逃げ出す世界と崩壊する中国経済

今日はこの話題です。
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1.小さな中庭と高い壁


2月16日、中国の王毅外相とアメリカのブリンケン国務長官はドイツで開催されたミュンヘン安全保障会議の場で会談しました。

翌17日に中国外務省が発表した声明は次の通りです。
現地時間の2024年2月16日、中国共産党中央委員会政治局員で外相の王毅氏はミュンヘン安全保障会議に出席中、要請に応じて米国のブリンケン国務長官と会談した。会談は率直かつ実質的かつ建設的なものだった。

王毅氏は、昨年末、習近平国家主席とバイデン大統領が会談し、中米関係に関する戦略的、全体的、方向性の問題について深い意見交換に成功し、重要な合意に達したと述べた。現時点で双方にとって最も重要な任務は、両首脳の戦略的指針に従い、「サンフランシスコ・ビジョン」を現実化し、健全で安定した持続可能な軌道に沿って中米関係の発展を促進することである。このためには、双方は相互尊重、平和共存、ウィンウィン協力の原則を堅持し、二大国が正しくやっていく道を積極的に模索しなければならない。米国は中国の発展を客観的かつ合理的に捉え、積極的かつ現実的な対中政策を追求し、バイデン大統領の公約を具体的な行動に移すべきである。

王毅外相は「中国は世界に一つしかなく、台湾は中国領土の一部だ。これが台湾問題の本当の現状だ」と強調した。この現状を変えようとするのは、「台湾独立」分離主義活動と外部勢力の黙認と支援である。米国が本当に台湾海峡の安定を望むのであれば、「一つの中国」原則と3つの米中共同コミュニケを遵守し、「台湾独立」を支持しないという声明を実践すべきである。

王毅氏は、「デリスク(脱リスク)」を「脱中国」に転換し、「小さな中庭と高い壁」を建設し、「中国からの切り離し」に取り組むことは、最終的には米国自体にとって裏目に出るだろうと強調した。王毅氏は米国に対し、中国の企業や個人に対する違法な一方的制裁を解除し、中国の合法的な発展権を傷つけないよう求めた。
このように王毅外相はデカップリングを止めろと求めました。


2.ライバルでも敵でもない


王毅外相のデカップリングやめろ外交は続きます。

翌17日、王毅外相はカナダのメラニー・ジョリー(Melanie Joly)外相と会談を行っています。

これについて中国外務省が発表した声明は次の通りです。
現地時間の2024年2月17日、中国共産党中央委員会政治局員で外相の王毅氏はミュンヘン安全保障会議出席中に、要請に応じてカナダのジョリー外相と会談した。

王毅氏は、中国とカナダの関係は長年にわたり中国の西側諸国との関係の最前線にあり、現在の困難な状況は中国が望むものではないと述べた。中国・カナダ関係を促進し、安定化と改善・発展を達成することは、両国の基本的利益にかなう。中国とカナダの経済は相互補完性が高く、根本的な利益相反はなく、両国は敵対するどころか、敵対するものでもなく、協力パートナーとなるべきである。中国とカナダは制度、歴史、文化が異なるため、お互いを尊重し、学び、合意を拡大し、信頼を再構築し、ウィンウィンの協力を達成する必要がある。

王毅外相は、中国・カナダ関係が健全で安定した軌道に戻るよう促進する立場を明らかにし、カナダが中国に対する正しい理解を確立し、長期的な視点で両国関係を把握し、実務協力に積極的な期待を寄せることを期待した。 「中国脅威論」を誇大宣伝し、いわゆる「中国が内政干渉している」という誤った情報の拡散をやめ、経済、貿易、科学技術交流などの汎安全保障の流れを止め、互いの核心的利益を真摯に尊重し、現実的な行動を取る二国間関係の政治的基盤を守るためだ。

ジョリー氏は辰年の中国に対し新年の挨拶を送り、「カナダは現実的な外交を追求し、カナダと中国の関係改善に尽力する。中国と協力して困難を克服し、信頼を築き、次のような分野で協力する用意がある」と述べた。気候変動、生物多様性、公衆衛生など、人的交流や文化的交流を強化します。カナダは今後も「一つの中国」政策を推進していく。

双方はウクライナとガザの紛争についても意見交換した。
ここでも、王毅外相は、中国脅威論を止めるよう求め、関係改善の意思を示しています。

更に、この日のミュンヘン安全保障会議でも、不協力が最大リスクであり、「デリスク」名の下の「脱中国」試みは歴史的過ちになると主張し、経済のグローバル化は逆転不可避で、全体をより包括的・普遍的方向へ推進するべきと提唱しました。

けれども、世界の目は醒めたもので、多くの有識者は「脱中国化こそがリスク軽減の策」と認識し始め、グローバル経済で最大の受益者は中国であるとの見解が広まっています。

こうしたことから、王毅外相の主張は、手遅れではないかという見方もあるようです。


3.何一つ成果を挙げられなかった訪中団


これに関し、今一つ軽い扱いを受けているのが日本です。

1月23日から26日にかけて経団連の十倉雅和会長、日本商工会義所の小林健会頭を最高顧問とする日中経済協会合同訪中代表団が4年ぶりに北京を訪問しました。

代表団は24日に、中国の経済政策を担う国家発展改革委員会の幹部と会談し、脱炭素や少子高齢化への対応で連携を呼びかけたのに対し、中国側は、米国を念頭に中国をサプライチェーンから排除する動きがあると警戒感を示し、日本はこうした動きに加わらないよう求めた。

ここでも中国は日本に脱中国に加わるなと求めた訳ですけれども、この訪中団について、評論家の石平氏は次のように述べています。
【前略】

日本国内の報道によると、中国国家発展改革委員会・商務省幹部との会談では、訪中団は「反スパイ法」運用の「改善」を求め、日本人のビザなし渡航の再開も中国側に求めたという。そして李首相との会談では、訪中団が日本産海産物の禁輸解除を求める提言書を提出したと報じられている。

「反スパイ法の運用改善」、「ビザなし渡航の再開」、そして「日本産海産物の禁輸解除」という三点セットが、訪中にあたっての日本側の基本的要求であることが分かる。この経済訪中団は、まさにこの三つの要求を中国政府に聞き入れてくれるために北京を訪れたはずである。

しかし、日本の訪中団からのこの三つの要求に対し、中国政府の示した反応は全くの無反応、つまり「ゼロ回答」であった。訪中団に関する中国側の公式発表と報道では、日本側が前述の諸要求を出した事実に対する言及すら全くない。つまり日本側の要求が完全に無視されて「なかった」ことにされている。

もちろん日本側の報道を見ても、中国政府が日本側の要求に一切応じていなかったことは分かる。例えば1月25日に配信された共同通信の関連記事は、そのタイトルがズバリ、「経済界訪中団、李強首相に提言書、水産物禁輸解除、明確回答なし」である。

そして1月26日に流されたテレ朝ニュースは、「北京を訪れている経済界の代表団は、李強首相のほか商務相らと会談しました。日本側からは、ビザなし渡航の再開や食品輸入規制の緩和を求めるとともに反スパイ法への懸念などを伝えましたが、具体的な進展はなかった」と伝えている。

つまり日本の経済訪中団は、三つの要求をぶら下げて北京へ乗り込んだのに、中国政府からは「ゼロ回答」を食らっただけで成果を何一つ挙げられなかった。

にもかかわらず経団連の十倉会長は北京で開かれた「総括会見」で、「中国側の日本に対する期待や日中経済関係の一層の緊密化に向けた熱意を感じることができた」と語っている。結局、実体のない「熱意」を勝手に感じたことは、日本の経済訪中団が手に入れた唯一の「成果」だったのである。

【後略】
石平氏は、日本の訪中団は何一つ成果を挙げられなかったと指摘していますけれども、それでいて、脱中国するなと言いたい様に言われた訳です。


4.投資家を失望させた中央経済工作会議


これほど、中国が躍起になっているのは、もちろん、中国経済が絶賛崩壊中であるからです。

上海総合指数は昨年12月13日に3000ポイントの大台を割り込んで以降、2900ポイント前後と回復していません。

昨年大台を割り込む直前の12月11~12日、中国共産党は年に一度の「中央経済工作会議」を開きました。

これは、毎年の年末に開かれる恒例の会議として、翌年の経済運営の方針を打ち出す重要会議として位置付けられているのですけれども、このとき、どのような経済対策が打ち出されるのかは大変注目されていました。

「中央経済工作会議」は、不動産不況への対応と需要の創出を核とする2024年の経済運営方針を示したのですけれども、日本総研は「方向性は妥当であるものの、個別政策はインパクトを欠き、景気の急回復は見込み薄である」として次のように評価しています。
もっとも、総じてみれば、政府は景気回復に向けてアクセルを踏み切れておらず、対策の力不足感は否めない。

具体的にいえば、不動産不況への対応では、企業・地方政府・金融機関の破綻回避が主眼となっている。資金繰り支援以外では、すでに実施された政策も多い。住宅販売や住宅着工は長年の過剰投資や人口減少など構造的な要因も加わって減少トレンドが続いており、今般打ち出された政策による住宅需要の押し上げ効果は限定的とみられる。

財政・金融政策では、いずれも「適度」な緩和が強調されるなど、政策スタンスはなお抑制的である。とくに財政政策では、財政規律の重視も強調されており、政府は官庁や地方政府に対して大規模な歳出増を抑制するよう指示している。

消費の拡大効果も小さいとみられる。例えば、EV を含む新エネルギー自動車の購入促進が掲げられる一方、2024 年から購入時の車両取得税減免を段階的に縮小することが予定されている。政策的にアクセルとブレーキが同時に踏まれるかたちとなり、販売を押し上げる力は小さいとみられる。また、政府は所得環境の改善に取り組むと表明したものの、これに関する具体策は示されていない。

このように、中央経済工作会議から2024年の中国経済を展望すると、不動産不況からの脱却は期待薄であるうえ、個人消費も盛り上がりを欠くと予想され、景気の急回復は見込みにくい状況がある。2024 年通年の実質経済成長率は+4.4%と前年から減速する見通しである。
この発表翌日に上海総合指数が3000ポイントを割り込んだことは、中国政府の対策は市場の期待に応えられなかったということなのだと思われます。


5.中国勢の不良資産売り始まる


既に、世界中で、中国の投資家とその債権者が保有する不動産資産が売りに出されています。中国国内の不動産危機が深刻化する中、資金調達の必要性が高まっているからです。

アメリカ不動産投資会社スターウッド・キャピタル・グループのバリー・スターンリヒト最高経営責任者(CEO)は最近、金利上昇に端を発した世界的な不況により、オフィス不動産の価値だけでもすでに1兆ドル(約149兆円)余りが失われたと述べています。

世界の商業用不動産成約件数は昨年、10年ぶりの低水準となり、商業用不動産に関連する貸倒引当金の増加と減配を発表したアメリカの銀行持株会社「ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)」は2月6日、株価が27年ぶりの安値となっています。

中国では地主やデベロッパーが、国内事業の立て直しや債務返済のため、たとえ財務面で打撃を受けることになっても、今すぐ現金が必要だと判断。過剰な借り入れに対する政府の取り締まりにより、かつて大手とされていたデベロッパーでさえ、無傷でいられるところは殆どありません。

例えば、60億ドルの債務再編計画中の広東省広州に本社を置く中国奥園集団は傘下の部門がカナダのトロントで持っていた区画を2021年の購入価格から約45%割り引いて昨年後半に売却していますし、昨年デフォルト(債務不履行)に陥った中国の不動産開発会社、世茂集団の許栄茂会長に関係するロンドンのオフィスビルも昨年売却されています。なんでもこの物件は2022年に売却で合意していたものの、実際には売れ残っていた物件で、売値はその時から約15%引き下げられたということです。

更に、オーストラリアの市場では、ほんの数年前まで中国のデベロッパーが主要プレーヤーだったのが、今やその殆どが買収をやめ、逆にプロジェクトの売却に軸足を移しています。

地元メディアによると、多額の負債を抱え中国不動産危機の象徴となっている碧桂園傘下のリスランドがメルボルン郊外の用地を2億5000万豪ドル(約242億円)で売却。また、別の現地報道によれば、最近、シドニーの開発資産を約2億4000万豪ドルで手放したとのことです。

今まで、海外資産を次々と買収してブイブイ言わせていたのが、逆流を始めています。まだまだ底の見えない中国バブル崩壊。これは相当大きなものになるかもしれませんね。



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