岸田政権は有権者をどう見ているか

今日はこの話題です。
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1.今、解散は考えていない


10月2日、岸田総理は、読売新聞の単独インタビューに応じ、2023年度補正予算案に関し、20日召集の臨時国会での成立を目指す考えを示しました。

インタビューでの主なやり取りは次の通りです。
――新たな経済対策の意義は。
政権発足から2年間、経済政策「新しい資本主義」を進めてきた。30年ぶりの賃上げの動きや株価の上昇など、経済に新しいステージへの兆しが出ている今、この動きを定着させる重要な時期を迎えている。世界的なエネルギー危機などを背景として、国民は物価高に苦しんでおり、国民生活を守らなければいけない。

――防衛費増額や少子化対策の財源確保といった問題がある中、税収増を国民にどう還元するのか。
これまで3年余りにわたって、国民の努力を結集し、コロナ禍を乗り越えてきた。今こそ成長の成果を国民に還元すべきだ。各種の給付に加え、減税や社会保障の軽減など、あらゆる手段を考えていきたい。具体的な手法は与党の議論を踏まえ、政府として決定する。防衛力の抜本的強化については、行財政改革や景気・賃上げの動向などを踏まえ、判断していく。子ども・子育て政策の財源は、徹底した歳出改革を行い、国民に実質的な追加負担を生じさせないことを目指す。歳出改革は、全世代型社会保障構築会議で工程を年末までに策定する。

――臨時国会で補正予算の成立を目指すか。
速やかに補正予算案を編成し、臨時国会に提出したい。提出する以上は成立させたい。

――日中関係が悪化する中、 習近平シージンピン 国家主席との首脳会談の必要性は。
日本として主張すべきは主張し、中国に責任ある行動を求める。対話を大事にしながら、建設的かつ安定的な関係を構築していく方針は一貫している。習氏との会談は何も決まっていないが、あらゆるレベルでの対話を積み重ねていきたい。

――先進7か国(G7)がAI(人工知能)の規制のあり方などを協議する「広島AIプロセス」を巡り、デジタル技術「オリジネーター・プロファイル(OP)」を活用する考えはあるか。
生成AIのガバナンス、透明性の促進、偽情報対策、知的財産権の保護について、国際的なルール作りを進めている。議長国としての考え方を関係国に示し、議論を進めているところだ。これからも着実に進めていく。OPは民間企業主体で開発されている偽情報拡散への対策に資する新技術の一つであり、広島AIプロセスの中でも協力事項として取り上げる価値のある技術だ。

――自民党総裁の任期中に憲法改正実現を目指す考えに変わりはないか。
任期中に憲法改正を実現したいとの思いは、いささかも変わっていない。自民党が主張している(自衛隊の明記など)4項目は喫緊の課題であり、改正に向けて努力することは重要だ。党として体制をしっかり見直し、チーム力を高めることで議論を前に進めたい。

――衆院を解散する場合の大義は。
今、解散は考えていない。先送りできない課題を一つ一つ解決していく。一意専心に取り組む以外のことは考えていない。
岸田総理が指示した経済対策は10月下旬に取り纏められる見通しなのですけれども、閣議決定を経て、その財源を裏付ける補正予算案の編成には通常3週間程度かかることから、国会提出は11月中旬頃とみられています。

その後、衆参両議院での審議に入るため、成立は早くても11月下旬となる公算が大きいとされていますけれども、これら岸田総理の発言について、自民党幹部は「新たな経済対策へのこだわりが極めて強い。今は政局ではなく、とにかくその成立に集中したいという思いなのだろう」と語っています。


2.解散の大義


岸田総理は「解散は考えていない」とはいっていますけれども、永田町もマスコミも解散がいつになるのかで持ち切りです。

実際、自民党は近いうちの解散を視野に動き始めています。

10月1日、自民党の森山総務会長は、北海道北見市で講演し、政府が10月末に取りまとめる経済対策で減税が検討されていることを踏まえ、「税に関することは国民の審判を仰がなければならない……長期的に考えれば、財政規律を踏まえながら、減税対策がとられる可能性もある」と、衆院解散・総選挙の大義になり得るとの認識を示しました。

これに対し、翌2日、日本共産党の小池晃書記局長は国会内で開いた会見で、「森山さんは先週、10増10減が大義になると言ったんですよね。なんでもかんでも〝大義〟にするのかという感じですよ。解散をもてあそぶのはいい加減にしていくださいと言いたいと思います……減税、減税というけど減税の中身は、大企業減税ですから。われわれからみれば岸田政権をこのまま継続するのかどうか、これが最大の〝大義〟だということで、解散総選挙を迫っていきたいと思います」と批判しました。

確かに森山総務会長は9月24日のNHKの番組で衆院小選挙区の「10増10減」に伴う区割り変更が衆院解散・総選挙の「一つの大義ではないか」との認識を示し、解散のタイミングについて、「衆院は常在戦場だ。いつ選挙があってもいいという心づもりで、それぞれが政治活動をしていく」と語っています。

その意味では、小池晃書記局長のいう「なんでもかんでも大義にしている」ように見えなくもありませんけれども、これは、どういう経済対策や政策が来ても、解散総選挙が出来るように、いろんなネタを「解散の大義」として、ばら撒いているのではないかと思います。つまり、それだけ解散したいということです。


3.支持率狙いの様子見


実際、岸田政権は、先日の内閣改造が不発に終わったからなのか、さまざまな政策を打ち出しては政権浮揚を図っています。

たとえば、9月30日に、旧統一教会の解散命令を裁判所に請求する方向で最終調整に入ったと明らかになったことや、先月25日の経済対策で「税収増を国民に還元する」と「減税方針」を打ち出したこともそうです。

もっとも、ある野党のベテラン議員は「政権の評価を高める話題作りに専念している」と述べたそうですけれども、ネットでは旧統一教会の解散命令請求について、裁判所に棄却されることを最初から織り込み済みのポーズに過ぎない、という意見もあるようです。

この岸田政権の動きについて、政治評論家の有馬晴海氏は「岸田首相は解散に意欲がある。総選挙に勝てば、来年秋の総裁選を無事通過する確度が高まる。現状でライバルはおらず、世論や政局を見極めているのだろう。ただ、解散・総選挙は国民の意に反する負担増などに『信を問う』もので、減税に大義があるとするのは筋が違う。それならば、増税・負担増路線を示した時点で、信を問うべきではなかったか。岸田政権の政策は単なるキーワードの羅列で肝心な財源や具体的方向性は先送りで、支持率狙いの様子見が鮮明だ」と語っています。




4.偽減税は有権者を軽く見ている証


確かに、有馬氏が指摘するように、国民に「信を問う」のは、国民の意に反する負担増などに対して行うもので、負担を減らす「減税」で「信を問う」というのもおかしな話です。

減税で信を問うことについて、共産党の小池書記局長が「減税の中身は、大企業減税だ」と批判したことは先述しましたけれども、岸田総理の「減税」は偽物だという見方もあります。

9月27日のエントリー「増税メガネのむこう側とこっち側」で、早稲田大学公共政策研究所招聘研究員の渡瀬裕哉氏の寄稿記事を紹介しましたけれども、渡瀬氏はその記事で、岸田政権の一連の減税策を「偽減税」と命名しています。

渡瀬氏は、岸田政権の減税策について「一部の業界向けや、『お目こぼし』の施策を『減税』と言い換えているに過ぎない。中小企業の従業員をはじめ大半の国民には関係のない内容だ。『賃上げ税制の減税制度の強化』は企業の給与総額が対象のため、一部エリート社員の給与を上げ、他の社員の給与を下げても減税になる。全体の賃上げにつながるかも疑問だ……野党が弱い中で、迫る衆院選も余裕だとして、有権者を軽く見ているのだろう。財務省や財界、業界団体を味方につけることで、国民生活よりも自民党総裁選を念頭に、党内の権力闘争で安定した地位を得ることしか頭にないようにみえる……米国では、民主党が業界団体に『お目こぼし』を与える一方、共和党はシンプルに税率を下げる減税措置をとるなど対立軸が明確だ。二大政党制ではない日本では、自民党がシンプルな減税を打ち出さなければ、有権者の選択肢は狭められる。景気浮揚に重要な局面で、経済を冷やす方向になりかねない」と厳しく批判しています。

渡瀬氏の指摘の通りであれば、岸田政権の経済政策は、アメリカの民主党のそれということになります。

その意味では、「減税で信を問う」というのは「偽減税で信を問う」ということであり、言葉を変えれば「偽減税」に騙されてくれるか国民に問うということになります。

確かにこれでは、渡瀬氏の「有権者を軽く見ている」という指摘はその通りだと言う他ありません。

果たして有権者は、岸田政権の「偽減税」に如何なる審判を下すのか。ある意味、国民のレベルを測る試験紙になるのかもしれませんね。


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