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1.三万三千社
小林製薬が機能性表示食品として販売していた紅麹サプリ問題がどんどん拡がっています。
3月29日、帝国データバンクは、小林製薬が直接紅麹原料を卸している企業、または同社製の紅麹原料が供給された企業の延べ225事業者から仕入・販売などを行った国内企業について、二次販売先までを対象に調査を行いました。
その結果、225事業者から直接商品等の仕入・販売等の取引関係を有する「一次販売企業」が 873社、原料等として仕入等の取引関係を有し、流通・加工を行う「中間流通・製造等(一次仕入加工)」の企業が3878社あることが判明。また、一次加工企業から商品の仕入・販売等といった取引関係
を有する「二次仕入・販売企業」は2万8775社となり、直接的・間接的に紅麹製品を消費者へ販売・提供している可能性のある取引企業は2万9648社に上ったことを明らかにしました。
これで、製造・販売を含めた企業の合計は3万3526社となり、これらから小林製薬製の紅麹原料を使用した製品が流通している可能性があることになります。
帝国データバンクは報告書で、紅麹は発酵食品としての原材料以外にも着色料などで使用されることも多く、2次加工・3次加工では使用有無の確認に時間を要するとみられるとしたほか、健康被害を生じさせた原因物質の特定にも時間を要するとみられ、加工食品などの最終製品を含めると、流通先の特定は長期にわたり難航する可能性が高く、販売企業などでは事態の収拾まで対応の長期化が想定されるとしています。
2.風評被害
当然ながら、今回の問題で食品会社を始めとして混乱が起こっています。
日清食品ホールディングスは、「日清食品」「湖池屋」「明星食品」などグループ各社の製品に関し、「健康被害が報道されている小林製薬の紅麹原料は一切使用しておりません」と公式サイトで公表。
明治は「回収対象となる紅麹原料は、2次原料も含めて使用しておりません」と問題となる紅麹とは無関係と訴えています。さらに「男梅」などの商品で知られるノーベル製菓も、公式サイトのトップページに赤字で「弊社にて使用している紅麹色素は、小林製薬株式会社のものは使用しておりません」と公表しています。
更に、江崎グリコは「当社商品では小林製薬社の『紅麹』は使用しておりません」と大きな文字でアピール。「2次原料についても使用していないことを確認済みです」と商品の安全を強調するなど、風評被害を懸念する食品会社などが続々と、小林製薬とは無関係であると公表し始めています。
これはサプリメーカーも同様で、わかさ生活は、紅麹を使った商品自体がなく、小林製薬との取引はないが、委託工場で混入した可能性がないかなどの確認作業や、問い合わせに答えられる態勢整備に追われています。
これらについて、食の安全の問題に詳しい東京大学の唐木英明名誉教授は「紅麹は伝統的に食品の着色料として使われてきて、色素自体に危険性はない。紅麹全部が危ないのではない。消費者も冷静に受け止める必要がある……現在、最も重要なのは原因物質を突き止めることだ。そうすれば治療法も、どの商品を回収すべきかも明らかになる」とコメントしています。
3.小林製薬の紅麹だけが危ないとは限らない
3月29日、小林製薬は、3月22日につづいてこの日も会見を行いました。
会見冒頭、小林社長は「関係する皆様に不安や恐れを与えてしまった。深刻な社会問題を招いてしまったことを深くおわびいたします」と謝罪。健康被害について、3月28日午後10時時点で、亡くなったのは5人、入院者は114人にのぼると明らかにしました。
この日の会見で、小林製薬は、製品と原料の一部から検出されたとする「未知の成分」について、「構造までは見えてきた」としつつ、成分の特定には至っていないと説明したのですけれども、会見途中、厚労省が、「未知の成分」は青カビから発生する「プベルル酸」の可能性が高いと小林製薬から報告があったことを暴露しました。
当然ながら会見ではこの点に質問が集中。小林製薬は「プベルル酸が直接的に腎障害、腎疾患を引き起こしているという仮説もまだ立てていない。毒性のメカニズムすら検証ができていない状態で、混乱させたくなかった」と弁明に追われました。
先程、東京大学の唐木英明名誉教授が「紅麹は伝統的に食品の着色料として使われてきて、色素自体に危険性はない。紅麹全部が危ないのではない」とコメントしたことを取り上げましたけれども、原因が不明である以上、「小林製薬の原料使ってないから大丈夫」などと断定はできない筈です。
仮に、小林製薬の原料だけが危ないといえるとすれば、それは、何某かの毒物混入など、製造過程に健康被害の原因がある場合です。
4.立ち入り検査
3月31日、厚生労働省と和歌山県は食品衛生法に基づき、和歌山県紀の川市にある小林製薬の子会社の工場に立ち入り検査を行いました。
この工場では、老朽化を理由に去年12月に閉鎖された大阪市内の工場から製造設備を引き継いで紅麹原料を製造しています。
会社は大阪市内の工場で去年4月から10月にかけて製造した紅麹原料から、青カビから発生することがある「プベルル酸」とみられる物質が確認されたとしていて、31日の立ち入り検査では大阪の工場から移設された設備や製造工程などを確認したということです。
製造設備は大阪の工場のものが移設されて使われていて、蒸した米に紅麹菌を植え付けて培養したあと、加熱して粉砕するなどして原料を作るという製造工程も同じだということです。
立ち入り検査は午後2時半ごろに終了し、現場で取材に応じた小林製薬の山下健司製造本部長は「検査を受ける立場なので内容については差し控えたい。国の調査には今後も誠実に対応していきたい」と話していました。
ただ、この子会社の工場では今年1月から紅麹原料を製造していて、「プベルル酸」が確認された原料が製造された去年4月から10月の後になります。従って、もし「プベルル酸」が混入したのであれば、もともとの製造工程から問題があったことになります。
小林製薬の山下健司製造本部長は3月29日の会見で、「紀の川の工場の製造設備を見ていただければ、閉鎖した大阪工場での製造工程を確認することができると考えている」とコメントしていることから、今回の立ち入り検査で少なくとも製造工程の問題があるのであれば、それが明らかになると思われます。
ただ、もし仮に製造工程に問題があったとしても、その問題が健康被害に結び付く因果関係が証明されなければ、問題が解決したことにはなりません。
「何かが混入した」だけでは、風評被害は収まらないであろうからです。
5.プベルル酸
そもそも、「プベルル酸」が、今回の健康被害の原因物質であると特定された訳ではありません。
プベルル酸について、3月29日、ANNニュースは、「プベルル酸」の毒性は非常に高いとのテロップを出し、厚生労働省健康・生活衛生局の三木朗食品監視分析官の「青カビが産生する天然化合物。抗生物質としての特性を有することが知られているので、近年では、抗マラリアの活性が報告。マラリアも殺すような活性があるので、毒性については非常に高いと考えています。一定の原因である可能性については"ある"と思っています」とのコメントを報じています。
ただ、同じ番組内で、問題の紅麴サプリを飲んで急性間質性腎炎となった患者を治療した、順天堂大の合田専任准教授は、プベルル酸について「抗マラリア薬の中のものではないか。抗生物質は、よく腎障害をきたしうる可能性があるもの。抗菌薬、抗ウイルス薬を内服する場合には、いつも腎障害が出てこないか注意しながらみている……やはり、どのような薬剤であっても腎障害をきたしうる。早期診断、早期に服薬を中止するような指導というのは簡単にできるのではないかと」と述べています。
厚労省の分析官のコメントと合田准教授のコメントを流して聞いていると、なんとなく「プベルル酸」は危ないのではないかという印象を受けてしまうかもしれませんけれども、よくよくみると、厚労省の分析官は「マラリアを殺すのだから。毒性については非常に高いと考えている」と類推を述べているだけですし、合田淳教授にいたっては「プベルル酸はよくわからない。抗菌薬、抗ウイルス薬を使うときには腎障害がでないか気をつけている」と"一般論"を述べているだけ。要するに、分からないとしか言っていないのですね。
一方、こちらのNatureの2010年の査読付き論文では、プベルル酸について「プベルル酸はヒトMRC-5細胞に対して弱い細胞毒性を示し、IC50値は57.2μgml-1であった。この化合物は生体内でも治療効果を示し、現在使用されている抗マラリア薬と比較して優れており、新しい抗マラリア化合物の開発の有力な候補として期待されています」と報告されています。
また、東京工科大学の今井伸二郎教授は「プベルル酸に腎毒性の報告は一切無い。紅麹も風評被害、何百年食べれているがそういった報告は一切無い」とコメントしています。
プベルル酸は1930年代、青カビが作る物質として発見されました。しかし研究はその後あまり進まず、有機化学や微生物の専門家にも詳しい人は少ないのだそうです。
2017年、感染症の原因となるマラリア原虫に効果があることを突き止めていた北里大のチームは、マウス5匹に注射した実験で4匹が死んだと報告していますけれども、今回のサプリで問題となった腎臓への影響はわかっていません。
東京大の楠原洋之教授は「プベルル酸のように小さな構造の分子は、腎臓の尿細管の細胞内に濃縮されるケースがある。腎臓への毒性の有無や、患者の体内にどれほど入っていたのかなどを調べる必要がある」と指摘し、長崎大の北潔教授は「青カビが混入して予期せぬ物質が作られれば、通常は異臭や色の変化で気づくはず。他の微生物が入り込んだ可能性も含めて、検証すべきだ」と話しています。
要するに今の段階でプベルル酸を犯人だと決めつけるのは早計だということです。
6.スタチン
そんな中、ネットでは、武漢ウイルスワクチンとの関連を疑う声も出ています。
武漢ウイルス禍が始まった当初から、武漢肺炎症例やワクチンについて、各種論文を紹介・説明し一部界隈で有名は「JP_Sika」先生は、ワクチン接種者は抗コレステロール薬である「スタチン」を服用するのは禁忌だとする論文があると述べています。
問題になっている紅麴サプリの主成分はモナコリンKという天然のスタチンです。そんな禁忌があるのであれば、プベルル酸なんて誰もしらないマイナーな成分を疑うより、メイン成分のスタチンと、ワクチン接種との関係を疑うのは、自然な発想ではないかと思います。
それ以前に、武漢ウイルスワクチン接種後に急速進行性IgA腎症や間質性腎炎を発症したことはすでに論文で報告されています。
もし、ワクチン接種者にとって、スタチンが腎炎の発症因子になり得るのだとしたら、事は小林製薬だけの問題ではなくなります。
なぜなら、国民の8割以上がワクチンを接種し、スタチンは脂質異常症治療薬としてポピュラーに使われている薬であるからです。無論、小林製薬以外にも、スタチン入りの健康食品は対象になります。
万が一、スタチン+ワクチンが原因だったとしたら、消費者が一生懸命、小林製薬の紅麹を避けたとしても、それ以外の商品なり薬なりで同じように腎炎を発症する患者が出てくることが考えられます。
そのたびに、「何とか酸」だの「何とか菌」だの、単一製品の中で犯人捜ししたとしても、何も分からないまま健康被害者だけ増えていく可能性があります。
小林製薬が原因物質の特定を慎重に進めるのに比べ、厚労省が独自でプベルル酸だと公表したり、立ち入り検査をしたりするなど、いささか勇み足の印象を受けなくもありません。
厚労省はワクチンとの関連も含め、広く可能性を探るべきだと思いますね。
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