課題が山積みの秋の経済対策

今日はこの話題です。
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1.インボイス制度円滑実施推進会議


9月29日、官邸で第1回インボイス制度円滑実施推進に関する関係閣僚会議が行われました。

会議では、インボイス制度の円滑な導入・定着に向けた取組について議論が行われ、鈴木財務相が、インボイス発行事業者の登録申請件数が9月15日時点で約403万件に上ったと報告しました。約300万の課税事業者のうち、約97%の292万事業者がインボイス発行事業者の登録を申請。登録の検討が必要な免税事業者では7割近い約111万件が申請を終えたそうです。

インボイス制度とは、消費税の仕入税額控除の方式の一つで、課税事業者が発行するインボイスに記載された税額のみを仕入税額控除することができる制度のことです。

インボイス制度導入を巡っては、これまで納税を免除されてきた年間売上高1000万円以下の小規模事業者への影響が指摘されています。

岸田総理は会議での議論を踏まえ「インボイス制度は、軽減税率の導入から4年の準備期間を経て、10月から開始されます。インボイス発行事業者の登録申請は順調に進んでいる一方、一部中小・小規模事業者の方から、取引上、不当な扱いを受けるのではないかといった不安の声も上がっています。中小・小規模事業者は我が国経済にとって重要な役割を担っており、安心して事業に従事していただくための環境を整備していくことが大事です。このため事業者の立場に立って、税務執行上柔軟かつ丁寧に対応していくとともに、事業者の悩みを的確に把握し、きめ細かく取り組んでいくこととし、この会議において、制度の実施状況等をフォローアップして、一つ一つの課題にしっかりと対応してまいります。各大臣においては、政府一丸となって、事業者の抱える不安を解消するとともに、これを取引環境の改善、取引のデジタル化や自動処理の推進につなげるよう、今後取りまとめる経済対策において、支援策を盛り込み、必要な支援を実施するよう取り組んでください」と述べました。

このように岸田総理は小規模事業者向けの負担軽減措置について、周知を徹底する方針を示しています。


2.何年も説明してきた


インボイス制度導入については、これまでの、事業者から不安や不満が出ていたのですけれども、岸田総理は記者に対し「インボイスへの対応、複数税率が決定してから4年間にわたって様々な準備を進め、そして説明を続け、これまで何もしていなかったのではなくして、何年にもわたってその対応を考え説明を続け、そして今日に至ったということであります……政府として説明や対応を続けていきたい」と述べていますけれども、4年も説明したのに支援策を出さなければならなくなったということは結果として彼らに説明できていなかったことになります。

9月25日、インボイス制度の中止を求めフリーランスや小規模事業者などで作る団体「STOP! インボイス」が官邸前で反対集会を開いているのですけれども、参加したライターの阿部伸さんは、開会の言葉として次のように述べたと報じられています。

1年半前のことです。ある自民党議員に3万5000筆の署名が集まったことを伝えたら、鼻で笑われました。また、別の国会議員に10万筆の署名を持って行ったら30万筆持って来いと言われました。また、ある自民党議員に大きな集会をやってみろと言われ、僕らは去年日比谷野音で1200人を集め、6月には全国一揆を行いました。ある自民党議員が言いました。平日の昼間に議員会館の会議室を満席にしたら認めてやる。9月4日議員会館の大会議室は満席どころか平日にもかかわらず立ち見が出る350人の市民が集まり、財務省に緊急提言を手渡しました。

ある自民党議員とやらが誰か分かりませんけれども、まるで時代劇の悪代官のような物言いです。本当にこんな議員がいるのか、と思う程ですけれども、ここまでアクションを起こされている一方で、岸田総理は「何年にもわたってその対応を考え説明を続け、そして今日に至った」とコメントしていることを考えるとすれ違いというよりは一方通行のようにさえ思えてきます。

インボイス反対署名について、この団体が集めた約50万筆の署名の受け取りを岸田文雄首相側が拒否しているとネットなどで話題になっていましたけれども、阿部伸さんが述べているように、9月4日の段階で財務省や国税庁などに36万筆の署名を渡しています。


3.青空インボイス勉強会


なぜインボイス導入にここまで反対の声が上がるのか。

9月19日、税理士の安藤裕氏や神田知宜氏などがつくる団体「赤字黒字」と、漫画家でつくる「インボイス制度を考えるフリー編集【者】と漫画家の会」が、新宿駅西口地下で青空インボイス勉強会を開催しました。

この勉強会の冒頭、檀上に立った安藤裕氏は、「消費税は間接税である」という前提が嘘であり、消費税は事業者に課される直接税であること、赤字でも課税される過酷な税であることを、その仕組みとともに解説しました。

安藤氏は財務省が裁判などで消費税法に則って「消費者が負担するものではない」と主張しながら、国民に対してはいまだに「買い物するたびに国民が負担している」と宣伝している事実を指摘し、「消費税は政府がついている最大の嘘だといってもいい。ぜひ気がついてほしい」と訴えました。

安藤氏は「利益が出ていなければ法人税はかからないが、消費税はかかる。赤字でも課税されるとんでもない税金というのが本質だ。だから税目のなかでもっとも滞納が多く、消費税によってつぶれていく中小企業が多い。インボイス制度で強制的に課税事業者にさせられるのは免税事業者だ。免税事業者はただでさえ利益が薄いのに、過酷な税が課せられようとしている。また、課税事業者も経費が増えるので、売値を上げて消費者から回収しようとする。つまり、インボイス制度が入ると、電気代も野菜も、さまざまな物の値段が上がり、みんなの暮らしを直撃する……ただでさえ17カ月連続で実質賃金はマイナス。倒産企業は15カ月連続で増えている。8月の倒産件数は去年に比べ54%増だ。理由は物価高倒産、人手不足倒産だ。こんなときにさらに値上げを強制するようなインボイス制度をやるのかということだ。みなさんぜひ理解していただき、反対の声を上げていただきたい」と指摘しています。

安藤氏は、このインボイスの仕組みについて、6月29日の長周新聞の記事「インボイス制度の問題点と消費税の欺瞞――ウソにまみれた消費税の闇」で詳しく解説しています。次に一部引用します。
【前略】

そもそも消費税とはどういう税金なのか。

財務省のホームページによると「消費税は、商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して広く公平に課税される税で、消費者が負担し事業者が納付します」(国税庁ホームページ消費税のしくみ)と書いてあり、子ども向けの税のパンフレットでも「消費税 商品の販売やサービスの提供にかかる税金で、消費者が負担します。」(国税庁税の学習コーナー租税教育用教材小学生用)と記載してある。

政府からこのように教えられているので、広く国民も「消費税は消費者が買い物をするたびに負担している。事業者はその消費税を預かって税務署に納税している」と考えている。

「商品などの価格に上乗せされた消費税と地方消費税分は、最終的に消費者が負担し、納税義務者である事業者が納めます。(消費税のしくみ)」とあるとおり、消費税は、税の負担者と納税者が異なる「間接税」の一種であると財務省は分類している。

ところで、消費税は本当に税の負担者と納税者が異なる「間接税」なのだろうか。

消費税法の条文では税の負担者や納税義務者は下記のとおり規定されている。

 第四条 国内において事業者が行つた資産の譲渡等(中略)には、この法律により、消費税を課する。
 第五条 事業者は、国内において行つた課税資産の譲渡等(中略)につき、この法律により、消費税を納める義務がある。

法律を読む限り、税の負担者は事業者であり納税義務者も事業者である。消費税法の条文には、消費者が納税義務者であるとは書いていない。そもそも消費税法には、消費者という言葉自体が出てこないのだ。

【中略】

しかし、消費税は法律を読むと直接税であるとしか読み取れない。消費税は事業者の行う課税資産の譲渡等(要するに売上)に課税され、事業者が納税義務を負う。負担者は消費者であるとは一言も書いていないのだ。

【中略】

つまり消費税とは、「利益+非課税仕入」に課税するのと同じなのである。利益とは文字通り利益であり、非課税仕入の代表的なものは人件費(給料および社会保険料)である。これらは「付加価値」と呼ばれるものだ。

つまり、消費税の本質とは、企業がその活動によって加えている付加価値に対して課税する「付加価値税」なのである。

この消費税の本質がわかると、いかに財務省の説明が欺瞞に満ちているかがわかる。消費税とは消費者から預かったものではなく、事業者に課せられた直接税なのだ。

【中略】

このように消費税の本質を考えていくと、次のことがわかる。

まず、価格を決定するのは事業者ではなく市場であり、発注者と受注者の力関係である。そのためブランド力があったり、優れた技術を持っているなど価格交渉力のある事業者は十分な利益を計上したうえにさらに消費税を価格転嫁して販売することが可能である。消費税の納税に何の痛みも感じないだろう。まさに「損益計算に影響はない」のである。

そのうえ、消費税の増税はたいてい法人税の引き下げとセットで行われている。消費税増税分を価格転嫁して自ら負担せず、法人税の税率引き下げの利益を享受できる。強い事業者にとっては素晴らしい税制改正である。

しかし、価格交渉力の弱い事業者は十分な利益を上げられる価格設定もできず、そこに消費税を転嫁できるはずもない。しかし消費税は計算式にあてはめて納税額が算出されてしまえば、なけなしの利益を削って、場合によっては赤字幅を拡大させても納税しなくてはならない。損益には多大な影響が出ている。消費税率5%の時代に比べたら納税額は2倍になっているのだ。力の弱い事業者にとっては非常に過酷な税である。当然法人税減税のメリットなどない。

本稿では輸出免税については割愛するが、輸出大企業は消費税の還付という更なる利益も享受している。消費税5%の時代に比べたら還付額は2倍になっているだろう。

また、消費者は少なからず物価が上がるので生活が苦しくなる。生活必需品も食料品以外は軽減制度がないので低所得者にはより厳しい生活が強いられる。

今年は過去最高の税収が見込まれているが、最も多い税収が見込まれるのは消費税である。物価高により消費税収は自動的に増収になる。輸入物価の上昇による物価高が発生しているが、消費税は存在するだけで、物価高をさらに10%上乗せして消費者の生活を直撃する。物価を引き下げるべきときに、物価をさらに引き上げ過去最高の税収をもたらす。こんな税はあり得ないのである。

これらの消費税の本質を語った後でなければ、インボイス制度の問題点はなかなか理解することが難しい。これがインボイス制度反対の声が広がらない理由でもある。

消費税は事業者に課せられた直接税である。そして消費税に設けられた免税制度は、小規模事業者に対して、事務負担と過酷な税負担を課すのは無理がある、という小規模事業者保護の観点から設けられている制度だ。

岸田内閣ではスタートアップを政策目標に掲げているが、まさに消費税の免税制度こそがスタートアップ支援制度なのだ。

ところがインボイス制度はこの免税制度を事実上なくそうとしている。

こういうと政府は「インボイス制度が導入されても免税制度は存続する」と主張するだろう。インボイス制度の登録は任意だからだ。

しかし、インボイス制度に登録しなければ登録事業者番号の記載された「適格請求書」(これが、いわゆるインボイスである)を発行できない。インボイスを発行するにはインボイス発行事業者として登録しなくてはならず、発行事業者として登録すれば自動的に消費税の課税事業者となる。免税事業者は登録事業者番号をもらえないのだ。免税事業者がインボイス登録すると消費税の納税義務者となるため増税になるのである。

ただでさえ十分な利益を上乗せした価格を自ら決定することができない小規模事業者が、消費税相当額をさらに上乗せできるとは考えにくい。税負担を自らの利益を削って納税しなくてはならなくなる。生活を直撃するため廃業を考えざるを得ない小規模事業者が増えている。

【以下略】
このように安藤氏は、消費税そのものに問題があり、インボイス制度は単に小規模事業者に増税を課すだけではなく、物価があがると指摘しています。

これが本当であれば、「ステルス増税」なのではないかとさえ思ってしまいます。


4.秋の経済対策は課題が山積み


この反対の声の盛り上がりにビビったのか、政府は50万筆の反対署名を受け取ったようです。

9月29日、「インボイス制度を考えるフリーランスの会」は、議員会館で岸田総理の秘書と面会。オンライン署名で集まった反対署名約54万筆をUSBメモリーで手渡したと発表しました。

冒頭で、第1回インボイス制度円滑実施推進に関する関係閣僚会議に岸田総理が出席し、10月に策定する経済対策に支援策を盛り込むと表明したことを取り上げましたけれども、官邸は事態の収拾に躍起になっているとも指摘されています。

閣僚会議は通常、会議の冒頭や終了前に行われることが多い総理の挨拶など一部しかメディアに公開されなません。全ての発言が公になれば、率直な意見交換が難しくなるとされるためです。

けれども、この日の会議は約13分にわたった会議を異例の全面公開とし、鈴木俊一財務相など閣僚らが各省庁の取り組みを紹介。公正取引委員会の古谷一之委員長からは9月27日時点で約3000件の相談が寄せられ、相談が日増しに増加していることも報告されています。

政府は「4年間にわたって様々な準備を進め、そして説明を続けた」積りだったのでしょうけれども、それが全然伝わってなかったということです。これもLGBT法案よろしく強行するのかもしれませんけれども、こっちはLGBTのような「理念法」ではありませんからね。その影響は直ぐに目に見えてきます。

インボイスを巡るゴタゴタが拡がれば、またぞろ支持率に影響するでしょうし、解散総選挙も打てなくなります。

なにやら10月の経済対策にどんどんと課題が積みあがっていっているように見えます。果たして、バラマキだけで解消できるのか。10月の経済対策の出来は岸田政権にとって大きな賭けになるかもしれませんね。


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この記事へのコメント

  • yoshi

    >消費税は事業者に課される直接税であること、赤字でも課税される過酷な税である。全くその通りです。
    2023年10月03日 09:48