

1.イスラエルにおけるテロ攻撃に関するバイデン大統領の発言
10月7日、アメリカのバイデン大統領は、ハマスによるイスラエル攻撃で、多くの死傷者が出ていることに対し発言しました。
その概要は次の通りです。
こんにちは。今日、イスラエルの人々が、テロ組織ハマスによって組織された攻撃を受けている。このように、バイデン大統領はイスラエルを全面支援すると宣言しています。
この悲劇的な瞬間に、私は彼らに、そして世界と世界中のテロリストに、米国がイスラエルとともにあることを伝えたい。私たちは、彼らの背中を押すことを決して怠らない。
私たちは、彼らの市民が必要とする支援を提供し、彼らが自らを守り続けることができるようにする。
数時間の間に何千発ものロケット弾がイスラエルの都市に降り注ぐという、ぞっとするような映像を世界中が目にした。私が今朝起きて、7時半か8時にこれを始めた のは・・・電話だった。
ハマスのテロリストがイスラエルに侵入し、イスラエル兵だけでなく、イスラエルの一般市民を路上や自宅で殺害している。何の罪もない人々が殺害され、負傷し、家族全員がハマスの人質になった。言語道断だ。
今朝、ネタニヤフ首相と話したとき、私は彼に、このテロ襲撃に直面して、米国はイスラエルの人々とともに立っていると言った。イスラエルには自国と自国民を守る権利がある。フル・ストップだ。
テロ行為を正当化することはできない。
イスラエルの安全保障に対する私の政権の支援は、揺るぎないものだ。
できるだけはっきりと言わせてほしい。イスラエルに敵対するいかなる当事者にとっても、この攻撃を利用して優位に立とうとするような瞬間ではない。世界が注目しているのだ。
私はまた、ヨルダン国王と接触し、議会議員と話をし、私の国家安全保障チームにイスラエルのカウンターパートと関わるよう指示した。
私の国家安全保障チームには、イスラエルが必要とするものを確保するために、軍対軍、諜報機関対諜報機関、外交官対外交官といった形で、イスラエル側と連携するよう指示した。
私はまた、エジプト、トルコ、カタール、サウジアラビア、ヨルダン、オマーン、アラブ首長国連邦、さらには欧州のパートナーやパレスチナ自治政府など、地域全体の指導者たちと常に連絡を取り合うよう私のチームに指示した。
これはまた、人間的なレベルでも恐ろしい悲劇だ。罪のない人々を傷つけている。この事件によって壊された生活、引き裂かれた家族を見ていると、胸が張り裂けそうになる。
ジルと私は、この暴力の影響を受けた家族のために祈っている。愛する人を失い、魂の一部を失った人たちとともに悲しんでいる。負傷された多くの方々の一日も早い回復を願っている。
私個人としては、この状況が進展する中、ネタニヤフ首相と緊密な連絡を取り続けるつもりだ。
75年前、米国が建国から11分後にイスラエルを承認した最初の国となった瞬間からそうであったように、米国はイスラエルとともにある。
ありがとう。
2.イランの資産がハマスのイスラエル攻撃に使われた
一方、共和党大統領候補らはイスラエル攻撃についてバイデン政権を非難しました。
10月7日、マイク・ペンス元副大統領はアイオワ州の選挙イベントで「重い心で皆さんに言う。ジョー・バイデンのような大統領が、この2年半、アフガニスタンでの悲惨な撤退から世界の舞台で弱さを露呈して、アフガニスタンに諂うのに費やしたら、こういうことが起こるだ……イスラム教徒らは過去2年半にわたりイラン核合意への復帰を懇願してきた……まず最初に言いたいのは、今日アメリカは、イランの支援を受けているハマスによって継続されているテロ攻撃に対して、イスラエルとともに立つということだ。ハマスは残念なことに、このアメリカ大統領がイランに対して行ったことで資金提供されている……それは恥ずべきことだ」と語りました。
これは、9月18日、アメリカ政府がカタールの仲介を受け、韓国で保管されていたイランの資産60億ドル(約8860億円)の凍結を解除し、イランで長年収監され、人質とみなされていたアメリカ人5人との交換したことを指しています。
ペンス元副大統領は、このとき凍結解除したイランの資産がハマスのイスラエル攻撃に使われたというのですね。
ペンス元副大統領以外にもアメリカ共和党の有力者たちは「身代金の支払い」だとか「制裁の緩和」だと非難。共和党のマイケル・マコール下院外交委員長は、アメリカ政府が「世界一のテロ支援国家」に資金を送るものだと強く批判していました。
これに対しホワイトハウスのアンドリュー・ベイツ副報道官は、バイデンが攻撃に資金を提供したという主張は「あらゆる点で恥ずべき嘘だ」と述べ、「1セントも使われていない。それらはイラン政府に渡されることはない。それらは食料や医薬品などの人道的ニーズの検証可能な購入にのみ使用できる」と強調していますけれども、当のイラン当局が自国の資金は好きなように使うと繰り返し宣言していることも考えると、どこまで追跡・管理できるのかどうか疑問が残ります。
3.答えは両方である可能性が高い
アメリカがハマスを間接的に援助しているのではないかという疑惑は資金だけではありません。武器もそうです。
ウクライナへのアメリカ製武器の輸出に反対していることで有名な共和党のマジョリー・テイラー・グリーン下院議員は、「イスラエルと協力して、ハマスがイスラエルに対して使用した米国製武器のシリアルナンバーを追跡する必要がある。それらはアフガニスタンから来たのか? ウクライナから来たのか?答えは両方である可能性が高い」とハマスらが使用したアメリカ製武器の出どころを確認するよう呼びかけ、それがアフガニスタンまたはウクライナから入手された可能性があると指摘しています。
また、ドネツク人民共和国のヤン・ガギン首長補佐官もまたイスラエル情勢について語った中で、かつてキエフに供与されたNATO兵器が転売され、イスラエル兵に使用されている可能性を示唆しています。
テイラー・グリーン下院議員は、ハマスの使った武器は、アフガニスタンとウクライナの双方から横流しされている可能性を指摘している訳ですけれども、国防総省の監察官によると、昨年夏、米軍のアフガニスタン撤退で、アフガニスタン政府の手に渡ったアメリカが提供した70億ドル以上相当の軍事装備品の多くはタリバンの手に渡ったと報告しています。
その支出の大部分は高機動多用途装輪車両(ハンビー)や耐地雷輸送防護車(MRAP)などの戦術地上車両に向けられたもので、このうち約41億2000万ドルは2021年8月15日にタリバンがカブールに侵攻した際にアフガニスタン軍の在庫にあったそうです。
また、その際、失われた物資には9億2330万ドル相当の軍用機と2億9460万ドル相当の航空機弾薬が含まれていることも指摘されています。
その他にも、ライフル、狙撃銃、ピストル、機関銃、ロケット推進擲弾発射機、榴弾砲を含む31万6260丁の小型武器(5億1180万ドル相当)が崩壊時にアフガニスタン軍の管理下にあったものの、それらの武器は行方不明だったそうです。
いずれも、物凄い物量です。その一部がハマスに横流しされていたとしても大変な戦力になります。
4.武器を売ってくれたウクライナに感謝する
また、ウクライナ経由で武器がハマスに流れた疑惑についても、当のハマス自身がそう発表しています。
ハマスは中東のテレグラムへの投稿で「武器を売ってくれたウクライナ当局に感謝する。我々はこれらの武器をイスラエルに対して使う……アル・アクサ洪水作戦で使用されたRPGのほとんどはウクライナ人によって提供された」と述べているそうです。
ハマスはウクライナが地球上で最も腐敗した国である事に感謝している。
— tobimono2 (@tobimono2) October 8, 2023
「武器を売ってくれたウクライナ当局に感謝する。我々はこれらの武器をイスラエルに対して使う」
使われたRPGの殆どはウクライナ人から提供されたものだ、と中東のテレグラムの投稿は述べている。 pic.twitter.com/ZY3uWzQLE8
当然ながら、このハマスの言い分に対し、ウクライナ当局は否定しています。
ウクライナ国防省傘下「ミリタリー・メディア・センター」は、テレグラム・チャンネルで、ロシアが、ウクライナが供与された西側の武器をテロ集団ハマスに供与しているとする偽情報を拡散していると発表しました。
それによると、ロシアのプロパガンディストが、あたかもハマス代表者が「ウクライナの武器」を見せていると主張する動画を拡散しているとし、それら投稿では、アラビア語であたかもウクライナがハマスに西側の武器を横流ししたかのように主張されているとしています。
ミリタリー・メディア・センターは、「動画の長さは12秒だけであり、多くの疑問を抱かせるものである。実質的にウクライナはそのようなことを行えない。なぜなら、私たちの西側のパートナーが、彼らがロシア侵略との戦いのために私たちに供与した武器と軍事品を注意深く追っているからだ」と主張。更に拡散された動画はもしかしたら、ロシアが自らを正当化し、ハマスとは関係がないという幻想を生み出すことを目的に簡素に撮影されたものかもしれないとも推測しています。
7月3日のエントリー「フランス暴動の黒い塊」で筆者は、フランスの暴動について取り上げましたけれども、現場で、「フランス警察は、西側諸国からウクライナに供給された武器をデモ参加者から押収した」と報じていることを紹介したことがあります。
それを考えると、ウクライナ当局が注意深く追っているというだけでは、完全にそうだとは言いにくいものがあります。それこそテイラー・グリーン下院議員が指摘しているように、ハマスが使ったという米国製武器のシリアルナンバーまで確認する必要があるのではないかと思います。
万が一、ウクライナに支援した武器がハマスに横流しされ、それでイスラエルが攻撃されたのだとすれば、厳格な武器管理、下手をすれば支援そのものを止めろということにもなりかねません。
それを考えると、ウクライナ当局は、ロシアのプロパガンダだと主張するだけでなく、注意深く追っているという武器と軍事品の情報について第三者の査察を受け、その結果を速やかに発表すべきではないかと思いますね。
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