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1.ザルジニー将軍と会いました
2月8日、ウクライナのゼレンスキー大統領は国民に人気の高いヴァレリー・フェドロヴィッチ・ザルジニー総司令官を解任し、新しい総司令官を任命しました。
解任に当たって、ゼレンスキー大統領とザルジニー氏は一緒にうつった写真をSNSに投稿しています。
ゼレンスキー大統領がツイートした文章は次の通りです。
私はヴァレリー・ザルジニー将軍と会いました。ザルジニー氏は国民に人気が高いことで知られていますけれども、ゼレンスキー大統領との軋轢が指摘され、先月下旬以降、解任されるという見方が相次いで伝えられていました。
私は2年間ウクライナを守ってくれたことに感謝した。
私たちは、ウクライナ国軍が要求している更新について話し合いました。
私たちはまた、ウクライナ軍の新たな指導部に誰が加わる可能性があるかについても議論した。
今こそ、そんなリニューアルの時期に来ています。
私はザルジニ将軍にチームに残るよう提案した。
必ず勝ちます!
ウクライナに栄光あれ!
こうしたことから、揃って写真を投稿した背景として、双方が"互いを尊重"している姿勢を示し、解任に対して国民の反発や混乱が広がるのを防ぎたい思惑があるとみられています。
発表を受けて、アメリカ・ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は8日の記者会見で、「われわれはゼレンスキー大統領が軍の責任者に任命したいかなる人物とも協力する」と強調。また、フランスのルコルニュ国防相は「われわれのビュルカール統合参謀総長はザルジニー総司令官と、この2年間、強い信頼関係を維持してきたが、後任の総司令官とも、同じように関係を築いている」と述べました。
I met with General Valerii Zaluzhnyi.
— Volodymyr Zelenskyy / Володимир Зеленський (@ZelenskyyUa) February 8, 2024
I thanked him for the two years of defending Ukraine.
We discussed the renewal that the Armed Forces of Ukraine require.
We also discussed who could be part of the renewed leadership of the Armed Forces of Ukraine.
The time for such a renewal… pic.twitter.com/tMnUEZ3BCX
2.後継はシルスキー司令官
ゼレンスキー大統領は同じく8日に公表した動画で、ザルジニー総司令官の後任として、陸軍のシルスキー司令官を任命したと発表しました。
新たに総司令官に任命されたシルスキー氏は58歳。2019年からウクライナ陸軍の司令官を務めています。
ゼレンスキー大統領は動画のなかで、シルスキー氏について、「首都キーウの防衛や東部ハルキウ州の解放で作戦を指揮し、成功を収めた。最も経験豊富な司令官だ」とこれまでの功績を強調しています。
ただ、今回の交代をめぐり、周辺では様々な反応が上がっています。
ルステム・ウメロフ国防相は声明で「ヴァレリー・ザルジニー将軍は、最も困難な任務の一つを担っていた。ロシアとの大戦の最中にウクライナ軍を率いるという任務を……しかし、戦争はずっと同じままではない。戦争は変化し、要求も変化する。2022年、2023年、2024年の戦いは、3つの異なる現実でもあった。2024年は新たな変化をもたらすだろうし、我々はそれに備えなくてはならない。新しいアプローチや新しい戦略が必要だ……本日、ウクライナ軍の指導部を変える必要があるという決断が下された……ヴァレリー・フェドロヴィッチの功績と勝利に心から感謝している」と表明しました。
そして、キエフの ヴィタリ・クリチコ市長は、ザルジニー氏のウクライナへの貢献に感謝を示し、今回の交代の正当性を、いずれ当局には証明してもらいたいと付け加えました。
一方、ペトロ・ポロシェンコ前大統領が率いる野党の国会議員、オレクシイ・ホンチャレンコ氏は、今回の動きはゼレンスキー氏による「大きな過ち」だと指摘。国にとってリスクが伴うだろうとし、「私たちは皆、この過ちの代償を払わなければならなくなる」と批判。
また、別の野党議員ヴァレンティン・ナリヴァイチェンコ氏は、戦時下の軍指導部というものは、「私たちが守り、支援すべきものだ。批判するのではなく、あらゆる可能な方法で助けなければならないものだ」とコメントしています。
3.ザルジニーが解任されるべきではないこれだけの理由
このように、ザルジニー氏の解任について賛否が渦巻いているのですけれども、一部のマスコミやアナリストは、ザルジニー氏の退任は望ましくない混乱をもたらし、ウクライナ軍と政治家の間にくさびを打ち込む可能性があり、キエフの西側同盟国間の不確実性を高める可能性があると警告しています。
アメリカの有力紙、ワシントン・ポスト紙は「シルスキー氏はウクライナ東部ドネツク州のバフムトで兵士たちをあまりにも長く敵の攻撃にさらし続けた指揮官で、戦略的価値に乏しい町を守るために多くのウクライナ兵が犠牲となった」とした上で、「シルスキー氏を総司令官に任命する決定は現場の部隊の反発を招くことが予想される」と指摘しています。
また、ワシントンD.C.のシンクタンク戦略国際問題センターの研究員であるオーストラリアの退役将軍ミック・ライアン氏は、ザルジニ氏について「カリスマ的で人気のある軍指導者」であり、代えがたい人物であるとし、後任は米国およびNATO軍首脳らと個人的な関係を構築する必要がある一方、政府の不安定性に対する認識はゼレンスキー氏にとって「本当に危険な領域である」と述べています。
前・陸上自衛隊東部方面総監でハーバード大学アジアセンター・シニアフェローの渡部悦和氏は、JBPressの2月9日付の記事「ウクライナ軍総司令官が解任されるべきではないこれだけの理由」で、次のようにザルジニー氏を高く評価しています。
【前略】
ザルジニー大将は、2023年11月1日付の『エコノミスト』誌とのインタビューの際に小論文「現代陣地戦と勝利の方策(MODERN POSITIONAL WARFARE AND HOW TO WIN IN IT)」を公表した。
このインタビューは、ゼレンスキー大統領と事前に密接に調整されたものではなく、両者の不和の大きな原因になった。
ザルジニー大将はこの小論文において、「戦争は“膠着状態”に達している」と記述した。この点がゼレンスキー大統領を激怒させ、彼は公にザルジニー大将を批判し、「戦争は膠着状態ではない」と反論した。
しかし、戦線はほとんど停滞し、戦争は消耗戦であり、どちらの側もほとんど前進していないという評価は、今や事実として広く受け入れられている。
そのほかにザルジニー大将がインタビューで発言している点は以下の通りだ(ザルジニー大将の発言は太字で示した)。
・今日の技術の進歩が敵と味方の双方を立ち往生させている。
・第1次世界大戦の時と同様、技術の進化が戦局を膠着させる事態になっている。その打開には大きな技術的飛躍が不可欠だが、状況を一変させるような大きな美しい打開はおそらく起きないだろう。
・欧米諸国はウクライナの反転攻勢でロシアに勝ち目がないことを示し、プーチン大統領を交渉に引きずり出すことを期待したが、戦況を見る限りその望みは薄くなった。
ロシア側の死者は少なくても15万人に達する。それだけの犠牲を出せば、他のどんな国も停戦したであろう。
だがロシアは違う。同国では人命は安く、プーチン大統領の判断基準は数千万人の戦死者を出した第1次、第2次大戦だ。
・敵の動きをすべて把握できるが、敵も我々の行動すべてを把握できる。
よってこの膠着を打開するためには新しい何かが必要だ。ドローン、電子戦、地雷除去機、対砲兵戦、ロボット工学のすべてを革新し、かつそれらを結集させた画期的な打開策が必要だ。
また、ザルジニー大将がインタビューの際に同時に公表した小論文『現代陣地戦と勝利の方策』に記述している主要点は以下の通りだ。
ウクライナ・ロシア戦争が陣地戦になり戦争が長期化する危険性がある。この戦争に勝利するために5つの方策を提唱する。
①航空優勢の獲得、②長大な地雷原の突破、③有効な対砲兵戦の実施、④電子戦能力の強化、⑤予備兵力の創設と訓練である。
やはり、攻勢作戦における航空優勢の獲得が最優先の課題である。
ザルジニー総司令官は、『ロシア・ウクライナ戦争における軍事作戦の現代的なデザイン(主導権争いの中で)』(ON THE MODERN DESIGN OF MILITARY OPERATIONS IN THE RUSSO-UKRAINE WAR: IN THE FIGHT FOR THE INITIATIVE)という文書を米国のCNNに寄稿した。
この文書は、彼がロシア・ウクライナ戦争をいかに戦うべきであるかを示すものだが、先の小論文「現代陣地戦と勝利の方策」と密接な関係がある文書として注目される。
この文書では、特に無人機システム(ドローンなど)の重要性が特に指摘されている。
また、この文書はゼレンスキー大統領に対する反論や彼の後任候補者たちに対する注意喚起の文書であるように思う。
以下は、ザルジニー文書の注目点だ。
●ザルジニー文書の結論
2024年、我々は3つの分野に注力する。
①国軍にハイテク資産を供給するシステムを作ること。
②資産の制約やその展開方法を念頭に入れた、訓練や戦争行為に対する新しい考え方の導入。
③新しい戦闘能力を可能な限り早く習熟すること。
我々は敵を排除し、国家としての存立を確保するための能力を既に持っている。我々の目標はチャンスをつかむことに置く必要がある。
最新の戦闘能力を最大限に積み上げ、より少ない資源で敵に最大の被害を与えることだ。それが侵略を止め、ウクライナを将来も侵略から守ることにつながる。
●戦争に勝つための戦略・作戦の不易流行
第2次世界大戦が終わって80年が経過したが、戦略や作戦の原則は変わらない。勝利のための戦略は変わらず、「敵を撃破し、領土を確保する」ことだ。
しかし、航空、ミサイル、宇宙の資産(人工衛星など)、通信や電子戦などの兵器や装備の発達、技術的進歩は明らかだ。
また、国際政治情勢、経済情勢等の急速な発展に伴い、それぞれの戦争の勝利のための独自の戦略と作戦を見出す必要がある。
つまり、それらは常に変化し、新しい内容にしなければいけない。時代遅れの型にはまった思考を捨て去らなければいけない。
●勝利のための新たな技術や兵器
現時点で最も優先度が高いのは、比較的安価で、高い効果を発揮する最新の無人機や他の技術的手段を取り入れた兵器全般に習熟することだ。
新しい作戦にはデジタル分野での創造性、電磁波領域の管理、攻撃用ドローンとサイバー資産の統合運用が含まれる。
そうした資産のおかげで、リアルタイムの情報活動が可能になり、司令官は戦場の状況をリアルタイムで、昼夜や天候を問わず監視できる状況となっている。
また、24時間、絶え間なく砲撃の修正が可能となり、敵が前線にいても奥地にいても、精密な攻撃ができるようになった。これは戦場における作戦の大規模な再設計にほかならない。
以上のような主張は、新技術によるブレークスルーを重視するザルジニー大将の真骨頂である。
ウクライナ軍の作戦はドローンなくして遂行できないと言っても過言ではない。ウクライナ軍は砲弾の枯渇に苦しんでいるが、その砲弾を代替するのが自爆型のFPVドローンだ。
ウクライナは現在、小規模企業を使って62種類のドローン(UAV)を製造し、ほとんどの部品は3Dプリンターで作っている。そして、1年間で100万機のドローンを生産している。
ザルジニー大将の後継者候補のシルスキー大将は古い型の将軍で、第一線部隊の兵士たちの評判が芳しくない。犠牲を伴う歩兵を中心とした小部隊の突撃を重視するからだ。
彼が無人機など新技術を使った作戦の導入に熱心だという評判を聞かない。その点でザルジニー大将の後継者になれるのか疑問である。
【以下略】
このように、渡部悦和氏はザルジニー氏は、新技術によるブレークスルーを重視していると評価する一方、シルスキー氏は古い型の将軍であり、第一線部隊の兵士たちの評判が芳しくない、と指摘しています。
4.横倒しの裏ピース
ゼレンスキー大統領とザルジニー氏は一緒にうつった写真をSNSに投稿し、各種メディアも「ピースサインをするザルジニー氏と笑顔で握手する画像」などと画像を引用して報じていますけれども、一部でその写真に対してある指摘がなされています。
それはザルジニー氏が横倒しの「裏ピース」をしていたことです。
普通ピースサインといえば、手のひらを表にしてやるものですけれども、ザルジニー氏は手の甲をこちらに見せてピースサインしているのですね。
ハンドサインの一つに手の甲をみせてピースする「裏ピース(Two-finger salute)」と呼ばるものがあります。
こちらのサイトで裏ピースについての説明がされていますけれども、一部引用します。
【前略】この裏ピースは、15世紀頃、フランス人が捕虜になったイギリス兵の人さし指と中指を切断し、弓を引けないようにしていたことに腹を立てたイギリス人が「今に見ていろ!」とばかりこのジェスチャーで相手を挑発するようになった、というのが始まりなのだそうです。
【4】“裏ピース”などハンドサインも気をつけて
日本の若者がする、手の平を逆にした“裏ピース(英語ではTwo-finger salute)) ”は、中指を立てたハンドサインと同様に、オーストラリアやイギリスではNG。これは卑猥なハンドサインであり、日本で写真を撮るときにすることがあるが、やめた方がいい。
普通のピースサインも、ギリシャでは侮辱のポーズだとしてNG。「いいね!」と、親指を立てるサインも、イランやアフガニスタンなどNGとされる国もあるので注意が必要。
1:アメリカでの意味
「裏ピースサイン」は顎に当てることがありますが、アメリカでは2本の指を立てて口元に持ってくることは、女性に対して卑猥な挑発をする意味に捉えられてしまうことがあります。
そのため、「裏ピースサイン」をアメリカでしてしまうと、非常に下品な印象を与えてしまう可能性があるので、注意しましょう。
2:イギリスでの意味
日本では、人に対して中指を立てることは相手を挑発する際のハンドサインとなっていて、非常に失礼な行為です。イギリスでは「日本での中指を立てるハンドサイン」の意味と、「裏ピースサイン」が同じ意味となっています。
そのため、イギリスでしてしまうと、非常に失礼になるので注意が必要です。
3:オーストラリアでの意味
オーストラリアも日本とイギリス同様、「中指を立てること」と同じ意味のハンドサインになってしまいます。オーストラリアの方と話す時や旅行でオーストラリアを訪れる際は注意しないといけません。
【略】
ザルジニー氏がこの裏ピースを意識してやったとするなら、西側諸国に対して「fu〇k you」といったことになります。
英語圏ではピースサインは「Vサイン」と呼ばれているのですけれども、もしかしたら、"裏"Vサインを横向きにすることで「Victory(勝利)」が倒れる、ウクライナの勝利が遠ざかるという意味も含まれているかもしれません。
今後、ウクライナ情勢がどう展開していくか。注意する必要があるかと思いますね。
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