変らなければならないネタニヤフと素人のアメリカ

今日はこの話題です。
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1.パッチワークのキルト


12月13日、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は12月13日、連邦評議会で講演し、イスラエルによるハマス掃討戦について、「アメリカ人はこの問題を”解決”したいと考えており、後に国家と呼ばれることになるものを発明したいと考えている。しかし、ヨルダン川西岸の地図を見ると、そこにはどの州についても言及されていない。これはパッチワークのキルトであり、イスラエルの入植地を反映したパッチが主流である」と述べました。

そして、「西側諸国が現在とっている立場から判断すると、彼らはパレスチナ国家を創設するつもりはない。私たちのデータによると、西側諸国、そしてイスラエル人も、現在のイスラエル指導部も、国家樹立の決定で求められているようなガザとヨルダン川西岸の統一を望んでいない」と指摘。イスラエル軍が住宅地全体を破壊しているガザ地区の状況は酷いとしながらも、 イスラエルはいかなる手段を使ってでもパレスチナのハマス運動の代表者を破壊するあらゆる権利があると信じている、と述べました。


2.人権団体や専門家はそれを大量虐殺と呼ぶ


ラブロフ外相はイスラエルはハマスの代表者を破壊する権利があるとしているものの、ガザの住人を破壊してもよいといった訳ではありません。

12月10~11日、カタール・ドーハで開催されたドーハ・フォーラムでバーチャル講演し、イスラエルがガザ地区のパレスチナ人に対する集団処罰の正当化としてハマスの10月7日の攻撃を利用していることは容認できないと述べ、包囲された飛び地の現地状況を国際的に監視するよう求めました。

ラブロフ外相は、アルジャジーラ外交編集長ジェームズ・ベイズに対し、イスラエル領土内でのハマスによる前例のない攻撃は単独で起こったわけではないと語り、「何十年にもわたる封鎖と、パレスチナ人が国家を持ち、安全と良き隣人としてイスラエルと肩を並べて暮らすというパレスチナ人への何十年にもわたる約束が果たされなかったことによる」と指摘。

10月7日以来、少なくとも 17700人のパレスチナ人がガザで殺害されており、そのうち70%が女性と子供であり、人権団体や専門家はそれを「大量虐殺」と呼びますと批判しました。

これに対し、イスラエルのネタニヤフ首相はプーチン大統領と電話会談し、国連やその他の世界的なフォーラムでのイスラエルに対するモスクワの立場に「不快感」を表明しました。ネタニヤフ首相の事務所の声明では「首相は、イスラエルが経験したような犯罪的テロ攻撃を受けることになるいかなる国も、イスラエルが行使しているのと同等の武力で行動するだろうと強調した」と主張しています。


3.イスラエルは世界で支持を失いつつある


このように、イスラエルに対する風当たりは止む気配がないのですけれども、とうとうアメリカもイスラエルを擁護しきれなくなりつつあるようです。

12月12日、アメリカのバイデン大統領は、2024年の大統領選キャンペーンへの寄付者に対する演説で「イスラエルの安全保障はアメリカに頼ることができるが、現時点ではアメリカ以上のものを持っている。欧州連合があり、ヨーロッパがあり、世界の大部分を持っている……しかし、彼らは無差別爆撃が行われたことでその支持を失い始めている」と指摘しました。

そして、バイデン大統領は会談で、ネタニヤフ首相が「「あなた方はドイツに絨毯爆撃をし、原子爆弾を投下し、多くの民間人が亡くなった」と述べたことを明かし、それに対し「そうだね、だから第二次世界大戦後、二度と同じようなことが起こらないようにするために、これらすべての機関が設立されたんだ…同じ間違いをしないようにね」と答えたと述べました。

バイデン大統領は、イスラエルの極右政治家で、国家安全保障大臣のイタマル・ベン・グビル氏に特に言及し、「イスラエル史上最も保守的な政府だ」と述べ、ネタニヤフ首相が「変わらなければならない」と語った上で、「イスラエルのこの政府はそれを非常に困難にしている」と述べました。

バイデン大統領は、「我々には地域の団結を始める機会がある…そして彼らは依然としてそれを望んでいる」と述べ、我々はビビ(ネタニヤフ首相の愛称)が何らかの行動を起こさなければならないことを理解していることを確認しなければならない……パレスチナ国家にノーとは言えない」と語っています。

バイデン大統領が演説したキャンペーンには、約100人が集まったそうですけれども、その中には、多くのユダヤ人参加者が含まれており、演説の際、バイデン大統領は、親イスラエルロビー団体であるアメリカ・イスラエル広報委員会の長年の指導者によって紹介されています。

つまり、ガチガチの親イスラエル団体の中で演説した訳で、そこで、イスラエル政府に変らなければならない、パレスチナ国家樹立できないとは言えないといった意味は軽くありません。

更に、大統領選キャンペーンの演説でこれに言及したということは、ハマス・イスラエル戦争が大統領選までに終結しないと拙い。あるいは、停戦させたことをもって成果とし、大統領選へのアピールにしようという目論見もあるのかもしれません。


4.アメリカの専門的ではないアプローチ


バイデン大統領は「パレスチナ国家にノーとはいえない」とパレスチナ国家樹立を認めざるを得ないという発言をしていますけれども、トルコ国営アナドル通信社は、12月7日、「アメリカはパレスチナ問題の解決に対して専門的ではないアプローチをとっている」という記事を掲載しました。

その概要は次のとおりです。
・ロシアの専門家は、現在の危機は、東エルサレムを首都とし、1967年の国境内に独立したパレスチナ国家を創設することで解決できると考えている。
・専門家たちは、イスラエルとパレスチナの間の長期的な停戦の重要性を強調した。
・ロシアの学者たちは、ガザ地区におけるイスラエルの攻撃と、この問題に対するロシア、トルコ、西側のアプローチを評価するために、アナドル・エージェンシー(AA)の特派員の話を聞いた。

・ロシア科学アカデミーのプリマコフ世界経済・国際関係研究所のアレクサンドル・アレクサンドロヴィッチ・ディンキン所長は、ロシアは1967年の境界線内に東エルサレムを首都とするパレスチナ独立国家を樹立することを支持していると指摘した。
・「イスラエルとパレスチナで起こった悲劇的な出来事は、長年にわたる複雑で痛みを伴う紛争の完全な解決の必要性を示している。これらの出来事は、パレスチナとイスラエルの紛争がもはや凍結できないことを示している。最終的な解決策が見つかるまで、緊張と暴力の脅威は続くだろう。
・長期的な停戦の重要性を強調するディンキン氏は、停戦によってイスラエルとパレスチナは危機を打開する方法を見つけることができると述べた。
・この専門家は、イスラム協力機構(OIC)とアラブ連盟(LAS)諸国が危機を解決するためのイニシアチブをとっていると付け加えた。私は、地域諸国の和解プロセスへの参加なしには、適切かつ永続的な解決策を見出すことは不可能だと思う。

・パレスチナ問題に対するアメリカのアプローチを評価し、次のように述べた: 「米国はこの問題を自力で解決しようとし、この問題の政治的解決に取り組んでいる中東カルテット(ロシア、米国、欧州連合、国連)の活動を停止させた。アマチュアリズムの結果は、今や全世界のテレビで見ることができる」。
・アレクサンダー・ディンキン氏は、イスラエルは中東におけるアメリカの重要な同盟国であるが、この問題における西側諸国のアプローチは一枚岩ではなく、イスラエルの行動次第であると述べた。
・パレスチナ問題を解決するためのロシアとトルコのアプローチが互いに近いことを指摘した上で、同学者は、「ロシアはパレスチナとイスラエルの双方と関係があり、トルコは様々な地域で人道支援を行ってきた豊富な経験があることから、両国は将来的にイスラエルとパレスチナの対話を開始する役割を果たすことができる」と述べた。

・トルコとロシアの関係について、ディンキン氏は、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ほぼ同時期に高い地位に就き始め、二国間関係を特に重視していると付け加えた。
・「ロシア・トルコ関係の発展における2人の指導者の役割は明らかだ。ロシアとトルコの外交政策は、両首脳の指導の下で深化した。ロシアとトルコの関係の急速な拡大と深化は、両国の国際戦略の方向性のひとつとなっている"
・専門家は、両国間の最高レベルでの絶え間ない政治対話を強調し、この対話なしには、新たな問題を解決し、国際的なプロジェクトで合意することは不可能であると予測している。
・同氏は、エルドアンとプーチンはしばしば電話や直接会ってコミュニケーションをとっており、これらの会談では二国間関係だけでなく、地域的な問題も議論されていると指摘した。
・ロシアとトルコはシリア、カラバフ、ウクライナに関する問題で経験を積み重ねてきたことを強調し、ディンキン氏はこう付け加えた: 「ロシアとトルコの指導者たちの政治的な意志、対話を維持し、相互理解に達する能力なしには、このようなことは不可能であった。
・「長い間選挙で成功を収めてきた民主主義国家の大統領は、間違いなく強い政治家であり、カリスマ的指導者である。エルドアンとその党が統治する間、国内政策と外交政策の両面で大きな変化があり、高いダイナミズムと国際問題への参加意欲が特徴となっている」と述べた。

・ロシア外交問題評議会のアンドレイ・ヴァディモヴィッチ・コルチュノフ議長は声明で次のように述べた: 「間違いなく、パレスチナ国家の樹立は重要である。世界でパレスチナ国家の創設に反対する国はほとんどないが、すぐに創設することは不可能だろう。イスラエルもパレスチナの国家構想には懐疑的だ」。
・コルチュノフ氏はさらに、「この問題の目標を短期的なものと長期的なものに分ける必要がある。現時点では、人命の損失と破壊を防ぐために即時停戦を実現することが重要だ。パレスチナ国家の樹立という目標には、長期的な努力が必要だ。解決すべき問題は山積している。それには国際社会の協調的な努力が必要です。解決は多国間のメカニズムにかかっていると思います」。

・彼によれば、イスラエルとパレスチナの問題を解決するには2つの方法がある。この場合、パレスチナは権利や独立が制限された国家ではなく、本格的な国家となるべきだ。第二の道は、パレスチナとイスラエルの単一国家を作ることだが、そのためには、パレスチナ人に対する差別の放棄や人権の尊重など、イスラエル国内の大きな変革が必要となる。いずれの道も、イスラエルの指導者による真剣かつ困難な決断にかかっている。第三の道はないでしょう」。
・コルチュノフ氏はまた、ガザンの人々を近隣のアラブ諸国に移住させるという提案についてもコメントし、これは不可能であり、誰もその準備ができていないし、誰も同意しないだろう、と強調した。

・イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相のガザ地区での行動について、コルチュノフ氏は、イスラエルはハマスに対する勝利を望んでいると述べ、次のように言葉を続けた
・「イスラエル政権にとっての勝利とは、ハマス政権とそのインフラを完全に破壊し、ガザ地区の支配権を確立することだ。しかし同時に、イスラエルは非常に深刻な風評被害を被ることになる。ガザ地区での民間人の犠牲を正当化することは不可能であり、莫大な損失につながるからだ。そしてそれは、イスラエルにとって長期にわたる問題を引き起こすだろう。一方、今のイスラエルのやり方に影響を与えるのは非常に難しい。イスラエルが自らに課した目標を達成できるとは思えない」。
・西側諸国がパレスチナに対して二重基準を適用していることを指摘し、コルチュノフ氏はこう強調した: 「イスラエル人の命がパレスチナ人の命より優先される。このようなやり方は長い間続いてきた。しかし、アメリカの立場はイスラエルの立場と完全には一致していない。アメリカは、エスカレートして大きな地域戦争が起こるのを防ごうとしているのだと思うが、エスカレートの脅威は残っている」。
アナドル通信はこの記事で専門家のコメントを引用し、中東カルテット(ロシア、米国、欧州連合、国連)に協力を求めず、自力で解決しようとするアメリカ外交は、素人だ、とこきおろしています。

そして、パレスチナ国家の創設こそが解決策であるが、実現には時間がかかるとし、イスラエルが今のやり方でハマスに対する勝利を収めたとしても、その後長期に渡って深刻な風評被害を被るだろうと述べています。

このとおりであれば、たとえイスラエルがハマスに勝利したとしても、その後は国際的孤立が待っているというわけです。

前述したバイデン大統領の演説で、大統領は「我々には地域の団結を始める機会がある…そして彼らは依然としてそれを望んでいる」と述べていますけれども、これがもし、アナドル通信が取り上げた中東カルテットに協力を求めることを意味するのであれば、アメリカは”素人”であることを止め、このアプローチで解決を図ろうとしていることになります。

そのゴールはパレスチナ国家樹立であることはいうまでもありませんけれども、問題はイスラエルがそれを飲めるのかどうか。少なくともネタニヤフ政権ではその望みは薄いと思われます。

となると、ハマス・イスラエル戦争の終結はネタニヤフ首相自身が変わるか、政権が終わってからしかないのかもしれませんね。



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この記事へのコメント

  • 金 国鎮

    ネタにエフがプーチンにロシアの中東政策に関与できないし,又それを言うならそれ相応の覚悟が必要だろう。
    これと同じ光景が韓国のユンソクヒョルにもあった、サウジとの武器交渉の際にイランの外交政策を中傷してイランを怒らせた。
    これらは政治というより根深い人種的・文化的偏見に根付くものが多い。

    ウクライナ言戦争初期のラブロフのユダヤ人発言の際にはプーチンはネタ二エフに謝罪の電話を入れた。ネタ二エフは長くない、ユンソクヒョルも同様。
    一番大きな人種的・文化的偏見は中国共産党が持つ漢人のみの中国だろうが、どれもこれも進行中だ。間もなく見えてくるだろう。
    2023年12月16日 10:50
  • yoshi

    イスラエルはやりすぎです。世界から信用されなくなるのも当然です。
    2023年12月16日 13:58