減税と少数保守野党

今日はこの話題です。
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1.直接国民や企業へ還元あり得る


10月3日、自民党の茂木敏充幹事長は定例会見で、税収の増加分について政府の施策により国民に還元することも可能だが、減税によって直接国民や企業に還元することもあり得るとの考えを示しました。

件の発言は記者質問に対する回答で触れられたもので、その内容は次の通りです。
北海道新聞:
北海道新聞です。経済対策と衆院解散の関連についてお伺い致します。森山総務会長は北海道で行った講演で、政府が新たな経済対策として減税を検討していることを念頭に「税に関することは国民の審判を仰がなければならない」と述べ、衆院解散の大義になるとの考えを示されました。幹事長はどのようにお考えになるかお聞かせ下さい。

茂木幹事長:
政府が新たな経済対策として減税を検討しているということですが、減税についても様々な形の減税措置というのがあって、それによって規模というのは違ってくるのではないかなと、そんな風に考えますが、いずれにしても衆議院の解散、それから総選挙については、その判断理由も含めて、総理の専権事項だと考えております。その上で、税についてでありますが、ここ数年、成長の成果として、大体毎年5兆円前後の税収増があるわけでありまして、昨年度の税収は、71兆円ですから過去最高ということになりました。この税収増を最大限に活用して、その成果というものを国民に適切に「還元」していくと、これは当然のことだと考えております。税収増を何かの施策に使い、その施策によって国民に還元するというのもあるでしょうし、その税収増そのままをある意味、ダイレクトに減税措置等々によって国民に還元する、また企業に還元すると、こういったこともあり得ると思います。
茂木幹事長は税収増の還元について、施策を介して行うこともあれば、ダイレクトな減税によって行うこともあると、直接税減税を匂わせました。

また、同じく3日、自民党の世耕参院幹事長も記者会見で、新たな経済対策で検討されている減税について「岸田文雄首相が『税の増収を還元する』と言っている。税の基本は法人税と所得税なので、当然、減税の検討対象になってくる……法人税減税ならば『設備投資を積極的に行ってほしい』、所得税減税ならば『手取りを増やす方向性だ』と分かりやすく説明することが重要だ」と強調しました。

また、減税が衆院解散の大義になるとの見方については「首相の専権事項だ……財政規律を緩める、大きく財政を悪化させた上で行う減税であれば国民の意見を聴かなければならないかもしれないが、いま議論している減税は基本的には税収増を還元するという趣旨なので、財政規律には大きく影響を与えない。経済対策の範囲の中で議論していけばよい」と、こちらは解散の大義にする必要はないとの見解を示しています。

ここにきて法人税や所得税といった直接税減税に触れ始めたということは、もちろん世論の反応を見ようとする観測気球的な面もあるとは思いますけれども、党内でも、直接税減税を行うべきだという圧力が強まっていることを伺わせます。


2.安倍元総理死去後、自民党は悪くなった


経済評論家の上念司氏は、減税解散をすれば、自民党はボロ勝ちするなどと述べていますけれども、国民の問題意識あるいは政治に求めているものの殆どが減税なのであれば、それは十分あり得る話だと思います。

ただ、全てが全て、経済対策あるいは減税だけなのかというとそうではない可能性もあります。

産経新聞グループのマーケティング会社「産経リサーチ&データ」は、9月29日~10月2日に掛けて、ウェブ上のアンケートモニターサイト「くらするーむ政治部!」の登録者を対象に、「安倍晋三元首相の死去後、自民党政治がどう変わったか」という興味深いネット世論調査を行いました。

通常の世論調査は、調査エリアごとの性別・年齢構成になど合わせて、電話番号を無作為に発生させるRDD方式で電話をかけ、回答数が得られるまで調査を行うなどの手続きを踏むのですけれども、今回のアンケートははインターネットアンケートのみに限定、国民の「今感じていること」に焦点をあて、スピード感を持った調査に取り組んでいる。今回調査の年齢の割合は60代30.6%、50代23%、70代22.4%、40代11.1%、30代5.4%で50代以上が多かったとのことです。

アンケートは、自民党政治がどのように変わったかについて「特に変わらない」「よくなった」「悪くなった」から1つ選び、「よくなった」「悪くなった」と答えた人には、その理由についても選択肢の中から複数回答(2つ)で尋ねました。

アンケートでは全国の1584人から回答があり、回答者全体では「悪くなった」が過半数の55.6%を占め、「特に変わらない」は42.2%、「よくなった」は2.2%しかいないという結果となりました。

「悪くなった」理由は「景気対策など経済政策が悪くなった」(42.3%)、「リベラル的な主張や政策が増えた」(40.1%)が特に多く、「党内のまとまりが悪くなった」(35%)、「他国との外交が悪くなった」(25.9%)と続きました。「よくなった」理由は「他国との外交がよくなった」が60%でした。

これが、自民党支持者(全体の43%)に限ると、「悪くなった」は61.3%とさらに増え、「特に変わらない」は36.1%、「よくなった」は2.6%。「悪くなった」理由は、「党内のまとまりが悪くなった」(45.9%) 、「リベラル的な主張や政策が増えた」(40.1%)、「景気対策など経済政策が悪くなった」(33.3%)と続き、「よくなった」は61.1%が「他国との外交がよくなった」をあげています。

また、野党支持者(34.5%)に限っても62.3%が「悪くなった」と回答。理由についても「リベラル的な主張や政策が増えた」(45.6%)、「景気対策など経済政策が悪くなった」(45%)、「党内のまとまりが悪くなった」(28.2%) と自民党支持者と傾向は変わらないという興味深い結果となっています。

一方、「支持政党なし」(22.5%)と答えた人の64%が「特に変わらない」と回答する一方、「よくなった」は1.4%、「悪くなった」は34.6%となり、「悪くなった」理由は「景気対策など経済政策が悪くなった」が65.9%で最も多い結果となっています。

次の表は、「よくなった」理由と「悪くなった」理由の回答をそれぞれ対比させ、筆者のコメントを追記したものです。

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表では「よくなった」理由と「悪くなった」理由の割合の差分を取ってみました。この差分の値が大きいほど、どちらかの傾向が強いと見做すことができるのではないかと思います。それをみると、岸田政権は外交が評価される反面、党内の纏まりがないことやリベラル的な主張や政策が嫌われていることが分かります。

その一方、経済政策に対する評価は「悪くなった」が多いものの、その差分は党内の纏まりがないことやリベラル的な主張の半分以下であり、経済政策よりも、政治手法やリベラル傾向がより否定されていることは興味深い結果だと思います。

なるほど、これでは、自民党から保守層が逃げているという指摘にもある程度の説得力があるようにも思えます。要するに、日本の世論は昔と比べて、反リベラル化、保守化したということです。


3.ブレイクする日本保守党


保守という意味では、ある意味、今最も注目されている政党といえば、日本保守党です。

10月2日、日本保守党の有本香氏がネットニュース番組「ニュース生放送 あさ8時!」に出演し、「日本保守党」の党員が、募集からわずか2日の10月2日朝時点で、約3万6000人を超えたと明かしました。

有本氏は「本当にみなさまに厚く御礼を申し上げたい。ありがたいと思うと同時に責任重大だなと思っております……全国あるいは外国にいる日本人の方も党員になってくれている。そういった方々と目標に向かって歩いていきたい」と語り、百田尚樹氏も同日のユーチューブチャンネルで、「目標はこれに留まらず、党員の熱い気持ちを背負って、いかに日本のためになるよう生かしていくかだ」と述べました。

日本保守党の公式X(旧ツイッター)によると、募集スタートから2時間で登録者が1万人を超えたという。さらに7時間後には党員が2万人超、24時間に満たない10月1日昼前には3万人に達したそうです。

この日本保守党のブレイクについて、落語家の桂春蝶氏は、夕刊フジのコラムで次のように述べています。
【前略】

百田さんはインターネット番組などで、「日本は世界最高の国」「人種差別撤廃を提案したのも日本が世界初」「結果的に、大東亜戦争があったからアジア諸国は独立できた」という趣旨の話をしていました。なるほど、このあたりはとても大切なことだと思います。

先の大戦において、当時の日本軍部は大変な過ちを犯したと私は思っています。終戦以降、すべての価値観がひっくり返るほどの変化を求められた私たちは、同時に何か大切なものを失ってしまったと思うのです。

誇りを奪われた私たちは、精神的にも米国の属国化して、根無し草となり、無心に働く機械のようになりました。高度成長の頃は、復興という名の物質的欲望で生きがいも感じられたでしょうが、バブル崩壊以降、「私たち日本人は何者なのか」を喪失した。現在、末法世界(=お釈迦様の教えが行われなくなった世界)が広がっているようにも見えます。

日本保守党のブレークは、そんな日本人の危機感と焦燥感がつくり出したのでしょうか?

私は過去の日本をすべて礼賛せよと言っているのではありません。本来「保守」とは、人間が不完全であることを熟知している考えを指します。

今の私たちは不完全である、そして歴史の中の人たちも不完全であった。過去をよく見て検証し、佳き未来につなげていこうとする思想が保守の本質です。「民主主義は死者に任せる」という概念を私は信じます。

私たちは膨大な過去によって支えられていて、失敗・成功を繰り返し、現在がある。例えば、ボートを進ませるとき、後ろを向いて漕いでいくことよろしく、過去に正体して向き合い、正しく前に進んでいくことが大切なのです。

国を愛するとはどういうことだろう? 過去の人々と自分をどうつなげるか? 日本人とは何者で、どんな間違いを犯し、何を忘れてきたのか? 冷静に読み解いていくことが「真の保守」のあり方だと思います。

違う意見が前に立ちはだかったとき、視点を変えるだけでなく「視座」を変えることも必要でしょう。そして、自分の意見と照らし合わせ、迷うこと。迷いと思考は、いつか「理解と寛容さ」につながっていく。過去に学べば、どの国の人々も日本人と重なる部分があるはずだ。重なれば理解でき、謙虚に他者と接する心が出来上がる。

伝統的な礼節を重んじ、「寛容」さとは何かを探究するのが保守思想です。

そうそう、リベラルの意味をたどっていくと「寛容」って意味らしいです。本当の保守って、リベラリズムの中にあるのかな? そんな意味じゃ、今の日本には真っ当な保守やリベラル政党はないように思います。

うん! こりゃ今後、日本保守党に期待しなきゃ!
桂春蝶氏は、日本保守党に対し、人間が不完全であることを熟知した上で、戦後日本が失ったものが何かを考え、必要なものを取り戻してくれることを期待しているようです。


4.少数保守野党の存在意義


一方、日本保守党にそんな保守思想的なものを期待してもダメだという意見もあります。経済学者の池田信夫氏です。

10月2日、池田氏は「アゴラ」で「日本保守党は「万世一系」を語る皇国史観」という記事を掲載し、次のように述べています。
百田尚樹氏などの結成した「日本保守党」が、ネット上で話題になっている。ツイッターでは自民党を超える30万人のフォロワーを集め、党員も3万人を超えたという。知名度も話題性もあるので、泡沫政党としてはトップになるのではないか。

ただその公式サイトをみると、政策にはほとんど中身がなく、時代錯誤の国粋主義が語られているだけだ。特に問題なのは百田代表の「結党宣言」である。

【中略】

「神話とともに成立し」というのは意味不明だが、2000年前だとすれば弥生時代後期で、当時まだ天皇家は影も形もなかった。「万世一系」は明治時代に岩倉具視のつくった言葉で、それほど古いものではない。百田氏も『日本国紀』にこう書いている。

【中略】

端的にいって万世一系の天皇などというのはフィクションであり、戦後は否定された皇国史観である。それを信じるのは自由だが、近代政党がそれを理念として掲げるのは、キリスト教政党が「天地創造」を掲げるようなもので恥ずかしい。

政治の問題がすべて科学で解決するわけではないが、科学的に嘘だと実証された話を(代表自身が嘘と認めながら)理念に掲げる心情右翼は危険である。それは科学的に成り立たない「汚染水は危険だ」という話を「お気持ち」で語る心情左翼と同じだ。

日本の野党がだめな理由は、自公政権に対して事実や論理で対抗できず、大衆の「お気持ち」を連呼するだけだからだ。そこにもう一つ右翼的な「お気持ち」を語る政党が出てきても、政治は何も変わらない。
池田氏は、日本保守党に対し、政策の中味がなく、保守思想(皇国史観)を持ち出すことは、心情左翼のお気持ち表明と何ら変わらないと、そんなことでは政治は変わらない、と批判しています。

この池田氏の見解には賛否色々あるかと思いますけれども、政策にはその中に、理念も目的もある訳で、保守から悪評高いLGBT法にしても、それを推進した人達は、LGBT法は「理念法」だと自分で宣言していました。LGBT法によって世の中がどう変わるかはこれからでしょうけれども、単に「お気持ち」を連呼するだけで政治は何も変わらないと言い切るのは危険な気もします。

確かに自民党はターゲットとする支持層として、保守からリベラルまでウイングを広げていますけれども、反日、共産勢力による日本支配を防ぐという意味では、その役割を十分に果たしてきた面はあると思います。

ただ、ようやく、反日、共産勢力が衰えてきた今の日本では、もはや反反日・反共産政党としての自民党の存在意義は薄れつつあるのかもしれません。

その意味では、保守を標榜する少数野党が発信力を持ち、それなりの国民の支持を集めることは、無駄ではないと思いますし、単なる反対勢力に堕することなく、自民党の考えや利権を牽制する役割を果たすことを期待したいところです。

因みに、ここ数年で出てきた少数野党について、筆者が期待しているのは以下の通りです。
NHK党:既得権益の破壊
参政党:陰謀(論)があるなら、その存在証明
日本保守党:保守思想の保持と、保守の理念に沿った政策提言
どれも今の岸田自民党では、手出しし難いものです。これら”尖った意見”を自民党内から発することが難しいのであれば、野党として発信するしかありません。

よしんば与党が過半数割れしようものなら、どこかの政党と連立を組むことを考えなければなりませんし、今の政府方針や政策に公明党がどれほどの存在感を発揮しているかを考えると、反日・共産ではない少数保守政党が存在する意味はあり、仮にそこと連立を組むことがあれば、それなりの影響を与えられるのではないかと思います。

日本保守党については、池田信夫氏のいう「お気持ち表明」だけであっという間に4万人に迫る党員を集めた訳ですからね。しっかりとした政策や選挙での候補者の人選によっては、台風の目になる可能性はあるのではないかと思いますね。





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