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1.教育無償化を実現する会
11月30日、国民民主党の前原代表代行は、党に離党届を提出し、自身も含め5人で新党「教育無償化を実現する会」を結成することを表明しました。
国民民主から離党する5人の議員は次の通りです。
・前原誠司衆院議員 :京都2区前原新党=「教育無償化を実現する会」は、党名の通り、教育の無償化や奨学金の返済免除などを掲げ、今後、同じく教育の無償化を訴えている日本維新の会を中心に連携を模索するものとみられています。
・斎藤アレックス衆院議員 :比例
・鈴木敦衆院議員 :比例
・嘉田由紀子参院議員 :滋賀選挙区
・徳永久志衆院議員 :比例
前原氏は「政策本位で非自民・非共産の野党結集を進めたい」と新党への抱負を述べていますけれども、他の与野党各党からは、「大規模な野党勢力の再編にはつながらない」という指摘に加え、国民民主党が岸田政権との協調をさらに強めるのではないかという見方が出ています。
この日の午前、岸田総理は自民党本部で麻生副総裁、茂木幹事長、森山総務会長、萩生田政務調査会長、小渕選挙対策委員長の党執行部のメンバー5人とおよそ30分間、会談し、その中で前原氏が新党の結成を検討していることが話題になり、今後の政治情勢への影響などについて意見を交わしたようです。
また、自民党の森山総務会長は派閥の会合で、「今後もいろいろな動きが続くと思うが、今は自民党と岸田政権にとって極めて大事なときだ。一致団結して政権を支え、自民党の将来を間違いのない方向に持っていくことがいちばん大事だ」と述べました。
また、共産党の志位委員長は記者会見で「国民民主党と日本維新の会は今回の補正予算に賛成し、憲法改定や原発推進の旗振りをしていて、自民・公明両党と同じだ。野党ではないので、野党が分裂しているという話ではない。『悪政4党連合』の中での離合集散にすぎず、新党結成で新しいものが生まれてくるようなことはない」と否定的です。
一方、連携が噂される維新の会の馬場代表は、記者会見で、「いろいろな場面で前原氏とつきあいがあるので、いつとは言えないが、新党を考えていることは事前に聞いていた。前原氏は議員経験が長く、豊富な経験を持っていて、政策面ではずいぶん勉強している……前原氏が結成する運びの『教育無償化を実現する会』と来年2月の京都市長選挙で協調していくと思う。われわれは是々非々で各政党とつきあうことを基本原則で政治活動をしているので、前原氏の新党とも協調できる部分は積極的に協調していく」と早くも連携を匂わせています。
2.仲間や支援者をだます政治家
前原代表代行が離党することになった国民民主党は、11月30日午後1時からおよそ30分間、国会内で緊急の執行役員会を開き、対応を協議し、今後の対応について、玉木代表と榛葉幹事長に一任することを確認しました。
榛葉幹事長はその後の記者会見で「政党交付金目当てか分からないが、年の暮れに新党をつくろうとする行動は国民・有権者はうんざりではないか。新党の綱領や政策はほとんど国民民主党のパクりだ。極めて残念で、筋が通らず、裏切りだ……仲間や支援者をだます政治家を国民が信頼するとはとても思えない。そもそも比例代表で当選した人は議員辞職すべきだ。われわれは政策実現のためにしっかりとスクラムを組み、確実に党勢拡大していく」と批判。前原氏らの離党届を受理するかどうかについては「中身を確認してからだ」と述べるとともに、除籍も含め、選択肢になり得るという認識を示しました。
榛葉幹事長が前原氏のことを「仲間や支援者をだます政治家」と断じたのは、前原氏が直前まで離党しないと述べていたからです。
11月24日、京都新聞は、国民民主が24日の衆院本会議で政府の補正予算案に賛成する場合、離党する意向を関係者に伝えたと報じました。
この記事について、前原氏は24日、X(旧ツイッター)で、「補正予算の賛否を理由に、重大な政治決断をすることはありません。本人に確認することなく、この様な記事を書くとは。誤報です!」と完全否定。また、後に玉木代表が明らかにしたところによると、離党報道が出た後、玉木代表が前原氏本人に直接電話して「離党するんですか?」と聞いたら「しません」と言っていたのだそうです。
それが、わずか6日で離党して新党結成を発表。記者会見では、「トリガー条項」をめぐり、国民民主党を「凍結解除に体重をほとんど乗せ、極めて支持率の低い岸田政権と協力を模索している」と批判。後ろ足で砂を掛けています。
この態度にSNSは炎上。Xでは「前原さんこれはいけませんね、完全に正確な報道でした」「一般人から見ると『ただの嘘つき』でしかないですよね」「ま、まだ6日しか経過してませんよ…」とツッコミが殺到。「こういうのは変な嘘つかずに正直に言った方が印象いいですよ。京都新聞カワイソス」「うだうだ言わずにはやく京都新聞に謝って」と、誤報呼ばわりされた京都新聞への同情の声すら上がる始末です。
実際、テレビ東京官邸キャップの篠原記者は、前原氏の新党結成会見について、「のぼり旗といい、ロゴといい、新党結成に向けてすでに準備万端だったという印象でした」と述べていますけれども、これほどの準備を一週間かそこらで出来る筈がありません。つまり、京都新聞の報道の時から急に心変わりして離党することを決めた訳ではないということです。
玉木雄一郎
— Iumo (@Iumo13) November 28, 2023
「前原誠司の離党報道(本人否定済み)が出た後、本人に直接電話して『離党するんですか?』と聞いたら『しません』と言ってた」
ストレートすぎて草 pic.twitter.com/avAA2mbSRz
のぼり旗といい、ロゴといい、新党結成に向けてすでに準備万端だったという印象でした。 pic.twitter.com/rGnJ50CQN4
— 篠原裕明@テレ東 (@shino7878shino) November 30, 2023
3.対立していた玉木代表と前原代表代行
玉木代表と前原氏の党運営に関する対立は、9月に行われた国民民主党の代表選で明らかになっていました。
国民民主の代表選は、玉木代表の任期満了に伴うものだったのですけれども、代表選では、与党や他の野党との連携のあり方が大きな争点となりました。
玉木代表は国民単独で党勢拡大を目指し、与党との連携の必要性を打ち出したのに対し、前原氏は立憲民主党や日本維新の会など、「非自民・非共産」の野党勢力の結集を掲げ、玉木代表の党運営を批判しました。
玉木代表は、前原氏が主張する「大きなかたまり論」について「具体像が全く見えない。『反自民・非共産』では、大事な政策で結局分かれ、いつまでも過半数に届かない見果てぬ夢だ」と痛烈に批判。その後の街頭演説でも、2017年に当時、民進党代表だった前原が東京都知事の小池百合子と組んで失敗に終わった「希望の党騒動」などを念頭に「古いやり方に戻っても展望が開けない。新しいやり方が必要だ」と強調。二大政党でなく、穏健な多党制による政権交代が現実的だという認識を示していました。
これに対し、前原氏は、去年、大きな波紋を呼んだ国民民主党による政府の当初予算への賛成を取り上げ「当初予算に賛成することは政権の森羅万象に賛成することだ。われわれに投票してくれた人を愚弄するものだ」と指摘。さらに「玉木個人商店からの脱却」を主張するとともに、政策実現のための与党との協調について「結果的に野党分断を呼び、自民党を利しているだけ」との批判を展開しました。
代表戦の結果は、玉木代表が約7割の得票を集め、圧勝したのですね。
この結果を受けて、党内からは「政策実現を重視する玉木氏の路線が信任された」とする声が上がる一方、「政策実現を支持したのであり、与党との協調路線を強め、仮に連立政権入りなどということになれば大きな違和感がある。ついて行けないという議員が多いはずだ」との懸念の声も出ています。
また、ある党の公認候補予定者は「玉木さんは比例代表の票を増やせばいいと思っているかもしれないが、若手は小選挙区での勝利を目指して活動している。そこが見えないので、小選挙区で勝てるよう野党で協力しようという前原さんの主張にも一定の理解はできる」と指摘しています。
激しい選挙戦を繰り広げた前原氏は、このとき「ノーサイド」を主張していたのですけれども、玉木代表が自民・公明両党との連立政権入りに動くような事態になれば「ノーサイドではなくなる」と周囲に漏らしていたそうで、前原氏は選挙戦を通じて「維新の馬場さんとは数年前から勉強会をやっている。私に任せてほしい」と候補者調整に意欲を示していたそうです。
4.前原氏は白か黒か
このように9月の代表戦の段階で前原氏の離党の芽は芽吹いていたのですけれども、今年何度も解散風が吹いた中で、新党を立ち上げてどこまで勝算があるのか。
これについて経済評論家の渡邉哲也氏は「前原新党 5人集めたので政党助成金は出るが、3人は比例復活(立憲1.国民2)で、このままでは次の当選はないでしょうね。そのまま維新にはいけないので、一旦、新党立ち上げて、次の選挙で維新と合流ですかね」とツイートし、次の選挙までに維新の会と合流する腹積もりだと指摘しています。
一方、維新の側も前原氏の接近に満更でもないようで、日本維新の会の馬場伸幸代表は、記者会見で「国民民主党とはかねて政策で協調してきた経過がある。中でも前原氏とは国家像、あるべき国の姿を議論、調査、研究してきた。昨年の参院選京都選挙区では維新と国民民主京都府連が協調し、政策面、政治活動面でお付き合いしてきた。「教育無償化を実現する会」とは、協調できるところは積極的に協調する。いつとは言えないが、そういうことを考えているということは(前原氏から)事前に話は聞かせていただいていた。教育無償化が非常に有効というのは徐々に広がっていると思うので、日本全国で行われるように、前原氏が率いる新党としっかりとスクラムを組んでやっていきたい」と述べています。
これについても、前述の渡邉氏は「維新 前原新党と連携するようですが、厄介な前原さんとトラブルメーカーの嘉田さん飲み込むと大変だと思う。共に政界歴は長く、食えない人、維新の議員振り回されると思う」とツイートしています。
7月26日のエントリー「日本維新の会は第二の自民党になるか」で取り上げましたけれども、維新の馬場代表は、維新は「第2自民党」でいいとし、「我々は黒と言う人だけで集まり、自民党と対決していく」と述べていました。
前原氏が「黒」という人であれば、維新と連携するなり、合流するなりできるかもしれませんけれども、もしも、「黒に見せかけた白」だとか、「白にはならない」といっていて、一週間後に「白」になったりするのであれば、確かに振り回されることになるのではないかと思います。
前原氏の離党について、国民民主の榛葉幹事長は「仲間や支援者をだます政治家を国民が信頼するとはとても思えない」と批判していますけれども、果たして前原氏は維新を騙して裏切ることはないのか。ちょっと様子を見たほうがよいのではないかと思いますね。
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