岸田総理は総辞職の覚悟を決めたのか

今日はこの話題です。
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1.課題への取組は政治の安定があればこそ


12月18日、自民党は派閥の政治資金パーティー問題を受け、政治資金規正法を改正する方向で検討に入りました。

どうやらパーティー券の購入者情報の公表基準引き下げなどが柱になる見通しで、規正法改正も視野に入れているようです。

この日、岸田総理は、官邸で記者団に、東京地検特捜部の捜査状況などをにらみつつ、「しかるべきタイミングで、党として国民の信頼回復のための新たな枠組みを立ち上げるなど、果断に対応を行っていく」とし、規正法改正について「決して否定するものではない」と述べています。

また、茂木幹事長も東京都内の会合で「パーティー収支について十分な透明性が確保されておらず、問題の一因になったことは明らかだ……規正法改正も含め、透明性が確保できる措置を早急に検討しなければいけない」と強調した上で、政治資金に関する党独自の対応として、「銀行口座を通じたやりとり徹底」や「党による派閥の収支チェック」などを挙げています。

こんな世界情勢、有事といっていい国難のときであることを考えるともっとやるべきことがあるだろうと思わなくもありませんけれども、自民党の青山繁晴参院議員は、13日の岸田総理の会見の最後で「申し上げた先送りできない課題への取組は、政治の安定があればこそ進展してきました。国民の信頼なくして政治の安定はありません。現在のこの状況、政治の安定なくして政策の推進もないということを改めて強く感じています。現在の政治資金をめぐる様々な課題に、事態の推移を踏まえつつ、正面から取り組んでまいります」という文言に着目し、政治の安定ができなければ総辞職するとの決意表明が隠されていると指摘しています。




2.自民党に自浄能力はない


では、岸田総理が示した「政治の安定」が現実に出来るのか。

12月16、17日、共同通信社が実施した全国電話世論調査で、岸田内閣の支持率は22.3%となり、前回調査の28.3%を6.0ポイント下回り、3ヶ月連続で過去最低を更新しました。不支持率は65.4%と前回から8.7ポイント上がりこれも過去最高。

自民党の支持率も政治資金パーティー裏金疑惑を受け、26.0%と2012年12月の政権復帰以降、初の20%台となりました。

肝心の裏金疑惑については、政治資金規正法の厳格化や厳罰化などの規制強化について「必要だ」が86.3%に上ったものの、裏金疑惑を巡る首相の指導力について「発揮していない」が75.0%。そして、疑惑解明に向けた自民の自浄能力は「ない」と「あまりない」が計77.2%と、国民は岸田総理が宣言した「政治の安定」は出来ないと見ていることが分かります、

更に、岸田総理の在任期間は「できるだけ早く辞めてほしい」が44.5%と最多となっています。

また、毎日新聞の同じ日に世論調査しているのですけれども、こちらでの内閣支持率は、11月の前回調査より5ポイント減の16%で、内閣発足以来最低を2ヶ月連続で更新。不支持率に至っては、は前回調査より5ポイント増の79%となっています。

岸田内閣の支持率は、マイナンバーカードを巡るトラブルが相次いだことなどが影響して6月以降、下落傾向に転じ、9月に内閣改造を実施し、11月には、減税や低所得世帯への給付などを盛り込んだ総合経済対策を閣議決定したのですけれども、政権浮揚にはつながらず、今回の裏金疑惑で、追い討ちをかけられたような状況です。


3.林でいいのか


12月14日、岸田内閣は、派閥の政治資金問題を受けた閣僚人事で林芳正官房長官ら4人の新閣僚を就任させました。経済産業相に斎藤健氏、総務相に松本剛明氏、農相に坂本哲志氏が就きました。

入れ替わった閣僚のポストはいずれも安倍派が占めていたもので、安倍派の副大臣5人と政務官1人を交代させています。

4閣僚は林官房長官を含めていずれも経験者の再登板で、岸田総理はこの日の夜、記者団に「即戦力を選ばなければならないとの考えに基づいた」と説明しました。

また、安倍派の萩生田政調会長は岸田総理に辞表を提出。高木毅国会対策委員長は茂木敏充幹事長に、世耕弘成参院幹事長は関口昌一参院議員会長にそれぞれ辞表を出したのですけれども、岸田総理は萩生田氏に24年度予算案の編成に責任を持って取り組むよう指示。党幹部の後任人事について、公明党の山口那津男代表に「22日までは任を続けてもらう」と述べ、2024年度予算案の閣議決定が見込まれるこの日以降とするようです。

けれども、これら閣僚人事は難航しました。

「松野博一官房長官の後任には無派閥議員が検討されている」などという情報が伝わると、ある閣僚経験者は岸田総理からの打診もないのに「官房長官の打診があってもことわってもいいか」と周囲に相談したそうです。つまり岸田内閣はもはや「泥船」だと思われているということです。

岸田総理は当初官房長官に無派閥の浜田靖一前防衛相を当てる考えだったようで、水面下で打診しました。

けれども浜田前防衛相は、「政権のためにはなんでもやる。ただ官房長官だけは難しい」と固辞。その後、自民党内には梶山弘志氏や斎藤健氏、加藤勝信氏らの名も取り沙汰されたそうです。

そうした中、最後に林芳正氏の名が上がったのですけれども、麻生副総裁が「林氏でいいのか」と難色を示すなど、調整は難航しました。

最後には、「林氏のほかに候補がいない」と説得したそうですけれども、今回の人事について党内からは、「ただの安倍派外しで、臭いものにふたをしただけだ」、「もうこの政権は厳しいだろう」などといった声は勿論のこと、当の安倍派からは「やりすぎだ」「首相は将来に禍根を残した」といった不満が渦巻いているとのことです。


4.激怒するバイデン政権


林芳正氏を官房長官に起用することについて、筆者は12月15日のエントリー「明日のために今日の屈辱に耐えるとき」で、「親中の林氏を官房長官に持ってくるということは、ウクライナ支援要請を拒否するというアメリカへのメッセージになる可能性もあります。その意味では、バイデン政権は、岸田総理に喧嘩売ってるのかと激怒しているかもしれません」との述べましたけれども、やはりアメリカは激怒しているようです。

ジャーナリストの加賀孝英氏は18日付のZakZakで、「中国を喜ばせた二股外交に米激怒」とする記事を寄稿しています。

件の記事の該当部分は次の通りです。
【前略】

さらに問題がある。岸田首相が「政界屈指の親中派」である林前外相を官房長官に抜擢(ばってき)した人事だ。「米国が激怒している」という情報がある。一体、どういうことか。

以下、日米情報当局から入手した情報だ。

「米サンフランシスコで11月16日、岸田首相と習近平国家主席の日中首脳会談が行われた。これは日本側が強く要請(懇願)したものだ。内閣支持率の下落を止めるため、『中国による日本産水産物の禁輸』や『中国による日本人拘束』などで、中国に強い姿勢を示すパフォーマンスが必要だった。中国側は、首脳会談の開催条件として『見返りの密約』を求めていた。林氏の官房長官起用は、中国の要求に応えた可能性がある」

「岸田首相は9月の内閣改造で、林外相を事実上更迭した。米国が『親中派』の林氏を警戒し、圧力をかけたからだ。今回の人事は、米国にケンカを売るようなものだ。官邸側は『数人に打診したが断られて、仕方なかった』とリークした。だが、米国は『裏金疑惑を利用して、意図を持って林氏を起用した』とみている。これは『米中二股外交』だ。日本は股裂き状態になる」

加えて、台湾危機がある。

台湾総統選は来年1月13日に投開票される。各社世論調査で、親米派の蔡英文総統の後継者、与党「民主進歩党(民進党)」候補の頼清徳(らい・せいとく)副総統が支持率で一歩リードしている。だが、最大野党「中国国民党」の侯友宜(こう・ゆうぎ)新北市長が猛追している。中国は「頼氏の当選阻止」に必死だ。

続く日米情報当局の情報は、こうだ。

「中国は、台湾に対して『頼氏当選は宣戦布告だ。開戦する』と恫喝(どうかつ)し、工作員の妨害工作が激化している。12月初旬、北京で秘密会議が行われ、台湾急襲攻撃が検討されたという情報もある。台湾軍は厳戒態勢にある。台湾有事は日本有事だ。だが、岸田官邸がレームダック状態であること、官房長官が林氏であること。これは中国に『台湾有事で、日本は動かない』という誤ったメッセージを送っているに等しい」

岸田首相は、東アジアの危機的状況が分かっているのか。

ある自民党関係者は「裏金疑惑は党全体の問題だ。ところが、岸田首相は派閥を離脱したことで、『自分には直接関係ない』『特捜部も総裁派閥には手を出さない』と軽く考えているのか。岸田首相は、最強官庁・財務省と連携し、麻生派と茂木派とガッチリ手を組んでいれば、低支持率でも政権運営は続けられると、本気で思っている」と語った。

何たることだ。このままでは日本は潰れてしまう。
加賀氏も、林氏の官房長官起用はアメリカに喧嘩を売ったとし、アメリカは「裏金疑惑を利用して、意図を持って林氏を起用した」とみていると指摘。そして、日米情報当局は、「岸田官邸がレームダック状態であることと官房長官が林氏であることは、中国に『台湾有事で、日本は動かない』という誤ったメッセージを送っているに等しい」と見ていることを紹介しています。

更に、加賀氏は「岸田首相は、最強官庁・財務省と連携し、麻生派と茂木派とガッチリ手を組んでいれば、低支持率でも政権運営は続けられると、本気で思っている」という、ある自民党関係者のコメントを取り上げていますけれども、これは先述した青山繁晴参院議員の指摘と矛盾しており、人によって見方が分かれていることを窺わせます。


5.反省なし・道理なし・支持基盤なし


一方、今回の人事は「ブーメラン」になるという指摘もあります。

同じく18日、ジャーナリストの長谷川幸洋氏は、ZakZakに閣僚のクビを切った責任追及のロジックがブーメランになるという記事を寄稿しています。

件の記事の概要は次のとおりです。
【前略】

自民党派閥のパーティー券裏金疑惑が、総裁派閥である岸田派に波及した。こうなれば、岸田首相は潔く退陣すべきだ。これは私の意見だが、それとは関係なく、いずれ内閣総辞職せざるを得ないだろう。

岸田派のパーティー収入過少記載はNHKが最初に報じて、各メディアが追随した。過少に記載していた金額は「数千万円にのぼる」という報道もある。岸田首相は「事務局で調査し、適切に対応する」と語ったが、記載を修正すれば済むと思っているのだろうか。

実際には多くの収入を得ながら、過少記載していたとなれば、懐に入ったカネは「裏金」になる。これが世間の常識だ。政治資金の扱いは税金より甘いとはいえ、国民が「カネはどこに消えたのか?」と憤るのは当然である。

いまや、話は事件の法律的扱いや、永田町権力闘争のレベルを超えてしまった。物価高に苦しんでいる国民は「政治家だけが甘い汁を吸っている」実態に怒っている。

だが、岸田首相のコメントには、まるで反省が感じられない。

この鈍感さが一層、国民の怒りに拍車をかけている。これが「退陣は不可避」とみる理由の1つ目だ。

岸田首相は、政治的にも致命的失敗を犯した。「14日にも安倍派の4閣僚と5副大臣を交代」と報じられたが、東京地検が何の発表もしていない段階で、なぜ安倍派閣僚だけを更迭するのか。

いくら重大事案とはいえ、マスコミ報道をもとに政権の根幹を支えてきた派閥を一斉パージするなど、前代未聞だ。案の定、直後に岸田派への波及が報じられた。こうなると、安倍派を粛清するなら、自分自身も粛清しなければ、つじつまが合わなくなる。

閣僚のクビを切った責任追及のロジックが、ブーメランとなって自分に跳ね返っているのである。

政治は、重大局面になるほど「道理」が重要になる。岸田首相は「国家観も使命感もなく、やりたいのは人事だけ」と言われてきた。

まさに今回、それが表れた。スキャンダルに動揺するあまり、道理にも手順にも頭が回らず「人事を一新すれば、しのげる」と思い込んだ。その揚げ句、自分に火の粉が飛んできてしまった。自爆としか言いようがない。これが2つ目の理由である。

安倍派の萩生田光一政調会長は、安倍派パージに先んじて、自ら辞任の意向を表明した。「こんな総理にクビを切られるくらいなら、こちらから三くだり半を突きつけてやる」という話だろう。

怒り狂った安倍派が今後、「岸田降ろし」の急先鋒に回るのは確実だ。政務官を数人、クビにしなかった程度でなだめられる話ではない。官房長官の後任に身内の岸田派から林芳正前外相を充てたとなれば、何をか言わんやである。

政権が続いたとしても、政権基盤は完全に傷ついた。これが3つ目の理由だ。

こうしてみると、岸田首相は結局、政策は霞が関任せ、政局運営は道理知らず、人事もトンチンカンで、とても総理が務まる人物ではなかった。世界は戦後最大の大激動の最中にある。内閣支持率の急落に加えて、このありさまでは、とても衆院解散などできない。

最後の決断くらいはスパッと決めてほしい。
長谷川氏は、「物価高に苦しんでいる国民は”政治家だけが甘い汁を吸っている”と怒っているのに、それを感じていない岸田総理の鈍感さに、国民は激怒している」「マスコミ報道をもとに政権の根幹を支えてきた安倍派を粛清したら、岸田派への波及が報じられた。岸田派も粛清しなければ、辻褄が合わない」「怒り狂った安倍派が今後、”岸田降ろし”の急先鋒に回る。政権基盤は完全に傷ついた」と3つの理由を挙げ、岸田内閣は退陣すべきだと述べています。

筆者は前述の「明日のために今日の屈辱に耐えるとき」のエントリーで、裏金問題の黒幕はアメリカ説を取り上げ、岸田総理はバイデン政権が倒れるまで総理で居続けた方が国益に叶うかもしれないと述べたことがありますけれども、この状況では、来年からの国会審議は碌に進まず、事実上何もできない可能性だってあります。

まぁ、下手にウクライナ復興資金20兆円を出させられなくするという意味ではよいかもしれません。けれども、その他、全てがストップするのも考え物です。

前述した加賀孝英氏の記事のように、もし、このタイミングで台湾有事が起こったら対応できるのか。国民は有事を見据え、目を覚ましていなければならないと思いますね。


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この記事へのコメント

  • HY

    >下手にウクライナ復興資金20兆円を出させられなくするという意味ではよいかもしれません。

     この日比野様の考察に疑問があります。過去記事にも「親中の林氏を官房長官に持ってくるということは、ウクライナ支援要請を拒否するというアメリカへのメッセージになる可能性もあります」とありますが、それはアメリカが嫌っている人事というだけで「ウクライナに金を出さない」というメッセージにはなりません。むしろアメリカが警戒しているのは台湾情勢において日本が消極的になる可能性があるから親中の林氏を嫌っているのであって、ウクライナ関係に対して米共和党のような立場の議員は維新の党の鈴木宗男氏くらいです。そもそも20兆円の話が真実かどうかというのもありますが、もしアメリカから本当に要請されていて日本側に出せるめどがあるなら、林氏関係なく支援金はウクライナへ行きます。繰り返すように林氏起用で懸念されるのは台湾危機において日本が米国との連携を怠り、中国の顔を立てようとすることです。『中国による日本産水産物の禁輸』や『中国による日本人拘束』で中国が攻勢をかけている背景の一つがこれだからです。

     始末に負えないのは岸田氏は林氏の官房長官就任で米国の不信を買っていることに気づいていない可能性があることです。メッセージを送るどころの話ではありません。元々林氏の起用は派閥乗っ取り防止の政局的理由の他に外交上のパイプ役、中国とはもちろんのことアメリカとのパイプもあると岸田氏と林氏本人は思っています(実際林氏は英語が堪能です)。加えてウクライナ戦争とガザ地区での戦争により「二方面作戦」を強いられたアメリカは中国との「関係改善」に乗り出していることから、こっちも相応しい人事に変えたことで「これでいいんだ」と岸田氏は本気で考えていると思います。
    2023年12月20日 16:29
  • 日比野

    HY様

    こんばんは。コメントありがとうございます。

    >アメリカが嫌っている人事というだけで「ウクライナに金を出さない」というメッセージにはなりません。
    確かに、ダイレクトに結びつけるにはちょっと無理がありました。ただ、言いなりにはならないよ、というメッセージになるのではと思っていますし、アメリカにしてみれば、喧嘩を売られたと受け取るのではないかと思います。

    >むしろアメリカが警戒しているのは台湾情勢において日本が消極的になる可能性があるから親中の林氏を嫌っているのであって

    2023年07月21日のエントリー「日本は台湾のためにアメリカと戦うか」で触れましたけど、WSJ紙が「台湾有事に備え、日米の防衛当局者が1年以上にわたり計画の策定に取り組んでいるが、日本が戦闘に加わるのかという核心的な問題の解決には至っていない」とする記事を掲載しています。

    つまり、岸田政権は当初から台湾有事に消極的と疑われていた訳で、最近になって、上川氏、木原氏に変えてやれやれと思いきや、林氏の官房長官返り咲きですからね。やはり消極的になるのか、と疑われても仕方ないでしょうね。

    ここにきて検察もトーンダウンしてきてますし、どうなるか。ちょっと先が見通しにくいですね。
    2023年12月20日 17:47