新たな経済対策と排除された消費税減税

今日はこの話題です。
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1.新たな経済対策


11月2日、政府は臨時閣議を開き、物価高に対応し、持続的な賃上げや成長力の強化を実現するため、新たな経済対策を決定しました。

それによると、物価高対策として、来年6月にも所得税と住民税を合わせて、納税者と扶養家族1人あたり年間で4万円差し引く定額減税を実施するため、年末に向けて与党で検討を行うとしています。

また、住民税が非課税となっている低所得世帯には7万円を給付するほか、ガソリン価格を抑えるための補助金や電気・ガス料金の負担軽減措置を来年4月末まで延長するとしています。

更に、持続的な賃上げや成長力強化の実現に向けて、中小企業が行う設備投資への支援や、国内に半導体の生産拠点を整備するための基金の積み増しも行うとしています。

これらを合わせた経済対策の規模は、減税分も含め17兆円台前半となり、国と地方の歳出や財政投融資を合わせた「財政支出」は21兆8000億円程度となる見込みとのことで、政府は、その裏付けとなる補正予算案を今月中にも臨時国会に提出し、成立を目指す方針としています。


2.なぜ給付金ではなく所得減税なのか


今回の経済対策で注目されたことの一つに国民への税収増の「還元」がありますけれども、これについては、この日に行われた総理記者会見で、岸田総理は記者からの質問に次のように答えています。
(記者)
北海道新聞の藤本です。よろしくお願いいたします。

経済対策で発表された減税について質問します。総理は、税収増の還元策として、所得税・住民税の減税実施を表明しました。ただ、実施は来年6月の予定で、国会審議でも「物価高にあえぐ国民への支援としては遅い。より早い支援につながる給付金支給にすべきだ」との声が相次ぎました。なぜ給付では駄目なのか。なぜ減税にこだわるのか。先ほど総理も御説明されましたが、低所得世帯以外の世帯でも、今、生活に困窮している方々は多くいるはずです。こうした状況だと、総理の御説明というものが多くの国民の腑(ふ)に落ちていないのではないかというふうに感じております。より分かりやすいメッセージで、改めてその理由をお聞きしたいと思います。

また、支持率低下が続く中で、近年の政権ではなかった所得減税を打ち出すことで、年末あるいは来年の通常国会で減税の是非を問う解散に踏み切るのではないかとの臆測もありますが、そうしたお考えがおありなのかについても、併せてお聞きします。

(岸田総理)
まず、所得減税のタイミングについては、今も申し上げましたが、今年7月に公表された内閣府の年央試算においても、来年度中には名目賃金の伸びが消費者物価に追いつくという試算が示されています。また、民間のエコノミストの意見をいろいろとお伺いする中で、実質賃金がプラスに転じるタイミング、2024年度あるいは2025年度と指摘されるエコノミストの方が多いと認識しています。

こういったことを考えますと、やはり来年度、これは賃金が物価に追いつく上で、デフレ脱却ができるかどうかということにおいて、これは正念場であると認識しています。ここに的を絞って、デフレに後戻りさせないための一時的な措置として、所得税・住民税の定額減税を行うことを考えました。

来年度の賃上げが大変重要であるという中において、減税のスタートの時期については、賃上げとの相乗効果を発揮できるタイミングを考えるべきだということで、来年、ボーナス月である6月であれば、賃上げと定額減税、双方の効果を給与明細において目に見える形で実感することができる、幅広い国民が所得の下支えを実感することができる、このように考えました。

そして、御指摘のように、低所得者層の方々に対しては給付で対応するということで、重点支援交付金を約1.6兆円追加する、さらには額だけではなく、よりきめ細かい支援を用意するということで、推奨事業メニュー0.5兆円で地域の実情に応じて生活者、事業者に対してきめ細かい支援を用意する、こういった工夫も行った。こういったことであります。これらは年内の実施開始を目指して努力するということです。そして、それ以外にも、エネルギーの激変緩和措置など、国民生活と幅広い関わりのあるエネルギー分野における激変緩和措置は来年春まで延長する。こういった対策も引き続き続けてまいります。

解散についても御指摘がありましたが、解散については、従来から申し上げておりますように、今は先送りできない課題、これに一意専心取り組んでいく、それ以外のことは考えていない。経済について、今、御説明させていただいた思いで、全力で取り組んでいきたい。このように思っております。
記者は、物価高対策ならば、来年度の住民税・所得税減税より、すぐ対応できる給付金の方がよいのではないかと質問したのですけれども、これに対し岸田総理は、デフレ脱却の為に賃上げとの相乗効果を発揮できるタイミングを考慮して、来年度の所得税・住民税の定額減税を行うと回答しました。

けれども、これは、岸田総理自ら述べているように、目先の物価高対策というよりは、デフレ脱却の為の対策の意味合いが強いことは否めません。


3.消費減税は考えてもいない


それに、ジャーナリストの山口敬之氏が指摘していますけれども、そもそも、期間限定の減税は減税ではなく、バラマキだという見方もあります。

山口氏は、財務省は単年度の増税減税といった収支には興味がなく、恒久増税だけやりたくて、逆に恒久減税は何がなんでもやりたくないのだと指摘しています。

11月1日、参院予算委員会で日本維新の会の東徹氏が「物価高に消費税減税以外では対応できない場合は検討するのか」と質問しました。

これに対し、岸田総理は「絶えず経済や社会保障の議論は続けなければならない。大きな議論が行われた結果として、消費税について対応を考えることを全く今から否定するものではない」としつつも、所得税・住民税の減税と給付が最も現実的だと答弁しました。

これについて、経済ジャーナリストの荻原博子氏は「『否定するものではない』とあいまいに答弁しているが、何を言っているのか理解に苦しむ。やる気があれば『前向きに検討する』などと明確に打ち出すべきだが、結局『消費税減税はしない』と言っているに等しい。岸田首相は、世論の風向きを見てごまかそうとしているが、国民は見透かしているのではないか……物価高対策や、賃上げなど個人向けの予算は少なく、政権の危機感のなさを感じる。17兆円はめいっぱい個人向けの対策に充てるべきではないか」と指摘しています。

また、共産党の山添拓氏は、「1年限りの減税、1回限りの給付、その後に大軍拡への増税に後期高齢者の医療保険料引き上げなど負担増が目白押しだ……減税というなら消費税の減税こそ行うべきだ」と指摘。そして、消費税の減税には「三つの効果がある」として、「生活必需品の値上がりは深刻で、消費税を下げれば買い物のたびに減税効果が発生する」「消費税は所得の低い人ほど負担が重いため、減税すれば所得が低い人ほど負担が軽減される」「消費税を一律5%に引き下げれば、インボイスも必要がなくなる」を挙げ、消費減税をする積りがあるか質問しました。

岸田総理は「そもそも消費税を下げることは考えていないので、効果についても考えていない」と回答しました。流石に、この答弁には、国会内がザワつき、驚きが広がったのですけれども、ネット上でも、このシーンの動画が次々に投稿され、「検討すらしてないんかい!」「最初に政策ありきで効果は後付けなの?」「耳を疑った」などと発言に失望する声が溢れました。




4.あらゆる選択肢


岸田総理は昨年1月26日の衆院予算委員会で、外交・防衛政策の長期指針「国家安全保障戦略」、防衛計画大綱、中期防衛力整備計画の3文書の改定に向けた議論に関連して「ミサイル迎撃能力の向上だけでなく、敵基地攻撃能力を含めあらゆる選択肢を排除せず、現実的に検討していきたい」と述べていました。

また、昨年2月の衆院予算委員会集中審議で、ガソリン高騰への対応策について「今後のエネルギー市場の状況をみて真に効果的な対策は何か、あらゆる選択肢を排除せず集中的に検討したい」とも答弁しています。

更に、今年3月に北朝鮮拉致被害者家族と面談した際、「あらゆる選択肢を排除せず、被害者の帰国実現に全力で取り組む」と述べています。

これ以外にも岸田総理は、いろんなところで「あらゆる選択肢を排除せず」という文言を連発しているのですけれども、なぜ、消費減税になると、その選択肢を最初から「排除」しているのか。消費減税だけ、最初から「排除」している理由を説明すべきだと思いますし、こうした答弁の積み重ねが、結局は国民の信頼を失う原因になっているのではないかと思いますね。


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