岸田さんはそんなにダメな首相なのだろうか

今日はこの話題です。
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1.三割を割った内閣支持率


岸田政権の内閣支持率が続落しています。

朝日新聞が11月18~19日に全国世論調査で、岸田内閣の支持率は25%と前回10月調査の29%から4ポイント低下。不支持率は65%と前回から5ポイント増加しました。政府が経済対策に盛り込んだ減税と現金給付について「評価しない」は68%で、「評価する」の28%を大きく上回りました。

支持率は、2012年12月末に自民党が政権に復帰して以降の11年間で、菅義偉内閣の21年8月の28%を下回り、最低。不支持率も、最高だった前回を更新しました。支持率が25%以下になるのは、民主党の野田佳彦内閣時代の最後の調査となった12年12月上旬の21%以来のことです。

他社の11月の世論調査での支持率をみても、日経新聞テレビ東京がかろうして30%で、その他は軒並み20%台となっています。




2.浮動票が減った深刻な理由


岸田内閣の支持率急落について、名古屋商科大学ビジネススクール教授の原田泰氏は、12月1日の「ダイアモンドOnline」への寄稿記事で次のように述べています。
・2021年10月に岸田内閣が発足して以来、徐々に支持率を高めてきた。これは、コロナウイルスワクチンの接種が進み、感染者が減り、コロナ収束の希望が見えたからだ
・ところが、22年8月以降、支持率が低下してきた。その後23年になると徐々に支持率を高めたものの、6月以降は再び低下傾向となった。
・2022年8月以降の低下は、旧統一教会と自民党の癒着のスキャンダル、安倍晋三元首相の国葬の決定が影響しているとされている
・2023年3月の上昇は、戦時下のウクライナに赴き、ゼレンスキー大統領と会って連帯を示したことによる。
・23年5月の上昇は、広島サミットで、G7首脳がそろって平和記念資料館を訪れ、献花したからだ。後に歴史の教科書に掲載されるような写真を見れば、支持率が上がるのも当然だ。
・しかし、外交は票にならないといわれるように、支持率を長期的に維持する効果を持たず、低下していった。
・6月以降の低下は、マイナカードを巡る混乱だろう
・私が注目したいのは「分からない」と答える人の動きである。こう答える人は通常は25%程度ある。
・岸田文雄首相は、安倍元首相のような、一方で根強い支持があり、他方で「安倍嫌い」がいるというキャラではない。
・熱心な味方がそう多い訳ではないが敵も少ないというタイプだろう。となると、「分からない」と答える人が一定数で推移しそうだが、実際には傾向的に減っている。
・内閣発足直後は「分からない」が多かった。これは、まだ何もしていないのに評価は早いという冷静な判断だろう。その後、「分からない」が減って、支持が増えている。「分からない」から、支持に転換した人がいたのだ。
・22年9月では不支持が急増するが、同時に「分からない」が減っている。「分からない」から不支持に変わったのだ。その後、広島サミットで支持率が高まった後、年末の不支持急増へと続く。この時、「分からない」が継続的に減少している。
・支持率の低下は、「分からない」と答える慎重な層に徐々に見限られたのが理由ではないだろうか。
・なぜ、「分からない」と答える慎重な層に見限られたのか。識者の議論は、所得税などの定額減税が「選挙対策に見える」などと不評を買い、支持率低下につながったというものが多いようだ。
・しかし、このような議論は、私には、減税しても支持率は上がらないと世論誘導しているような気がしてならない。
・減税は、民のお金を民に返すものだからすべて良いことであるのに、減税が悪いかのような議論は私には理解できない。政治家が選挙目当ての行動をするのは当然で、選挙目当てでも減税するのは良いことだと私は思う。
・増税主義者と思われていた岸田首相は、「経済成長の成果である税収増などを国民に適切に還元する」と語った
・一般会計税収の対GDP比は、自民党が政権に返り咲いた2012年度の8.8%から2022年度には13.0%まで4.2%ポイント上昇している。
・GDPとは、国民のすべての所得を足し合わせたものである。税収がそれに対して増えているということは、増税しているのと同じである。
・うち、国民に明示的に問うて増税したのは、消費税増税の5%分、対GDP比では2.5%分のみである。残りの1.7%分(4.2%-2.5%)は、国民の許可を得ずに増税したのと同じである。
・名目GDPが増えれば、名目所得も上昇して累進課税の上の階級に行く。すなわち、例えば、今まで10%の税金ですんでいた人が、所得が330万円以上に上がれば、330万円以上の分については20%の税金を払わないといけなくなる。
・この結果、税金が重くなる「ブラケット・クリープ」が発生する。しかも、一般会計には含まれないが、社会保険料の引き上げもある。
・国民には、頑張って働いて給料も増えたのに手取りが増えないという実感がある。
・残念ながら、政治家は、この感覚が分からないようである。この感覚があれば、この増税分のいくらかを還元するのは当然のことと力強く表現できたのではないか。
・岸田首相が尊敬するという宏池会の創始者、池田勇人元首相こそ、この感覚が最も分かる人だった。
・高度成長時代、所得が上がれば、累進課税の上の階級に行って、手取りが目減りする。だから、常に減税をして、税収の対GDP比が上昇しないようにしていたのである。
・岸田首相には、池田元首相に学んで、この感覚を理解していただきたい。そうすれば、「分からない」と答える人々の支持を失うことはなかったのではないか。
このように、原田泰氏は「国民には頑張って働いて給料も増えたのに手取りが増えないという実感があるのに、岸田総理はそれが分かってない」と指摘しています。

筆者はこれまで何度も、国民が現状維持を求めているのに、国際情勢、内政その他によって、現在それが破壊されている、それを食い止めることが出来ていないから支持を失っているのだ、と述べてきましたけれども、それと機を一にするように思います。


3.庶民とかけ離れすぎ


また、OHK岡山放送の「急上昇ニュース」では、急落する岸田内閣の支持率について、次のように分析しています。
・経済の専門家の視点
岡山大学大学院 中村良平特任教授:「支持率が下がっている最大の理由は、岸田内閣がやろうとする政策に『裏があるのでは』と国民が思っている。増税すると言っておきながら給付をする二枚舌、ダブルスタンダードでやっているから……もう一つは、物価高と言ってもアメリカみたいに消費が強いのではなく、円安で上がっている。景気がいい訳ではない。日本の圧倒的多数は中小企業なので、賃金をそう簡単に上げられない。大企業の内部留保をもっと吐き出させないといけないが、献金もらっていますからね」

・経済界
岡山経済団体連合会 中島基善座長:「小手先ばっかりやるからダメなんでしょうね。先送りしているだけで根本的な解決になっていない。もう少し将来的なビジョンを言って、こうしますから国民も我慢してください。その代わり将来的にこうなりますと(言った方がいい)……もっと岸田さんも、若者に対して受けることをやった方がいいんじゃないか。減税するにしても、生活困窮者とか若者に対してだけ。年寄りはいいから若者向けの対策をやらないと。若者だって馬鹿じゃないから、国が厳しいはずなのに『ここでなぜ減税?結局それは先送りでしょ?自分たちに関わってくることじゃないの?』となる。そういう若い人に対するメッセージが足りない」

・行政
岡山市 大森雅夫市長:「経済対策、定額減税などが言われているが、困っている国民に対してやっていただいているという事で、岡山市長としては評価したいと思う」

・岡山市内
「(岸田首相は)庶民とかけ離れすぎ。もっと人間の心に寄り添える人かと思った。権力を持つと変わるのかとガッカリ」
「色んな人から話を聞いていると思うが、身近な人の意見ばかり聞いて一般市民の意見は届いていないのでは。聞きたい事は聞くけど、聞きたくない事は聞かないのでは」
「評価できると思う。もっと国民に業績を言った方がいい」
ここでは、「ダブスタが見抜かれている」「将来の見通しを語っていない」「庶民とかけ離れすぎ」という意見は並んでいますけれども、端的にいえば「庶民の気持ちが分かっていない」ということだと思います。これは、先述した、世論調査で「浮動票が減った」のは、庶民の実感を岸田総理が分かってないからだという指摘と同じです。




4.岸田さんはそんなにダメな首相なのだろうか


先日、経団連の十倉会長は記者会見で、「岸田政権の取り組みを評価する」と発言しましたけれども、11月24日、フジテレビ上席解説委員の平井文夫氏は、FNNプライムオンラインに「岸田さんはそんなにダメな首相なのだろうか。こんなに実績があるのに」という記事を寄稿しています。

記事の概要は次の通りです。
・今週も岸田文雄首相にとっては辛い月曜となったであろう。読売新聞の支持率が初めて20%台となり、朝日、毎日も続落したからだ。
・国会の予算委員会が始まり、支持率低下の一番の原因である所得税減税のほか、政務3役の不祥事、大阪万博の経費問題など、野党にボコボコにされ、ほぼサンドバッグ状態だった。
・今、テレビ局や新聞社から電話がかかってきて「岸田内閣を支持しますか」と問われた時、よほど熱心な自民党員でない限り、「はい支持します」とは言いにくいと思う。
・世間は岸田首相を支持したり、ほめたりするのが、はばかられる雰囲気になっている。
・私も岸田政権を評価する記事を書くと読者の皆様からものすごくお叱りを受ける。
・冷静に考えてみて、岸田さんというのはそんなにひどい首相なのだろうか。就任して2年がたつが実は実績は色々挙げているのだ。
・直近では原発処理水の放出を断行した。決めたのは菅義偉前首相だが、やはり実行に移す方が大変だ。案の定一部の野党やメディアは大騒ぎしたし、中国は海産物の禁輸に踏み込んだ。
・処理水問題では中国は国際社会では明らかに孤立しており、もうほぼ「終わった」話だ。多くの国を味方につけた日本の外交的勝利だ。韓国の対応が大きかった。尹錫悦大統領はブレずに、日本側についた。
・対韓関係の改善も大きな実績だ。日韓のトラブルは慰安婦、徴用工で長期的に厳しい状況だが、尹政権が頑張ってここまで戻してきた。日本も余計なことをせず、輸出手続きのホワイト国再指定など最低限の妥協にとどめて、うまく軟着陸した。
・危険を冒してあえて行ったウクライナ訪問、バイデン米大統領らを原爆資料館に招いた広島サミット、安全保障では反撃能力保有の容認、エネルギーでは原発への積極的な関与など、多くの実績がある。
・防衛増税に批判が多いが、防衛力強化に税金を払うのは当たり前で、しかも所得税は今の50歳以上の人にはほとんど関係ない。
・もちろん文句を言いたいこともある。LGBT法の拙速な成立は、バイデン氏の原爆資料館訪問のバーターだったのかもしれないが、維新と国民の案を丸呑みするという極めてみっともないやり方で保守派の離反を呼び、今の支持率低下の遠因となっている。
・「異次元の少子化対策」をするのはいいのだが、所得が2000万円や3000万円の人たちに児童手当をあげるために現役世代が多く負担する社会保険料を値上げするのはナンセンスだ。これでは子供は増えない。
・よく「岸田首相は発信力が弱い」という批判があるのだが、実は国民が首相に求めるのは「発信力」や「説明力」ではなく「実行力」だという調査結果が出ている。
・今の不人気の理由は国民の「気分」ではないのか。
・だったら年が明けて賃金が上がり、物価も落ち着いて、減税も実施されて、一息つけば国民の「気分」も晴れるのかもしれない。
・どうやら今の自民党には岸田氏をおろして誰か代わりを立てる「あて」はないようだから、それまでじっと我慢するしかないと思う。
平井氏は岸田政権の実績を上げ、岸田政権の不人気の理由は「発信力ではなく国民の気分」だと指摘しています。

先述した、OHK岡山放送のニュースでも「庶民とかけ離れすぎ。もっと人間の心に寄り添える人かと思った。権力を持つと変わるのかとガッカリ」とか「身近な人の意見ばかり聞いて一般市民の意見は届いていないのでは。聞きたい事は聞くけど、聞きたくない事は聞かないのでは」などという庶民の声があったとおり、少なからず「国民の気分」の部分があるのは間違いないと思います。

ただ、実績に対する受け取り方というか認識が専門家と国民とで違うという点を見逃してはいけないと筆者は考えます。


5.マイナスをゼロにしたという実績


国民は「現状維持」を政治に求めているとは、先述した通りですけれども、平井氏が縷々挙げた岸田政権の「実績」とはその多くが「外交」に関するものであり、うまくやったことでようやく「現状維持」できるものばかりです。つまり、国民目線では「現状維持」してくれるのは「当たり前」であって、加点なしという評価だと思うのですね。

その一方、内政では重い税負担。減税するといっても財務省に潰されるで実行力がなく、後で増税が待っているダブスタと、現状維持が壊されるばかりか将来の見通しも暗い。これが大きく減点になっている。

大きな括りでみれば、確かに平井氏のいう「国民の気分」であることには間違いないのですけれども、これまでのところ岸田政権の「実績」は「国民の気分」を上向かせるにはまったく繋がっていないということです。

もし、外交で「国民の気分」を上向かせることがあるとするならば、日本が世界でリーダーシップを発揮して、国益に繋がり、「現状がよくなる」実感を与えるところまでいかないと難しいのではないかと思います。その意味では、ウクライナ訪問、広島サミットは多少なりとも「国民の気分」を上向かせることに繋がった点はあるかと思います。

ただ、それ以外はやはり「現状維持」のためのものであり、得点にはなっていない。少なくとも国民目線ではそう映るのではないかと思います。

なぜそうなるのかというと、これも筆者が何度も指摘していますけれども、やはり、問題が起こって、それに対処する「リアクション型」の政治になっているからだと思います。何某かの問題という「マイナス」があり、それを解決することで「ゼロ」に持っていく。確かにマイナスをゼロにしたという実績があるのかもしれませんけれども、国民からみればただの「ゼロ」にしか過ぎず、得点にしてもらえない。

ある意味、これほど厳しい国民の目はないのかもしれません。もっとも、安倍元総理が、リアクションではなく「アクション型」の政治で長年日本や世界を引っ張っていったため、国民の目が肥えてしまったところはあるかもしれません。


6.支持率回復の鍵は現状復帰


先述したフジテレビ上席解説委員の平井文夫氏は、自身の「岸田さんはそんなにダメな首相なのだろうか。こんなに実績があるのに」記事について、読者からの反響がかなりあったとして、次のように述べています。
【前略】

「お叱り」のヤフコメももちろん多かったのだが、褒めてくれる人もいたし、さらに積極的な議論を展開する前向きなコメントも多かった。

ヤフコメを読んでいて、「本当にこれが支持率30%を切って、政権維持が『危険水域』に入っている政権への反応だろうか?」と不思議だった。もしかしたら、世論調査の数字ほど有権者は岸田首相を「憎んで」いないのかもしれない。そうだとしたら反転攻勢のチャンスはあるのだろうか。

記事では、原発処理水の放出などいくつかの実績とともに、「岸田さんがやったダメなこと」として、特にLGBT法の拙速な成立と、異次元の少子化対策を挙げている。

LGBT法成立をきっかけに、岩盤保守層が自民党を離れただけでなく「敵に回った」と以前書いた。岸田首相のやるべきことは「修正」だ。最近も、「体が男性で心が女性」の人が女湯に入って逮捕された。こういう「女性の安全を脅かすこと」が起きないような「仕組み」をつくり、それをアピールすることだ。

また、異次元の少子化対策は、あれで子供が増えるのか疑問なうえ、財源として現役世代が多く負担する健康保険料を値上げするのは愚の骨頂だ。これは今後、防衛増税よりはるかに批判を呼ぶ。直ちに修正すべきだ。

2度目の安倍晋三政権が7年9カ月も続いたのは、常に政策をリアリスティックに修正したからだ。岸田首相も間違っている部分は修正し、実績を増やせば国民の評価は変わってくると思う。
平井氏は、安倍元総理は常に政策をリアリスティックに修正してきたことを挙げ、岸田総理に「間違っている部分は修正し、実績を増やせば国民の評価は変わってくる」とアドバイスしています。

これも、筆者的に表現すれば、「『現状維持を壊した部分』を元に戻せば、マイナスになった評価はゼロに戻る」ということになろうかと思います。

果たして岸田総理に、自身の政策の「間違っている部分」についての認識がどこまであるか分かりませんけれども、気付いている点があるのではあれば、まずそこから着手すべきではないかと思いますし、支持率回復の鍵は、国民生活の現状復帰なのではないかと思いますね。


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この記事へのコメント

  • yoshi

    私は自分には直接関係ないのですが、異次元の少子化対策にはがっかりしました。
    2023年12月03日 19:02
  • HY

     別に岸田文雄氏個人がダメなのではなく、彼が安部政治以前の「平凡な戦後日本の政治家」だからではないかと思います。それはすなわち旧来の戦後日本の政治では現状に対応できないことの証左であり、日本の変化の兆しであると言えるからです。前のコメントにも書きましたが岸田文雄氏の歴史的役割は戦後日本政治の限界を露呈させ、それと運命を共にすることにあると考えております。
    2023年12月04日 08:36