

1.いま選挙なら自民は三議席減るだけ
10月3日、自民党の山崎拓・元副総裁は福岡市内で講演し、今、解散総選挙をしても、自民党は大敗しない調査結果が出たと聞かされたことを明かしました。
山崎氏は、岸田文雄首相が来年9月の自民党総裁選に再選されれば、圧倒的に長期の宏池会政権になる。それを念頭に政権運営している。来年の通常国会の開会中に解散総選挙をやって、そこそこの成果をあげれば、「国民が支持しているんだから。もう1回やってくださいよ、と。対立候補はなしにしましょう」という党内の機運を作る道を考えているのではないか。この秋に総選挙をやって仮に勝ったとしても、来年9月にまたやらなくちゃならんということになる、と指摘し、さっき昼飯の最中に(自民党の)森山裕総務会長から電話が来ました。「自民党による世論調査の結果が出た。いま選挙をやると自民党は3議席減る。ほとんど負け戦にはならない。たったの3議席減るだけだ。だから、やる手はある」という話があった。みなさん緊張して支援を続けていただきたい。私は選挙の時期は来年だと思っているが、年内にやるかも分からんということは、森山総務会長も懸念しておられた次第です、と明かしました。
ネット等では、なにやら、自民40議席減、公明10議席減という予想をちらちら見かけたりするのですけれども、それとは全然違う結果です。
これについて、政治評論家の加藤清隆氏は、「『自民40議席減、公明10議席減』との予想は他でも聞きましたが、一方で森山総務会長は「自民減は3議席だけ」と言ってます。森山氏が露骨に嘘をついているのでなければ、恐らくこちらが正しいのでしょう。その結論は早期解散です」とツイートしています。
これが本当であれば、森山総務会長、あるいは自民首脳部は早く解散すべきだ。今なら傷は浅いと考えていることになります。
「自民40議席減、公明10議席減」との予想は他でも聞きましたが、一方で森山総務会長は「自民減は3議席だけ」と言ってます。森山氏が露骨に嘘をついているのでなければ、恐らくこちらが正しいのでしょう。その結論は早期解散です。 https://t.co/2hIukaoXFj
— 加藤清隆(文化人放送局MC) (@jda1BekUDve1ccx) October 5, 2023
2.増税メガネって言われているのがショックだったんだろうね
10月3日、岸田総理は、記者団の取材に応じ、4日で政権発足から2年が経つことについて「新型コロナとの戦い、世界的なエネルギー危機や物価高、ロシアによるウクライナ侵略等もあった。こういった出来事を前にして、一つひとつ正面から向き合い、決断し実行する。こうしたことを続けてきた2年間であったと振り返っている。国民の皆さんの信頼というのは、これからも先送りできない課題に一つひとつ正面から向き合い、決断し実行し続けていくことが重要だと思っている。大きな変化の中で、変化を力にする、明日は必ず今日より良くなる日本を作るために、努力を続けていきたい」とコメントしました。
また、「聞く力」に批判の声もあがる中での受け止めを問われると、「政治において国民の声を聞く力が重要だということは、自民党の総裁選挙の段階から申し上げ続けてきた。聞く力は大変重要だと思うが、それと合わせて決断し実行する力も求められる。聞くだけで終わってはならない。国民には様々な声があるが、その中にあっても、勇気を持って決断し実行する。この結果を示していくことができるかどうかも、大変重要な課題だ。車座をはじめ様々な方法を通じて聞く力は大事にしていきたいが、このバランスを心がけながら、国民の皆さんの理解を得られるように努力していきたい」と新たに「決断力」も必要になると答えました。
「聞く力」に対する批判の声というのは、「聞く力という割には聞いていないのではないか」という意味だと筆者は思っているのですけれども、岸田総理は「聞くだけでは駄目だ」と、聞く力はあるという前提での答えだったように思います。
岸田総理はこれまで、金融所得課税の課税強化や防衛力の抜本的強化に向けた「防衛増税」など、「増税」にも積極的に言及してきたこともあり、今では、「増税メガネ」と揶揄される始末。
岸田総理はこのあだ名に「まだ何も決まっていないのに『増税だ』と言われるのはおかしいだろ!」と周囲にこぼしているらしいですけれども、物価高など、国民の生活が苦しくなる一方で、将来の増税を口にされる現状では、そんな風に呼ばれるのもむべなるかな、と思います。
ある閣僚経験者は「増税メガネって言われているのがショックだったんだろうね」と述べているようですけれども、岸田総理は最近になって「減税」を口にするようになりました。
これについて、識者やネット等では支持率回復を狙ってのことだと囁かれています。
3.ウソ減税に国民は怒っている
けれども、この岸田総理の減税の掛け声に対し、国民は冷ややかです。その減税が本当に減税になるのか訝しんでいるからです。
プレジデント紙元編集長でITOMOS研究所所長の小倉健一氏は「みんかぶマガジン」で次のように述べています。
岸田文雄首相は9月26日の閣議で、経済対策を10月末にまとめるよう指示を出した。その経済対策は①物価高から生活を守る対策②持続的賃上げ、所得向上と地方の成長③成長力強化に資する国内投資促進④人口減少を乗り越える社会変革の推進⑤国土強靱(きょうじん)化、防災・減災など安全・安心の確保――という5つの柱で構成されている。その中で、特筆すべきは「減税」という項目だろう。賃上げ税制における減税制度の強化、特許などの所得に対する減税制度の創設、ストックオプション減税の充実、事業承継税制の減税措置の申請期限延長などを強調した。このように、小倉氏は岸田総理の減税策は、その後に予定されている増税の規模とは比べ物にならないぐらいに小さいと指摘し、「100円減税するから1000円増税するというのは、減税ではなく、増税である」と厳しく批判しています。
岸田首相は、かつて「日本の政治は消費税率引き上げに様々なトラウマがある。成功体験を実感することが大事だ」「消費税を引き上げる、ぜひ、この引上げを円滑に行うことによって、引上げの成功体験を国民の皆さんとともに実感し、未来を考える、こういったことの意味は大変大きい」などと発言しており、筋金入りの増税主義者であることは疑いようもない。いくつかの増税案について、国民の猛反発を受け撤回したものの、バラマキをやめたわけではなく、ステルス増税(=増税なのに、増税ではないと言い張る)や赤字国債(=結局、将来増税)で国民の目を欺いているのが現状だ。
インボイス制度によって、売上の低い中小企業や個人事業主を狙い撃ちにした負担増が実施され、来年には復興特別所得税(徴収期間が14 ~ 20年延長)、高齢者の介護保険(ある程度の所得のある高齢者の負担増)、国民年金(国民年金保険料の納付期間が5年増え、約100万円の負担増)、森林環境税(1人あたり年間1,000円を住民税とあわせて徴収)、生前贈与(相続税の対象期間が広がるという事実上の増税)、2025年には「結婚子育て資金の一括贈与の特例」が廃止される。
今、永田町は、岸田首相が衆議院議員解散し、「11月26日投開票」の総選挙を行うのではないかという情報が駆け巡っている。その場合、外交日程等が障害となってくるが、人気のない岸田首相が応援演説をしたところで票が伸びることはほとんどないだろう。それよりも、批判されることのない外交日程をこなしたほうが有利に運ぶ可能性がある。
事実、自民党の森山裕総務会長は、10月1日、北海道北見市で講演。<新たな経済対策で「減税」が検討されていることを踏まえ「税に関することは国民の審判を仰がなければならない」と述べた。衆院解散の大義になり得るとの考えを示した発言とみられる>(日経・10月1日)と報道されていて、岸田首相が増税ではなく、減税を掲げて国政選挙を戦う地ならしをしているともとれる行動をしている。
しかし、冒頭で並べた減税案を振り返ってみてほしい。どれも非常にテクニカルで、わかりにくい減税ばかりだ。金額も、これから予定されている増税の規模とは比べ物にならないぐらいに小さい。その一点をもっても、国民はバカだと思われ、騙そうという気が満々だ。100円減税するから1000円増税するというのは、減税ではなく、増税である。ふざけるのもいい加減にしてもらいたいところだ。
岸田首相が、11月中に解散選挙をしないといけないのは、もう一つ理由がある。それは12月に予定されている、防衛費増の財源のための1兆円大増税だ。防衛費を大幅に増額するという決定を行った岸田首相は、財源について、増税をすると明言したにも関わらず、実施時期についてごまかしをつづけてきた。この実施時期についての判断が12月なのだ。選挙が終わったあとに、騙し討ちのように、大増税が発表されるという段取りだ。
さらには、異次元の少子化対策として、効果がほとんどないバラマキをはじめたが、これについても、毎年6000円を社会保険料として徴収する計画が政府内にある。これをいつ発表するかといえば、当然、選挙の後だということだ。これまで何度も指摘してきたが、少子化は「未婚率と晩婚率の増加」が原因の9割を占めており、子育て世代にお金やサービスをばらまいたところで、出生率が増える要因にはならないのである。まったく無意味な政策に、莫大な税金を投入したツケは、社会保険料を収める現役世代にそのままかえってくるのである。
【中略】
たしかに、増税とバラマキしかない岸田食堂に「減税」というメニューが加わったことは、大変喜ばしいことだ。しかし、岸田食堂は、お客を舐めきっている。表には「減税はじめました」などと書いてあるので、入店したら、減税メニューを頼むにはものすごい条件が必要で金額もわずか。結局、これまでどおりの、大盤振る舞いのバラマキと大増税という美味しくもないメニューを食べさせられる。
こんなことに騙されてはいけない。選挙を前にして、自公政権は国民世論に震え上がっている。次の選挙まで、すべての増税を凍結すると約束させるまでが勝負なのである。
4.消費減税を打ち出した「責任ある積極財政を推進する議員連盟」
ただ、それでも、自民党内の積極財政派からは、消費税や所得税の減税といった、国民に直接還元する減税を訴えています。
10月4日、自民党の青山繁晴参院議員は自身のブログで次のように述べています。
まずは、議連の提案に『消費減税』の明記が実現しました。このごろ自由民主党内ですら実質的にタブーにされてきたことを考えれば、画期的な転換です青山参院議員は、議連の提案に『消費減税』が明記されたことを「画期的」と評価していますけれども、当初の議連案ではこの『消費減税』はありませんでした。
▼国会は、岸田総理の判断と決定により、未だ閉会中です。
しかし、自由民主党の重要な部会などはどんどん開かれています。
きょう10月4日水曜は、「責任ある積極財政を推進する議員連盟」の総会が開かれ、青山周平・議連事務局長の公平な司会のもと、中村裕之、谷川とむ両代議士の議連共同代表 から、提言案の改訂版が参加議員に提示されました。
ちなみに、この事務局長、共同代表おふたりの3人とも、護る会 ( 日本の尊厳と国益を護る会 ) のメンバーです。
ついでに写真の後ろ姿も、護る会の事務局次長の石橋林太郎代議士です。
▼前回のこの議連の総会では、消費減税にまったく触れない提言案が示されました。
不肖わたしは以下の趣旨で発言しました。
「岸田総理は、税収増を国民に還元すると明言されながら、国民を直接、助ける減税には何も言及されていません。これを改めることを求める提言にすべきです。党の提言が遠慮していて、どうする」
「具体的には、まず消費減税 ( 消費税率の引き下げ ) を提言に明示しましょう」
「最近、政府と自由民主党において、消費減税があたかもタブーのように扱われています。そんなことは、あってはなりません。もともと消費税や付加価値税は柔軟に税率を引き下げられることに特徴があります。現に、たとえばイギリスでは、付加価値税の税率引き下げが、大胆に、かつ柔軟に行われているではありませんか」
( ※ いずれも趣旨です )
▼きょう示された改訂案を見てください。下掲の写真です。
冒頭に、「消費税や所得税の減税」が出てきます。
画期的です。
この改訂案は、回収されたり、あるいは「公表するな」という縛りが何も掛かっていませんから、実物の写真をアップしました。
ただし、紙の最後に、党首脳陣と政府の担当大臣への申し入れ日程をぼくがメモしていますので、そこはカットします。警備の関連で、いま公表して良いかどうか不明だからです。
また、これは提言案の1ページ目です。2ページ以降に詳しい主張があります。
▼今日の議論で、上記の画期的な改訂案に、さらに「社会保険料の減免」も項目の (一、) に加えることなどを決め、それを盛り込んだ完成版が、共同代表らの記者会見でメディアにも示されたようです。
議論が終わると、なぜかテレビ朝日の「報道ステーション」からカメラを回す取材が、わたしに対してありました。
きちんとした取材でした。
しかし、それがオンエアされるとは、まったく限りません。それは完全にテレビ局の編集権です。取材をお受けしたのも、放送されるためではありません。報道陣の理解を補うことにも、意義があります。
▼写真は、消費税を冒頭に明示した提言案・改訂版を、僭越ながら高く評価して発言しているところです。
うしろから、護る会メンバーの杉田水脈代議士が、知らないあいだに撮ってくださいました。
こころなしか、横顔がすこし綻 ( ほころ ) んでいますね。
しかし同時に、「提言が提言だけで終わってはいけない。実現させねば」という厳しいことも、あえて申しました。
そして、議連の首脳陣から示された「提言案を持っていき、議論する先」のなかに、党の政調会長や担当大臣はあったものの総理が無かったので、「総理にも会うべきです」と提案しました。
すると議連の首脳陣の側から「総理は、任意の議連には会ってくれない。総理官邸には任意の議連では入れない」という予想通りの答えがあったので、「それは岸田政権になってからのことです」と述べ、「安倍政権でも、菅政権でも、任意の議連であっても総理に上げられるべき提言は上げられ、総理が、じゃ会おうと仰れば、総理官邸できちんと会っていただきました。たとえば、護る会の皇位継承に関する提言は、官邸で総理にお会いして、手交しました。政権が新たなタブーを作るのは良くありません。総理官邸にも申し入れてください」と提案しました。
【以下略】
9月27日、青山参院議員はブログで次のように書いています。
▼国会はまだ閉会中ですが、国会内では、重要な会合が開かれています。このように当初案では、国民への直接の減税に触れておらず、青山参院議員の強い見直しの要請に、やり直すことになったのだそうです。そしてそのやり直した結果が今回の「消費税や所得税の減税」の提言となった訳です。
きょう9月27日水曜は、「責任ある積極財政を推進する議員連盟」の総会が開かれました。
名称の通り、財政緊縮の間違った動き・考えに対峙する議連です。
安倍晋三元総理も、暗殺されるまでは、熱心に参加されていました。
▼今日の議連では、岸田総理が打ち出されている「新しい経済対策」への提言案が配られました。
これは事前に、議連の役員会で協議してつくられたものなので、「まず提言案を読んでください」と、議連の青山周平事務局長 ( 護る会メンバー ) から異例の仕切りがありました。
この議連には、護る会 ( 日本の尊厳と国益を護る会 ) のメンバーが多いですが、ぼくは議連の役員ではありません。
したがって事前に提言案を見ていません。
そこで事務局長の仕切り通りに、かなり長い提言案を、速読しています。
▼そして発言の時間になると、覚悟を決めて、厳しいことを申しあげました。
「岸田総理が、増えた税収を国民に還元すると仰った。主権者はこれを減税と受け止める。当然です。それだけではなく側近である前官房副長官はネット番組で、減税を口に出された。ところが総理は、国民への直接の減税は、やろうとなさっていない。この提言案はそこに切り込んでいません。消費減税を選択肢だと明示すべきです」
「安倍総理が10%まで引き上げた消費税ですが、不肖わたしは安倍総理に電話で繰り返し、せめて、まず8%に戻すべきだと求めて、ついに安倍総理が、それも選択肢だね、具体的に考えようとお答えになった直後に、まさかの総理辞任となってしまいました。何を申しあげているのか。消費減税がまるでタブーのように扱われているのは、この岸田政権の特異な現象であって、もともと消費税は上げるだけでは無く柔軟に引き下げることができるのが特徴の税制だということです。現に、英国などで付加価値税の大胆な引き下げも行われています」
「消費税率の引き下げも含め、国民を直接、現在の窮状から救う減税を打ち出すのが、自由民主党の役割です。岸田総理が早期の衆院解散を模索しているなかで、きょう参加されている衆議院議員は特に意識を強められて、国民を裏切ることのないよう、この提言案を見直すべきです」
▼上記は、発言の概要に過ぎませんが、このあと予想外に多くの賛同意見が出されました。
ほんらいはこの総会で、細かい修正は別にして、提言案を諒承する手はずになっていたのだろうと想像します。
しかし、不肖わたしの問題提起のあと、提言案は大幅な修正も含めて再検討されることになり、回収されました。
議連の役員のみなさんの、素晴らしい決断だったと思います。
▼この議連の前に、主権者への発信の責任を果たすために、今週も「青山繁晴チャンネル☆ぼくらの国会」 ( これです ) の収録をおこないました。
最初の1本が、まさしく「総理発言を、偽の減税にしてはいけない」という提言であり、その動画のなかで「このあとの議連で実際に、同じ提言をします」と約束しました。
その通りに致しました。
【中略】
▼いま政局は水面下で烈しく動いています。
政権のあり方をめぐっては、野党の良心派の人たちとの議論も活発になっています。
議連で議論しているあいだも、その議論のためにメールが携帯にやって来ます。ひょっとしたら、かなり重大な動きになる可能性もある連絡です。
青山氏はブログではっきりと「偽の減税にしてはいけない」と訴えていますけれども、ともすれば、岸田総理の減税は「偽の減税」になることを危惧している議員もいます。
先述のITOMOS研究所所長の小倉健一氏の記事のタイトルはズバリ「12月に1兆円大増税隠して”11月に解散総選挙”の姑息…鬼の岸田政権”ウソ減税”に国民は怒っている」です。偽減税、ウソ減税という言葉が「増税メガネ」と同じくらい拡がり、岸田総理の耳に入るまでに盛り上がることを期待したいですけれども、肝心の岸田総理が自ら述べたように嘘ではない「本当の減税」を決断できるのかどうか。注目したいと思います。
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