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目次
1.日本学術会議に求められる組織形態
12月18日、政府は、組織見直しを検討している日本学術会議について「国から独立した法人格を有する組織とする」との方針を示しました。政府に科学的な観点から助言をする役割は変わらないものの、会員選考や運営、活動の評価に外部有識者による委員会が関与する仕組みを新たに導入するとのとことでし。年内にも正式決定する見通しで、法制化に向けて具体的な制度設計に着手するとしています。
これは、12月13日に有識者懇談会が「法人化が望ましい」とする方向性を示し、18日に内閣府が中間報告案として纏めたものを受けてのことです。
件の中間報告案は21日に中間報告として提出されているのですけれども、「求められる機能にふさわしい組織形態」として、次のように定義されています。
5 求められる機能にふさわしい組織形態これらから筆者がポイントだと思うところを拾うと次の通りです。
(1) 本懇談会としては、学術会議の使命・目的を踏まえると、独立した立場から政府の方針と一致しない見解も含めて政府等に学術的・科学的助言を行う機能を十分に果たすためには、そもそも政府の機関であることは矛盾を内在していると考えられるし、会員選考の自律性の観点からも、主要先進国のように学術会議が選考した候補者が手続き上もそのまま会員になる仕組みの方が自然であり望ましいと考える。
さらに、学術会議において「日本学術会議のより良い役割発揮に向けて」に基づいて自主的な改革が行われていることには敬意を表するが、国の機関のままでの改革には制度面でも財源面でも限界が感じられるため、人事・組織関係制度や会計法令による厳格な制約から外れ、外国人会員実現のための制度的な障害をクリアするなど、学術会議が求められる機能を十分に発揮するための環境を整えるという観点からも、国とは別の法人格を有する組織になることが望ましい。法人化により、活動の拡大強化と、それを支える財政基盤の多様化や事務局体制の充実についての可能性が広がる一方で、国の組織でなくなることから生じる具体的な制度上のデメリットは、本懇談会としてはこれまでの議論の中で確認されていない。
(2) 学術会議からは、臨時総会における声明等(※)において、政府からの独立性・柔軟な自律的組織運営の確保、会員・会長選考の自律性・独立性、法人化による実質的機能減、安定的な財政基盤の確保、改革に伴うコストの考慮などが懸念事項として挙げられているが、仮に学術会議を法人化する場合には、独立性・自律性が現在以上に確保され、国民から求められる機能が十分に発揮されるような制度設計が行われるべきことは言うまでもなく、本懇談会からも政府に対して強く要請するところである。また、国による財政的なサポートについても、ナショナル・アカデミーの意義及び性格を踏まえて政府が必要な財政的支援を継続して行うことの重要性を、本懇談会としても改めて確認する。
(※)「日本学術会議のより良い役割発揮に向けた基本的考え方 -自由な発想を活かした、しなやかな発展のための協議に向けて- 」(令和5年(2023 年)12 月9日日本学術会議)
(3) 今後の学術会議の業務については、懇談会の中で、「タイムリー、スピーディな意思の表出と助言機能の強化」「学術の発展のための各種学術関係機関との密接なコミュニケーションとハブとしての活動強化」等の7項目が、「日本学術会議第 26 期アクションプラン骨子」として学術会議から示された。
本懇談会としては、このような意欲的なアクションプランの速やかな具体化と推進を望むところであり、国による必要な財政的支援についても並走していく覚悟であるが、「多様な団体、国民とのコミュニケーションの促進」「学術を核とした地方活性化の推進」「情報発信機能の強化」「事務局機能の拡充を含む企画・執行体制の強化」などのいずれについても、国とは別の組織になって活動・運営の自由度を高める方が、その着実な実現に向けて適合的であることは間違いない。
(4) なお、法人化により学術会議に求められる機能がこれまで以上に発揮されることが期待できるのであれば、短期的なコストを厭うべきではない。この点は、学術会議からも、高い行政コストを払っても本当に必要な変更であれば全く反対するものではないという考えが表明されているところであり、本懇談会としては、国とは別の組織になる方が活動・運営の自由度が高まることは間違いなく、創設から75年を迎え成熟しつつある学術会議が、国民や社会の高い期待に応えさらなる飛躍を遂げるためにも、抜本的な改革を断行する時期に来ているものと考える。長期的には行政コストを大幅に上回る改革になることを確信し、また、実際にそのような制度設計や必要な環境整備が確実に行われることを強く望む次第である。
(5) 学術会議が述べるように、アクションプランの推進等は国のままでも一定程度は可能かもしれない。しかし、この懇談会としては、学術会議が現状をベースとした改善に甘んじることなく、この機会に抜本的な改革を行い、国民及び社会からも政府からも頼りにされ信頼されるアカデミーとなることを強く期待している。
また、学術会議の活動・運営を担うのは会員であり、会員の質と意欲が何よりも大切だということは、強調しても強調しすぎることはない。本懇談会としては、第 25 期において若手アカデミーが取りまとめた「学術フォーラム『2040 年の科学・学術と社会を見据えて取り組むべき 10 の課題~イノベーション・越境研究・地域連携・国際連携・人材育成・研究環境~』」(2023 年7月2日)に見られるように、学術会議内においても改革への動きが芽生え、根付きはじめたことを歓迎し、さらに大きな潮流となるよう願っていることも付記しておく。
・独立した立場から、政府等に学術的・科学的助言を行う機能を十分に果たすためには、そもそも政府の機関であることは矛盾を内在している一言でいえば、学術会議自ら改革し、国民・社会・政府から信頼される存在になれ、ということかと思いますけれども、裏を返せば、これまで学術会議は国益に貢献していないと明言されたということです。
・会員選考の自律性の観点からも、学術会議が選考した候補者が手続き上もそのまま会員になる仕組みの方が自然であり望ましい
・国とは別の法人格を有する組織になることが望ましい。法人化により可能性が広がる一方で、国の組織でなくなることから生じる具体的な制度上のデメリットは確認されていない
・学術会議を法人化する場合には、独立性・自律性が現在以上に確保され、国民から求められる機能が十分に発揮されるような制度設計が行われるべき
・国とは別の組織になって活動・運営の自由度を高める方が、今後の学術会議の業務の実現に向けて適合的である。
・長期的には行政コストを大幅に上回る改革となる制度設計や環境整備が行われることを強く望む
・学術会議が抜本的な改革を行い、国民及び社会からも政府からも頼りにされ信頼されるアカデミーとなることを強く期待している。
2.朝日の社説「政府と学術会議 独立性揺るがぬ存在に」
今回の政府方針について、マスコミ各社が社説を出しているのですけれども、会社によってその主張は分かれているようです。例として、朝日・日経・産経の社説を見てみます。まず朝日は次の通りです。
(社説)政府と学術会議 独立性揺るがぬ存在に 2023年12月26日 5時00分ここから筆者がポイントを思う部分を抽出すると次のとおりです。
日本学術会議を国の機関から切り離す動きが進む。組織形態を問わず、独立性があってこそ、国民に貢献できる。揺るがせてはならない。
組織改編を議論した有識者会議が中間報告をまとめ、これを受け内閣府は法人化に向けての基本方針を決めた。透明性やガバナンス(組織統治)を重要視。現状のように国を代表する科学者の機関として、政府に助言を行うことができるとしつつ、活動や運営で政府からの高い独立性が前提だとしている。
ただ、別法人にすれば独立性が高まるわけではない。基本方針は、ガバナンスを名目に、自由度を縛りかねない内容を含んでいる。
(1)学術会議の会員選考にあたって外部有識者から意見を聴く「選考助言委員会」を設置(2)外部者が過半の「運営助言委員会」を設置(3)大臣が任命する「監事」が業務や財務を監査(4)大臣任命の外部有識者による「評価委員会」が業務や運営を評価――などだ。
監視するような組織がこれだけ林立して、独立や自律性を確保できるだろうか。
政府と学術会議の信頼関係構築も妨げかねない。両者はこれまで丁寧で建設的な議論ができたとは言いがたい。
一連の問題は、菅義偉前首相による会員候補6人の任命拒否に端を発し、論点をずらすように政府や自民党が改革を持ち出した。国の機関のまま政府の関与を強める法改正を強行しようとしたが、学術会議の強い反発で見送り、有識者会議が設けられた。
内閣府は、学術会議の意見も聞きながら法制化の検討を進めるとし、学術会議は内閣府案に疑念を抱きながらも協議する意向だ。政府は学術会議と話し合い、相互不信や懸念を払拭(ふっしょく)していくべきだ。それこそが、役割を発揮する体制や運営につながる。
目下の課題への機動的な提言には、事務局や予算の増強が欠かせない。学術会議は、役割の発揮に必要な組織や体制、予算などを具体案に示して議論すべきだ。国民が必要な発信に努め、存在感を高めていく必要もある。
内閣府は財政基盤の多様化も求める。だが寄付や提言の受託での資金獲得は容易ではなく、独自財源への依存を求めすぎれば組織が弱体化し、本末転倒になりかねない。
学術を尊重することは不都合な事実とも向き合い、身勝手を慎み、全体の幸福の最大化を考えることにつながる。政府や産業界の目先の意に沿わせるばかりでは、結局のところ政財界のためにもならず、真の国民貢献に資することはできないだろう。
・日本学術会議を国の機関から切り離す動きが進む。やはりというかなんというか、朝日は学術会議を別法人にすることに反対のようです。
・組織形態を問わず、独立性があってこそ、国民に貢献できる
・基本方針にある「選考助言委員会」「運営助言委員会」「大臣が任命する監事」「大臣が任命する評価委員会」といった監視組織が林立したら、独立や自律性を確保できない
・目下の課題への機動的な提言には、事務局や予算の増強が欠かせない。
・国民が必要な発信に努め、存在感を高めていく必要もある。
・寄付や提言の受託での資金獲得は容易ではなく、独自財源への依存を求めすぎれば組織が弱体化し、本末転倒になりかねない。
3.日経の社説「社会に貢献する学術会議に」
続いて日経は次の通りです。
[社説]社会に貢献する学術会議に 2023年12月25日 19:00筆者がポイントと思う箇所は次の通り。
日本学術会議は法人化されることになった
政府は日本学術会議を国の機関から切り離し、法人化する。内閣府の有識者懇談会が報告書で「国とは別の法人格をもつ組織にするのが望ましい」と結論づけ、正式に決めた。
国や社会に対し科学的助言や提言を行うための特別な法人格を与える。今後1年ほどかけて、組織の詳細や運営ルールなどを定めていくという。学術会議と協議をしながら社会にとり価値が高いアカデミーに変革してもらいたい。
学術会議の改革は2020年秋、菅義偉政権時代での会員候補6人の任命拒否に端を発した。政府は23年初め、国の機関として残す一方で会員の選び方などを一部変更しようとしたが、学術会議側が「政府の介入だ」と猛反発し仕切り直しになっていた。
欧米のアカデミーも多くが民間の運営形態をとっている。学術会議も国から離れることで自由に活動しやすくなるだろう。行政に対する提言や勧告にとどまらず、国会や民間への科学的助言も可能になる。
学術会議は現在、年間10億円ほどの国の予算が投じられている。事務局にも内閣府などから人材が送り込まれている。法人化後もこうした措置がなければ運営は立ちゆかなくなる。政府は今後もきちんと支援を続けていかなければならない。
一方で米科学アカデミーなど海外の学術機関は国のお金だけに頼らず、民間や個人などから寄付を集め、運営基盤を強化してきた。学術会議も海外にならい、独自の資金確保に努めるべきである。
学術会議は科学者や研究者を代表する機関にもかかわらず、国民からみると一体どんな活動をしているかよくわからなかった。殻に閉じこもらず、社会とコミュニケーションをとることも大切だ。
感染症や気候変動、人工知能(AI)の脅威など、リスク社会は幅広い科学的知見が求められる。政治と科学が知恵を出し合い協力し、社会に積極的に貢献する学術会議になってもらいたい。
・日本学術会議を国の機関から切り離し、法人化する朝日が学術会議の法人化すれば独立性が失われると主張しているのに対し、日経は独立性が高まると主張しています。
・学術会議も国から離れることで自由に活動しやすくなるだろう。
・政府は今後もきちんと支援を続けていかなければならない。
・海外の学術機関は国のお金だけに頼らず、民間や個人などから寄付を集めている。学術会議も独自の資金確保に努めるべきである。
・学術会議は国民からみると一体どんな活動をしているかよくわからなかった。社会とコミュニケーションをとることも大切だ。
4.産経の社説「学術会議法人化へ 税金投入は最小限にせよ」
最後に産経の社説は次の通りです。
学術会議法人化へ 税金投入は最小限にせよ 2023/12/28 05:00筆者がポイントと思う箇所は次の通り。
日本学術会議の組織見直しを検討してきた政府は、同会議を国から独立した法人とする方針を決めた。現行法では「国の特別機関」という位置づけになっている。内閣府の有識者懇談会の報告書を踏まえた。
これに対し、学術会議の光石衛会長は記者会見で「今後の議論に主体的に参画したい」と述べた。
だが、法人化を受け入れたわけではなく、光石氏は「独立性・自律性が担保されていないのではないか、というのが大きな懸念の一つだ。そこが解消される必要がある」と注文をつけた。改革に後ろ向きな姿勢は変わっていない。
政府は方針に「必要な財政的支援を行う」と明記した。担当閣僚任命の外部有識者による評価委員会を設置し、運営状況などを評価することも盛り込んだ。会議側にはこれが独立性を阻害しかねないと反発する声が強い。だが、税金を投入する以上、外部評価は不可欠だ。
同会議は「国の責任で安定的な財政基盤が確保されるようにすべきだ」と要求してきた。独立性を強調するなら、国費に依存せず、自ら財源を調達するのが筋だ。その努力もしないのなら、国民の理解は得られまい。法人化は当然としても、政府は国費投入を最小限にすべきである。同会議自らが運営資金を集める仕組みも作るべきだ。
一方、今回の政府方針では、日本防衛への協力を忌避する悪(あ)しき体質を改めることには直結しないという問題がある。
昭和期に「軍事目的のための科学研究を行わない声明」などを出し、平成29年にそれらの継承を宣言している。一連の声明は防衛力の充実に関する研究を妨害する要因となってきた。誤った言動を反省し、声明を撤回しなければならない。
中国が「核汚染水」とのレッテルを貼った東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出でも、科学的知見に基づいた十分な反論を展開しなかった。
また、令和2年に菅義偉首相(当時)が元会員候補6人を起用しなかったのは、当然の人事権行使にすぎない。にもかかわらず、光石氏は「任命問題が解決したとは思っていない」とこだわっている。国民のための組織に生まれ変われないなら、国を代表する「ナショナルアカデミー」を名乗る資格はない。
・政府は日本学術会議を国から独立した法人とする方針を決めた産経は今回の政府方針でも、学術会議が国益に資することはないと厳しく批判しています。
・学術会議の改革に後ろ向きな姿勢は変わっていない
・学術会議は外部有識者による評価委員会の設置について独立性を阻害しかねないと反発するが、税金を投入する以上、外部評価は不可欠だ。
・政府は国費投入を最小限にすべきである。
・学術会議自らが運営資金を集める仕組みも作るべきだ。
・日本学術会議を国から独立した法人とする方針を決めた。
・今回の政府方針では、日本防衛への協力を忌避する悪しき体質を改めることには直結しない
・国民のための組織に生まれ変われないなら、国を代表する「ナショナルアカデミー」を名乗る資格はない。
5.社説の裏にある世界観を見極めよ
朝日・日経・産経の社説の主張はそれぞれ、一見、なんとなく説得力があるように見えるかもしれませんけれども、各論点を「戦略の階層」で分析するとまた違った側面が見えてきます。
戦略の階層については、これまでこのブログで何度も紹介していますので、繰り返しませんけれども、簡単にいえば、戦略を縦の階層で考え、下から順に<技術、戦術、作戦、軍事戦略、大戦略、政策、世界観>の6つに分ける考え方です。
ここで大切なのは、戦略の階層では「上位のものが下位のものを決定する」というもので、上位階層の戦略で負けてしまうと下位の階層でいくら頑張っても最終的は敗北してしまいます。
筆者が先述した各社の論点ポイントをそれぞれ「戦略の階層」で整理し直すと次のようになるかと思います。
〇朝日
【政策】 ・日本学術会議を国の機関から切り離す動きが進む。
【政策】 ・組織形態を問わず、独立性があってこそ、国民に貢献できる
【大戦略】 ・目下の課題への機動的な提言には、事務局や予算の増強が欠かせない。
【作戦】 ・基本方針にある「選考助言委員会」「運営助言委員会」「大臣が任命する監事」「大臣が任命する評価委員会」といった監視組織が林立したら、独立や自律性を確保できない
【作戦】 ・寄付や提言の受託での資金獲得は容易ではなく、独自財源への依存を求めすぎれば組織が弱体化し、本末転倒になりかねない。
【戦術】 ・国民が必要な発信に努め、存在感を高めていく必要もある。
〇日経
【政策】 ・日本学術会議を国の機関から切り離し、法人化する
【政策】 ・学術会議も国から離れることで自由に活動しやすくなるだろう。
【大戦略】 ・政府は今後もきちんと支援を続けていかなければならない。
【作戦】 ・海外の学術機関は国のお金だけに頼らず、民間や個人などから寄付を集めている。学術会議も独自の資金確保に努めるべきである。
【戦術】 ・学術会議は国民からみると一体どんな活動をしているかよくわからなかった。社会とコミュニケーションをとることも大切だ。
〇産経学術会議を別法人とするという同じ事象にも関わらず、朝日・日経・産経でこれほど社説が違っている。これは各社の根本の考えが違っていることに他なりません。その根本の考えを示すのが「世界観」の筈なのですけれども、その「世界観」を社説で示しているのは産経だけ。朝日や日経は「世界観」を示していません。
【世界観】 ・国民のための組織に生まれ変われないなら、国を代表する「ナショナルアカデミー」を名乗る資格はない。
【政策】 ・政府は日本学術会議を国から独立した法人とする方針を決めた。
【政策】 ・今回の政府方針では、日本防衛への協力を忌避する悪しき体質を改めることには直結しない
【大戦略】 ・学術会議は外部有識者による評価委員会の設置について独立性を阻害しかねないと反発するが、税金を投入する以上、外部評価は不可欠だ。
【軍事戦略】・政府は国費投入を最小限にすべきである。
【軍事戦略】・学術会議の改革に後ろ向きな姿勢は変わっていない
【作戦】 ・学術会議自らが運営資金を集める仕組みも作るべきだ。
3社で共通しているのは「政策」階層の「日本学術会議を国から独立した法人とする」という点だけで、朝日と日経はそこを起点として下の階層の戦略に当たる論点を展開しているのですけれども、日経は「世界観」として「国民のための組織に生まれ変われないなら、国を代表する『ナショナルアカデミー』を名乗る資格はない」と打ち出しています。従って、その下の階層である「政策」階層で「今回の政府方針では、日本防衛への協力を忌避する悪しき体質を改めることには直結しない」と規定することが出来ています。これが産経と他の2社との決定的な違いだと思います。
本当は朝日も日経も、それぞれ何某かの「世界観」を持っている筈なのですけれども、それを打ち出せないところに弱点がある。あるいは、「国益に資すること」という世界観を出したくないと思っているのかもしれませんけれども、逆にいえば、それが彼らの「世界観」だともいえるわけです。
今年5月、参政党の神谷宗幣議員が「我が国の防衛技術開発を忌避する日本学術会議が中国の軍事技術開発を担う国防七校と我が国の大学機関との共同研究等の提携を不問にしている矛盾に関する質問主意書」を提出していますけれども、学術会議は日本の防衛技術研究はしないと宣言している裏で、中国の防衛技術研究に協力するというダブスタをしています。
そこへの言及なしに、「世界観」の設定をしないままで、独立性の担保だなんだといっても、大きな意味での戦略にはなっていない。すくなくとも国益に資する議論にはなりません。
この手の議論というか、意見が分かれる社説については、その論点でいかなる「世界観」が提示されているかを見極めることが大事なのではないかと思いますね。
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