ハマスは戦略目標を達成した

今日はこの話題です。
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1.ハマスの人質解放


10月20日、パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスの軍事部門「カッサム旅団」の広報官アブ・ウバイダ氏は、ハマスがカタールの調停努力に応じ、「バイデン氏とバイデン氏の独裁的な政権の主張が虚偽かつ根拠のないものであることを米国民と世界に証明することに加え、人道的理由により」人質を解放したと発表しました。

地元メディアによると、解放されたのはアメリカとイスラエルの二重国籍を持つジュディス・ラアナーンさんと娘のナタリーさん。アメリカ・シカゴ近郊在住で、親族がいるイスラエル南部キブツ・ナハル・オズを訪問中の7日、大規模攻撃を仕掛けたハマスに拉致されていました。2人の健康状態は良好だとのことです。

アメリカのバイデン大統領は2人の解放を支援したカタールとイスラエルの協力に謝意を表明した上で、人質を家族の元に取り戻すまで立ち止まることはなく、人質となっているアメリカ人の安全以上に優先すべきことはないと強調しました。


2.人質の使い道


無論、人質はこれだけでなく、ハマスはこれまでに計約200人を人質に取っているとしています。

アメリカのブリンケン国務長官は、「10人のアメリカ人が行方不明のままだ。人質には多くの国の男女、少年少女、高齢者が含まれている。一人残さず解放されるべきだ……人質は無条件で解放されなければならない」と述べ、人質の解放を条件にしたハマスの要求を「額面通りには受け取らない」とし、人質の解放を導き出すために関係各国と協力を続けていく考えを示しました。

また、フランスのマクロン大統領はアメリカ人2人解放のニュースを歓迎し、フランス人を含む他の人質の解放に向けた動きが続くことに期待を表明しました。

7日のハマスによる攻撃では、フランス人30人が死亡、7人が行方不明、1人がハマスの人質となっているようです。マクロン大統領は、イスラエルやカタール当局と連絡を続けているとしたほか、20日にはサウジアラビアやカタール、エジプト、イスラエルの首脳らと会談。21日にはエジプトで開催される会議に外相を派遣するとしています。

英BBCなどによると、ハマスは現在、イスラエルに対して一部の人質を解放する代わりに一時停戦の実施を求めているほか、人道支援物資の搬入を要求しているようで、ハマスは約200人の人質のうち、外国籍の市民や女性、子供を解放する姿勢をみせており、停戦交渉を有利に進める狙いもあるとみられています。

更に、イスラエル人男性や兵士の人質については、イスラエルに拘束されているパレスチナ人との「捕虜交換」に使う可能性が高いとも言われているようです。

一方、イスラエル軍のハガリ広報官は20日、今後も人質の救出活動に取り組むとともに、ハマスとの戦闘も続けると表明。ハマスは人質の解放で「人道的な組織」を装っているが、実際は多くの市民を殺害したテロ組織だと主張しました。


3.三段階になる対ハマス戦闘


同じく20日、イスラエルのガラント国防相は、国会の外交防衛委員会でハマスとの戦闘は「3段階に分かれている」と明言。最初の段階では空爆や地上侵攻を実施し、ハマスの戦闘員を殺害した上で、インフラを破壊。次の段階でハマスの小さな拠点を残らずつぶし、最後にガザに新たな「政権」を作り、イスラエル市民の安全を取り戻す計画だと説明しました。

そして、ガラント国防相は目的達成までには1ヶ月以上かかるとの見通しも示しています。

今のところ、まだ地上戦は行われておらず、空爆を続けていますから、最初の段階の途中ではあるのですけれども、その被害は甚大です。

イスラエル軍は20日もガザ地区で激しい空爆を実施。多くの市民が避難所として使っていた教会も被害を受け、十数人が死亡したと言われているのですけれども、今月7日以降の一連の衝突でガザ地区では少なくとも3400人が死亡し、イスラエル側での死亡者約1400人と合わせ、双方の死者は4800人を超えています。

17日にガザ地区北部の病院で起きた爆発では、これまでに471人の死亡が確認されたとガザ地区の保健当局がしていますけれども、WHO(世界保健機関)は、この11日間で、ガザ地区の26の医療機関が被害を受けたと明らかにしました。

こうした中、UNFPA(国連人口基金)はガザ地区では5万人の女性が現在妊娠中で、そのうちの5500人が来月出産を予定しているものの、安全な出産をするための環境が整っていないとしていて、UNICEF(国連児童基金)も、すでに数百人の子どもが死亡し、30万人以上が家を追われているとして民間人や病院などを狙った攻撃の中止を求めています。

イスラエル政府は、18日、ガザ地区に隣国エジプトから人道支援物資が入ることを条件付きで認めると発表しているのですけれども、果たして、エジプトからガザ地区への物資の搬入が滞りなく進み、住民のもとに届けられるかが焦点となっているようです。


4.戦略目標を達成したハマス


西側諸国の多くはイスラエルの支持を打ち出していますけれども、中東各国はパレスチナに同情的です。

20日には、中東各国でパレスチナに連帯を示すデモが行われました。

エジプトの首都カイロ東部では、イスラム教の金曜礼拝後に少なくとも数千人が集まりました。参加者はパレスチナの旗やエジプト国旗を振りながら「ガザを攻撃するな」「抵抗こそ解決だ」などと叫び、パレスチナ支持を訴えました。

AFP通信などによると、カイロでは2011年の民主化要求運動「アラブの春」の主要な舞台となったタハリール広場でもデモがあったようです。

また、ヨルダンの首都アンマンでは数千人がイスラエル大使館近くを行進。チュニジアやイラクではアメリカ大使館付近でデモが行われ、トルコのイスタンブールではアメリカ国旗を燃やす参加者もいたようです。

更にイランの首都テヘランでは日本大使館で19日深夜、壁に赤いペンキが投げつけられたとのことですけれども、パレスチナ情勢との関連は不明だとしています。

ハマスがイスラエルを攻撃した当初、その狙いとして、ハマスは、イスラエルとサウジアラビアの関係改善によって自身が追い詰められることを恐れ、それを壊しに掛かったと囁かれていましたけれども、20日、アメリカのバイデン大統領は、ワシントンで行われたイベントで、ハマスが攻撃に出た理由について「私がサウジと協議しようとしていることを知っていたことが一つにある……サウジがイスラエルを承認したい意向だったからだ。実現すれば中東が事実上、団結することになるためだ」と述べ、両国の関係緩和を妨害するためだったと述べています。

これが本当であれば、既にサウジとイスラエとの関係正常化交渉が凍結された今、ハマスの戦略目標は達成されたことになります。

だとすると、ハマスは、自身が人道的であることを装いながら、人質を少しづつ解放しながら、停戦まで持っていければそれで勝利になります。

実際、BBCによると、ハマスは人質の一部について、即時停戦を条件に解放するとイスラエル側に提案したと伝えています。

ハマスが人道を謳って人質解放と即時停戦を提案するなか、イスラエルが空爆を続けていけば、世界各国の世論の風当たりは増々強くなります。どうも広報戦略で、イスラエルは後手を踏んでいるような印象を拭いきれません。

果たして、イスラエルは交渉に応じるのか、それともテロリストとは交渉しないとして空爆、そして地上戦に踏み切るのか。緊張は続きます。



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