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1.暇空茜勝訴
3月26日、ゲームクリエイターで作家の暇空茜氏が、東京都と小池百合子都知事を相手に公文書不開示決定の取り消し等を求めていた裁判で、東京地裁は一部請求を認め不開示決定を取り消す判決を下しました。
暇空茜氏がX(旧ツイッター)で「【速報】 国家賠償請求訴訟で東京都相手に勝訴しました!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」とツイートしたところ、大きな反響を呼び、「国家賠償請求訴訟」がXのトレンド入りしました。
今回の判決について専門家や識者は、X(旧ツイッター)で次のようにコメントしています。
渡辺輝人氏(弁護士/日本労働弁護団常任幹事、自由法曹団常任幹事、全教常任弁護団、京都脱原発弁護団事務局長)このように、現場の弁護士や識者は今回の暇空氏の勝訴を高く評価しているようです。
・暇空茜の今回の判決、行政がインチキな理由で不開示決定するのを防止する意味はあるので、そういう裁判例を積んだことは評価して良いのではないだろうか。恐らく、彼が意図したこととはあまり関係なく、先例性のある裁判例として今後参照されていくだろう。
滝本太郎氏(市井の弁護士)
・はい、中身は分らないのが申し訳ないが、実に貴重な判例となる。すごいことです。それで報道されたのかを調べてみたか、何か見つからない。どうなっているのか。あったら知りたい。
高橋雄一郎氏(東京弁護士会所属の弁護士)
・これはすごい!
・暇空茜氏vs東京都の国賠事件、基準時をめぐる判断にすぎないという意見があるが、訴えなければそのまま放置され、類似の実務が将来も繰り返される可能性があったわけで、行政処分の違法性を正しく特定し敗訴リスクを負担しつつ救済を求めて成果を出したというのはやはりすごいことだと思うよ。
・過去に警察による接見妨害とかで様々な国賠訴訟が元弁護人から提起され、損害賠償額などせいぜい数万円で、あんなに激しく争って数万円wwパヨク必死すぎwwとか嘲笑する意見もあったが、国賠一部認容で関係者は責任をとり、一線の警察官は朝礼で話を聞かされ、実務が少しずつ改善していった。
新田 龍(働き方改革総合研究所株式会社代表取締役)
・「勝率1割未満と言われる国家賠償請求訴訟で、一個人が東京都相手に勝訴した」っていう、新聞記事なら一面扱いのとんでもない事件が26日にあったんですが、丸2日経っても、どこの主要メディアでも報道されてないんですよね。
・市民団体が原告なら、国家賠償請求訴訟を「提訴する予定」でも、「敗訴」でさえもこぞってニュースにするというのに。
【速報】
— 暇空茜 (@himasoraakane) March 26, 2024
国家賠償請求訴訟で東京都相手に勝訴しました!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
国家賠償請求訴訟③結審しました|暇空茜 @himasoraakane #note https://t.co/mbdU1gsOqr pic.twitter.com/5QXUNc9hz6
2.ニュースバリューがない
今回の判決について、ネット上では大いに盛り上がる一方、テレビ・新聞などのメディアで全く報じられないことに対して疑問の声もあがっているのですけれども、これについて、3月27日にXのスペースで行われた暇空茜氏本人と映画評論家の町山智浩氏の対談で話題となりました。
これは、町山氏が暇空氏に「困ってる人を助けた経験があるなら聞かせてもらえますか?」と問いかけたのを切っ掛けに、「町山智浩さんが聞き手となり、町山さんがわからなかった場合は質問をいれたりしながら、暇空茜が人を助けた経験についての話をする会」と題して行われたものです。
当初は1時間で、という話だったのが実に4時間近くに及ぶもので、いろんな意味で興味深い対談だったのですけれども、対談のポイントを纏めている、なる氏のツイートから該当部分を引用すると次の通りです。
・国賠勝訴の報道について町山氏は暇空氏の勝訴が報じられないのは、ニュースバリューがないからだと述べています。
注意:意訳であり原文ママではない。
国賠勝訴が報道されないのはおかしくないかの話。
町山さん「報道されないのは当たり前です。ニュースバリューがない。」
※ここだいぶ意訳
暇空「国賠で負けたことすら東京新聞は報道します。勝ったことを報道しないのはおかしいと思います。」
町山さん「だって1万円でしょう?」
暇空「ぼくが戦ってる相手がもし自民だったら大ニュースになってると思いますよ」
町山さん「自民は権力者だからです」
暇空「ぼくから見たら都庁も権力者でぇ~す」
町山さん「社会的な問題ではありません」
注意:意訳であり原文ママではない。
— なる (@nalltama) March 27, 2024
国賠勝訴が報道されないのはおかしくないかの話。
町山さん「報道されないのは当たり前です。ニュースバリューがない。」
※ここだいぶ意訳
暇空「国賠で負けたことすら東京新聞は報道します。勝ったことを報道しないのはおかしいと思います。」…
3.ニュースバリューの八要素
町山氏はニュースバリューがなく、社会的な問題がないから報じないのだと述べていますけれども、ではニュースバリューとは何か。
広報PRとデジタルマーケ支援を行っているシェイプウィン社は、自身のサイトでニュースバリューが生まれる要素として次の8つを挙げています。
①新規性・独自性:同業が既にスタートしていないか?シェイプウィン社は、これらの要素を抑えて高めることで、ニュースバリューになると述べています。
②希少性 :「世界初・日本初」は目を惹きやすい!「珍しい」と思ってもらえるか?
③社会性 :社会にとって報道すべき内容か?
④意外性 :国民の興味・関心と関連している内容か?
⑤時事性・季節性:「なぜ今取り上げるべきか」が明確になっているか?
⑥将来性 :報道後の未来までを記者にイメージさせることができているか?
⑦ストーリー性 :人の心を動かすストーリーが組み立てられているか?
⑧逆説・対立性 :思わず目を引くような工夫がされているか?
そして、更に、そのようにして報じられた事例として次の3つを挙げています。
事例① キー局8番組で取り上げられ、過去最大700以上のメディアを誘致・露出このように、ニュースバリューが生まれる8要素のうちいくつかを高めることで、報じられるようになると指摘しています。
商品:食品の見本市
ニュースバリュー:「お茶の輸出が8000億円突破した」という農林水産省の発表に合わせて、「注目のお茶ビジネス」をテーマに様々なお茶メーカーをPRしたところ、過去最大の700以上のメディアを誘致。また他の年には、牛肉の輸入解禁が相次いだ為、ネクストミートとして新しい牛肉の特徴や食べ方などを紹介したところ、こちらも全局で報道されました。まさに「時事性」を活かしニュースバリューを生んだ事例です。
事例② テレビ東京「WBS」の特集で長尺露出
商品:スマレジ(タブレットPOS)
ニュースバリュー:長年変わらなかったお店のレジや決済が変革期にあったこと、そしてiPadの業務利用が活発化した時期であったことに着目。そのタイミングで「10万円(※当時の価格)を切るタブレットを使ったレジが登場」というニュースを打つことで、「新規制・独自性」がバリューを生み、テレビ東京「WEB」の特集に取り上げられました。
事例③ B2B商品の発表レクチャー会に10人以上のトップメディア記者が集合
商品:会議室向け180度ワイドカメラ
ニュースバリュー:オンライン会議が一般化する中、「カメラを隔てると会議室の臨場感が減る」という声があり、それに応えた商品が登場。世界では、大会議室ではなくハドルルーム(4〜6名程度の小規模会議室)の活用と導入が増えていると言うトレンドをフックにメディアへアプローチをしたところ、10名以上のメディアが出席し幅広くメディアに露出されました。「時事性」に加えて、「将来性」も掲載に大きく影響を及ぼしました。
4.ジャーナリズムがない
翻って、今回の暇空氏の勝訴について、これらの要素についてみていくと、冒頭に取り上げた専門家のコメントを参考にすると次の様になると考えます。
①新規性・独自性:有。勝率1割未満と言われる国家賠償請求訴訟で、一個人が東京都相手に勝訴したこのように、筆者には、ニュースバリューの8要素のうち6要素でその基準を満たしているように見えます。
②希少性 :有。行政がインチキな理由で不開示決定するのを防止するという先例性のある裁判例を積んだ。
③社会性 :無。行政の敗訴自体は、あちこち出されている。社会に対するインパクトは少ない
④意外性 :有。①と同じ
⑤時事性・季節性:無。社会で起こっている最新の出来事やニュースとの関連性はさほど強くない。
⑥将来性 :有。国賠一部認容で関係者は責任をとることになり、実務が少しずつ改善しくことが期待される。
⑦ストーリー性 :有。行政処分の違法性を正しく特定し敗訴リスクを負担しつつ救済を求めて成果を出した
⑧逆説・対立性 :有。暇空氏が、裁判の進行状況や都の黒塗だらけの文書をネットで公開するなど、注目を集める工夫をしていた。
確かに町山氏がいう社会性はないかもしれませんけれども、それを補って余りあるニュースバリュー要素があると思います。
政治関連の世論調査で、大手メディアが出す数字とネットでのそれが大きく乖離していることをよく目にしますけれども、ここまでニュースバリューがあるものを大手メディアが一切報じないというのは、かなりの違和感があります。
ネットでは「毎日新聞など暇空茜なる人物が過去にたかが書類送検されたごときで、こんなパトカー映像で扇情的に誤解を招く報道したくせに、一方で暇空氏という個人が国家賠償請求訴訟で都に勝訴したというときマスコミは総ダンマリってのは、これこそが「ジャーナリズムが死んだ」なのでは?」などという書き込みもありますけれども、その通りだと思います。
大手マスコミが何に忖度しているのか分かりませんけれども、このままマトモになることがない限り、その実態と闇はどんどん陽に晒され、やがて溶けていくのではないかと思いますね。
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