ウクライナ経済復興支援のツケ

今日はこの話題です。
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1.ウクライナの経済復興支援


2月19日、岸田総理は、経団連会館で行われた、日・ウクライナ経済復興推進会議首脳セッションに出席し、基調講演を行いました。

その概要は次のとおりです。
冒頭、岸田総理大臣からの基調講演において、昨年3月のウクライナ訪問時のヴォロディミル・ゼレンスキー・ウクライナ大統領からのウクライナ復興に向けた日本の支援に強い期待が表明されたことを受け、「日本ならではの貢献」を行うべく、本会議を開催することを決めた経緯を説明した上で、ウクライナ支援に、ウクライナ、日本及び世界の「未来への投資」という新しい意義を付与し、また、ウクライナの第一次産業から第三次産業までの網羅的な経済発展を官民一体となって強力に支援する旨を述べました。

また、岸田総理大臣から、「日本ならではの貢献」を進めるに当たり、「包摂性」、「パートナーシップ」及び「知見・技術」という3つの原則が重要であり、また、本会議の成果として、日本の民間投資を促進し、ウクライナでの雇用を生み出す5つの行動(租税条約の署名及び投資協定の改正のための交渉開始、JETROキーウ事務所の設置等)を起こしていく旨を説明した上で、今後、具体的な成果として署名された50本以上の協力文書をしっかりとフォローし、また、G7を始めとする各国及び国際機関を含むパートナーと協力する旨を述べました。

次に、デニス・シュミハリ・ウクライナ首相から、冒頭、ゼレンスキー大統領からの岸田総理及び日本国民への謝意メッセージの伝達とともに、我が国による支援、本会議の開催、昨年のG7議長としてのリーダーシップ等について感謝の意が表明されました。また、シュミハリ首相は、日本の復興経験、経済奇跡及び近代化の経験からウクライナが学ぼうとしているとしつつ、ウクライナに進出している日本企業の事例に言及するとともに、エネルギー、農業、インフラ、自動車製造、鉱業、ITの分野に言及の上、今後の復興プロセスにおける日本企業との更なる協働を呼びかけました。

さらに、シュミハリ首相は、ウクライナの復旧・復興に係る莫大な資金ニーズや自らの汚職対策の取組の現状に言及し、欧州連合によるウクライナ加盟交渉開始の決定に触れながら、復旧・復興に当たって民間セクターが中心的役割を果たすことは必要不可欠である旨述べました。最後に、シュミハリ首相は、日本によるウクライナの平和フォーミュラへの支持並びに関連の取組に対する感謝及び評価を述べつつ、日本によるあらゆる連帯行動に感謝する、ウクライナとウクライナ人が決して忘れないことである旨述べました。

最後に、両首脳の立合いの下、同日に署名された「所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国政府とウクライナ政府との間の条約」(日・ウクライナ租税条約)の署名本書が交換され、また、緊急復旧支援、経済復興・産業高度化、基盤的環境整備等に関する文書についても式典が実施されました。これらを合わせ、計56本の署名協力文書が両首脳の立合いの下、披露されました。

なお、本会議の成果文書として、日・ウクライナ両政府間で調整された共同コミュニケが発出されました。
岸田総理は、7分野でウクライナの復興を支援していく方針を表明。ウクライナの主力産業である農業の発展や、日本の災害における知見を生かしたがれき処理や地雷対策などで、日本企業の参入を支援するとしました。また、国際協力銀行(JBIC)による黒海貿易開発銀行(BSTDB)を通じた最大1.5億ドル(約225億円)のツーステップローンの供与など財政面でも支援するとしました。

欧米が支援を渋る中、日本は、今回の会議で支援継続の姿勢を明確にした形です。

これについて、鶴岡路人准教授は、日本が同会議を通じて支援継続のメッセージを出し、国際的な機運を支える意義はあると分析。平穏に企業活動ができる環境が整っていないとする一方で、地上戦が行われている地域は一部に限定されており、「さまざまな形で民間企業が入る余地はある」とも述べています。


2.増税してでも支援すべきなのか


けれども、その支援が総額でどれだけの額になるか明確になっていません。案の定ネットでは、ウクライナの復興の前に、能登震災の復興が先だろうと大炎上しています。

今回の支援について、ジャーナリストの長谷川幸洋氏は、ZAKZAKの2月17日付記事「巨額支援なら〝増税〟懸念 ウクライナ復興会議、飛び交う「6兆円支援」も 自国防衛手薄の本末転倒 米は日本をATM扱いか」で次のように述べています。
【前略】
ウクライナを支援する「日・ウクライナ経済復興推進会議」が19日、東京で開かれる。日本政府が音頭を取って民間企業の参加を募り、地雷除去をはじめ建設、エネルギーなどの分野でウクライナの復旧、復興を支援する、という。


注目されるのは、政府の支援額だ。すでに「6兆円に上るのではないか」などという推測も飛び交っている。巨額になれば、岸田政権は増税も言い出しかねない。何のための支援なのか、根本に遡(さかのぼ)った議論が必要だ。

日本政府は、ロシアのウクライナ侵略について「一方的な現状変更を許さない」「法の支配に基づく国際秩序を維持する」「ウクライナに寄り添う姿勢を示す」などと繰り返してきた。それに異論はないが、だからといって「日本がいくらでもカネを出す」という話にはならない。

なぜなら、いまや日本自身の平和と安全が脅かされているからだ。まず自分の身の安全を確保しなければならず、そのうえでウクライナ支援を考える、という話になる。

それは米国も同じだ。

いま米国が、なぜウクライナ支援を渋っているかと言えば、「もう十分支援した」「これ以上は欧州に任せよ」「米国は中国との対決に備えなければならない」という理由があり、加えて、「米国自身が南部国境で不法移民の脅威にさらされている」からだ。

米国はバラク・オバマ政権時代に「世界の警察官ではない」と宣言した。いまの米国は自分の国益を最優先で考えている。米国の対応能力に限りがある一方、中国やロシア、イラン、北朝鮮といった「悪の枢軸」勢力とその手先が世界で公然と、あるいは水面下で暴れ回っている現状を見れば、それは当然である。

1990年の湾岸戦争で、日本は多国籍軍の支援に約1兆8000億円を負担した。当時の一般会計予算の約3%だ。それを賄うために、石油税と法人税の臨時増税までした。今回、もしも6兆円規模になるとすれば、5%程度になる。前例にならって増税論議が起きても不思議ではない。

日本は増税してでも、ウクライナを支援すべきなのか。

私は、日本自身の安全保障に使われるのであればまだしも、ウクライナ支援のための増税には賛成できない。それほどの支援が必要なら、まずロシアの脅威にさらされる欧州が検討すべきだ。

一部には、「ロシアの侵略を止めなければ、世界が無法状態になる」とか、「中国を元気づけてしまうので、巡り巡って日本にも脅威になる」「だから支援すべきだ」といった議論がある。

だが、そうであるなら、だからこそ、日本は中国の脅威に備えるべきだ。ウクライナを支援するために、日本が自国の防衛に手薄になってしまうのであれば、まさに本末転倒である。ロシアや中国は「おいおい、日本は自分の足元を見たらどうだ」とせせら笑うのではないか。

ジョー・バイデン米政権は、岸田政権を自分の代わりにカネを出す現金自動支払機(ATM)のように見ているのだろう。企業はといえば、政府がカネを出すなら、絶好のビジネスチャンスになる。日本の偽善者たちは「それが日本の世界に対する貢献だ」などと宣伝している。

日本は、いつまでも「世界ナンバーワンのお人よし」であってはならない。


復興支援のために国防が疎かになり、更に増税するなら本末転倒だ、と述べています。まぁ当然です。


3.停戦合意を破壊したジョンソン


そもそも、戦争が終わってないのに、復興支援とは順番が逆です。停戦、終戦してから復興を始めるのが順序です。

最初からそういう台本があるのではないかと穿ってしまいます。

今や世界中で評判となっている、タッカーカールソンのプーチンインタビューで、プーチン大統領が、2022年3月に行われた停戦交渉の際、停戦合意していたとコメントしていましたけれども、ウクライナ側の交渉グループのリーダーであるダヴィド・アラハミヤ氏は、昨年11月、ウクライナのテレビ「1+1」に語ったインタビューで、次のように述べています。
・ロシア側はウクライナの中立化をもっとも重視していた。ウクライナがかつてのフィンランドのように中立の立場を守り、NATOに加盟しないと約束すれば、ロシアは戦争をやめる用意があった。
・この時キーウに来ていた英国のボリス・ジョンソン首相(当時)が、いかなる文書にもサインせず、『ただ戦え』とアドバイスした。
アラハミヤ氏によると、停戦合意寸前にまで来ていたのにイギリスのジョンソン首相が邪魔したというのですね。

このアラハミヤ氏のインタビューを受けて、元ウクライナ大統領府顧問のアレクセイ・アレストビチ氏は、テレグラムのサイトに「ウクライナに大戦争を遂行する場合の支援を約束しておきながら、武器を供与しなかった者たちにこそ責任はある。すなわち、欧米はウクライナを見捨てたのだ……この戦争はイスタンブール合意によって終結し、何十万もの人びとがそのまま生き延びていたかもしれない」と、欧米に対し、強い憤りを示しました。

アレストビチ氏は、その後の戦争の推移について「この緒戦の後には、まったく別の類の戦争が始まった。その戦争は航空機や長距離ミサイルなしでは勝利できない大戦争であったにもかかわらず、航空機や長距離ミサイルは供与されなかった。そのためにわれわれウクライナは巨大な代償を払った」と述べ、武器の供与を約束していたはずの欧米諸国は、今になって「俺たちはこれほど武器を供与してやったのに、汚職まみれのおまえたちウクライナは戦い方も知らず、成果も出せなかった。プーチンに4州をくれてやって終わりにしろ!」と言い始め、「ウクライナの指導層も、その従順さと汚職まみれの体質によって、欧米にわれわれを見捨てさせる多くの口実を与えてしまったのだ」と激しく批判しています。

停戦合意目前にいっていたのを壊し、武器も与えなくなったのだとすれば、梯子を外されたウクライナの怒りも理解できます。


4.後退するウクライナ軍


戦況はじわじわとウクライナに不利となっています。

2月17日、ウクライナ軍のシルスキー総司令官は、声明で、「包囲を回避し兵士の命と健康を守るため、部隊を撤退させ、より有利な戦線からの防衛に移ることを決めた」と述べ、激しい戦闘が続く東部ドネツク州の要衝アブデーフカから部隊が撤退したと明らかにしました。

アブデーフカはロシアの実効支配下にある州都ドネツク市近郊に位置するウクライナ軍の重要拠点で、過去数カ月間にわたり激戦が続いてきました。

もっとも、最近は兵力や火力で勝るロシア軍が市内の一部を制圧したと伝えられるなど、ロシア軍が優勢だとする観測が出ていました。ウクライナ軍は増援部隊を派遣するなどしていたのですけれども、これ以上のアブデーフカの保持は困難だと判断したとみられています。

一方、ロシア軍はアブデーフカを掌握することでドネツク市の安全を高めるとともに、主目標とするドネツク州全域の制圧に向けた進軍ルートを確保する思惑だとみられています。

ゼレンスキー大統領はドイツで開催された「ミュンヘン安全保障会議」に出席し、ウクライナ軍の部隊がアブデーフカでロシア軍を「消耗させた」と称賛する一方で、欧米諸国に軍事支援の強化を訴え、ウクライナ軍は兵器の補給や、ロシア軍が所有するような長距離兵器が不足していると強調しました。

更に、ミュンヘンで米下院の超党派議員団と面会したと明らかにし、下院がウクライナ追加軍事支援を承認することを望んでいると述べていますけれども、意気込んでいた、昨年秋の"大攻勢"が失敗した今となっては、今まで通りの追加軍事支援をいくらやったところで、ジリ貧になるのは明らかです。

砲弾不足に兵員不足。現状を見る限り、ウクライナ軍が抱える問題が、そう簡単に解決するとも思えません。

いずれ、ウクライナは停戦に応じるしかないのではないかと思いますけれども、悪戯に戦争を長引かせ、多くの人命を失わせた責任が誰にあるのかをはっきりさせ、復興含め、彼らにこそ、その償いをさせるべきではないかと思いますね。




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