国民も議員も正しく申告を

今日はこの話題です。
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1.納税は個人の自由だったのか


2月26日、衆院予算委員会で鈴木俊一財務相は、自民党派閥の政治資金パーティーで受け取った裏金の税務処理を巡って「国民であれ国会議員であれ、収入や経費を正しく計算し、所得が発生した場合には申告して頂く」と述べ、自身の発言を修正しました。

これは、鈴木財務相が22日の衆院予算員会で、裏金を受け取った議員は所得として納税することになるかを問われた際に「使い残しがある雑所得で、控除で引き切れない部分があるという判断の中で納税をするという方が可能性としてはあると思う。疑義が持たれた政治家が政治責任を果たす、そういう観点から判断されるべきものであると思う」と述べた答弁のことです。

納税は憲法で国民の義務と明記されているにもかかわらず、この答弁が、政治家だけは納税を個人の判断でできるともとれ、特別扱いだとして、ネットなどで、「納税は個人の自由だったのか」などと猛批判が広がっていました。


2.確定申告ボイコット


26日の予算委員会では、立憲民主党の城井崇氏が、裏金事件の中で始まった確定申告を巡り、SNS上では「#確定申告ボイコット」という投稿が一時10万件超に上ったと指摘。「政治家だけ特別扱いだという強い怒りが飛び交っている」、「税金を納めるべき裏金があるのではないかと国民は疑っている」と質しました。

この質問に岸田総理は「#確定申告ボイコット」が付いた投稿を「承知している」とし、「こうした事態を受けて改めて国民の皆さんの厳しい目を強く感じている……国民の信頼回復に向けて強い覚悟を持って臨まなければならない」と述べる一方で、城井氏から「今回の裏金、脱税していませんか?」と問われると、「政治資金については法令に則り、適切に扱われるべきだ」と一般論で逃げました。

続いて、城井氏は、裏金事件後に訂正された萩生田光一前政調会長の政治団体の収支報告書をパネルで示し、裏金分の使途が「不明」と記載されていることについて「確定申告で国民が同じように不明と申告したら認めるのか」と質問しました。

岸田総理は、認めるかどうかについては言及せず、「一般論として、不明を記載された申告書があった場合、電話や文書で確認させていただくことがある」との国税庁の答弁を支持するにとどめました。

更に城井氏は「国民の確定申告の取り扱いと、不明でも受理されるダブルスタンダードで運用されると、国民には厳しく、自民には優しくと受け止める……今回の裏金は、個人が存在を認識して所有していたのなら個人の雑所得として取り扱い、脱税させず納税させるよう促して」と求めています。

ネットで「#確定申告ボイコット」の投稿がどんどんツイートされていることが岸田総理も知っているということですけれども、確定申告で税務署を訪れた納税者から「不公平だ」、「野放しは許されない」などの批判の声が一斉に噴出したとも報じられているところをみると、この声はおそらくネットだけでなく、議員事務所なり、官邸なり、直接の届いていることも予想されます。

ただ、この問題について、国税庁による税務調査の必要性について、岸田総理は「税務行政の中立性を維持する観点から、具体的な指示を控えなければならない」と言及を避けています。


3.黒い霧事件


国会議員は、給与に当たる「歳費」こそ所得税が源泉徴収されているものの、月100万円の調査研究広報滞在費(旧文通費)、月65万円の立法事務費などは報告義務がなく、さらに非課税なのですけれども、過去には国税庁長官が国会で、議員の申告状況を公表した前例があります。

今から60年近く昔の話になりますけれども、自民党議員の不祥事が続発した政界の「黒い霧事件」が知られています。

この「黒い霧事件」後、政治改革の議論の中で議員の課税問題が噴出。1967年5月23日、衆院大蔵委員会で泉美之松国税庁長官が調査結果を明らかにしたのですね。

この時の答弁で、泉美之松国税庁長官は、「現職議員が181名、前議員が22名、合計203名」で、金額は「トータル2億1800万円」であると明らかにしました。

そして、政治資金が雑所得として申告されているか問われた泉国税庁長官は、「実際問題としましては、そうした収入支出の申告は漏れているのが実情」と明かし、「おそらく政治活動に伴う収入支出は、収入に見合って支出が行なわれておって、差し引きゼロという事例が多いせいだろうと思いますが、所得ありとしての申告は非常に少ないというのが実情でございます」と答弁しています。

この答弁に質問に立っていた社会党の西宮弘氏は「一般の中小企業とか、そういうものについては、収入はないかないかというようなことで、ウの目タカの目になってさがしておるじゃないですか。それに対して、一方、政治家の所得なるものは堂々と公の機関に報告をされておる。そういう堂々たる資料があるのにもかかわらず、そういうものには全然手をつけないで、いま言ったようなごく零細な収入をウの目タカの目でさがしておる。こういうのでは、とても国民は納得しないと思うのです。大臣、いかがですか」と当時の水田三喜男大蔵大臣に質問をぶつけました。

これに水田大蔵大臣は次のように答えました。
私は、問題は、政治資金規正法によるところの政治献金及び使途というものと個人の政治献金受け入れというのは分けて考えなければならぬと思いますが、個人のほうは、御承知のように申告納税制度でございまして、本人から申告を行なうことがたてまえでございますし、そうしますと、一番納税道義の高くあるべきはずの国会議員でございますので、申告制度であります以上、一般の所得に対する把握と議員に対する把握のしかたは若干違ってもいい。むしろ、議員に対する名誉の尊重という意味からは、ほんとうは国会議員が税務署によって申告を調べられるといったようなこと自身が国民に対して申しわけないことでして、国会議員であるがゆえに特にこれを調べなければならぬということは、私はないだろうと思います。いままで特にそういうことをしなかったということも、そういうところに私は理由があったのじゃないかと思っております。
「一般に対する所得の把握と議員に対する所得の把握は若干違ってもいい」とは、政治家は別だということです。更に、税務調査しないとまで言っています。今回の政府答弁とほとんど同じです。


4.国民も議員も正しく申告を


これについて、租税法・行政法・会計を専門とする青山学院大の三木義一名誉教授は、黒い霧事件後、「ちゃんと議員も申告しろという声が上がり、与党の議員も一斉に確定申告することになった」と説明しています。

議員側はその後、政治活動関連の支出をすべて必要経費に入れ、政治活動の収支が赤字になると申告。国会議員の給与に当たる「歳費」と相殺することで個人としての所得が低くなったとして、逆に支払い済みの所得税の還付を求める与党議員が続出したのだそうです。

三木名誉教授は「これに国税が参ってしまった。あわてて雑所得は他の所得と損益合算できないように制度改正したが、そこまで。これに懲りたか、税務当局が政治家に対して継続的に何かチェックしているというのは今に至るまで聞いたことがない」と述べています。

自民党が公表した安倍、二階両派への聞き取り調査結果では、不記載の理由を「派閥からの指示、説明」とする回答があるのですけれども、これについて三木名誉教授は「所得の仮装隠蔽ではないのか。通常なら重加算税の対象になるし、その場合は過去7年にさかのぼる。ところが自民党の調査は5年分だ」と指摘しています。

また、日本大の岩井奉信名誉教授も「国税が政治に踏み込もうとすると『政治活動の自由を侵す』と批判される。それが政治家への対応を甘くさせている部分はある……政治活動の自由には配慮しなければいけないが、不正を見逃すことは許されるのか。政治資金制度の第三者委員会を検討してもいい」と指摘しています。もっともです。

そもそも、議員がこぞって支払い済みの所得税の還付を求めたのであれば、それこそきちんと計算して還付してやればよかっただけのことです。それを「まいった」といって、チェックしなくなったのなら、ただの職務怠慢なのではないかとさえ思ってしまいます。

26日の衆院予算委員会で、立憲民主党の野田佳彦元総理は、政治倫理審査会を公開するのか非公開とするのかについて「説明責任というのは誰に果たすんですか。国民のために果たすんでしょう。当然公開すべきじゃないですか。完全公開すべき」と詰め寄ったのですけれども、岸田総理は「国民に向けて説明する大変重要な場であると思いますが、適切に国会でご判断されると考えています」と逃げています。

必要なのは、公開か非公開で揉めている政治倫理審査会ではなく、国税庁による税務調査ではないかと思いますね。


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この記事へのコメント

  • コンチャン

    こんにちは。
    確定申告は当然議員も正しく申告すべきです。
    確定申告ボイコットのSNSが10万件超えたのも頷けます。
    政治倫理審議会を公開、非公開は的を外れています。国税庁の税務調査を何故行わないのでしょう。
    2024年02月29日 22:01