低迷する岸田内閣と衆院三補選状況

今日はこの話題です。
画像

 ブログランキングに参加しています。よろしければ応援クリックお願いします。


2024-03-09-234001.jpg


1.お怒りはごもっとも


3月9~10日にかけて共同通信社が9、10両日に実施した全国電話世論調査で、内閣支持率は20.1%と前回調査の24.5%を4.4ポイント下回り、岸田内閣としてまた過去最低を更新しました。

不支持率は64.4%と前回調査を5.5ポイント上回り、自民の政党支持率は24.5%で、2012年12月の政権復帰以降最低となっています。

自民党派閥の政治資金問題を受けて衆院政治倫理審査会に出席した安倍派と二階派の幹部5人について「説明責任を果たしていない」との回答が91.4%に上り、安倍、二階両派の幹部には「重い処分が必要だ」が77.3%と世間は厳しい目を向けています。

この情勢に、政府・与党内にある自民幹部は「このままでは下野必至」と零すなど焦燥感を募らせています。

11日朝、神奈川県内の駅頭に立つ自民党議員は行き交う人たちから「問題を起こした議員に責任をとらせないで党則見直しや法改正なんて順序が逆」などと厳しい声を浴びせられているようです。

神奈川県連のある幹部は、「最後は党総裁である岸田総理の決断次第……党大会で明確な処分方針を示せなければ国政補選でも勝てるわけがない」と警告を発しています。

前の菅内閣の最低支持率は退任直前30.1%ありました。これは、当時、岸田氏が「意見を聞かない」と菅内閣を批判し、総裁選への出馬表明をした直後の数字です。街頭でもこの数字を持ち出され「新型コロナ禍でもないのに、喧嘩を売った相手よりずっと低いとはひどい話だ。岸田総理に責任をとらせろ」と支持者に迫られた県内議員は「お怒りはごもっとも」と返すのが精いっぱいだったそうです。


2.苦しい党内処分


こうした声を背景に、3月11日、自民党は派閥の政治資金パーティー裏金事件を踏まえた党内処分について、4月の衆院3補欠選挙(16日告示、28日投開票)前に行う検討に入ったと報じられています。

キックバックを受けた議員を含め、どこまでを処分対象とするかなどが焦点となりますけれども、安倍、二階両派幹部らに厳しい処分を求める世論がある一方、内容によっては党内の反発も予想されています。

複数の政権関係者が明らかにしたところによると、当初、政権内では今月17日の自民党大会までに処分を決定する案が浮上していたのですけれども、国会の政治倫理審査会への関係議員出席などに時間を要し、処分に必要な党内手続きがずれ込んでいることから、ある政権幹部は「3月中は無理。補選前が一つの節目になる」と、見送りになる公算が大きいと見られています。

けれども、「政倫審が全て終わらない限り処分はできない」という見方もあり、時期がさらに遅れる可能性も取り沙汰されています。

世間は処分を望む声が大勢なのですけれども、自民規律規約に基づく8段階の処分のうち、最も重い除名は適用されない見込みとされ、次いで厳しい離党勧告や党員資格停止、選挙での非公認についても否定的な向きがあり、今のところ「党の役職停止」を軸に検討が進みそうだと見られています。

14日から参院政倫審が始まっていますけれども、そこでの答弁および処分の内容によっては、更に支持率が落ちる可能性さえあります。


3.苦しい答弁


こうした動きに対し、13日の参院予算委員会で、立憲民主党の羽田次郎参院議員が「3月末までに処分される見積りでよいか……まさか4月末の(衆院の3つの)補選が終わるまで処分しないということはないと思うが」と衆院3補選への影響を避けるために、処分を先延ばしする意図がないのかと質しました。

この質問に岸田総理は「政倫審での説明などの手続きがまだ今、進んでいる。それを踏まえるならば、今の時点で具体的なタイミングを申し上げることは控える……可能な限り早いタイミングで党として判断し、けじめをつけなければならないと考える」と答弁しました。

羽田氏は、処分内容に関連し、2021年の新型コロナウイルス緊急事態宣言下、銀座のクラブで飲食していた自民党衆院議員3人に離党勧告し、2005年の「郵政選挙」では、郵政民営化に反対した候補者を離党勧告か除名にした過去を挙げ、「これだけ国民からの政治不信を招いているのだから、責任ある立場の幹部は、離党勧告か除名が相場では」と見解を求めました。

これに岸田総理は「いくつか例を挙げられたが、内容はそれぞれ様々だ。引き続き説明努力が続けられている状況にあるので、今の時点で具体的な処分について申し上げることはできない」と明言を避けました。


4.衆院三補選状況


今のところ、補選前に処分できるかどうかが注目ポイントのようですけれども、その肝心な3補選で、自民はどこまで勝てるのか。

これについて、選挙コンサルタントで政治アナリストの大濱崎卓真氏は3月9日、投票日まで残り2ヶ月を切った序盤戦における情勢について、次のように述べています。
衆議院島根1区の構図
衆議院島根1区は、細田博之前衆議院議長の逝去が補選執行事由です。既に島根1区は構図がほぼ固まっており、自由民主党が新人の錦織功政氏を、立憲民主党が元職の亀井亜紀子氏を、日本共産党が新人の村穂江利子氏を擁立、諸派で新人の佐々木信夫氏も出馬表明を行いました。

衆議院島根1区の情勢
現状の情勢としては、亀井氏が一歩先をいく展開との見立てが大勢です。参議院議員・衆議院議員の元職であり、細田前議長の対抗馬として地元で戦ってきた亀井氏が知名度において錦織氏を大きく上回っているほか、現時点での活動量なども亀井氏が上回っているとの見方が多く、錦織氏は今一歩の底上げが必要とされています。具体的には、「自民劣勢」との自民党情勢調査に関する報道(中国新聞、2月29日)が出ているほか、一部では「既に2桁以上のポイントが開いている」との噂も出ており、知名度対策のためのテコ入れに加えて、自民党島根県連が一致団結して票固めができるかどうかが当面の鍵となるでしょう。

言い換えれば、錦織氏には伸びしろがあるともいえる一方、亀井氏は共産党の共闘によるオール野党共闘体制を(錦織氏の後半戦の伸びを想定して)水面下で模索することも考えられますが、現時点ではこの共闘成立は難しいと考えられます。共闘しない形で選挙を迎える構図を考えれば、国会における政治とカネの問題や旧統一教会の問題への追及を追い風にして、与党が票を伸ばしやすいとされる終盤戦に入る前に無党派層をどれだけ先に固めることができるかが重要でしょう。共産党・村穂氏も、自民党や岸田政権に向けて投げられる厳しい声を、どのように票に転化していくのか、また野党共闘の可能性を模索するかどうかに注目です。

衆議院長崎3区の構図
衆議院長崎3区は、谷川弥一衆議院議員が政治資金パーティー問題で辞職したことが補選執行事由です。現時点では、立憲民主党が長崎3区で比例復活当選していた現職の山田勝彦氏を、日本維新の会が新人の井上翔一朗氏をそれぞれ擁立しています。

衆議院長崎3区の情勢
現状の情勢としては、山田氏がリードしている展開との見立てが大勢です。

山田氏は比例現職であり、前回総選挙でも谷川弥一氏に極めて競った結果(惜敗率96.5%)だったことから、自民党が山田氏に対抗できるだけの候補者を擁立できない場合には極めて優位に選挙戦を進めるとみられています。立憲民主党は、山田氏の姉にあたる山田朋子長崎県議会議員をはじめとする党長崎県連が機能しているほか、長崎では立憲党のほか国民民主党や社民党、連合長崎などからなる「七者懇」と呼ばれる枠組みでの野党共闘体制が成立していることから、補欠選挙を戦う組織力は十分にあるとみられます。この「七者懇」には共産党は入っていませんが、今回の補欠選挙では島根1区と異なり「自主的に支援」としていることから、事実上野党共闘体制が成立しています。

井上氏は、山田氏よりも後からの出馬表明になったことに加え、新人初出馬であることで知名度不足との声も多く、今回の初陣でどこまで名前を浸透させることができるかが鍵となります。また、自民党が候補者擁立に至らない場合には、本来であれば自民党候補者に投票するであろう保守層を拾い上げることができるかも重要なポイントとなります。いずれにせよ自民党岩盤支持層や公明支持層に投票させるまでの誘引力ある政策を打ち出すことができるのか、また県連幹事長の地元である五島市などで票を伸ばすことができるかが注目です。

長崎3区に関しては自民党が候補者を擁立するかどうかで大きく情勢が変わると考えられますが、現時点では具体的な候補者の擁立に至っておらず、告示まで約1ヶ月となる現在では、(浮動票が多く、かつ若い世代が多いとされる東京15区と異なり、離島が選挙区となる長崎3区では)もはやタイムオーバーとの見方もあります。それにもかかわらず、自民党が補選全体の勝ち星の数にこだわって候補者の落下傘をするのか、それとも候補者擁立に至らず自民党不戦敗のなか、「立憲 対 維新」の新しい選挙構図が実現するのかにも注目です。

衆議院東京15区の構図
 東京15区は、柿沢未途衆議院議員が、昨年の江東区長選で公職選挙法違反の疑いで起訴されたことをうけ、議員辞職したことが補選執行事由です。現時点では、日本維新の会が新人の金澤結衣氏を、日本共産党が新人の小堤東氏を、日本保守党が新人の飯山陽氏の擁立を決定しています。

衆議院東京15区の情勢
ここまで述べてきたとおり、東京15区は現時点で構図が定まっておらず、情勢がみえません。仮に全国知名度のある参院選立候補経験者が与党系相乗り推薦で立候補するとなった場合は人気の中心となる可能性が高く、自民党と都民ファの共闘体制が組めれば、先の江東区長選挙における大久保区長誕生と同じ流れで選挙戦をリードする可能性が高いでしょう。

一方、候補者調整ではもう少し先に進んでいるとされる野党側が、須藤元気氏を擁立するかどうかが焦点です。現時点での情勢調査では須藤元気氏がリードとされていますが、これは事実上の知名度調査であり、与党系が全国知名度のある候補者を擁立した場合には、リードは一気に失われると考えられます。江東区長選挙での采配ミスを踏まえれば、選挙戦略を変えなければ厳しいと考えられる一方、自民党は不戦敗の可能性も否定できず、その場合には須藤氏や地元区議の擁立でも勝算があるとみられます。

与野党の候補者擁立が(内部の調整も相当難しい調整となっているものの、外から見たら)睨み合いとなっていることを踏まえれば、漁夫の利的に維新の会が躍進する可能性も否定できません。日本維新の会はここ数ヶ月支持率が下落基調にありますが、選挙期間直前から期間中における浮動票を獲得する戦術には長けており、3つ巴の選挙戦にもっていけるかどうかが注目です。

共産党は野党共闘を選ぶのか独自候補擁立にこだわるのかが、日本保守党は初陣における選挙戦の展開と保守層の切り崩しの手法が見どころになります。
現時点では自民が候補を出しているのは島根1区だけで、それも劣勢。東京15区は候補者調整中で、長崎3区に至っては、候補者を立てず不戦敗の声も上がる始末です。

これでは、補選3勝どころか3敗もあり得る情勢です。

もちろん、まだ時間がありますから、巻き返しなり、情勢の変化は十分有り得ますけれども、仮に3敗しようものなら今度こそ岸田降ろしが始まるのではないかとの見立てもあります。

果たしてどうなるか。要注目です。



  twitterのフリーアイコン素材 (1).jpeg  SNS人物アイコン 3.jpeg  カサのピクトアイコン5 (1).jpeg  津波の無料アイコン3.jpeg  ビルのアイコン素材 その2.jpeg  

この記事へのコメント