日本国総理大臣・岸田文雄閣下

今日はこの話題です。
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1.不変の主敵


北朝鮮が最近、韓国との南北統一を象徴する平壌の「祖国統一3憲章記念塔」を撤去したと韓国政府関係者が明らかにしました。

この「祖国統一3憲章記念塔」は、平壌の統一通りにあるアーチ形の建造物で、観光スポットとしても知られていました。2000年6月の初の南北首脳会談などで統一を求める機運が生まれたことを受け、2001年8月、正恩氏の父・ 金正日総書記が建てたもので、高さ30メートル、自立、平和、民族協力の三憲章を象徴しているとされます。

韓国政府は衛星写真の分析などから撤去を確認したとみているようです。

金正恩委員長は、1月15日の最高人民会議での演説で、この記念碑を「目障りなもの」と呼び、憲法から「独立」「平和統一」「民族統一」などの用語を削除して、南を「第一の敵、不変の主敵」とするよう命じたと、公式メディアが伝えています。

金正恩総書記は祖父の金日成主席時代からの南北統一政策を放棄する方針を示しており、今後も別の施設を撤去する可能性があるとみられていますけれども、昨年末、北は軍事的緊張の緩和を目的として2018年に韓国と結ばれた重要な合意はもはや有効ではないと宣言。金委員長の演説を受けて、北朝鮮の議会は数十年にわたるソウルとの交流に貢献してきた主要な政府機関を廃止しています。


2.北朝鮮の態度変化のシグナルを見たのか


1月23日、アメリカ・ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は記者会見で、「北朝鮮の態度変化のシグナルを見たのか」という記者の質問に「最近、北朝鮮が戦争を準備しているというシグナルがある……情報評価について言及することに慎重な態度を取っている……しかし、我々は極めて、極めて緊密に注視している……我々は、我々が朝鮮半島で維持している防衛態勢が、その危険に対応するのに適正だと確信している」と述べました。

カービー報道官は、ロシアのプーチン大統領の訪朝の可能性など朝ロ協力について質問されると、「我々が懸念しているのは、ロ朝関係の深化だ……プーチン大統領は(北朝鮮製)弾道ミサイルを獲得し、ウクライナで使用するだけでなく、(北朝鮮製)砲弾もかなりよく使用することでロ朝関係から恩恵を受けている……北朝鮮が(ロ朝関係を通じて)自国の先端軍事力を追求しているため、我々は極めて緊密に注視している……我々が懸念しているのは、この関係でプーチン大統領が得ることだけでなく、金正恩氏が恩恵を受ける可能性があるということであり、それが我々の地域の平和と安定にどのような意味を持つかということだ」と強調しました。

更に、25日、ホワイトハウスのジョン・ファイナー副国家安全保障顧問は、アメリカのシンクタンク、アジア・ソサエティーが主催したフォーラムで、「北朝鮮は非常に否定的な動きを続けている」と語り、アジア・ソサエティの副会長でダニエル・ラッセル元国務次官補も「北朝鮮は2010年の延坪島砲撃以上の攻撃を行う意図があるようだ……金総書記が衝撃的な物理的行動を取る可能性に備えねばならない」と警戒を呼びかけました。

また、この日、『ニューヨーク・タイムズ』紙は、「韓半島に全面戦争のリスクが高まったとは考えていないが、金総書記は急激な緊張の高まりを避けられそうな方法を選び、攻撃に乗り出すかもしれない……北朝鮮の金正恩総書記は今後数カ月以内に韓国に対して何らかの致命的な軍事行動を起こす可能性がある……金正恩委員長の最近の発言は以前の発言よりも攻撃的であり、真剣に受け止めるべきだ」との匿名の米政府当局者らのコメントを報じています。


3.対立する北朝鮮への見方


金正恩委員長が、韓国との平和的統一はもはや不可能であると発表したことについて、一部の識者は、この動きを南北統一を支持する数十年にわたる政策との前例のない決別とみています。

ウィーン大学のルーディガー・フランク教授は、韓国を外国に指定することは、理論的には紛争か関係正常化のどちらかに道を開くことになるため、「重要なこと」だとし、「特に、北朝鮮のナショナリズムが民族的なものであり、人種的な色彩が濃いことを考えれば猶更だ……さらに、統一朝鮮に統合されるはずだった土地を破壊し、最悪の場合は核で汚染することは、ほとんど意味がなかった。韓国を単なる国として定義することで、これら2つの障壁は、少なくとも机上ではなくなったのだ」と述べています。

北朝鮮は極超音速弾頭を搭載した固体燃料ミサイルや核搭載可能な水中攻撃ドローンと称するミサイルを発射するなど、数多くの兵器実験を行なっていますけれども、一部の識者は、金正恩委員長の最近の動きは、平壌から発せられる通常の威勢とは異なると指摘しています。

1月11日、アメリカ中央情報局(CIA)の元アナリストのロバート・L・カーリン氏と、訪朝経験のある核科学者ジークフリート・S・ヘッカー氏の2人はアメリカ拠点の北朝鮮分析サイト「38ノース」が発表した報告の中で、「金正恩がいつ、どのように引き金を引くつもりなのかはわからないが、その危険性は、ワシントン、ソウル、東京における平壌の『挑発行為』に対する日常的な警告をすでにはるかに超えている……1950年に祖父がしたのと同様に、金正恩氏は戦争に踏み切るという戦略的決断を下したのだと、我々は考えている」と述べています。

また、北朝鮮研究大学の博士課程に在籍するガブリエラ・ベルナル氏は、サウスチャイナ・モーニング・ポストの論説で、金正恩委員長がもはや韓国人を同胞とは見ていないため、衝突の可能性は「突然高くなった」と主張。そしてジョージ・W・ブッシュの韓国問題担当最高顧問であるビクター・チャは、北朝鮮は今後1年でより好戦的になる可能性が高く、「檻をガタガタにするために戦争以外の多くのこと」をする可能性があるとツイートしています。

更に元CIAの北朝鮮分析官であるスー・キム氏は「どちらかと言えば、この発言は、金正恩が安全保障、生存、そしてこの地域、最も近いところでは韓国に対する威嚇の手段として、核兵器の開発と実験を求め続けるという考えを補強している……懸念されるのは現在の地政学的情勢であり、金正恩はそれを十分に認識し、今回の政策決定に際して考慮したと思われる。おそらく、金正恩は自分の決断を評価する上で、統一を放棄し、目標に向かって全速力で突き進む方が、得るものより失うものの方が少ないと判断したのだろう」と分析しています。

このように北朝鮮が南北統一を放棄したという見方がある一方、そうではないという意見もあります。

韓国の東西大学教授で、『The Cleanest Race: How North Koreans See Themselves and Why it Matters』の著者であるブライアン・R・マイヤーズ氏は、「多世代的な政策観」を持つ国家が統一を放棄したと考える理由はほとんどないとし、金正恩委員長が統一を明らかに否定しているのは、むしろアメリカが軍事行動を検討するのを抑止し、韓国国民が次期国会議員選挙で北朝鮮に同情的な政治家を支持するよう後押しするための努力と見るべきだと主張しています。

また、韓国の国民大学の北朝鮮専門家であるアンドレイ・ランコフ氏は、「10年前、北朝鮮は公式に数週間以内に戦争が始まると言った。北朝鮮政府は在平壌の外国大使館に働きかけ、必要のない人員は直ちに避難させるよう提案した。北朝鮮のメディアは韓国在住の外国人に対し、すぐに逃げ出すよう提案した……数十人の外国人ジャーナリストがソウルにやってきて、朝鮮半島で起こる戦争について報道した。彼らは、韓国人がまったく気にしていないことに驚いた。彼らは、このような好戦的な暴言の高波が3年か5年ごとに北朝鮮からやってくることを理解していたからだ。当時は、今よりもはるかに生々しかった……どんな人間でも、特に遠い国の独裁者の心の中を覗くことは不可能だ。しかし、金正恩が現実感覚を持った理性的な思考の持ち主であると仮定するならば、北朝鮮が韓国を攻撃する可能性に対する長年の反論がこれ以上有効でない理由は一つも見当たらない……そのようなステップのために北朝鮮軍を準備することさえ、時間がかかるだろう。しかし、何よりもまず、金正恩の演説は、韓国防衛に対するアメリカのコミットメントを変えるものではなかった。北朝鮮当局者が非公式な会話で繰り返し認めているように、それはほぼ確実に北朝鮮を破壊する結果になるだろう」と金正恩委員長が現実的な考えを持っているのなら、軍事行動には出れないはずだと指摘しています。

ランコフ氏は、11月のアメリカ大統領選挙でバイデンとトランプによる争いになると見られていることを踏まえ、「理想を言えば、北朝鮮はドナルド・トランプ政権と交渉し、北朝鮮を核保有国として事実上承認したい。なぜなら、ドナルド・トランプは非常に異例で型破りな大統領であるため、理論的には北朝鮮を核保有国として受け入れることができるからだ……ドナルド・トランプ以外の誰の下でも、そのような取引が成立する可能性はゼロに近い」と指摘するとともに、金正恩が祖父と父の統一政策と決別するという決断を下したのは、彼自身の指導者としての正当性を確立するための努力かもしれないと述べています。


4.日本国総理大臣・岸田文雄閣下


1月6日、朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は、金正恩総書記が岸田総理に宛てて、能登震災の見舞いの電報を送ったと6日、朝鮮労働党機関紙「労働新聞」を通じて発表しました。

それによると金正恩委員長は5日付けの電報で「日本で不幸にも年初から地震によって、多くの人命被害と物的な損失を受けた知らせに接し、遺族と被害者に深い同情とお見舞いの意を表す……被災地の人は々が1日も早く地震の被害から復旧し、安定した生活を取り戻すことを願っている」と送ったとのことです。

北朝鮮の報道を分析しているラヂオプレスは、金正恩委員長が自然災害に関連して、日本の総理大臣に電報を送ったと伝えられたのは今回が初めてで、また岸田総理宛に電報を送ったのも初めてだとしています。

この極めて異例の電報の中で特に注目されたのは、その宛名が「日本国総理大臣 岸田文雄閣下」だったことです。外務省によると、「閣下」の敬称使用は初とみられ、北朝鮮の〝軟化〟の兆しではないかとも分析されています。

関係者によると、岸田政権内では局面打開の期待感が一気に高まったそうなのですけれども、日朝関係筋は「北朝鮮は日米韓の連携強化を相当嫌気している。対米、対韓関係の改善が困難ななかで、三国の協調にくさびを打ち込もうと、『拉致解決』をほのめかし、日本に接近する可能性は大いにある」と指摘。外務省関係者は「首脳会談で日本の支援を得て、外交的孤立の打開も狙う」と述べ、また、永田町関係者は「北朝鮮は外交巧者だ。支持率が低迷し国内政局が大混乱する岸田政権の足元を見ている。肝心の拉致被害者の『帰国』さえおぼつかない状況で、安易に交渉に乗り出すのは、極めて危険だ」と懸念を示しています。

これらの動きは、前述のアンドレイ・ランコフ氏が指摘するように、アメリカの大統領がトランプ氏になることを見越しての準備ではないかと筆者には見えます。

つまり、今のうちに様々なミサイルなどの武器保有を既成事実にした上で、トランプ氏と交渉して承認させることはもとより、あわよくば核保有国として認めさせようとしているのではないかということです。

それに加え、例えば、ロシアからパイプラインを引いて、石油や天然ガスの輸出口として北朝鮮が名乗りを上げることがあるとすれば、中東が混乱する中、世界のエネルギー戦略の構図に一石を投じることにもなりかねません。

それを背景に、金正恩委員長が、岸田「閣下」とアプローチをかけているのだとしたら……

あるいは、拉致被害者と引き換えに莫大な支援金をせしめ、港湾整備からインフラから何もかも日本の金でやろうと考えているかもしれません。

日本政府も単純に拉致被害者奪還云々だけでなく、北朝鮮がもっと大きなカードを切ってきたことも想定しておいたほうがいいかもしれませんね。


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