引っ込められた低所得者向け給付措置

今日はこの話題です。
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1.検討に入ったという事実はない


9月28日、松野官房長官は午前の会見で、政府が総合経済対策に低所得者向け給付措置を盛り込む検討に入ったとの一部報道に関し、「検討に入ったという事実はない……物価高から国民生活を守り抜くとともに、構造的賃上げと投資の拡大の流れをより力強いものとし、人口減少を乗り越えるための社会変革を起動するものとする方針だ……真に必要で効果的な政策を積み上げるべく検討を進めている」と低所得者向け給付措置を否定しました。

この低所得者向け給付措置を行うという一部報道というのは、共同通信とNHKが報道したものです。

共同通信の報道は次の通り
政府、与党が食料品価格や光熱費の高騰による家計負担を軽減するため、低所得者向け給付措置を経済対策に盛り込む検討に入ったことが26日分かった。給付対象は、住民税の非課税世帯が軸となりそうだ。給付方法は現金や、使い道を一定範囲に絞るクーポンなどを念頭に詳細を詰める。経済対策は10月末をめどにまとめ、23年度補正予算案を編成する。

低所得の子育て世帯の支援を手厚くするかどうかも焦点となりそうだ。経済対策では地方経済の活性化も重視する。岸田首相は26日の閣議で、訪日客の拡大を含む観光立国の取り組みや農林水産品の輸出拡大に注力する考えを表明した。

政府は過去の物価高対策でも、低所得者向け給付を実施してきた。昨年9月に決めた現金給付では、住民税非課税の約1600万世帯を対象に1世帯当たり5万円を支給。国の支出決定額は8540億円に上った。

今年3月には自治体が3万円を現金などで給付することを想定し、地方自治体向けの交付金の支出を決定。同時に低所得の子育て世帯に子ども1人当たり5万円を支給するとした。
同じくNHKの報道は次の通りです。 
物価高を受けた新たな経済対策をめぐり、政府・与党は、食料品価格などの上昇による家計負担の軽減策として、給付措置の実施も検討する方針で、給付のあり方や対象など、具体化に向けた議論が行われる見通しです。

政府は、来月末をめどに新たな経済対策をまとめるため検討を本格化させていて、この中では、企業による賃上げや国内投資を促す減税措置などに加え、食料品価格や光熱費などの上昇による家計負担の軽減策も論点の1つとなっています。

これについて、政府・与党は「急激な物価高騰による家計への負担は、これまで以上に重く、より直接的な支援が必要だ」として、給付措置の実施も検討する方針です。

政府・与党内には、財政規律も考慮し、住民税の非課税世帯などの低所得者に限定して給付を行うべきだという指摘がある一方、いわゆる中間層や子育て世代なども含め、幅広い層への支援を求める声もあります。

また、現金の給付と、使いみちを限定したクーポン券やポイントを付与する方法の、どちらが実効性を確保できるかなどをめぐっても意見が分かれていて、今後、給付のあり方や対象など、具体化に向けた議論が行われる見通しです。
「検討に入ったという事実はない」という割には随分と具体的な案です。しかも同じ内容が共同とNHKの少なくとも2社に報じられています。

おそらく、これは官邸が世論の反応を見ようと観測気球を上げる意味でマスコミにリークしたのではないかと思います。


2.アドバルーンを上げてはみたけれど


共同通信は、日本国内の新聞社、民間放送局などに記事を提供・配信する新聞社ですし、NHKも数多くの視聴者を抱える(建前)放送局です。この2社が報じたニュースはたちまち全国に広まるのはいうまでもありません。

なのに政府は「そんな事実はない」と否定した。なぜかというと、世間の反発が大きかったからという以外の理由が見つかりません。

27日、SmartFLASHが「岸田首相「家計支援は低所得世帯だけ」に非難轟々…実態は「高齢者へのバラマキ」選挙対策」の記事を出すと、それを転載したヤフコメは大炎上。

曰く、「政府が物価高を加速させているのに、一部の人だけにお金をくばるのは間違っている」「何の支援もなくて二人目を産もうという気は消えました。税金で収入の半分はむしり取られています。」「物価が上がっているのに、扶養控除の額はそのままです。昔に比べて時給が上がっても控除額が上がらないので、扶養控除を気にすると昔よりも働けません。」「税収増を国民に還元するなどと調子の良い事を述べているが、少子対策、低所得者、パート労働者等、ピンポイントで給付金を投下されるのは不公平感を禁じ得ない。」などなど、ボロクソです。

件のSmartFLASHの記事でも、住民税非課税世帯全体に占める年齢別の割合を挙げ、60歳以上では81.1%となるとした上で、保有資産にかかわらず、一定の所得水準以下であれば住民税非課税世帯となることから、高齢層が占める割合が高くなると指摘。実態は選挙対策としての「高齢者へのバラマキ」だと批判しています。

また、SmartFLASHは翌28日には、岸田総理の経済対策の減税措置について「「増税メガネのごまかし」発動! 岸田首相「企業減税」「低所得者向け給付」聞く耳傾けぬ経済対策に不満炸裂」というドストレートな見出しの記事を掲載。「企業向けの減税措置を打ち出す一方、個人向けの減税措置は議論されなかった」と批判しています。

この記事に対するコメントでも「減税やる気あるらしいけど企業減税だってよ…消費税や所得税どうした?賃上しても物価上がってんから可処分所得増えてねーし」「企業減税しても給与に反映されるか不確定だし、足りない分を個人で増税されたら実質賃金・手取りは変わらないか、ますますキツくなる。増税メガネのごまかし」「岸田首相の聞く力て、ホント何なんだろうなと思う。自分に都合のよい国民・企業の意見は聞く、それ以外は聞いたフリをする。普通の人ならそれでも良いかも知れないけど、国の舵取りをする人が、それじゃあ終わりだよ」と散々。

筆者は9月27日のエントリー「増税メガネのむこう側とこっち側」で岸田総理の経済対策は、国民を向こう側におき、自分は殿上人よろしく、殿上人のための経済対策をしている」と述べましたけれども、世間の声も、殿上人の政策に批判が集まっています。

更に、X(旧ツイッター)で、「低所得者給付」で検索しても、出るわ出るわの批判のオンパレード。

さすがに政府も、この世論の反発に「低所得者給付」案を引っ込めたのではないかと思います。


3.岸田総理が言われたくない二つの言葉


今回の経済対策で岸田総理は「税収増を国民に適切に還元する」と発言し一部で話題になっていたようですけれども、関係者によると、この「還元」という言葉は、岸田総理の”こだわりの言葉”だったのだそうです。

その反面、岸田総理には世間から言われたくない2つの言葉もあるそうです。それは「増税」と「バラマキ」です。

岸田政権では、これまで大きな増税は行われていないのですけれども、金融所得課税強化を出してはひっこめたり、防衛費の増額に伴う増税を打ち出したり、政府の税制調査会の答申が「サラリーマン増税」と報じられたり、もう岸田政権といえば増税というイメージが定着しています。

でなければ、「増税メガネ」などという不名誉な二つ名で呼ばれたりしない筈です。

ある政治担当記者は「首相周辺は『一国の総理大臣にふさわしくない』ということで、『増税メガネ』という呼ばれ方に神経質になっています。首相本人もご存知のようですが、そのことについて、言及はないようです。しかし、うれしくは思っていないでしょうね」と語っているそうですけれども、これが本当であれば、国民の怒りは官邸にまで届いてはいることになります。

岸田総理はこの増税イメージを払拭したいということで、減税による還元を盛り込むことに拘ったそうですけれども、また、家計支援策などについて「バラマキ」と批判されることについても、「バラマキ」と言われたくないのだそうです。その割には前述の「低所得者給付」案をちょろっと出しては叩かれるなど、チグハグ感が漂います。


4.徴収も分配も公平に


ある政治ジャーナリストによると、岸田総理は「9月23日、首相は休日にもかかわらず、木原誠二幹事長代理と公邸で会談しています。それに先立つ19日、木原氏は自民党の平将明衆院議員と、マグロ仲卸業を営む生田與克氏のYouTubeチャンネル『魚屋のおっチャンネル』に出演。そこでは『税収が増える時代に入って、予算をバンバン使う時代に入っている。役人はそういう経験がない』『デフレからちょっとインフレに入ったところで、また絞っちゃうから。いまはバンバン使うときなんですよ。使うだけでなく減税もするときです』と語っていました。このときすでに、岸田首相の腹の中は減税路線で固まっていたのでしょう」とコメントしています。

本当に減税路線で固まっているのなら、素直に、直接減税をすればよいのに何故しないのか。

木原誠二幹事長代理は先述のYouTubeチャンネルで、財務省の役人はデフレからちょっとインフレに入ったところで、また絞っちゃうからと述べていましたけれども、今回アドバルーンで挙げたのであろう「低所得者給付案」とて、支出を絞ったものでしょう。

もし、このう「低所得者給付案」が財務省の差し金だったとしたら、木原幹事長代理の指摘はある程度当たっていることになります。

もしそうだとすれば、財務省は、税金を取るときは「公平な税負担」をいうくせに、配るときは低所得者だけとか条件を付けて「公平」に配らないというダブルスタンダードをやっていることになります。

これでは、国民から「分かりやすく公平な減税を」という声が上がって当然です。

もし、今回の「低所得者給付案」の報道が政府による観測気球だったのであるならば、逆に「消費税減税します」とか「ガソリンのトリガー条項凍結解除」というアドバルーンを上げて世論の声を聞いてみればよいと思いますけれども、それはやらない。あるいはサプライズとして取っておいてあるのかもしれませんけれども、そういう姑息な考え方では、国民の側を向いているとは受け取られないと思います。

まぁ、もしかしたら、今回の「低所得者給付案」が財務省の差し金だったとして、そんなものは、国民は受け入れないぞと財務省に突き返すためにわざとリークして様子をみたという”深謀遠慮”だったと考えるのは穿ち過ぎでしょうか。

ただ、こんなことばかりやっているうちは、国民は「増税メガネ」を外してはくれないのではないかと思いますね。


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この記事へのコメント

  • ルシファード

    岸田がネット内で増税メガネから増税クソメガネと言われ捲るのを見て、確かに財務省のポチならそう言われても仕方なかろうなと思うこ」の頃、財務省に「ここにミサイル撃つのは有りかな」と思う今日この頃ですわ
    2023年10月02日 11:20