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1.四月解散説
2月12日、日本維新の会は次期衆院選の新人候補を対象にした研修会を大阪市で開きました。
研修会には、全国から次の衆院選に出馬する予定の支部長らが集まり、会の冒頭で藤田文武幹事長は「最短では4月の予算上がった後に解散するんじゃないか、またはこの6月の会期末に解散があるんじゃないかと言われております」と述べ、選挙に備え活動量を増やすよう指示したということです。
また、藤田幹事長は、自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件に触れ「自民の自浄能力のなさが明らかになった。選挙を通じ政治を浄化していく」と強調。研修会では、現職国会議員らが支持拡大に向けた手法などについて講義しました。
次の衆院選に向け、維新は全289小選挙区に候補の擁立を目標に掲げていますけれども、現在は150超にとどまっています。
この4月解散説が取り沙汰されていることについて、ジャーナリストの山口敬之氏は、自身の動画で次のように述べています。
・永田町で、4月解散説っていうのが可能性として取り沙汰されているなるほど、2月4日に行われた地方選では、保守地盤の群馬県・前橋市長選で自民、公明両党の推薦候補が敗れ、京都市長選では自公と一部野党が相乗り推薦した候補が辛勝と、裏金問題による逆風が吹いています。
・通常国会は予算成立させるためにあり、大体3月末までに閉じるもの
・今回は4月28日に東京・中国とかを含む補欠選挙が予定されている。(衆院長崎3区、東京15区、島根1区)
・この補欠選挙で自民党候補が惨敗したら、岸田総理はその先解散打てない
・岸田の元では戦えないっていう結論が出る
・そうするとあり得るのはその4月28日に解散をぶつけちゃうって手がある。
・だから4月解散説じゃなくて4月28日解散説なのだ
その状況下では、4月28日に解散するというのがギリギリだというのですね。
2.金与正談話
ただ、先日、岸田政権発足後最低を記録した内閣支持率で、解散するためには、少しでも支持率を上げておきたい。そのために指摘されているのが、北朝鮮拉致被害者の奪還です。
2月15日、北朝鮮の金与正党副部長は談話を発表し、岸田文雄総理による平壌訪問もあり得るとの見解を示しました。談話の全文は次の通りです。
最近、岸田日本首相が国会の衆議院予算委員会で、日朝間の現状を大胆に変える必要性を強く感じるとしながら、自分自身が朝鮮民主主義人民共和国の国務委員長(金正恩総書記)と主導的に関係を結ぶことが極めて重要であり、現在さまざまなルートを通じて努力し続けていると発言したという。この談話で、北朝鮮は、岸田総理の訪朝について明確に条件を出しました。それは「我々の正当防衛権に対し、不当に食ってかかる悪習を振り払い、既に解決された拉致問題を両国関係の展望の障害物にすることさえしなければ」です。つまり、北朝鮮に対する経済制裁を止めることと、拉致問題は解決済みにしろ」の2つです。
私は、岸田首相の発言を巡って、日本メディアが朝日関係の問題に関して従来とは異なる立場を示したものと評価したことについても留意する。
岸田首相の今回の発言が、過去の束縛から大胆に抜け出し、朝日関係を前進させようという真意から出たものであれば、肯定的に評価できない理由はないとみる。
これまで日本が、既に全て解決された拉致問題や朝日関係改善とは何の縁もない核・ミサイル問題を、前提として持ち出し続けてきたことで、2つの国の関係が数十年間、悪化の一途をたどることになったということは、誰もが認める事実だ。
日本が時代錯誤の敵対意識と、実現不可能な執念を勇気を持って捨て、互いを認めた基礎の上で、丁重なふるまいと信義ある行動により、関係改善の新たな出口を切り開いていく政治的決断を下すなら、両国がいくらでも新しい未来をともに切り開いていけるというのが私の見解だ。
過去ではなく、先を見通せる賢明性と戦略的な眼目、そして、政治的決断を下せる意志や実行力を持った政治家だけが機会をつかめ、歴史を変えることができる。
日本がわれわれの正当防衛権に対し、不当に食ってかかる悪習を振り払い、既に解決された拉致問題を両国関係の展望の障害物にすることさえしなければ、2つの国が近づけない理由がなく、首相が平壌を訪問する日が来るかもしれない。
ただ、現在までわが国の指導部は、朝日関係改善に向けたいかなる構想も持っておらず、接触にも何の関心もないと理解している。
今後、岸田首相の本心をさらに見極めなければならないだろう。
これはあくまでも、私の個人的な見解でしかなく、私は、公式に朝日関係を評価する立場にはない。
主体113(2024)年2月15日
3.巨額支援の筋書き
これについて、ジャーナリストの門田隆将氏は「金正恩が岸田首相を“閣下”と呼び、金与正まで“岸田首相の訪朝はありえる”と言った事で岸田訪朝が俄に現実味。2人の神戸出身男性+αで、あとは合同調査委を創り表面上の決着をつけ巨額支援の筋書。だがこれは他の拉致被害者の命が危ぶまれるため安倍・菅時代は相手にしなかった。危う過ぎる岸田首相に懸念」とツイートしています。
ここで取り上げられた2人の神戸出身男性について、先述の山口敬之氏は、北朝鮮による拉致被害者の田中実さんと特定失踪者の金田龍光さんであると指摘しています。
田中さんは1949年、神戸市に生まれ。2歳の時に両親が離婚し、児童養護施設に預けられました。神戸工業高校を卒業後、いくつかの職場を経てラーメン店の店員になったのですけれども1978年、28歳のときにラーメン店の店主とともに、成田空港からウィーン行きの飛行機に搭乗後、消息不明となりました。そして、27年後の2005年に日本政府が16人目の拉致被害者に認定しました。
そして、金田さんは、田中さんと同じ児童養護施設で育った友人で、「田中さんのところに行く」と言った後、消息を絶っており、拉致の可能性の高い特定失踪者とされています。
この2名について、2022年9月、当時、外務事務次官だった斎木昭隆氏は朝日新聞のインタビューに対し、ストックホルム合意による北朝鮮からの調査報告について、「北朝鮮からの調査報告の中に、そうした情報が入っていたというのは、その通りだ。ただ、それ以外に新しい内容がなかったので報告書は受け取らなかった」と発言したことが報じられています。
このストックホルム合意とは、2014年に結ばれた「北朝鮮が拉致問題だけではなく、残留日本人や日本人配偶者など全ての日本人に関する調査を同時並行的に行うという内容」の合意です。
これが合意された背景について、第2次安倍政権で外務事務次官や駐米大使などを務めた杉山晋輔氏は「全ての日本人に関する調査という一つのパッケージの中に拉致問題が含まれるのであれば合意しよう、という安倍元首相の大きな政治決断でした。懸念はありましたが、それでも何かをしないと何も前進しないと考えておられました」と大きな政治決断だったと述べています。
つまり、拉致問題が含まれるからこそ合意したというのですね。
にも拘わらず、北朝鮮は金田さんと田中さん以外の情報について報告してこなかった。これに対し日本政府は全ての日本人に対する調査ではない、とつっぱねた訳です。
こうした背景を踏まえた上で、北朝鮮の要求をみると、確かに門田氏のいうように「2人の神戸出身男性+αで、あとは合同調査委を創り表面上の決着をつけ巨額支援の筋書」が描かれているように見えます。
金正恩が岸田首相を“閣下”と呼び、金与正まで“岸田首相の訪朝はありえる”と言った事で岸田訪朝が俄に現実味。2人の神戸出身男性+αで、あとは合同調査委を創り表面上の決着をつけ巨額支援の筋書。だがこれは他の拉致被害者の命が危ぶまれるため安倍&菅時代は相手にしなかった。危う過ぎる岸田首相に懸念 https://t.co/Mnds2HGs10
— 門田隆将 (@KadotaRyusho) February 16, 2024
4.+αとは誰か
ただ、ここで筆者が気になるのは、門田氏が述べた「2人の神戸出身男性+α」の+αが誰かということです。というのも、仮に金田さんと田中さんが帰国できたとしたら、それはそれで大きなことですけれども、「岸田総理素晴らしい」となって支持率が大きく回復する程のインパクトはないと思うからです。
つまり、ポイントは、2人の神戸出身男性ではなく+αにあると見ます。
2月8日、FNNは北朝鮮に拉致され、その後帰国を果たした蓮池薫氏に対するインタビューを行い、拉致被害者の横田めぐみさんが、北朝鮮で1990年頃と94年頃の2度、住まわされていた招待所を抜け出していて、2度目は、新潟と繋ぐ貨客船の万景峰号で、日本に帰ろうとしていたと明らかにしたと報じました。
そのインタビューで蓮池氏は次のように語っています。
拉致被害者・蓮池薫さん(66):(めぐみさんが)帰りたいなっていう思いから、フラッと出る。市内でちょっと行ったところを捕まる。で、どこ行くのって言ったら、いや船に乗ろうと思ってと。(めぐみさんは酔うと)そういう話を言うわけですよ。幹部としては面白くはないと思うんでしょうね。蓮池氏ら5人は、2002年に北朝鮮に戻ることを前提とした「一時帰国」として帰国できたのですけれども、めぐみさんはこうしたことが理由で、メンバーに選ばれなかった可能性が高いと蓮池氏は指摘しています。
蓮池氏によると、北朝鮮は、2002年の日朝首脳会談で「めぐみさんは死亡した」と発表したのですけれども、直前に工作員が、遺骨を探すふりをする偽装工作を行っていて、その様子について「彼(北朝鮮の工作員)が私に、突然ですよ。それまで何も言ってなかったのに、遺骨探しに行くと。実はめぐみさんの、みたいな。え?めぐみさん亡くなったんですか?うーんみたいなことを言いながら」と語っています。
2004年11月9日から14日にかけて、平壌で第3回日朝実務者協議が開催された際、北朝鮮は横田めぐみさんの「遺骨」と称するものを日本政府代表団に提出したのですけれども、関係警察は、この「遺骨」をDNA鑑定し、横田めぐみさんのDNAではないと判定しています。
つまり、横田めぐみさんの生死は確認されていない訳です。
もし、ここで、その+αとして、横田めぐみさんを北朝鮮が出してきたら、どうなるか。
これまでメディアは、横田めぐみさんを、北朝鮮拉致被害のシンボル的存在として扱ってきましたから、彼女が帰国したとなると、大騒ぎになるでしょう。それこそ「岸田総理素晴らしい」と持ち上げ、拉致問題は解決したという雰囲気を作ってくる懸念があります。
もっといえば、この時期にいきなり横田めぐみさんが帰国しようとしていた、なんて証言が記事になるあたり、メディアによるそのための「仕込み」なのではないかとさえ。
過去を振り返れば、2002年10月に、蓮池薫氏ら拉致被害者5人の生存者が帰国しましたけれども、その時の世論調査で、北朝鮮の対応について、「評価しない」は72%と多く、「評価する」は18%。日本政府の調査団に対する北朝鮮の説明についても、「信用できない」と答えた人は88%と圧倒し、「信用できる」と答えた人は3%にとどまりました。
この当時の世論の反発もあり、その後、拉致被害者5人が北朝鮮に戻ることも、平壌宣言に基づく日朝国交正常化交渉も頓挫しました。
それと同じように、たとえ、横田めぐみさんが帰国することができたとしても、それで終わりとせず、北朝鮮はやはり信用できない、もっと情報を洗いざらい開示せよ、話はそれからだ、という世論が沸きあがるかどうかが一つのポイントになるのではないかと思いますね。
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