ブログランキングに参加しています。よろしければ応援クリックお願いします。
1.年内解散見送り
11月9日、岸田総理は、年内の衆院解散・総選挙について、「まずは経済対策、先送りできない課題一つ一つに一意専心取り組んでいく。それ以外のことは考えていない」と、見送る意向を事実上表明しました。
岸田総理は11月末から、アラブ首長国連邦(UAE)で開かれる「国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)」への出席を検討しているのに加え、12月16~18日には日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)の特別首脳会議が控え、外交日程が立て込んでいることも踏まえたとみられています。
岸田総理は9月に内閣改造を行って政権浮揚を図ったものお、10月の衆参2補欠選挙で自民党は「1勝1敗」と議席を一つ落とし、10月下旬には、山田太郎・前文部科学政務官と柿沢未途・前法務副大臣が辞任に追い込まれるなど政務三役の不祥事が続きました。
11月に入って、減税を打ち出した経済対策も不評で支持率は上がるどころか下落する始末。これでは解散できないのも道理です。
2.還元の原資はない
そんな中、11月8日には、鈴木財務相が衆院財務金融委員会で、岸田総理が「減税で還元する」と説明してきた過去の税収増分は使用済みで「政策的経費や国債の償還に既に充てられてきた……減税をするとなると国債の発行をしなければならない」と還元の原資がないことを認め、「財源論ではなく、国民にどのような配慮をするかとの観点で講じるものだ」と衝撃の発言が飛び出しました。
岸田総理が表明した1人当たり4万円の住民税や所得税の定額減税は、この2年間で所得税と住民税の税収が約3兆5000億円増えたことを受けて、その一部を「国民に還元する」としたものです。ところがそれがもうないというのですね。
この発言にSNSでは、「原資なし」というワードが8日、インターネット上のトレンドワードに急上昇し、一時トップになりました。
そして、更に、「財務省からも見放されたぜ どうすんだ岸田よ!」「岸田さん、完全にハシゴを外されてる」「財政が真っ赤な大赤字なのに、還元の原資がないことは、中学生でも理解できる。減税ウソメガネは、そんなことも理解していないのか? リスキリングが必要だな!」「首相と財務大臣が違うことを言う。これは政権の末期症状か?」「そんなことだろうと思った」となど大炎上しています。
間の悪い事に、そのタイミングで総理や閣僚の給与をアップさせる国家公務員特別職の給与法改正案法案をめぐる審議が、衆院内閣委員会でスタートしました。
自民党関係者は「最悪のタイミング」と漏らしているそうですけれども、ネットでは「原資がないのに還元…そして自らは給料をあげる??アホだなホント」と、国民よりも政治家の給与アップを優先するような流れになっていることを批判するコメントも出ています。
岸田総理が事前の調整もなく、「還元」を口にしたのならなんとも抜けた話です。嘉悦大の高橋洋一教授はXに「これはZが岸田首相のハシゴを外したな」とコメントしていますけれども、筆者もこちらの線が強いのではないかと思います。
安倍晋三回顧録では、安倍元総理が財務省について、「彼らは省益のためなら政権を倒すことも辞さない」と述懐していますけれども、まさにこれが現在進行形で行われているように見えて仕方ありません。
これはZが岸田首相のハシゴを外したな→財務相「税収増分は使用済み」 首相の「還元」原資なし認める #47NEWS https://t.co/xWyjHCKKy4 @47news_officialより
— 高橋洋一(嘉悦大) (@YoichiTakahashi) November 8, 2023
3.利権化する税金
11月8日、産経新聞は宮沢洋一税調会長へのインタビュー記事を掲載しています。
その内容は次の通りです。
--総合経済対策で打ち出した所得税3万円、住民税1万円の減税額は妥当か宮沢税調会長は減税の原資について、投資しない企業から法人税として徴収すると言っています。その一方で、投資した企業には減税する、とも言っています。
「総額3兆5千億円は大きな額で、相当思い切った減税だ。ただ、今回の減税や給付について、一般の方にうまく説明できていないのではないか。4万円の減税により、来年後半以降の消費拡大、それに伴う投資も出てくる。好循環につながるための道具としての減税だと思っている」
--防衛費増額の財源を賄う増税に関し、公明党の西田実仁税調会長は所得税増税の先送りの可能性を示唆した
「これから税制改正の作業に自民党も、公明党も入る。当然のことだが、両党で意見が異なることはこれまでもあり、それを与党税制協議会を適宜開いて調整し、同じ結論に至るということをやってきた。今年もそういう中で、話し合いが行われていくだろう」
--児童手当の支給対象の高校生への拡充に伴う、所得税の負担を軽くする扶養控除の見直しは廃止も選択肢に入るか
「中学生までの扶養控除は廃止した。高校生は義務教育ではないが、家計の支出は金額がかなり大きい。これからの議論だが、中学生までと同じように廃止するか、今のままか、その途中でどうかという3つぐらいある方向の中で議論が進んでいくだろう」
--家計の金融資産を成長投資に充てる「資産運用立国」に向けた税制改正の考えは
「今まで聞いている限りでは、(金融庁関係で)大きな税制改正の要望があるということはない」
--半導体や蓄電池などの「戦略物資」の生産を促す「戦略物資生産基盤税制」の対象は
「要求ベースでいろいろとあることは承知しているが、どういうものを対象とするかなどは、まさにこれからの話だ。(対象に)何が含まれて、何が含まれないということを申し上げる段階ではない」
--投資減税の財源をどう考えるか
「財源をどこから持ってくるかは、減税の規模によっては相当工夫しなければならない。未来への投資をしてもらう企業に、しっかりと減税をする。その原資は、投資をしない企業に法人税で払ってもらうことが個人的にはいいと思っている」
つまり、政府の言うことを聞いた企業を優遇し、聞かない企業から搾り取るといっている訳です。これは「エコノミック・ステイトクラフト」の一種ですし、税を取ることと配ることがそのまま「利権化」しているのではないかとさえ思えます。
4.責任ある積極財政を推進する議員連盟の提言
岸田総理がぶち上げた「減税策」は企業中心の「偽減税」と批判され、いまや「増税ウソ眼鏡」とまで言われる始末。ネットの一部には、来年の所得税減税すら本当にやるのか怪しくなってきた、なんてコメントすら見受けられます。
それでも、自民党の一部議連からは「消費税率を5%に引き下げるべきだ」との提言が出ていることはでています。
11月4日、自民党の「責任ある積極財政を推進する議員連盟」は、消費税や所得税の減税を求める提言をまとめています。
提言では次の7つの政策を挙げています。
一、 消費税や所得税の減税措置及び、社会保険料の減免措置を行うこと。いの一番に消費税減税、所得税減税を挙げています。確か岸田総理は、消費税減税は考えていない、検討もしていないと答弁していた筈です。
二、 事業者に対し、柔軟な資金繰り・経営支援を継続すると共に、 コロナ融資返済の猶予・減免策を講じること。
三、 「地方創生臨時交付金」の引き続きの交付と、「地方交付税交付金」の安定的増額を実現すること。
四、 食料安全保障関連予算を別枠で確保し、農林畜産水産関連予算全体を大幅に増額すること。
五、 サプライチェーンの強靱化を図るため、国内における生産拠点の設備投資を支援すること。
六、 子育て支援金の継続給付や児童手当の対象拡大、奨学金の返済免除や減免策など、 子育て世代の負担を減らす抜本的な支援を行うこと。
七、 国土強靭化5カ年加速化対策を早期に改定し、次期法定計画の総額を18兆円に拡大し、 インフラ老朽化対策を加速すること。
件の提言書では、1の施策について、次のように説明しています。
1. 足元の急激な物価高から国民生活を守るための対策ここまで明言しているにも関わらず、岸田総理は消費税減税は考えていない、検討もしていないと言ったわけです。ということは岸田総理はこの提言書を受け取るだけ受け取って、中身も見ずに握り潰したということになります。
・岸田総理が表明した「税収増などを適切に還元する減税制度」は、消費税や所得税の減税など、多くの国民がその効果を実感でき、国民負担の引き下げと消費拡大につながる政策とすること。(消費税については、諸外国で個人消費の刺激策として実施されてきた事例5を参考に、2%の物価
安定目標を安定的に達成するまでの時限措置として、税率 5%への引き下げ等を検討すること)
・インボイスが原因で小規模事業者が減収・廃業することが無いよう、免税事業者対象の経過措置や特例措置の延長・恒久化などの抜本的支援策を実施すること。
・年度末まで継続して物価・エネルギー高騰給付金を支給するなど、国民が政府の対策の恩恵を実感出来る政策を実施すること。
・燃油のさらなる高騰にも対応できるよう、全ての油種で少なくとも年度末まで対策を継続すること。また、冬季を想定して補助額のかさ上げも含めて検討すること。
・急激な電気料金高騰に対応するため、全ての家庭や企業等に対して 12 月及び 6 月請求分を政府が全額補填すること。
5 ドイツや英国などの欧州各国では、新型コロナ下で内需を⽀えるため、付加価値税の減税措置が実施された。
責任ある積極財政を推進する議員連盟共同代表の中村裕之衆院議員は「賃上げやストックオプション(新株予約権)などの減税措置は企業向けだ。物価高で国民生活が苦しいなか、消費税の方が幅広く国民に理解しやすい……消費税の一定割合が過去の社会保障費関連の国債の償還に充てられている側面もある。法改正や特例国債の発行は必要かもしれないが、消費税を減税しても社会保障費は十分賄える。提言は岸田首相を後押しし、議論を活発化させるのが狙いだ」と述べていましたけれども、まったくその背中を押すことは出来ませんでした。
消費税減税について、早稲田大学公共政策研究所招聘研究員の渡瀬裕哉氏は「本気で消費税減税をするなら党政調会や税制調査会を通して法案を提出する必要が出てくる。社会保障費の歳出カットも必要となるため、政治家は覚悟しなければならない。ただ、政治家が本気で減税にかじを切ることは、財務省も歳出改革をやらざるを得なくなるので重要だといえる」と指摘していますけれども、現在、批判が集まっている総理や閣僚の年収が増える国家公務員特別職の給与法改正案について、成立後に増額分を自主的に返納する方向で検討に入ったと伝えられています。
どうせなら、やぶれかぶれで消費税減税をぶち上げて、力尽きるまで、財務省と闘ってみれば、もしかしたら光明が見えてくるかもしれませんね。
財務省の岸田おろしか…
— さとうさおり【怒りのサブ垢】 (@satosaori46) November 8, 2023
官僚主導の岸田政権、財務省の手のひらで転がされてるな
こりゃ来年予定されてた所得税減税(笑)が実行されるかもあやしくなってきたぞhttps://t.co/Tww3qpCBkM
この記事へのコメント
HY
岸田文雄という自民党総裁は「古い自民党」の象徴であり、その限界と馬脚を露すことに「歴史的意義」があるように感じます。早く政権から退場してもらうには、増税を先延ばしにさせるには、総裁選まで選挙は見送られた方がいいのかもしれません。