岸田政権をここから回復させる方法

今日はこの話題です。
画像

 ブログランキングに参加しています。よろしければ応援クリックお願いします。


2023-11-22 144400.jpg


1.GDPマイナス成長


11月15日、内閣府は7‐9月期の実質国内総生産(GDP)速報値を発表しました。

それによると、GDPは前期比年率2.1%減。減少幅は市場予想の前期比0.4%減を上回る0.5%減。個人消費は0.04%減、設備投資は0.6%減、と、こちらは、いずれも市場予想を下回りました。

マイナス成長は3四半期ぶりのことで、2020年以降6回目。物価高や円安でGDPの5割以上を占める個人消費は盛り上がりに欠け、設備投資にも影響が出始めているとの見方もあります

先月末、日銀の植田和男総裁は2%の物価安定目標の「見通し実現の確度が少し高まってきている」との認識を示し、こうした発言から市場では早期の政策修正観測がくすぶっているのですけれども、ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査部長は、「市場では日銀の早期正常化観測が増えているが、経済という面からみるとそのシナリオにはリスクがある……日銀が正常化を好調な経済を受けて行えるかは不確実性がある」と、景気の弱さを示した今回の結果は、日銀の現行政策の継続を後押しする形にもなると述べています。

また、ブルームバーグ・エコノミクスの木村太郎シニアエコノミストも「日本の第3四半期GDPは予想を大幅に下回り、日銀の金融緩和継続を後押しする結果となった。縮小幅の大きさだけでなく、主な原因である内需の低迷も懸念材料だ。家計は消費力を奪うコストプッシュ型インフレに直面し、支出を抑えた。企業は設備投資を削減した」と指摘しています。

内閣府は、7‐9月期は物価上昇の影響で食品など個人消費に下押し圧力がかかった上、供給制約の緩和や円安の影響で自動車輸出が加速し、製品在庫が減少したことなどが成長率を押し下げたと説明。新藤義孝経済再生相は、「個人消費や設備投資といった内需は力強さを欠いていた」と指摘。経済対策で「物価高対策や国民の可処分所得の下支えに万全の対策を講じるとともに、構造的賃上げに向けた供給力の強化を図る」とコメントしています。


2.実質賃金18ヶ月連続減


マイナスなのでGDP成長率だけではありません。実質賃金もそうです。

11月21日に厚生労働省が発表した9月の毎月勤労統計調査(従業員5人以上)では、物価を加味した実質賃金(確報値)は、前年同月比2.9%減と、7日に公表した速報値の2.4%減から更に0.5ポイント下方修正されました。厚労省は速報値の計算後に届いたデータを集計した結果、パートらの割合が増え、名目賃金が下がったのが要因としています。

名目賃金に当たる現金給与総額は確報値で0.6%増の27万7700円(速報値では1.2%増の27万9304円)だったのですけれども、毎月勤労統計で用いられる消費者物価指数は、持ち家の帰属家賃を除くベースで、9月は3.6%上昇と、物価の上昇に賃金の伸びが追いつかず、実質賃金は18ヶ月連続のマイナスという結果となっています。

政府はデフレ脱却に向け、総合経済対策において賃上げ促進税制の延長・拡充や、所得・住民減税などによる可処分所得の増加を盛り込み、個人消費の喚起を起点とする経済好循環の実現を目指しているのですけれども、これら政府の経済対策について、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員は、物価対策以外はGDPのマイナスを補うような経済対策になっていないと指摘。物価高が消費と投資に直撃する中、「円安が止まるのか、さらに円安となって年明けの物価を押し上げてしまうのかが、緩やかな景気回復を継続できるかどうかのポイント」との見解を示しています。


3.悪いことはしてないのだけどな


11月20日、その政府の経済対策・補正予算案が衆院本会議で審議入りしました。

岸田政権内では先日の日中首脳会談の実現で「内閣支持率の続落に歯止めがかかるかも」などという淡い期待があったそうなのですけれども、現実は甘くありませんでした。

朝日新聞25%、毎日新聞21%、読売新聞24%と、報道各社の調査は軒並み過去最低の支持率を記録。朝日新聞では、自民が政権に復帰してから最低だった菅義偉内閣の2021年8月の28%を下回りました。

朝日新聞によると、低迷する内閣支持率に岸田総理は「悪いことはしてないのだけどな」と呟いたそうですけれども、SNSでは《そうだね、悪いことはしてないよ。でもね、良いこともしてないんだよ!》、《任命責任取りましたっけ》、《悪い事はしてないかも知れないけど、やってる事は全て的外れ》などの批判が多く書き込まれています。

ある政治記者は「支持率低下のおもな要因としてあげられるのは『遅い、少ない』と評判が悪い、2024年6月に予定されているひとり4万円の定額減税。そして、不倫で山田太郎文部科学政務官、東京都江東区長選挙での買収疑惑で柿沢未途法務副大臣、税金滞納で神田憲次財務副大臣の政務三役が、相次いで辞任した人事です。自民党内には『やることはやっている。国民への発信力が弱いだけだ』と擁護する声もありますが、政府は11月20日に2023年度の補正予算案を国会に提出、本格的な議論が始まったこの国会で、それらが追及されることは間違いありません」と指摘しています。

この記者は、20日の本会議での、各党の代表質問に対する答弁についても「20日の衆院本会議でも、立憲民主党の鎌田さゆり氏から『国民に還元するという発言は根拠がなく、誤りだったと認め、訂正すべき』と質問されると、首相は『単年度ではなく、コロナ禍からの国の財政の全体を通して見れば、国民のみなさまからいただいた税金の一部を国民のみなさまにお返ししていることになる』『国民から見れば、税金が戻ってくるという意味で、還元そのものだ』と答弁して、議場で失笑が起きました」とコメントしています。


4.国民に尊敬されない総理


今の岸田政権は、世論調査をするたびに内閣支持率が下がるという現象に見舞われているのですけれども、とうとう「このまま選挙をすれば自民党は単独過半数割れする」との声が上がり始めたそうです。

デイリー新潮の政治部デスクは「「11月12日に投票が行われた東京・青梅市長選は自公が推薦する現職と国民民主と都民ファーストが推薦する新人とがぶつかり、現職が破れました。選挙中からもしかしたら厳しい結果が出るかもしれないとささやかれていましたが、本当にそうなってしまって関係者は一様にショックを受けています」と述べ、続けて「岸田文雄首相や側近らは表向き平静を装っているようですが、本心では焦りまくっているはずです。青梅市は東京25区に組み込まれていますが、ここは自民が民主に政権を明け渡すことになった2009年の衆院選でも自民候補が対立候補にダブルスコアで勝利しています。そんな保守系の牙城での敗北は想定外で、自公の関係者は慌てて敗因分析をしていましたが、なかなか深刻なようですね」と指摘しています。

更に、「2009年の政権交代の頃までは、国民の間で“自民に失望した、民主に一度やらせてみたい”といった雰囲気が醸成されていたことがありました。が、今は自公政権への失望はあっても民主や他の野党にやらせてみたいという空気はありません。それだけに敗因分析が難しいようです……それぞれが各々の担務に絡んだスキャンダルでしたから悩ましい事態です。特に神田憲次財務副大臣の場合は、税理士資格を持ちながら代表取締役を務める会社が税金を9度も滞納し、土地や建物の差し押さえは4度にわたり、立て替えてくれていた知人に返金されていないとの報道もありました。“脚本家でも書けないシナリオだよなぁ”とボヤいている閣僚経験者がいましたね(笑)」とコメントしています。

自民党の衆院勢力は現在262で、公明を足して294議席です。過半数は233ですから、自民は30議席減らすと単独過半数割れとなります。頼みの公明党も数議席減らすと絶対安定多数の261の確保も危うくなってきます。

先述のデイリー新潮政治部デスクは、「このまま解散できない状況が続けば、来年9月の自民党総裁選で総裁に選ばれた人が次の衆院選を戦うことになりそうです。それまではまだ時間もあるので、岸田政権の方に支持の揺り戻しが起こる可能性はもちろんあります。ただ、永田町関係者との会話の中でよく出てくる話として、”岸田首相が国民から支持されていないという以上に国民から尊敬されていないのでは?”というものがあるんです」と語っています。

というのも、安倍元総理や麻生元総理のような一部の熱烈なファンが見えてこないからだというのがその根拠のようです。


5.盛り上がりに欠ける岸田降ろし


それにしても、岸田内閣の支持率の下落は目を覆うばかりです。

時事通信の世論調査で6月に35.1%あった支持率は11月には21.6%と半年足らずで3分の1を失っています。

ある自民党関係者は、「ここまで来たら、衆院を解散すらさせてもらえないんじゃないか」とため息をつく程だそうです。

ただ、その一方、自民党内で「岸田降ろし」の風が強力に吹いているようにも見えません。

11月17日、自民党の世耕弘成参院幹事長は記者会見で、高市早苗経済安全保障相が発足した勉強会について「現職閣僚がこういう形で勉強会を立ち上げるのはいかがなものか」と苦言を呈しました。これに高市氏はX(旧ツイッター)に「何が悪いのか、意味が分からん」と反論。すると、21日、世耕氏が「政権を支えることが極めて重要なタイミングだ」と再反論するなど、「岸田降ろし」の風を止めさせようとする動きさえあります。

自民党内で「岸田降ろし」が盛り上がらない理由については、識者が色んな指摘をしていますけれども、自民党内に有力なポスト岸田が見当たらないことや、野党がバラバラであることなどが指摘されています。

岸田総理はこれまで派閥の領袖である麻生太郎副総裁、茂木幹事長と週一で集まり、政権運営の方向性を話し合ってきました。その態勢は「三頭政治」とも呼ばれてきたのですけれども、神奈川大学法学部の大川千寿教授は「茂木氏をはじめ、岸田首相にとって主要なライバルとなり得る人物を閣内や主要ポストで取り込みつつ、新旧や派閥のバランスを考慮する」と指摘しているように、自身の座を脅かすライバルを作らせないことで、その座を守っています。

けれども、一度、支持率が低迷してしまうと、その「絶妙な」人事であるが故に、ズルズルと政権が続いてしまうという逆ネジが働いているようにさえ見えてしまいます。

2023-11-22 144401.jpg



6.相打ち覚悟だったのにビビって損したぜ


ただ、だからといって、このまま岸田政権の支持率が回復しなければ、次の総選挙がどんどん苦しくなってきます。

仮に岸田総理が”国民から尊敬されていない”のであれば、岸田総理が発する言葉は、国民に刺さらないことを意味します。

となると、もしも岸田内閣の支持率を回復させる手立てがあるとするならば、それは「言葉」ではないもので行わなければ効果は望めないと思います。

それは何かというと、「結果」と「行動」の2つです。

まず「結果」についてですけれども、これまで筆者が何度ものべてきたように、国民は「現状維持」を求めていると考えています。ところが今は冒頭で示したとおり、物価上昇に賃金が追い付かず、可処分所得が減り続けています。つまり「現状維持」が破壊されている訳です。

これを最低でも「現状維持」にまで持ってくる必要がある。けれども、所得減税は来年6月のことで、それさえ原資がないだのなんだので騒いでいる状態です。となると、トリガー条項凍結解除なり、給付金増額なり、即効性かつ継続的な施策が求められます。

もし、「結果」を直ぐ出すことができない場合は、少し我慢してもらえればきっとよくなるという見通しを示すことです。岸田総理は10月4日の会見で「明日は今日より必ず良くなる日本を作るために努力を続けていきたい」と訴えていましたけれども、既に岸田総理が国民から尊敬されておらず、その言葉が国民に届かない状態なのであれば、いくら見通しを述べたところで、駄目でしょう。となると言葉ではなく「行動」でその見通しを示すしかありません。

その行動として一つ上げられるものがあるとすれば、筆者は「改革の姿勢」「戦う姿勢」だと思います。

所得税減税すると宣言し、閣議決定までしておいて、わずか一週間かそこらで、財務相から「財源はない」と否定されるばかりか、それを放置している。戦国の世なら打ち首でしょう。

もし、閣議決定に逆らったということで、鈴木財務相を更迭し、ついでに財務事務次官以下何名かの首を飛ばすくらいしてやれば、国民にもその本気度は伝わると思いますし、ここまでやるのなら、国民も「もしかしたら明日は今日より良くなるかもしれない」と希望を持ってくれるかもしれません。

昨日のエントリーで、菅総理は事実をぶつけて官僚を説得し動かしていったことを紹介しましたけれども、嘉悦大学教授の高橋洋一氏は、岸田総理が財務省を説得できていないと指摘し、他の施策で支持率を回復させてから解散・総選挙と思っていたら、手遅れになると述べていますけれども、筆者もそう思います。

ここから岸田政権を回復させる手があるとするならば、刺し違えする覚悟で抵抗省庁と闘ってみせるくらいしないと難しいのではないかと思います。けれども、やってみたら案外ビビッて損したなんてことになるかもしれませんね。



  twitterのフリーアイコン素材 (1).jpeg  SNS人物アイコン 3.jpeg  カサのピクトアイコン5 (1).jpeg  津波の無料アイコン3.jpeg  ビルのアイコン素材 その2.jpeg  

この記事へのコメント

  • 簑島

    自民党に単独過半数以上与えたって、結局憲法改正等の必要なことはしないし、増税はする予定なのはみなわかっているし、いい変わりがありさえすればすぐにでも政権交代していただきたいというのが本音でしょう。
    2023年11月23日 08:53