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1.ラファ軍事作戦
2月9日、イスラエルの首相府は声明を発表し、「ハマスの4大隊をラファに残したままでは、ハマスを殲滅するという目標を達成することは不可能」だが、「民間人を戦闘地域から避難させる必要があることは明らかだ」とし、「ネタニヤフ首相は、イスラエル国防軍と治安当局に対し、民間人の避難とラファの大隊の壊滅を組み合わせた計画を内閣に提出するように命じた」ことを明らかにしました。
ラファとは、パレスチナ・ガザ地区南端ラファフ県の県都で、エジプトとの国境に検問所があります。2015年の国勢調査では人口は約17万人だったのですけれども、昨年からのパレスチナ・イスラエル戦争で、戦火から逃れるためガザ地区全域から国内避難民が流入。140万人以上が避難していると見られています。
イスラエル軍はイスラム組織ハマスを壊滅させるためとして、このラファへの地上攻撃を検討しているのですけれども、16日、イスラエルのガラント国防相は、記者団に対して、「ラファでの今後の作戦についてわれわれは徹底的に計画を進めている」と、地上作戦に向けて準備を進めていると強調しました。
2.パレスチナ人を強制的に移住させることに反対する
このラファへの地上作戦をめぐっては、各国が重大な懸念を示しています。
2月12日、南アフリカ共和国は国際司法裁判所(ICJ)に対し、ガザにおけるパレスチナ人の権利のさらなる差し迫った侵害を防止するために、ラファにおける事態の状況変化が、国際司法裁判所規程第75条1項に基づく権限の行使を必要とするか否かを、最大限の緊急問題として検討するよう要請しました。
14日には、ドイツのアンナレーナ・ベアボック外相は、イスラエル訪問を前に声明を発表し、「イスラエル軍がラファを攻撃すれば、人道的状況は完全に制御不能に陥るだろう……ラファの人々が再び銃撃戦に巻き込まれることのないよう、安全な場所と安全な回廊が必要だ。そして、人道的休止が必要だ」とコメントしました。
更にカナダ、オーストラリア、ニュージーランドの首相もこの日に共同声明を発表し、「ラファへの軍事作戦は壊滅的なものとなるだろう……早急な人道的停戦が必要だ。人質は解放されなければならない」と訴えました。
このような懸念はアメリカですら示しています。
2月12日、バイデン大統領は、ホワイトハウスでヨルダンのアブドラー2世国王と会談し、イスラエルとハマスの軍事衝突について協議しました。
その後の共同記者会見で、バイデン大統領は次のように述べています。
こんにちは。 ヨルダン国王陛下をお迎えすることから始めさせていただきたい。 彼は良き友人だ。 アブドラ、ホワイトハウスにおかえりなさい。 ところで、バラクはあそこの隅であなたを見ている。このように、バイデン大統領は、ガザからパレスチナ人を強制的に移住させることに反対しています。
そして、今ジルと会っているリアナ女王とフセイン皇太子も一緒だ。 皇太子はどこにいるのかな? 出てくると思ったんだけど。
私たちは長い付き合いだ。 陛下はその長い間ずっと良き友人であり、女王と並ぶ揺るぎないパートナーであり、国民にとって最愛の指導者でした。 米国と同盟国ヨルダンのパートナーシップは強固であり、永続的なものです。
今日、国王と私は、外交政策担当の上級スタッフとともに、中東、そしてそれ以外の地域でも最前線で中心となっている問題、すなわちイスラエルとテロ組織ハマスとの戦争について話し合った。 4ヶ月以上前の10月7日、ハマスがイスラエルを攻撃し、1200人以上の罪のない女性、男性、子供を虐殺した。
250人以上が人質に取られた。何人がまだ生きているのかはわからない。彼らの家族が毎週、毎月耐えている苦悩は想像を絶する。彼らを帰国させることは、米国にとって最優先事項だ。
私は、米国がハマスの敗北を見届け、イスラエルとその国民の長期的な安全を確保するという目標を共有していることを明らかにしてきた。
10月7日の攻撃後、ハマスはガザに撤退し、指導者たちは地下トンネルで生活している。地下トンネルは、学校、運動場、近隣を含む民間インフラの地下100マイル以上にわたって伸びている。
戦争が激化したこの4ヶ月間、パレスチナの人々もまた、想像を絶する痛みと喪失感に苦しんできた。 この紛争で殺害された2万7000人以上のパレスチナ人のうち、罪のない一般市民や子どもたちがあまりにも多く、その中には何千人もの子どもたちも含まれている。 そして何十万人もの人々が、食料、水、その他の基本的なサービスを受けることができない。
多くの家族が、1人だけでなく多くの親族を失い、彼らを弔うことも、埋葬することもできない。 心が痛む。
ガザで失われた罪のない命ひとつひとつが悲劇であり、イスラエルで失われた罪のない命ひとつひとつが悲劇であるのと同じだ。 私たちは、イスラエル人とパレスチナ人の両者によって奪われた命と、残された悲嘆に暮れる家族のために祈る。
私たちは平和のために祈るだけでなく、パレスチナの人々とイスラエルの人々の平和、安全、尊厳のために積極的に活動している。 そして、私は国王やこの地域の他の人々とともに、すべての人質を帰国させ、人道的危機を緩和し、テロの脅威を終わらせ、ガザとイスラエルに平和をもたらす手段を見つけるために、日夜このことに取り組んでいる。
国王と私が今日話し合ったように、米国はイスラエルとハマスの人質取引に取り組んでおり、少なくとも6週間はガザに即時かつ持続的な平穏をもたらし、その後、より永続的なものを構築するための時間を取ることができるだろう。
この1ヶ月間、私はネタニヤフ首相やエジプト、カタールの指導者たちと電話会談を行い、この協議を進めてきた。 取引の重要な要素はテーブルの上にある。 しかし、私はイスラエルの指導者たちを励ました。米国はその実現のために全力を尽くす。
国王と私は、ラファの状況についても話し合った。 昨日申し上げたように、ラファにおけるわれわれの軍事作戦は、そこに避難している100万人以上の人々の安全と支援を確保するための信頼できる計画、すなわち信頼できる計画なしには進めるべきではない。 そこにいる多くの人々は、北部の暴力から逃れて何度も避難を余儀なくされ、そして今、ラファに詰め込まれている。 彼らは保護される必要がある。
また、私たちは最初から明確にしてきた。私たちは、ガザからパレスチナ人を強制的に移住させることに反対する。
今日、国王と私は、ガザにより多くの人道支援を届ける方法についても詳細に話し合った。 当初から、私のチームと私は、より多くの援助が入るよう執拗に働きかけてきた。 私は何ヶ月も議会に対し、わが国のイスラエル支援と-パレスチナ人に対する緊急に必要な援助も含まれるようにと強く要請してきた。 そして私は、国王を含むこの地域のパートナーたちと、可能な限りガザへの援助の流れを促進し、実際に援助を必要としている人びとに援助が届くよう、何度も話し合ってきた。
私たちはラファ十字路の開通に尽力した。 私たちはケレム・シャロームを開放するために努力した。 そして私たちは、どちらも開通したままであることを主張する。 他のルートも開通させるべく努力している。 また、いったん通過した援助物資を必要な場所に届けることができるよう、援助関係者のために弛まぬ努力を続けている。
ヨルダンと国王には、数日前も含め、ガザへの人道支援に尽力していただいたことを特に感謝したい。 彼は自ら飛行機に乗り込み、緊急に必要とされる医薬品をガザに空輸する手助けをした。
私は、彼の2人の子供たちもその空輸に参加したと聞いている。 彼らは人道的物資の空輸を手伝った。 そして長年にわたり、女王はパレスチナの人々、特に女性と子供たちのために情熱的な擁護者だった。 陛下、ご家族のリーダーシップと人道的コミットメントは称賛に値する。
そして同時に、私たちは、上で何度もお話ししたように、イスラエルの安全が保証され、パレスチナ人が自分たちの国家を望んでいることが実現された、恒久的な和平のための条件づくりに取り組んでいる。 私は、イスラエルを生涯にわたって支持してきた者として、このように申し上げたい。 それがイスラエルの安全を長期にわたって保証する唯一の道だ。 それを達成するためには、パレスチナ人もその機会をつかまなければならない。
今日、国王と話し合ったように、パレスチナ自治政府は、ヨルダン川西岸地区とガザ地区の両方で、パレスチナの人々に効果的な支援を提供できるよう、早急な改革を行わなければならない。 ハマスによるガザの支配が終わった後は、和平を受け入れ、ハマスやイスラム聖戦のようなテロリスト集団を寄せ付けない国家を建設する準備をしなければならない。
そして私たちは共に、この地域を統合し、パレスチナ国家を含むイスラエルとすべてのアラブ近隣諸国との間に和平をもたらすという、私たちが始めたことを完成させるために努力を続けるだろう。 その努力は、10月7日のテロ以前からすでに進められていた。 今日、さらに緊急性を増している。
国王を含むこの地域の同盟国やパートナーほど、われわれに何が必要かを理解している者はいない。私は国王の友情に感謝している。国王とヨルダンのユニークな役割、エルサレムの聖地の管理者というユニークな役割も含めて。
私たちはこの友情に感謝している。 ちょうど2週間前、シリア国境に近いヨルダンの軍事拠点で、シリアとイラクで活動するイランの支援を受けた過激派武装集団による攻撃で、3人の勇敢な米軍兵士が死亡した。 それ以来、米軍はイラクとシリアの標的を攻撃しており、我々の対応は続く。
国王のようなパートナーや同盟国が、地域内外の安全と安定のために日々我々と協力してくれていることに感謝している。 このような困難な時だからこそ、国家間の絆がこれまで以上に重要になるのだ。
更に付け加えると、この前日、バイデン大統領は、イスラエルのネタニヤフ首相と電話会談し、繰り返し自制を求めたのですけれども、ネタニヤフ首相は聞き入れず、「ろくでなし」などと呼んでいたとNBCテレビが報じています。
3.二国家解決を目指すべき
2月14日、イスラエルのネタニヤフ首相は、ラファでの地上作戦について「我々は完全な勝利まで戦う。そのためには、ラファでの強力な作戦も含まれる」などSNSに投稿し、地上作戦を行うことを改めて強調しました。
一方、作戦を開始するタイミングについては「民間人が戦闘地域から退避できるようになってから行う」 と作戦前に、民間人を避難させる意向を示しました。
けれども、ネタニヤフ首相が軍と治安当局に対して提出を指示したとされる民間人の避難計画について、アメリカメディアは、現時点で策定されていないと報じています。
そもそも、当初パレスチナへ攻撃を始める際、民間人は南部に避難せよといっておきながら、南部に避難すると、そこを空爆する。傍から見ると、明らかにオーバーキルですし、虐殺していると言われても仕方ないですし、こんなやり方を続けていたら、国際社会を敵にするだけだと思います。
このイスラエル軍のガザ攻撃が中東にどんな影響を与えたのか。
これについて、東京大学先端科学技術研究センターの池内恵教授は、東京大学広報室のインタビューに次のように答えています。
── ハマスの越境攻撃で何が変わったのでしょうか?池内教授は、イスラエルのガザ侵攻によって、アラブ諸国の人々に、自分たちはイスラエル側に立つ者ではなく、ガザに封じ込められたパレスチナ人たちの側にあるのだと感じさせたとし、パレスチナ国家の樹立を含む二国家解決を目指すべきだと指摘しています。
ハマスがなぜ10月7日に大規模な攻撃を仕掛けたのか、直接的な原因や目的は明らかではありません。しかし、イスラエルとサウジアラビアの国交正常化が実現すれば、パレスチナ問題は置き去りにされ、ハマスの将来がなくなることは確かでした。状況から言えば、今回の攻撃は、起死回生策なのではないかとも見られます。あるいは単純に閉ざされたストレスから暴発した動きなのかもしれませんが、結果としては、今回の攻撃によって、パレスチナ問題を置き去りにした公式な国交正常化の実現はかなり長期間の先延ばしになりました。
事件当日トルコに滞在していた私は、8日にイスラエルに戻り、その直後に国際会議を開く予定でした。そこでは、アブラハム合意がどれだけ進んでいるのか、湾岸産油国とイスラエルの関係強化を中心にした地域の新たな多国間関係の形成に日本がどれだけ関与できるのか、などのテーマについて話し合うことにしていました。事前に湾岸産油国の人たちと交渉する中で感じたのは、昨年末に成立したイスラエルの第6次ネタニヤフ政権に対する反発です。
東エルサレムの旧市街にあるハラム・シャリーフはイスラーム教徒の重要な礼拝の場ですが、そこでのユダヤ教徒の礼拝を可能にしようとするような宗教シオニズムの動きに、アラブ側は強く反対していました。湾岸諸国、例えばUAEは、これまで国交正常化の交渉を進めてきた前政権のベネット元首相やラピド元首相・外相とのコミュニケーションをとるなど、イスラエルとの関係を壊さないようにする一方で、現政権との関係は強化したくないという姿勢を露骨に示していました。
10月7日に大規模な越境攻撃が行われたと伝わった瞬間に、湾岸産油国を含むアラブ諸国の側には、これがイスラエルに対する攻撃であるだけでなく、パレスチナ問題を放置してイスラエルとの国交正常化交渉を進めていたアラブ諸国に対する反発の噴出でもあるという認識があり、一部にはある種の罪の意識も芽生えたようです。長期の封鎖下においてもなおハマスがこのような大きな事件を起こす力を保持していたと誇示したことで、パレスチナを置き去りにしたイスラエルとの国交正常化は不可能であるという認識がまたたくく間に共有されました。
── イスラエル・ガザ紛争に対し、アラブ諸国はどのように反応したのでしょうか?
10月7日という攻撃のタイミングは、宗教休日で公共機関も含めて社会活動が止まり、守備が手薄になっていたところを狙われた1973年の第4次中東戦争の記憶を蘇らせます。エジプト軍による奇襲攻撃からはじまった第4次中東戦争を、エジプトでは「10月6日戦争」、あるいはスエズ運河を渡って占領されていたシナイ半島を取り戻す「渡河」とも呼びます。一方イスラエルでは、開戦日の10月6日がユダヤ教の祝祭日ヨム・キプール(贖罪の日)だったことから「ヨム・キプール戦争」と呼んでいます。断食し神の贖罪を乞うことに集中するための重要な祝日に攻撃を受けた記憶が共有され、受け継がれてきました。
今回のハマスによる攻撃は、ヨム・キプールに続いて行われる一週間にわたるスコット(仮庵祭)の最終日であり、一年で最大の祝休日シーズンの締めくくりの日に起こりました。攻撃する側からはイスラエルで最も警戒が緩んだ日に見えたのでしょう。イスラエル側にとっては、宗教的な共同体意識への攻撃として、危機意識や被害者意識は最高潮に達したでしょう。
ハマスによる越境攻撃とそれに続くイスラエルによるガザ地区への侵攻は、広くアラブ諸国の人々に、自分たちが何者であるのか、というアイデンティティの問題を突きつけました。これまでイスラエルに融和的な政策をとってきた、ハマスに親和的ではない国の人々もまた、イスラエルのガザへの報復攻撃を目撃して、自分たちはイスラエル側に立つ者ではなく、どちらかといえば明らかにガザに封じ込められたパレスチナ人たちの側にあるのだと感じさせられたのです。イスラエルはハマスによる越境攻撃をテロと呼び、アメリカおよびヨーロッパ諸国の容認を得て、全面的な報復に乗り出しました。
しかし、アメリカ、ヨーロッパの「お墨付き」は、逆に、アラブ諸国、広くはイスラーム諸国の人々に、自分たちがテロリストの側に位置づけられ、ひとまとめに攻撃される対象であるという認識を持たせることになりました。パレスチナ人に対する攻撃は自分たちにも向けられたものである、という屈辱感や被害者意識が共有されるようになったのです。パレスチナ問題にあまり関心がないと思われていた富裕な湾岸諸国でさえも、外交や軍事的な地位の高まりにともない、近年に民族意識や大国・有力国としての誇りを高めていることも、ガザ問題をめぐる屈辱感や憤りの背景にあるでしょう。
アラブ諸国では、10月7日を機に、パレスチナ問題の解決なしに地域の平和と安定は望めないと人々が認識を切り替えています。一方でイスラエルは、ハマスが存在している限り平和と安定はないという考えに基づき、ガザ地区に対する攻撃を続けています。イスラエルが一方的にパレスチナ人を駆逐する事態はアラブ諸国にとって容認できるものではありません。
未だ終着点は見えませんが、パレスチナ問題を解決させるのであれば、なんらかのパレスチナ国家の樹立を含む二国家解決を到達点とする新たな合意を、イスラエルとパレスチナのそれぞれの政権・指導部が受け入れなければならないでしょう。そのためには、米国や英国、あるいは西欧やG7諸国が主導して、サウジアラビアやUAE、カタールやトルコなど中東地域の大国・有力国を巻き込み、エジプトやヨルダンなど隣接した国々の関与と協力を得て、それら全体に国連などがお墨付きを与える包括的な枠組みの合意が必要です。
そのような解決を受け入れることは、イスラエルとパレスチナそれぞれの現政権が、内政上の抵抗により難しいため、双方の政権の入れ替えまでもが議題に上るでしょう。破壊されたガザを再建するには多大な国際関与が必要であり、ハマスなきガザの統治には一時的な国際管理も念頭に置かれるでしょう。このような新たな包括的な合意が成立するかは、再選の選挙を迎えた米バイデン政権の政策判断と、中東地域の大国・有力国の意向に左右されるものであり、2024年を通じて「ガザ危機後」の外交が繰り広げられていくことになります。
4.アメリカの次世代はイスラエル嫌い
ネットでは、世界各地でパレスチナ側を支援するデモが行われている動画が上がっていますけれども、国際政治アナリストの伊藤貫氏は、2月8日放送のch桜でアメリカの世論について次のようにコメントしています。
・アメリカの世論を見てますと今回の戦争でイスラエルが正しいという風に言う人は60歳以上なんです伊藤貫氏は、ユダヤ人がまともに計算したら、パレスチナ人に独立国家を持たせたほうがイスラエルの利益になると計算する筈なのに、イスラエルロビーもネオコンもそういう計算ができないようだ、とコメントしています。
・逆に40歳以下、要するに若くなればなるほどパレスチナの味方をする。
・若い世代はもう8割ぐらいが今度の戦争はイスラエルが悪いに決まってると。20歳代ですね。
・アメリカの諸大学、特にIBリーグで、学生たちがかなり徹底したイスラエル嫌いになってると。
・そうするとアメリカの次の世代いうのは、はっきり言ってイスラエル嫌いで、もうちょっとはっきり言っちゃうとユダヤ嫌いという世代が出てくるわけです。
では、若い世代はパレスチナを支持する傾向にあるのか。
これについて、アメリカ世論や選挙に詳しいジョージ・ワシントン大学のトッド・ベルト教授は「若い世代は差別と人権により敏感で、抑圧される側に共感する傾向が強いのです。イスラエルはパレスチナと比べて不釣り合いな防衛力を持っていて、イスラエルはパレスチナの人たちを不当に迫害していると感じているのです」と指摘しています。
この世論にも押され、ハマスの攻撃直後には、イスラエルへの全面支持を打ち出していたバイデン政権も軌道修正を余儀なくされました。
昨年10月24日、国連安全保障理事会での閣僚級会合で、アメリカのブリンケン国務長官が、ガザ地区への人道支援を行うため「戦闘の休止」を検討すべきだと発言しました。これについて政府高官は「戦闘の休止は民間人を保護するための措置で、停戦とは違う」と説明したのですけれども、関係者は、イスラエル支持だけでなく、明らかにガザ地区の人道状況も重視する姿勢に転換したとみているようです。
その後、バイデン大統領を含む政権の主要メンバーは、戦闘の休止の必要性を繰り返し強調し、イスラエルに働きかけているのですけれども、"ろくでなし"ネタニヤフ首相は全く聞き入れない訳です。
この状況について、先述のトッド・ベルト教授は「バイデン大統領にとって本当に深刻な試練です。ガザ地区で爆撃や必要な食料が手に入らない状況が続けば、選挙に大きな影響を与えることになるとみられます。戦闘が長引けばバイデン氏の政策が悪かったことの象徴になり、彼に投票しない人が増えるでしょう」と指摘していますけれども、いろんな要素が重なった結果にせよ、「世論」がバイデン政権の政策を変えさせたともいえる訳で、停戦に向けて、多少なりとも意味はあったのだと思います。
ただ、伊藤貫氏の指摘するとおり、アメリカの次の世代がイスラエル嫌いになり、アラブ諸国がパレスチナ側につくのなら、イスラエルは四六時中、反イスラエルの圧力を浴びることになります。下手をすれば、国家としての存続すら危うくなるのではないかとさえ。
果たして、イスラエルロビーやネオコンがまともな「計算」ができるようになるのか。非常に重要なポイントになるのではないかと思いますね。
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