台湾の強制的平和統一を目論む中国

今日はこの話題です。
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1.平和的に台湾を奪取する


12月20日、アメリカのNBCテレビは、中国の習近平国家主席が11月にアメリカ・カリフォルニア州で行われた米中首脳会談でバイデン大統領に対し、台湾を統一するつもりだと明言したと報じました。

習主席はこれまでも台湾統一への意志を示してきたのですけれども、バイデン氏に対して直接「警告」を発していたことから、アメリカでは警戒感が一段と高まっています。

報道によると、習主席は十数人の米中高官が出席したグループ会合で、中国は「武力ではなく、平和的に台湾を奪取することを望んでいる」と表明。中国が2027年までに台湾を奪取する計画だとするアメリカ軍幹部の予測にも言及し、「時期を定めていないので、間違っている」と語ったとしています。

NBCは、会談内容の説明を受けた3人の現・元アメリカ政府高官からの情報として報じたのですけれども、首脳会談時の習主席の様子は、「単刀直入で率直だったが、けんか腰ではなかった」としています。

これだけ見ると、今になってようやく、会談の中味が少し出てきたのかと思えなくもないのですけれども、平和的統一という発言については、既に会談直後の11月17日の段階で報じられています

では、なぜ今になってまた報じるのか。おそらく、来年の台湾総統選挙を睨んで、中国が介入しているぞ、という警告を改めて発したのではないかと思います。


2.国民党ペアの支持率急上昇


では、今の台湾総統選はどうなっているか。

台湾総統選挙の投票日は年明け1月13日ですけれども、選挙戦は与党・民進党の頼清徳候補がリードし、野党・国民党の侯友宜候補が追い上げ、第3政党・民衆党の柯文哲候補がやや離されて追いかける展開になっています。

12月中旬に発表された主要世論調査5社(匯流、美麗島、鏡新聞、ETtoday、TVBS)の支持率の平均を見ると頼氏が35.9%とリードし、侯氏30.0%、柯氏22.2%となっています。

下図は、TVBS世論センターによる今年5月からの3候補の支持率の推移なのですけれども、3候補の支持率は野党候補一本化交渉が決裂した11月中旬に大きく変動しています。頼氏の1位は変わらないものの、2位と3位が入れ替わって侯氏が頼氏を追い上げる構図に変っています。

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この理由について、筑波大学名誉教授で中国問題グローバル研究所所長の遠藤誉氏は、「国民党の侯友宜総統候補が副総統候補に、趙少康を選んだこと」であるとして、趙少康氏について次のように述べています。
趙少康は1950年生まれの73歳。相当な高齢だ。しかし彼は何といっても現在もメディアで活躍しており、飛碟電台(ひちょう放送局、UFO RADIO)の社長としてテレビやラジオで政治評論番組の司会者をしていただけでなく、衛視中文台(衛星中文放送局)や東森新聞台(東森ニュース放送局)の「土曜"不"談政治」(土曜は政治を語らない)などで活躍してきた。

政治面に関しては元国民党の議員として改革グループを形成し、1992年の立法委員選挙に台北県区から立候補し、24万票の台湾最高得票数を獲得したことで名を馳せた。小選挙区制が導入された台湾では、前代未聞の金字塔的数字となっている。ただ、1994年に台北市長選挙で陳水扁に敗れた後は政治の表舞台から消え始めたので、同年に国民党から除籍されている。除籍された後のメディアでの活躍ぶりが尋常ではなくなり、人気が落ちてきた国民党としては国民的人気の高い趙少康が欲しくなったのだろう。2021年に国民党に復党した。

政治信条としては、実は「極端な親米」なのである。

ここが彼の際立った側面で、「反中ではなく親米」という、台湾人にかなり受け入れられやすい政治信条を持っている。たとえば台湾メディアの「壹苹新聞網(nextapple)」は<今回の各陣営副総統は3人ともアメリカ国籍か在米グリーン・カード(永住権)を持っていて、史上最も親米>という趣旨の記事を書いている。
遠藤氏はETtodayでの、侯友宜氏と柯文哲氏の支持率は、野党候補一本化の破局前後であまり変わっていないのに対し、総統・副総統ペアの支持率でみれば侯友宜・趙少康ペアが、トップの頼清徳・蕭美琴ペアに肉薄していることから、「国民党ペアの支持率急上昇に貢献しているのは、ほかならぬ副総統候補の趙少康であることが明確になった」と指摘しています。


3.北風と太陽を繰り返す中国共産党


台湾総統選挙への中国の介入は度々指摘されることですけれども、これについて、台湾政治研究者で東京外国語大学名誉教授の小笠原欣幸氏は、東洋経済ONLINEへの12月22日の寄稿記事「台湾総統選まで3週間、野党逆転・中国介入あるか」で、次の様に述べています。
【前略】

台湾の選挙に対する中国の介入と聞けば、多くの人が思い浮かべるのは1996年総統選挙の際に行われた中国の軍事演習だ。この事例は、その後の報道記事や研究文献に必ず書かれている。中国は「台湾独立を阻止し、統一を促進する」という国家目標を持ち、民進党を敵対勢力と見なし、台湾の選挙に毎回介入している。

中国は北風(軍事的威嚇、外交的圧力)と太陽(経済的恩恵の提供)を繰り返し、台湾を揺さぶろうとする。だが、その効果はあまり大きくなく、むしろ台湾の人々の反感を買って逆効果になったこともある。

今年も中国軍機が台湾海峡の中間線を越える動きや軍艦が台湾周辺を航行する動きを繰り返している。その規模は4年前よりはるかに大きい。国民党は中国の圧力を利用する形で今回の選挙を「平和か戦争かの選択」と位置づけている。中国の動きは野党への「援護射撃」のように見える。

経済的な威圧もある。中国は12月15日、台湾が特定の中国製品の輸入を禁止する不公正な貿易障壁を設けているという「調査結果」を発表し、対抗措置の可能性を示唆した。中国の狙いは民進党政権を継続させないよう台湾の有権者に圧力をかけることだと見られている。

人的取り込みもある。台湾各地の里長(公選の町内会長)が地域住民のグループを組んで中国を訪問し、台湾の検察当局から事情聴取を受ける事例が相次いでいる。中国側が台湾の里長らを飛行機代だけ自己負担で中国国内の宿泊費や食事代は中国側の負担という形で招待することは以前からあった。

コロナ禍でその動きは止まっていたが、今年になって復活した。捜査対象となった事例は中国滞在中に飲食・宿泊の提供をもって特定候補または政党への投票の依頼を受けた容疑があるからだ。台湾政府の林右昌内政部長(内相)は12月11日、里長らの訪中について「51グループ、556人が捜査対象になっている」と立法院で報告した。

こうした中国の影響力行使の効果は今のところ明確ではない。だが中国は野党を勝たせようとぎりぎりまで介入をしてくるであろう。偽情報の拡散、ネット世論の操作、あるいは台湾の政治家やインフルエンサーの取り込みなど水面下の動きに力を入れている可能性がある。

そもそも中国の共産党体制において、このような台湾工作を専門に行うのは国務院台湾事務弁公室(省庁に相当)だけでなく党の統一戦線部、複数の情報機関があり、多くの職員が配置されている。台湾を揺さぶるのが彼らの仕事だ。中国が台湾の選挙に介入する目的は特定の政党の敗北/勝利だけにとどまらず、台湾内部の分裂を導くことで台湾の民主主義への政治不信を高めることにある(防衛研究所地域研究部の五十嵐隆幸氏)。中国にとっては武力行使より、よほど安上がりな方法なのだ。

台湾アイデンティティが定着している台湾で、中国の統治を望む人はほとんどいない。習近平主席が力説する「一国二制度」に賛成する人は、どんな世論調査を見ても数%しかいない。しかし、「命をかけて台湾の自由と民主を守るのか」となると話は複雑になる。台湾の多数派は、事態がそこまで迫っていないと考えている。

ほとんどの人は中国の軍事演習があっても普通に生活し、SNSに美食や果物茶、犬猫の写真を投稿して楽しんでいる。台湾人はたくましいので、中国の脅しでパニックになることはない。しかし、影が差していることも否定できない。ロシアのウクライナ侵攻や中東の軍事衝突のニュースを見て「万が一」の不安がよぎったり、アメリカは必ず助けに来てくれるのかと心配したりする時もある。

今回の選挙戦は3候補とも第2次世界大戦以前から台湾に居住していた人たちとその子孫である本省人にあたる。3候補とも「一国二制度」を明確に拒否し、現在の台湾の国家体制である中華民国の現状維持を主張しているのでアイデンティティは争点になっていない。これは、台湾アイデンティティを追い風に党勢を拡大してきた民進党にとっては「凪」の状態である。ゆるやかな台湾アイデンティティをもつ人たちの支持は、頼氏にも、柯氏にも、侯氏にも流れている。票の流れは今まで以上に複雑になっている。

他方、中国との距離の取り方について台湾世論は割れている。台湾独立を志向する台湾ナショナリズムの人たちは中国との関係をできるだけ切りたいと考え、中国への警戒感も非常に強い。現状維持を支持するゆるやかな台湾アイデンティティの人たちは中国との交流に前向きである。中国と交流しているほうがひどいことにならない(中国の武力侵攻を受けない)ですむのではという楽観的な考え方もある。この考え方は野党候補の主張につながる。終盤戦に入り、中国との距離の取り方が争点に浮上してきた。

中国の選挙介入は表で見えるものと水面下で見えないものとがある。あまり効果をあげていないように見えても中国は台湾を揺さぶるカードを増やしている。残り3週間で介入があるかどうかも重要だが、それだけでなく選挙後の介入の動きも見極めることが必要だ。
このように、小笠原教授は、あの手この手で中国当局は台湾総統選挙にも、その後も介入してくることへの警戒を呼び掛けています。


4.国民党は身内だ


12月14日、台湾の検察が、台湾総統選挙に関連して、地域密着の住民サービスを担う行政単位のトップらが、中国当局者から最大野党の国民党を支持するよう求める接待を受けた疑いで、中心メンバー1人の身柄を拘束しました。

台湾の基隆地方検察署の調べによると、基隆市内の地域密着の住民サービスを担う行政単位のトップである「里長(りちょう)」ら30人余りが先月、中国・山東省を旅行しました。その旅行費用のほぼ全額は中国側が負担したとのことで、関係者は、宴会で中国当局者が「国民党は身内だ。身内を支持すべきだ」とか「民進党を支持しないように」などと述べたとしています。

そして、里長の1人が中国当局の委託を受けて旅行参加者を集めたということで、検察がこの里長の身柄を拘束したのですけれども、台湾各地の里長が中国で同様の接待を受けたとされるケースが相次いで発覚しているとのことで、民進党政権は、中国当局が里長を取り込んで台湾の有権者の投票行動に影響を与えようとしているとしています。

このように中国は思いっきり介入している訳です。

こうした中国の介入について、台湾・国立政治大学の蔡中民教授は、中国政府は与党・民進党の頼清徳候補ではなく、野党・国民党の侯友宜候補の当選を望んでいると分析する一方、「これまでも蔡英文総統のもとで民進党政権が続いており、中国政府は民進党と付き合う感覚を身につけている。中国政府にとって民進党は対話したくない相手だろうが、頼候補の当選を特に大きく懸念することはないだろう」とコメントしています。

また、蔡教授はアメリカ政府は頼候補の当選を望んでいるとみるのが自然だと分析したうえで、「アメリカ政府は『1つの中国』政策を堅持し、台湾の独立を支持しないとする立場を表明し、民進党側に明確なメッセージを送っている。頼候補はきわめて現実主義的な人物であり、台湾独立を求めているというイメージを持たれないようにしており、当選すれば徐々に距離を置くだろう」と指摘しています。

さらに、蔡教授は、台湾の有権者は中国との関係について、「現状が悪化しないという意味で現状維持を望んでいる」としたほか、総統選挙の3人の候補者についても、「決して軍事衝突になってはならないという点で共通している」と述べています。


5.強制的平和統一


では、選挙後の東アジア情勢についてどのようになっていくのか。

これについて、12月4日、PwC Japan合同会社のシニアアソシエイトの吉田知史氏が「台湾総統選挙および立法委員選挙の動向と日本企業への示唆」と題するコラムで次のように述べています。
【前略】

2.1. 米台関係の行方
いずれの候補が当選した場合でも、米国における半導体サプライチェーン構築に関する協力など、経済・実務面で米台関係を深化させるという方向性は変わらないでしょう。

しかし、米国側は対中脅威認識を悪化させる中で、台湾の主体性・自立性の維持を米国自身の利益とみなしています。そのため米国は、表面上台湾の選挙に対して中立・不介入の姿勢を貫くものの、国民党への不安や不満があると見られます。頼清徳氏は、台湾の事実上の駐米大使を務めた蕭美琴氏を副総統候補に指名しました。蕭美琴氏はワシントンの外交関係者の中での評価も非常に高く、米国を安心させる人選となるでしょう。ただし、立法委員選挙で民進党が過半数を維持できなければ、米国との安全保障上の協力に必要な国防予算の成立を国民党や民衆党によって阻止されるなどの可能性があり、蔡英文政権のような好調な米台関係と比べると、その見通しはやや不透明だというリスクがあります。

一方、野党陣営の両氏もそれぞれ米国を訪問し、良好な米台関係に向けたアピールを行っています。国民党は馬英九政権時代に良好な米台関係を維持していました。しかし、2008年に下野して以降、民進党を批判することが目的であるものの、間接的に米国を厳しく批判することがありました。米国の専門家も、こうしたことで、国民党は米国の信頼を失っていると述べます。また、民衆党は2019年に創立したばかりの政党であり、官僚・幕僚組織はまだ整備されていません。また、野党陣営の候補者はいずれも外交経験をほとんど持たず、米台関係は不安定化するリスク、あるいは予測可能性が低下するリスクがあるでしょう。

2.2. 中台関係の行方
専門家は中期的に中国が武力統一に踏み切る可能性は残されているものの、短期的に武力統一に向かう可能性はそれほど高くなく、より重きを置いているのは強制的平和統一と見ています。強制的平和統一とは、軍事的圧力を背景に台湾に統一を受け入れさせるというものです。この手法は「逼統」や「北平モデル」として、中国側の識者も主張しています(また、グレーゾーン戦術として、ミサイル攻撃など限定的な武力行使を含むことを想定している識者もいます。

そのためには、①単独では中国に抵抗できず、②米国や日本などは有事においても台湾を助けないと多くの台湾人が考えるようになり、③むしろ統一した方が平和と経済的繁栄を享受できると考える人々および統一協定を受け入れるカウンターパートとなる親中派勢力の存在が必要となります。その具体的手段として、軍事演習などによる軍事的圧力を増加させると同時に、米台・日台離間や親中派涵養のための影響力工作や経済的取り込み策を行うとし、この大方針は誰が当選しても不変であると見られます。

仮に頼清徳氏が当選した場合は、中国との関係は現状のままで、公的あるいは準公的な接触がほとんどない緊張をはらんだものとなるでしょう。経済関係についても、中国側はECFAの破棄を行うなどの可能性が指摘されています。一方、野党陣営のいずれかの候補が当選した場合は、軍事圧力が多少緩和される可能性があります16。しかし、中国との対話・交流が実現するかは未知数です。胡錦濤政権では曖昧なままの「92年コンセンサス」5と台湾独立反対を中台交流の条件としていましたが、習近平政権では台湾独立反対ではなく中台統一促進に重点を移しています。野党陣営の候補者が対中交流のために掲げた言葉はどれも中国側にとって満額回答と言えるものではありません。また、軍事圧力は低減したとしても、「米中間での中立」を米台離間や親中派の涵養、台湾人の取り込みの機会ととらえ影響力工作を強化するなど、強制的平和統一に向けた動きが加速する可能性もあります。

つまり、いずれの候補者が当選しても中台関係と米台関係はそれぞれ不安定化するリスクを抱えています。

2.3. 台湾政治の今後
対外関係だけでなく台湾政治そのものに目を向けた場合でも、その予見可能性は低いと見られます。

野党陣営が政権を奪取した場合、上述のように米台関係が不安定化する可能性があるほか、総統選挙で勝利した候補者の政党が立法院で単独過半数を獲得できない場合、その政権運営はさまざまな困難に直面するでしょう。さらに、民進党は下野することで「長期政権に対する台湾社会の忌避感」という軛から逃れられ、2028年選挙での復活も内外に予見させることができます。こうしたことから、国民党あるいは民衆党が2028年選挙でも政権を維持できるかどうかは不透明となり「長期政権化の見込み」を中国に示せず、それが政権の不安定さに繋がるという悪循環に陥る可能性があります。

一方、頼清徳氏が当選した場合でも、蔡英文政権と比較すると、頼清徳氏による政権運営が安定するとは言い切れません。まず、蔡英文政権成立前夜の状況を確認します。2014年3月、馬英九政権が中国と合意した中台サービス貿易協定に反対し立法院(国会)を占拠した「ひまわり学生運動」が発生し、参加した当時20代・30代の青年は高度に政治化しました。彼ら・彼女らは「ひまわり学生運動世代」「覚醒した青年」と呼ばれ(また自称し)、彼ら・彼女らが支持した民進党が同年11月の統一地方選挙で地滑り的勝利を収めました。2016年の総統選挙でも、その勢いは維持され、蔡英文氏は得票率56.12%と次点の朱立倫・国民党候補に25ポイント差をつけて勝利を収めました。

「覚醒した青年」に支えられた蔡英文政権は、同性婚合法化や原発廃止などリベラルな政策を推し進めますが、民進党支持者の中でも社会・経済政策においては保守的な台湾南部や高齢者層の支持離れが発生しました。顕著に表れたのが2018年の公民投票(レファレンダム)です。同性婚合法化や原発廃止にそれぞれノーが突き付けられました。さらに、現在10代後半から20代前半の「ポストひまわり学生運動世代」による、政治化し「覚醒した青年」に対する嘲笑的反発もSNSなどで散見されます。また、2018年の統一地方選挙前後には、現在20代後半から40代前半の「ひまわり学生運動世代」でも民進党に対して「積極的支持」から「消極的支持」に変わったという分析が多くのメディアで紹介されました。

世論調査では、若年層の多くが柯文哲氏を支持し、頼清徳氏は壮年層に支えられていることが示されています20。仮にこの傾向が続けば、蔡英文政権時には票田となった若年層の票を頼清徳氏は取り込めないこととなります。また、こうした支持構造の変化に加え、上述の長期政権に対する忌避感があります。こうしたことから、2024年の選挙で頼清徳氏が当選しても、順風満帆な政権運営とはなりにくいでしょう。

【後略】
吉田氏は、与野党候補の誰が総統になったとしても台湾は不安定化する可能性が高いとしています。そして、中国は、台湾を武力統一ではなく、強制的平和統一とは、軍事的圧力を背景に台湾に統一を受け入れさせるという「強制的平和統一」を狙っていると指摘しています。

この強制的平和統一は、冒頭で取り上げたように中国が「平和的に台湾を奪取する」と述べていることと軌を一にするように思います。吉田氏は、この強制的平和統一をするためには「単独では中国に抵抗できず」、「米国や日本などは有事においても台湾を助けないと多くの台湾人が考えるようになり」、「統一した方が平和と経済的繁栄を享受できると考える人々および親中派勢力の存在」の3つの要素が必要になると述べています。

これはつまり、米台および日台関係の離間を狙うということであり、そのための工作をしてくることを意味します。

中国が今後、台湾は元より、日本やアメリカに対して、その種の工作をしてきた場合、それに迂闊に乗らないように注意しておく必要があるかもしれませんね。



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この記事へのコメント

  • HY

     遠藤誉氏なども中国は台湾を(強制的)平和統一するから武力統一は絶対しないと言い切っていますが、私はもう平和統一は不可能だし中国もそれをわかっている可能性が高いと予想しています。というのも台湾では外省人であっても「自分は中国人であるとともに台湾人である」というアイデンティティーが確立しており、国民党も含め民主主義がしっかりと定着しております。香港でさえ平和裏に御すことのできない北京政府が平和裏に台湾を支配できるはずがありません(もし「一国二制度」と称して自由選挙を認めたまま統一すれば香港どころか中国中で選挙を求めるデモが起きてしまうでしょう)。中国が台湾を統一するには中国式民主化(欧米民主主義の弾圧)が不可欠であり、暴力なくしてこれを行うことは完全に不可能です。
     軍事圧力による統一というのもかなりのステレオタイプな認識だと思います。そもそも過去の事例で総統選挙毎に中国軍は軍事訓練をおっぱじめていますが、結果は初の総統選挙で李登輝氏が選ばれたように中国の望む結果になっていません。頼みの経済力もこれから先は怪しくなるので利益誘導での親中工作は日米も含めて難しくなりそうです。北風はどんなに吹いても旅人の服を脱がすことはできません。それができるならプーチン大統領もウクライナに武力侵攻していません。
     ならば軍事圧力が効果がないかといえばそうではありません。中国の軍事パフォーマンスの本当の標的は実は米国ではないかと私は睨んでいます。バイデン大統領は「台湾を守る」と発言していますが、台湾関係法は日米安保のような防衛協定ではありません。また米国は核保有国との戦争を避けることを第一優先としており、それはウクライナ戦争での小出し支援に表れております。実のところ中国が台湾に侵攻した際は台湾自力での抵抗に期待し、CICSのように積極的に中国軍と戦う可能性は低いと考えられます。それをわかっているからこそ中国は軍事的挑発を高めており、アメリカに対し「アジアから手を引け」とメッセージを送っているのです。そして台湾だけでなく日本に対しても中国軍が支配する新時代のアジアを受け入れるように工作と圧力をかけているのです。アジアを赤い海にしてしまえば、煮るなり焼くなりどうとでもできます。
     因みに台湾統一のシナリオとして私が予想しているのは斬首作戦です。台湾周辺を封鎖して日米の介入を阻止したうえで、台湾防空網をステルス戦闘機や爆撃機で破壊し、台北に空てい団を下ろして総統を拘束してしまえばチェックメイトです。民進党では実行に移すための口実に困りますが、国民党の場合は未発行の海峡両岸サービス貿易協定を実現させるように要請したり、香港のように逃亡犯条例のような法律を作るように圧力をかけたりして、国民が反発してデモが起きれば「治安維持の支援を要請しろ」と要求して平和裏に総統府を保護(制圧)できるのでハードルが低いのです。
    2023年12月23日 16:37