

1.自民も地方選敗北
11月12日、福島県議選(定数58)が投開票され、県議会で第1党の自民、第2党の立憲民主、第3党の共産のいずれもが現有議席を減らす異例の結果となりました。
19ある選挙区に、自民は33人(現職28人、新顔5人)を擁立したのですけれども、県連の総務会長を務める当選3回の小林昭一氏と、当選9回の元・党県連副会長の青木稔氏を含む4人が落選。議席を改選前の31から29に減らし、2015年以来8年振りに単独過半数を割り込みました。
選挙中、自民党県連幹部は「岸田首相への不信が広がり、都市部を中心に自民に相当逆風になっている」との厳しい見方をしていたのですけれども、蓋を開けてみれば、自民だけでなく、新顔5人を含む13人を擁立した立憲も、11あった現有議席を10に減らし、共産も、いわき市選挙区で当選2回の男性現職が落ち、現有議席を5から4人に落としました。
同じく、この日投開票された東京・青梅市長選でも、3選を目指した自公推薦で現職の浜中啓一氏が、新人で国民民主推薦の大勢待利明・前市議に大差で敗れました。(大勢待氏は2万6042票を獲得し、浜中氏は1万7152票)
この結果に自民党ベテラン議員は「政権への不信、怒りが突き付けられている。党幹部は焦りを感じていないのか。認識が甘いのではないか」と漏らし、都の自民党関係者は「自公協力は機能した。岸田政権、自民党への批判が、最大の逆風になった」と明言しています。
ただ、与党ベテラン議員は「雪崩的に負けないのは、野党の足踏みに助けられているからだ……世論は自民党だけでなく、リベラル野党にも期待していない」と分析しているようです。
2.閣僚の辞任ドミノ
ここにきて、各世論調査で支持率が軒並み30%以下に下落し、発足以来最低を更新している岸田政権ですけれども、弱り目に祟り目というのか、閣僚の不祥事が連発しています。
山田太郎文科政務官が女性問題、柿沢未途法務副大臣が地元の江東区長選を巡る公選法違反容疑事件に関わった不祥事で辞任。更に、神田財務副大臣が、自身が代表を務める会社が保有する土地・建物の固定資産税を常習的に滞納していたことが明らかになり辞任と辞任ドミノ状態です。
総理になったら人事をやりたいとし、「適材適所」と謳っていた岸田総理ですけれども、面目丸潰れです。
ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「自民党は、地方選挙で苦杯をなめ続けている。政策が評価されず、内閣支持率と自民党の支持がともに下落している。自民党の強みは、全国津々浦々に地方組織を持つことだが、ここから、『岸田首相の顔では選挙に勝てない』と悲鳴が上がっている。今後も地方選挙が続くが、当事者の危機感は相当なものだ。衆院の解散・総選挙は地方組織が屋台骨となるだけに、安易な解散は許容されない。岸田政権は、発足当初から危機管理が欠如し、人事の決断も遅い。今後『岸田降ろし』の流れは強まっていくだろう」と指摘しています。
もしも人事以外でも、危機管理が欠如し、決断が遅いのだったとしたら、有事の際には対応が後手後手に回ってしまうことも十分考えられます。
3.『日本のチカラ』研究会
前述の鈴木哲夫氏は「今後『岸田降ろし』の流れは強まっていく」と述べていますけれども、段々とその動きが表面化してきているようです。
11月14日、高市早苗経済安全保障担当相は、自民党内に自ら主宰する勉強会を発足させることが明らかになりました。
勉強会の名称は「『日本のチカラ』研究会」とし、高市氏が会長に就く見通しとのこと。水曜日を定例日とし、月1回か2回のペースで会合を開く予定だそうで、国力を①外交力②防衛力③経済力④技術力⑤情報力⑥人材力からなると定義して、外交や防衛、経済や情報収集などについて外部の有識者らを招いて議論していくとしています。
松下政経塾で高市氏の先輩にあたる安倍派の山田宏参院議員が呼びかけ人を務め、党内の保守系議員らの参加を見込むとのことです。
高市氏は無派閥ですけれども、高市氏に近い党内関係者は、勉強会が総裁選をにらんだ動きだと認めたうえで、「派閥に総裁選の票を固められたら、割っては入れない。今から準備を始める」と狙いを語っています。
総裁選を睨んで、高市氏以外にも、青山繁晴参院議員が名乗りを上げています。
11月10日、青山氏はインターネット番組「帰ってきた虎ノ門ニュース」で、「岸田政権になってから自由民主党内の部会などの議論が官邸に軽く扱われている。議院内閣制の破壊にも繫がる。総裁を選び直さなければいけない」という趣旨を述べ、次期総裁選には「出ます」と明言しました。
この発言について青山氏は、「野望ではなく、やむにやまれずという思い」と答えたのですけれども、出馬に必要な20人の推薦人確保は未定だとしています。
更に、青山氏は、岸田総理が年内の衆院解散見送る方針を固めたことについて、「党内の雰囲気がガラッと変わった。特に振り回された若手議員たちからは憤懣が出ている。岸田政権は来年9月までもたないのではないかという声も党内では聞かれ始めた」と明かしていますけれども、この通りであれば、確かに「岸田降ろしの風」が吹き始めたとみてよいように思います。
4.岩盤保守層が離れてしまった
高市経済安保担当相も青山参院議員も、党内保守派とされる議員ですけれども、自民党の中には、支持層から保守層が抜けてしまったと見る向きもあります。
11月14日、自民党の高鳥修一衆院議員は、党有志の保守系グループ「保守団結の会」の会合で、6月に成立したLGBTなど性的少数者への理解増進法について「内閣支持率や政党支持率が軒並み下がった大きな要素は理解増進法の成立だ。安倍政権を支えた岩盤保守層が離れてしまった」と述べました。高鳥氏はLGBT理解増進法の採決時に衆院本会議を途中退席していますから、筋は通っています。
LGBT理解増進法については、識者らは懸念を示していましたけれども、推進派の議員は理念法だから、女湯に男が入ってくるなんてことはないと断言していました。
ところが、6月にも三重県の入浴施設で、女装した50代の男が女性用浴場に侵入し逮捕され、11月13日にも、三重県桑名市長島町にある温泉施設の女性風呂に43歳の男が女湯に侵入したとして逮捕される事件が起きています。
どちらの男も「心が女なので、女だ」とし、女湯に入るのは当然だと主張しているようですけれども、最高裁は10月25日に、性転換手術を受けていなくても戸籍上の性別を変更できるとの判断を示しています。
これに従えば、「性自認」は体の見た目や機能ではなく、自己申告でOKということですから、逮捕された男らの主張は合法ということになってしまいます。無茶苦茶です。
こういう話が表に出てくるようになったということは、やはり、それだけ「岸田降ろしの風」を受けている影響もあるかもしれません。
果たして、来年の総裁選にむけて、自民党内の保守派がどう動くのか。そして離れてしまったとされる岩盤保守層を引き戻すことが出来るのか。注視したいと思います。
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