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1.激震の武蔵野市長選
12月24日投開票の東京都武蔵野市長選で、自民、公明両党が推薦する無所属新人、元市議の小美野康裕氏が、立憲民主党・共産党・れいわ新選組・社民党・地域政党「生活者ネットワーク」・政治団体「緑の党グリーンズジャパン」が支持する笹岡裕子氏を破り、当選しました。
この選挙は前市長の松下玲子氏が国政への転向を表明し、任期途中で辞任したことを受けてのもので、得票数は小美濃氏27,024票、笹岡氏26,685票とわずか339票の僅差。投票率は44・77%(前回47・46%)でした。
現在、自民党は裏金問題もあって逆風が吹いていたのですけれども、小美野氏は党派的な政治的色合いを最小限に抑えた選挙運動を展開。 小美野氏は「しびれるような展開で、どうなるかわからなかった。自民党のことが色々言われており、影響すると思ったが、市民の力で勝ち取らせていただいた勝利だ」と語りました。
一方、破れた笹岡氏は、呆然とした表情を浮かべ、「これはひとえに私の力不足。申し訳ありません。この18年間の歩みを止めてしまったことに大変責任を感じております」と謝罪しました。
笹岡氏は、前松下市長の後継候補との位置付けで「市政を受け継ぎ発展させたい」とアピール。旧民主党都議などを経て市長を務めた松下前市長と、その市政と協力関係にあった菅直人元首相の流れを受けて、リベラル色を打ち出していました。
2.武蔵野市は住みよい街No.1
笹岡氏は過去18年の市政の歩みを止めてしまったと述べていますけれども、その18年もリベラル系が勝ち続けたということは、少なくとも過去18年はその市政は支持されていたことになります。
今年8月、日経BP総研が運営するウェブサイト「新・公民連携最前線」が、全国の20代以上のビジネスパーソン23239人を対象に自分が住んでいる自治体の「住みよさ」の調査を実施し、「シティブランド・ランキング―住みよい街2023―」のTOP200をまとめています。
その結果、住みよい街第1位に輝いたのがなんと武蔵野市です。
件の記事から、その解説を引用すると次の通りです。
1位 武蔵野市(東京都)解説によれば、武蔵野市民は、市の施設やサービスの充実ぶりを評価していることが分かります。
武蔵野市は、「街の活力」と「生活インフラ」「安心・安全」の分野でそれぞれ74.2、74.1、73.3とスコア70を超える高い評価だった。「街の活力」分野では、「街に活気がある」と「いろいろな面白い人、魅力的な人が住んでいる」で1位、「子供や若者が多い」と「街に愛着がある人が多い」で3位、「地方自治に対する住民の意識が高い」で7位だった。
「生活インフラ」分野では、「住民が利用できる運動・スポーツ施設が充実している」で1位、「図書館や美術館・博物館、劇場など文化施設が充実している」と「生涯学習プログラムが充実している」がいずれも2位、「公共交通機関が充実している」が7位とほぼすべての項目で評価が高かった。
「安心・安全」の分野では、「自然災害が少ない」で1位、「歩道など交通安全に配慮した道路が整備されている」で3位、「避難場所が近くにあるなど防災対策が整っている」と「防犯対策(交番/街灯/防犯カメラ/住民による見守りなど)が整っている」で4位と高い評価項目が多かった。
また、「子育て」の分野は70には届かなかったものの67.7と高スコアだった。「子ども向けの体育・文化活動が盛ん」で1位、「自治体による出産・育児・子育て支援が充実している」で3位に入った。
回答者の自由意見から、自治体の運営に対しての高い評価がうかがえる。「市政が積極的な公共事業を実施し、福祉が行き届き、文化事業を疎かにしない」(男性、20代)、「自治体のサービスが他の自治体より多い」(女性、30代)、「東京都の中でも積極的に子育て世代への施策に力を入れていると思う」(男性、30代)、「市の補助がある程度行き渡っていること」(男性、50代)、「市のサービスに満足」(女性、40代)。
また、「⾃然環境が豊か」の項目は全国124位と評価が高いとは言えない一方で、緑が多いなど住環境の良さを挙げる意見も目立った。武蔵野市と三鷹市にまたがる都立井の頭恩賜公園(面積約42.8万m2)が身近に存在していることが、高い個別評価につながっているのかもしれない。「緑が多く、公園が多いこと。生活しやすいこと」(女性、40代)、「東京中心部から遠くもなく近くもなく、それでいて緑が多く、ごみごみしておらず比較的静かなところ」(男性、50代)、「いろいろなものがすべて揃っているため、大変便利」(男性、40代)。
武蔵野市は、東京都のほぼ中央に位置し、JRの吉祥寺駅、三鷹駅、武蔵境駅があり、東京駅から電車で約30分と都心から近いながら閑静な住宅街が広がる。人口は約14万8000人。早くからコミュニティバスを運行し、高齢者支援のテンミリオンハウスやいきいきサロンなどの取り組みがある。
【以下略】
3.無責任な投げ出し
このように武蔵野市民から評価されていた市政に対し、今回の市長選でなぜダメ出しされたのか。
笹岡氏本人は「確かに国政では自民系に逆風だが、この選挙はかなり突然で準備ができなかったことが敗因だが、一番は私の力不足」と語っていますけれども、笹岡陣営幹部は、今回の市長選の敗因について、「なぜ松下さんが辞めたのか、有権者に伝えるのに苦労した」と、松下前市長への「市政投げ出し」批判があったとコメントしています。
また、小美野陣営の関係者も、勝因の1つについて「松下市長の無責任な投げ出しへの批判も、市民に届いたと感じている」と語っていますけれども、自民党の長島昭久衆院議員は産経新聞の取材に「全国から危機感が寄せられ、松下市政に対する市民の危惧が顕在化した。市政を方向転換する千載一遇のチャンスに陣営が愚直に正攻法で戦い抜いた」と、令和3年12月に否決された日本人と外国人を区別せず投票権を認める住民投票条例案を巡る攻防を指摘しています。
長島氏は「住民投票条例を否決して以降、松下市政はさまざまな面で追い込まれていった。松下氏も次期衆院選出馬とはいえ市政を投げ出す形となり、住民の危惧が後押ししてくれた」と述べ、更に「立民の蓮舫参院議員らが空中戦で応援するなど、地に足がついていなかったのではないか」と選挙態勢の不十分さも指摘しています。
また、評論家で千代田区議の白川司氏は、25日、「市政で好き勝手やってきたのに、国政に出られるとなったらほいほいと投げ出して、ルッキズムよろしく自分と同じ路線の若い女性を後継にする。「18年間のあゆみをとめた」のはこの候補でなく、菅直人氏に声をかけられて、簡単安易に市長の座を投げ出した松下市長その人。これだけ市民がなめられているのに、まだ後継候補に入れようとする市民が多くいることには恐怖すら感じる」とツイートしています。
市政で好き勝手やってきたのに、国政に出られるとなったらほいほいと投げ出して、ルッキズムよろしく自分と同じ路線の若い女性を後継にする。「18年間のあゆみをとめた」のはこの候補でなく、菅直人氏に声をかけられて、簡単安易に市長の座を投げ出した松下市長その人。これだけ市民がなめられているの…
— Tsukasa Shirakawa(白川司) (@lingualandjp) December 25, 2023
4.全部松下のせい
白川氏の言葉を借りれば、笹岡氏が敗北したのは「全部、松下のせい」ということになるのですけれども、筆者は、市が壊されるという危機感が今回の結果を呼び込んだのではないかという気がしています。
12月25日、市役所に初登庁した小美濃新市長は、マスコミの取材に応じ「14万市民の生活を守っていく責任の重さを実感した」と語り、これまでの市政について、住民投票条例案や吉祥寺駅前の駐輪場跡地売却を巡る問題に触れ、「市民に十分な情報が伝わっていなかったことで起きた……こうした問題が起きないように市民にしっかり情報を届けたい」と語りました。
小美野氏は選挙戦で、首都直下地震から市民の命を守るためとして、住宅の耐震補強や家具転倒防止の徹底と支援、そして人工知能教育の充実やオンライン授業の活用などに取り組むことを訴えたほか、市立第二中と第六中の統廃合計画を白紙に戻す考えを示していました。
小美野氏は、こうした施策の実現に向けて「まずは私を含む市職員がまちに出て市民と触れ合い、意見を聞くことが必要だ……市民に視線を向けて取り組んでいきたい」と話しています。
更に、選挙で争点の1つだった外国人にも投票権を与える住民投票条例の制定についても「公約通り凍結する」と明言。今後について、「2年前の市を分断するような議論はしたくない。論点整理は終わらせたいが、市民の意見を入れず、まず学者でというままでは、同じような分裂、分断の議論になりかねない」と述べています。
これら、小美野氏のコメントをみると、松下前市長が市民の声を聞かず、好き勝手に市政を壟断しようとしていたようにも聞こえます。
要するに、武蔵野市民も、今の住みよかった筈の武蔵野市を壊されるのではないか、という不安や不満が笹岡氏という後継候補にぶつけられてしまった結果、今回の市長選に反映されたのではないかということです。
ある意味、ここでも「現状維持の破壊」は住民には許容されないことが証明されてしまったようにも思います。もっと正確にいえば、「現状が壊されるのではないかという不安」を抱かせてしまったら駄目だということです。
リベラルの牙城であった武蔵野市で、僅差とはいえリベラル系候補が敗れた事実は大きいと思いますけれども、リベラルが嫌われ、自公が支持されたと単純に考えるのは、少し違うのではないかと思いますね。
武蔵野市chinaタウン計画
— くにもり情報室 (@kunimorijyouhou) December 23, 2023
駅に近い一等地の駐輪場をchina系企業に売却し
武蔵野市民が使ってた駐輪場は裏の路地に入り、今までより7~8分以上かかる離れた場所に、10分の1以下程度の規模の駐輪場に移転
武蔵野市に住んでいる住民のサービスが低下し
武蔵野市にほぼ住んでない外国人のサービスが向上 pic.twitter.com/mdwAvbZQHU
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