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1.勢いが萎む日本維新の会
近頃、日本維新の会の勢いが落ちてきました。
11月12日に行われた京都府八幡市の市長選挙では、無所属の新人で、自民党、立憲民主党、公明党が推薦した元京都市職員の川田翔子氏が、10516票を得て初当選。日本維新の会の新人と共産党が推薦した尾形賢氏は8334票と約2200票の差をつけられて破れました。
同じくこの日投開票の神奈川県海老名市長選でも推薦候補が敗北しています。
また、10月22日投開票の奈良県橿原市長選でも、維新は公認候補が涙を飲んでおり、維新幹部は、「地盤を一定程度構築できているはずの関西地方での敗因をよく分析する必要がある」と語るなど、党内では「一時期の追い風がやんだ」とみる向きが多いようです。
その最大の要因とみられているのが、維新が誘致を主導した2025年の大阪・関西万博です。会場建設費が当初の想定を大幅に超え、建設工事の遅れも深刻化しています。巨額の負担は、「身を切る改革」を看板としてきた維新には、イメージダウンにつながっているとも見られているのですけれども、万博問題の批判は今後も続くとされ、維新幹部からは「選挙戦と万博問題を関連づけられれば、戦いにくい」との声が漏れているそうです。
2.万博会場建設費
では万博会場建設費はどれくらいにまで膨れ上がっているのか。
実施主体の博覧会協会は、これまで会場の建設費を最大1850億円と見込み、国と大阪府・市、それに経済界の3者で3分の1ずつ負担する方針でいたのですけれども、資材価格や人件費の高騰を受けて博覧会協会が費用の見直しを進めていました。
10月20日に、博覧会協会は西村経産相と自見万博担当相、大阪府の吉村知事、大阪市の横山市長などとオンラインで会談し、その場で会場の建設費がこれまでより500億円多い、最大2350億円になる見通しだと伝えました。
これに対し、吉村知事は「建設費の増額は2回目で、1回目の際、当時の担当大臣にこれ以上の増額はないようお願いし、確認した事情もあるので、厳密に確認させてもらいたい」と述べ、見直し結果を精査した上で負担を受け入れるか、最終的に判断する考えを示しました。
また、西村経産相は、「万博として、ふさわしいものにしていく上で必要なものなのか政府としても精査したい。その上で、3分の1ずつ負担するという大原則は堅持することを前提に検討を進めていきたい」と述べています。
万博の会場建設費は、会場内で催しを開く催事場や緑地や道路、それに会場のシンボルとなる「大屋根」の建設などに使われるとしています。当初の計画では1250億円だったところ、2020年に、来場者の暑さ対策や「大屋根」の設計変更などを理由に600億円増やして1850億円に引き上げられた経緯があります。
けれども、建設用の資材価格がロシアによるウクライナへの侵攻や円安などの影響で高騰し、建設物価調査会の調査では、資材価格は9月時点でおととしから2割以上上昇しました。更に建設業界の慢性的な人手不足で人件費も上昇していて、国は実施主体の博覧会協会に、会場建設費が1850億円におさまるか精査するよう指示していました。
その結果、収まりません。3割近く増えます。当初予算1250億円からだと9割近く増えてますでは、はいそうですか、とは中々言えるものではありません。当初の見積もりがザルだったのか、それとも、原材料費がそれくらい上がっているのか。どちらにしても、予算が2倍近くにまでなるのは普通ではありません。
3.ひろゆきにボコボコにされた維新幹事長
10月22日、日本維新の会の藤田文武幹事長は、YouTubeチャンネル『ReHacQ-リハック-』に出演し、ひろゆき氏と対談したのですけれども、大阪万博の話題に移ると、ひろゆき氏に激詰めされ、ボコボコにされました。
ひろゆき氏が「大阪万博どう考えても失敗でしょうっていうのを無理やり微調整で続けようとしているのって、現状維持の微調整をやっている利権構造そのものじゃないですか……完全に間違ったことやっていません?大正解ですか?それとも今やってらっしゃるのも。それとも万博大成功する自信あります?」と切り出すと、藤田幹事長は「何を持って大成功かは……」と口ごもりました。
以下、おおよそ次のようなやり取りが交わされました。
ひろゆき氏 :何を持って成功なんですか、逆に聞きたいです終始こんな感じのやり取りで、藤田幹事長はほぼ何も答えられませんでした。何しに番組に出たのかと不安になるくらいです。
藤田幹事長:それは経済効果です
ひろゆき氏 :経済効果どうなったら成功ですか?
藤田幹事長:うんー、これでも失敗と言われているのは……
ひろゆき氏 :経済効果どうなったら 成功ですか
藤田幹事長:うーん、ちょっと改めます
ひろゆき氏 :改めないでください。大阪万博の話を幹事長が今すぐ言えないのはおかしくないですか
藤田幹事長:多くの人が海外からも国内からも賑わって、新しい技術がそこで日の目を見ていくスタートになるということなんじゃないですかね
ひろゆき氏 :使ったお金に対して、万博でどれくらい取り返すのか、あるいは投資乗数としてどれくらいを目指すのか
藤田幹事長:・・・・・・
ひろゆき氏 :僕最初に決定権あるんですかって聞いたじゃないですか。単に連絡係だから自分は数字も知らないし、何も決められませんっていうのであれば、もうそれでいいんですよ。でも藤田さん自分で決める権限あるって言ったじゃないですか。維新の幹事長でありながら、どれぐらい予算使っているのかわからない、成功がどうなったら成功かも分からないそれ無責任すぎませんか?
この時のやりとりについて、藤田幹事長は11月8日の記者会見で「私自身も党の幹事長として(万博の)旗振りをしないといけない中で、少し情けない部分を出してしまったというのは深く反省してます……ひろゆきさんの非常に上手な議論の持っていき方、進め方の中で、私もかなり未熟なところがあって、万博の件についてかなりやり込められているというか、ボコボコにされた感じがある」と振り返りました。
藤田幹事長は、具体的な数字の提示を求められ、あいまいに答えてしまったことが劣勢に立った原因だとし、「大阪も含めて、維新の会も万博誘致を公約に掲げてやってきて、世論も揺れ動いている中で、影響力のあるネット番組で……ただ、それだけで終わったらアレなんで…僕自身も頭を整理し直した」と、対談後、万博協会始め関係者と情報を交換し考えをまとめ直したと述べています。
そして、「万博が、大阪および関西または日本全国に波及していく…誘致が成功して、実施に向けてさまざまなハードルを乗り越えてやるべき価値というものについて、私は頭をいっそうさらに研ぎ澄まして整理できました。万博の良さを、問題点を再度整理して、様々なチャンネルを通じて周知できるようにしたい。できるだけいい情報として、正しい情報を皆さん知っていただけるように私も努力したい」と語りました。
4.コストよりレガシー
であれば、まさに今問題となっている万博の建設費増について、説明すべきかと思います。せめて、会場のシンボルとなる「大屋根リング」の建設に350億円かかる必要性はきちんと説明できないと、世間も納得できないのではないかと思います。
焦点の大屋根リングの建築面積は約6万平方メートル、高さ12メートル、内径約615メートル、1周2キロ。「世界最大級の木造建築物」という触れ込みで、神社や寺で使用される伝統的な「貫」と呼ばれる構法を採用しています。
発案は万博会場の運営プロデューサーの石川勝氏とデザインプロデューサーである建築家の藤本壮介氏によるもので、経済産業省から万博協会に出向している幹部は、「1970年に大成功した万博の再来で、今回も大屋根となったのですが、ここまでたたかれるとは……」と零しながらも、リングが採用された経緯について、「石川氏から『バラバラに見えかねないパビリオンをリングで一体化し、1つにまとまって見えるように』と提案があり、藤本氏がデザインを手掛けました。石川氏は2005年の愛知万博にもかかわり、大成功を収めた実績があります。協会としては、コストより万博のシンボル、レガシーになるようにぜひ、という感じでリングに決まりました」と説明しています。
そんな中、11月9日、大阪府の吉村知事は記者会見で、万博の建設費増額について質問され、「2350億円の建設費がかかるが2兆円の経済効果が出る。ある意味、経済効果やコストでは計れない、未来をつくりあげていくという意味での価値観や技術に触れてもらうという意味で非常に意味があると、大きな意義があると思うので進めています」と述べ、「大屋根リング」についても「ぼくは必要だと、やるべきだと思っています。リングのもとで一つになっていくという理念がある。世界にはない日本の木造建築技術を発信する。いろいろな意味を含めて必要だとという認識です。重要だと思っています」と答えています。
大屋根リングについては、8日、衆院内閣委員会でも取り上げられ、立憲民主党の中谷一馬氏と自見万博相との間で、次のようなやりとりがありました。
中谷一馬氏:350億円かかるということで波紋を呼んでいます。そもそもなぜ必要なんでしょうか先述の経産省幹部のによると、「コストよりレガシー」だそうですから、最初から採算度外視なのかもしれませんけれども、「レガシー」にするのであれば、なぜ万博後に壊してしまうのか。遺産を壊してしまったら何も残りません。
自見万博相:万博の理念を示すシンボルで欠かせない建築物です。リング上部の素材を変えるなどしています。夏の暑い時期に開催されるので、リングの上に屋根をつけることで日よけの熱中症対策としての大きな役割を果たしています。障害のある方、ご高齢の方にもたくさん来ていただきたいと思っていますので、来場者の健康管理の意味でもリングの役割は大きいものがあると思っています
中谷一馬氏:日よけに350億円を国民のみなさんが求めているとお考えになられているのか確認したい。これ(半年で)壊すんですよね
自見万博相:国民のみなさまには必要性をしっかりと説明させていただくということだと思っています
中谷一馬氏:警備費も増額したい、リングもつけたい、なんでもかんでも盛り込んでいて、税金の打ち出の小槌化になっています。今、円安・物価高で国民が本当に苦しんでいる現状があるなかで、350億円のリング、みんな納得できないと思っていると思います。ちゃんと見直して、優先順位をつけて身の丈に合った万博をしてもらえませんか
自見万博相:増額については資材や人件費の高騰でやむを得ないと判断したものです。コロナ後の初めての国際博覧会ですので、あらゆる世代に万博の意義をしっかり感じてもらうような万博にしていきたい
言っていることとやろうとすることとの乖離が激しいように感じますし、国民的合意がないまま暴走しているようにさえ見えてしまいます。
5.但恐徒有労人、無能感聖。
今から1300年前、聖武天皇は「人々や動植物すべての生命の安寧を願い」大仏建立の詔を発し、国家的事業として大仏造立し、今やしっかりと「レガシー」になっています。
けれども、聖武天皇の大仏建立の詔には「天皇の富と権力で尊像を造っては、大願は果たされないし、徒に民に労苦を強いてはこの事業の神聖な意義は失われる。また、この事業そのものが憎しみを産み罪を作り出すことがあってはならない」とし、「国司や郡司は造立の名の元に公民の暮らしに立ち入ったり、強いて物を供出させてはならない」と宣されていました。
吉村知事がいう「リングのもとで一つになっていくという理念」は崇高なものかもしれません。けれども、その大屋根リングの建築に際し「民に労苦を強いるばかりか、事業そのものが憎しみを産み罪を作り出すこと」になってしまうのならば、それこそ聖武天皇のいったように「神聖な意義は失われる」だろうと思います。
レガシーなるにはそれだけの「理念」があり、作り手の「思い」があります。ゆえにこそ「レガシー」になり得るのだと。
万博を実行する博覧会協会は、今一度、理念を振り返り、その実行に当たって、憎しみを産み罪を作り出すことをしていないのか振り返る必要があるのではないかと思いますね。
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