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1.空爆で死亡したワールド・セントラル・キッチンの7人
4月1日、災害時に温かい食事を提供するシェフ組織「ワールド・セントラル・キッチン(WCK:World Central Kitchen)」は、パレスチナ自治区ガザ地区で人道支援活動を行っていたNGO職員少なくとも7人が殺害されたと発表しました。
ワールド・セントラル・キッチンは、声明で犠牲者にはイギリス人のほか、ポーランド人、オーストラリア人、アメリカとカナダの二重国籍者、パレスチナ人が含まれていると述べています。
ワールド・セントラル・キッチンの創設者でシェフのホセ・アンドレス氏は、複数の仲間が「イスラエル軍の空爆」で殺されたと、SNSに投稿。イスラエル政府に「無差別殺人をやめる」よう訴えました。
ワールド・セントラル・キッチンによると職員らは、海路でガザへ運ばれた食糧100トン以上が保存されているディール・アル・バラフの倉庫を出た後に攻撃されたとのことで、「WCKのロゴが入った2台の装甲車」と「通常の車両」で「非対戦地帯」を移動しており、イスラエル軍と動きを調整していたとしています。
ワールド・セントラル・キッチンのエリン・ゴア最高経営責任者(CEO)は声明で、「心を痛め、愕然としている……これはWCKに対する攻撃というだけでなく、食糧が戦争の武器として使われている最も悲惨な現場に入った、人道支援組織に対する攻撃だ。許しがたいことだ」と述べています。
ワールド・セントラル・キッチンは現在、活動を一時停止しており、今後の活動については近日中に決定するとしています。
The distance between each bombed WCK & the other shows beyond any doubt how the IDF took their time to deliberately & surgically eliminate the entire crew.
— Muhammad Shehada (@muhammadshehad2) April 2, 2024
The 2nd car was bombed after it rescued the survivors of the 1st, & the 3rd after it rescued the survivors from the 2nd! pic.twitter.com/7Qv082wf5C
2.戦争ではこういうことが起きる
今回のWCK職員殺害について、2日、オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相は、犠牲者にメルボルン出身のラルザウミ・「ゾミ」・フランクコムさんが含まれていたと発表し、遺族に追悼の意を表しました。
アルバジーニー首相は、「これは、ガザで途方もない困窮に苦しんでいる人々のために、この慈善団体を通じて援助を提供しようと、海外でボランティアをしていた人の話だ。このようなことはまったく受け入れがたい」とし、イスラエル政府に対し、オーストラリアとして「全面的な説明責任」を求めると述べ、「このような悲劇は起きてはならなかった」と強調しました。
そして、ポーランド当局は、殺害された自国民はダミアン・ソボルさんだと発表。ポーランド外務省も、犠牲者の中にポーランド人が含まれていたとの報道について、イスラエルからの公式な確認を求めているとしています。
更に、イギリスのリシ・スナク首相も、ガザでイギリス人の援助職員が殺害されたとの報道について「ショックを受けており、悲しんでいる……明らかに、答えの必要な疑問が複数ある」と述べ、イギリスのジリアン・キーガン教育相も、イギリス政府は「とてもとても懸念している……私たちはイスラエルに対し、市民を守るため、また援助物資がガザに入るのを許可するため、対応を拡大するよう求めてきた」と述べ、イギリス人殺害の情報について「私たちはまだ確認していないし、おそらく今こうしている間にも、イスラエル国防軍はこの件について調べていると思う」と話しています。
ホワイトハウスのエイドリエン・ワトソン報道官はソーシャルメディアで、「ガザで援助職員が砲撃によって殺害されたことについて、非常に悲しみ、深く憂慮している」として、「何が起きたのか素早く調査するよう、イスラエルに促す」と書いています。
これらについてイスラエルのネタニヤフ首相は2日午後、ヘブライ語での動画メッセージで「残念ながら過去24時間の間に、我が軍がガザ地区で意図せず、罪のない人たちを攻撃するという、悲劇的な事態があった」とイスラエル軍の空爆によって「意図せず」、ガザ地区で「罪のない人たち」が死亡したと認め、「戦争ではこういうことが起きる。我々は最後まで確認する。関係政府と連絡をとりあっている。そして、このようなことが二度と起きないようあらゆる手段を講じる」と述べています。
また、ネタニヤフ首相は、声明でイスラエル軍は「我々は人道援助を安全に届けるための努力を惜しまず、ガザの人々に食料と人道援助を提供するWCKと緊密に協力している」と述べていますけれども、「緊密に協力している」わりに、民間人が殺害され、「戦争ではよくあること」などとする態度では、批判を受けるのも仕方ありません。
2024.4.3 イスラエル軍に殺害された食料支援NPO, 安らかに眠る: 誤爆ではなく、計画的だった?
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- 4/1 ガザで食料提供を行っていたワールドセントラルキッチンの職員7名がイスラエル軍の攻撃で犠牲に。
- ネタニヤフ首相は「誤爆であり、意図せずに起きた」と説明。メディアも「誤爆」と報道。
-… pic.twitter.com/7M5H2DBRUV
3.どのようにミスを犯したかは問題ではない
4月3日、アメリカ・ホワイトハウスの当局者は、4日にバイデン大統領がイスラエルのネタニヤフ首相と電話会談を行うと明らかにしました。
ホワイトハウスによると、バイデン大統領は、今回、イスラエル軍がワールド・セントラル・キッチンの車両を攻撃し、7人を殺害したことについて激しく憤り、心を痛めたとのことです。けれども、その一方でガザにおけるイスラエルへのアメリカの揺るぎない支持に根本的な変更はないとしています。
当局者によると、バイデン大統領は人道支援活動を行う人々の保護を強化し、ガザへの食料輸送を拡大する必要性を訴える可能性が高いようです。
また、同じく3日、アメリカ国務省のミラー報道官は定例記者会見で「どのようにミスを犯したかは問題ではない……この悲劇が起きた理由が何であれ、イスラエル軍内部でどのようなミスが起きたにせよ、受け入れられない……イスラエル軍がWCKの車両を標的にしつつも、WCKが車両を運転していると確信していなかったという意味と解釈しているが、調査の結果を待つ」と、イスラエルによる迅速な調査を望むと述べました。
ミラー報道官はイスラエルは人道支援従事者や民間人を守るためにより効果的な措置を講じる必要があると語っていますけれども、一番効果的であるのは、停戦することであるのはいうまでもありません。
ネタニヤフ首相は「二度と起きないようあらゆる手段を講じる」などと言っていますけれども、ガザの民間人を殺害しているのは今に始まったことではなく、世界各国から批判されていたことです。
いくら言い訳を並べても、誰が見ても効果的だと分かる措置が講じられない限り、世界をどんどん敵に回していくことになると思います。
4.ネタニヤフが障害なのだ
こうした中、とうとうイスラエル国内でもネタニヤフ首相の退陣と早期の選挙実施を求めるデモが行われました。
3月31日夜、エルサレムで行われたこのデモは、地元メディアなどによると、数万人が参加したとのことです。これは、昨年10月にハマスとの戦闘が始まって以降、最大規模のデモです。
イスラエルの国会(国会)周辺では、若者からお年寄りまで幅広い世代の市民が集まり、「早く選挙を実施せよ」、「人質の解放交渉の早期合意を」と訴え、戦闘の長期化などに抗議の声を挙げました。
ハマスに誘拐された人質はこれまでに一部が解放されたのですけれども、いまだ多くが捕らわれたままで、人質解放の交渉もうまくいっていません。
デモに参加した人質の家族らは、「ネタニヤフ首相、あなたは10月7日に私たち家族を見捨て、176日間も取引に応じず、妨害し続けている。あなたが障害なのだ。私たちと愛する人々の帰還の間に立ちはだかるのはあなたなのです」とネタニヤフ首相が障害になっているとして、彼が退陣するまで国会前に座り込むつもりだと語っています。
アメリカの「ワシントン・ポスト」によると、多くの家族は、ガザで拘束されている親族について公式な情報を受け取っていないばかりか、ネタニヤフや閣僚との面会を拒否された家族もいて、政府への信頼は失墜していると報じています。
それでも、これまでイスラエル国民は抗議活動を自制してきました。その理由として、ハマスとの戦争の最中では国として団結することが第一だと考えたからだと、アメリカの「ニューヨーク・タイムズ」は指摘しています。
このように戦時中は政府批判を自制すべきだという空気が流れていたイスラエル国内でこんな大規模なデモが起きたということは、イスラエル国民の我慢も限界に達したということです。
このデモの組織化を手伝ったある起業家は、「イスラエルはその歴史のなかで最も困難な瞬間のひとつに直面していると思います……首相の政治的、個人的な利益のためではなく、国のために行動する政府が必要なのです」と語ったところをみると、やはり政府への信頼は相当落ちていることが窺えます。
5.アルジャジーラを排除するイスラエル政府
4月1日、イスラエル議会、国家安全保障にとって脅威となると判断した外国テレビ局を「一時的」に禁止する法案を可決しました。禁止期間は45日間ですけれども、更新が可能で、効力は7月までか、ガザ地区での大規模な戦闘が終わるまでとしています。
禁止対象とするテレビ局には、カタール政府が出資する衛星テレビ局「アルジャジーラ」も含まれています。
ネタニヤフ首相はX(旧ツイッター)で、アルジャジーラを「テロリストのチャンネル」と呼び、「イスラエルから放送できなくなる」とし、アルジャジーラのイスラエル事務所を閉鎖するために「ただちに行動する」と述べています。
長年にわたり、イスラエル政府は「アルジャジーラ」を目の敵にしています。
イスラエル政府は、アルジャジーラが反イスラエル的な偏見を持っていると非難してきたのですけれども、昨年10月7日のイスラム組織ハマスによるイスラエル襲撃で、その批判はさらに強まりました。イスラエル当局はアルジャジーラとハマスとの関連を指摘しているのですけれども、アルジャジーラはこれを全面的に否定しています。
現在、外国人ジャーナリストがパレスチナ自治区ガザ地区への立ち入りを禁じられているのですけれども、ガザ地区を拠点にしているアルジャジーラの記者らは、イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦争を現地取材できる、ほぼ唯一の存在となっています。
アルジャジーラは声明で、「ネタニヤフ首相は、アルジャジーラと報道の自由への現在進行中の攻撃について、同局とその従業員の権利に対して新たなうそと扇動的な中傷を行う以外に、世界に正当な理由を提示できなかった……アルジャジーラは、イスラエル首相の扇動と不名誉な方法によるこの虚偽の告発を受け、世界中のスタッフと施設の安全について、彼の責任を追及する」と反発しています。
イスラエル政府はガザの状況をイスラエル国内に知らせたくないからそうしたのかもしれませんけれども、国内に知らせなくても、国外には依然として報じられるのですから、今の状況は続く限り世界からのイスラエルへの批判が止むことはないと思います。
そもそもグローバルに情報が飛び交う今の世界で国内のテレビをいくら封鎖したところで、外国経由で情報を得る手段はいくらでもあります。
先述したデモにしても、戦争の長期化と人質解放が進まないことに対して行われていることを考えると、これで政府批判の声が収まるとも思えませんね。
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