抗議する、というのには一定の妥当性があると思います。
また、そのパンを店に卸していた製造元も、その店にはパンをもう卸さないと宣言して別の店に卸すことで、不祥事を起こした店の経営者を支持しないと意思表示することだってできます。
けれども、そのパンが自家製パンであった場合は、そうした選択肢がない訳です。その店が、パンを売らないようにしない限り、意思表示すらできないのですね。
ジャニーズは、若い子をスカウトして、自分の事務所で踊りや歌を教えて、テレビなどに売り込んでデビューさせていく方式ですから、別のどこかからパンを仕入れるというよりは、自分の工場でパンを作る、自家製パン方式です。これが、ジャニーズ所属タレントをして、社員と商品の区別を曖昧にさせている原因ではないかと思うのですね。
これが海外、例えばアメリカでは、タレントは「個人事業主」という意識が確立されています。
こちらのサイトでは、アメリカのエンタメ業界における雇用関係を解説していますけれども、それによると、「アメリカでタレントは事務所に所属するのではなく、あくまでもマネージャーやエージェントと契約し、タレント、エージェント、マネージャー(法務・経理を主に扱うビジネス・マネージャーも含め)が三位一体となって活動している。これに加えて、タレントはいわば”外交業務”を行うパブリシスト、さらにタレントの身の回りの世話をするPAことパーソナル・アシスタントを雇う」という形式のようです。
アメリカのタレントはそもそも事務所に所属しておらず「社員」などではありません。
ここまではっきり独立していれば、パンに罪はない、タレントに罪はない、といっても通じるかもしれません。パンは事務所が小麦を捏ねて作っている訳ではなく、パン自身に販売許可を貰って売っているに過ぎないからです。
4.社員と商品そして独立
これだけ聞くと、日本の芸能界もアメリカ式のシステムに変えればいいじゃないかと思えたりしてくるのですけれども、実際はそう簡単な話でもないようです。
日本とアメリカ、両国のテレビ業界と芸能界の実情に明るいテレビプロデューサーのデーブ・スペクター氏は、日米の芸能界の違いについて次のように述べています。
・アメリカではドラマでもバラエティでも、よっぽどではない限り必ずオーディションで出演者が選ばれます。公平公正な選出が保証されており、キャスティング担当は監督やプロデューサーの意向しか考慮しません。日本のテレビ局のように“大手芸能事務所への忖度”など必要ないのです更に、デーブ・スペクター氏は日本の芸能事務所の美徳を挙げつつも「テレビ局と大手芸能事務所の”癒着”は撲滅すべきだ」とも述べています。これは先のパンに喩えると、美味しいと評判のどこかの自家製パンを、その店から優先的に卸してもらって販売する小売店のようなものでしょうか。
・ジャニーズ問題をワイドショーなどが長年、取り上げられなかったという圧力も、アメリカの場合はテレビ局の中で全部の番組を何もかも作っているわけではありません。仮にニュースとして報じるとすれば止めようがないのです。局がトップダウンで決める日本とは対照的です。また日本では給与制のタレントもいるほどですから、無理矢理にアメリカのシステムを取り入れると、日本の芸能事務所が持つ“美徳”も失われてしまいます。
・アメリカの芸能界は、売れないベテランや無名の新人に冷淡です。ところが、日本の芸能事務所は、所属タレントの全員に仕事を持ってこようと努力します。その一つが“バーター出演”でしょう。売れっ子を出演させる代わりに、ベテランや新人も押し込む。オーディションに比べると極めて不透明なキャスティングですが、ベテランには活躍の場を確保し、新人にはチャンスを与えます。『1人のスターだけでなく、所属タレントみんなを大切にする』という考えは、アメリカにはありません。まさに日本の美徳ですから、日本型のキャスティングを無理に変える必要はないと思います。
・そもそもジャニーズに限らず、大手芸能事務所はキャスティングに口を出しすぎです。自社のタレントを売り込むならまだしも、他社のタレントを妨害するのはもう止めるべきでしょう。ジャニーズの問題は様々な教訓をもたらしましたが、極端な利益優先主義は、結局、自分の首を絞めるだけです。他社のタレントを蹴落とし、NHKの紅白歌合戦に何組も出場させる貪欲さを当たり前だと考えていたのですから、しっぺ返しを食らって当然です。所属タレントの数で儲けるより才能持っている人の吟味。大手芸能事務所は売上を競うより、視聴者に優れた作品を届けるためにはどうしたらいいかを最優先に考えれば、おのずと芸能界も良くなっていくはずです。
小売店たるテレビ局にしてみれば、売れ筋の「自家製パン」を売ることができなくなるのは困るといって「パンに罪はない」という理屈を持ち出してして、なんとか売ろうとしているかもしれませんけれども、そもそも「自家製パン」という時点で色がついてしまっていることを忘れてはならないと思います。
その自家製パンを作っている店の経営者の問題を正さない限り、そこのパンは買わないという消費者が増えれば増えるほど、自家製パンの小売りとて出来なくなってくることはいうまでもありません。
余談ですけれども、先述した、経済同友会の新浪剛史代表幹事はサントリーホールディングスの社長でもありますけれども、ジャニーズ問題では、子供への虐待を企業として認めることは出来ないとする一方で、サントリーは中国事業の拡大方針を打ち出しています。
このことから、一部ネットでは、中国の人権問題、ジェノサイドは見て見ぬふりかとか、ダブスタだ、などと叩かれているようです。
まぁ、サントリーのウイスキーに罪があるのかないのか分かりませんけれども、ジャニーズ問題は芸能界における、社員と商品の関係および独立性の問題について一石を投じているのではないかと思いますね。
サントリーは、ジェノサイド国家中国での事業拡大について、どう考えているのか発信してほしいですね
— 前園 (@zuuutttonemui) September 24, 2023
新浪社長の記事を読んでも日中関係の懸念はしていてもジェノサイドについては触れられてもいませんでした
ジェノサイドを見ないふりしている企業に人権を語る資格はありません #さよならサントリー https://t.co/zUN2nO48vE
この記事へのコメント
ルシファード