高まる国際圧力とイスラエルの選択

今日はこの話題です。
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1.イスラエル大使館の一時閉鎖


4月4日、イスラエルメディアは、シリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館の建物が空爆されたことに対するイランによる報復を懸念して各地のイスラエル大使館が一時閉鎖すると報じました。

この日、イスラエルのネタニヤフ首相は、アメリカのバイデン大統領と電話会談を行い、イスラエルに対するイランの脅威についても話し合ったとされています。ネタニヤフ首相は、閣議で「イランは長年にわたり、われわれと敵対してきた。我々を傷つけようとする者は攻撃を受けるだろう」とイランを強く牽制しています。

情報機関は、イランが報復として直接攻撃を決定したと分析。イスラエルは治安準備を最高レベルに引き上げていますけれども、各国大使館が閉鎖されるということは、攻撃される可能性が確実だと見ているということです。


2.イスラエルへの報復を国民に約束したイラン革命防衛隊


4月5日、イランはシリアのイラン大使館に対するイスラエルの空爆と思われる攻撃で死亡した7人の司令官らの葬儀を行いました。

葬儀は、毎年恒例のコッズの日(エルサレム・デー)と重なった為、イランは国主催の大規模な親パレスチナ・反イスラエル集会を全国で開催したのですけれども、国営テレビは、犠牲者の写真と「イスラエルに死を」、「アメリカに死を 」といったスローガンが書かれた横断幕を持ったデモ隊を映しました。

ダマスカスのイラン大使館敷地への空爆ではイランの最高位兵士の一人で革命防衛隊(IRGC)のモハマド・レザ・ザヘディ司令官も死亡したのですけれども、イラン国軍参謀総長モハマド・バゲリ氏は葬儀で、イランがイスラエルへの対応のタイミングと内容を決定することを強調し、適切なタイミングで敵に最大限の損害を与えて実行すると、イランが報復する決意を誓いました。

バゲリ氏は、「アメリカが受け入れるか否かにかかわらず、シオニスト政権による犯罪へのアメリカの関与は明らかであり、最近のシリア総領事館での事件の責任はアメリカにある」と主張しています。

また、同じく5日、親イラン武装組織ヒズボラの指導者ナスララ師はテレビ演説で、イスラエルがシリアにあるイラン大使館周辺を空爆したことは、パレスチナ組織ハマスがイスラエルに対する奇襲攻撃を行った昨年10月7日以来の「転換点」になると述べ、イスラエルを「罰する」としているイランの権利を支持するとした上で、イランは間違いなくイスラエルに報復すると語っています。


3.イスラエルへの武器売却停止求める決議採択


他方、イスラエルのネタニヤフ政権に対し国際圧力も高まっています。

4月4日、ロイター通信は、イギリスの最高裁判事を務めた3人を含む法曹関係者600人以上が、イスラエルへの武器売却の停止を求める書簡をスナク首相に送り、武器支援は「ジェノサイドや国際人道法の重大な違反」に加担することになる可能性があると指摘したと伝えました。

また、同じく4日、AP通信は、スペインのサンチェス首相は、イスラエルへの武器売却を停止したと述べ、他の国に同様の措置を取るよう要請。各国の元首脳らでつくる国際人道グループ「エルダーズ」も4日、イスラエルへの武器輸出を停止するよう各国指導者に訴えています。

これらを背景に、4月5日、国連の人権理事会はスイスの国連ヨーロッパ本部で、ガザ地区の人権状況をめぐる決議案の採決を行いました。

決議案は、ガザ地区での停戦やイスラエルによる封鎖の解除を求めるとともに、さらなる人権侵害を防ぐためとして、すべての加盟国に対しイスラエルへの武器や弾薬などの売却や移転を停止するよう求めたものです。

採決の結果、28ヶ国の賛成多数で決議は採択されたのですけれども、イスラエルに武器を輸出しているアメリカやドイツを含む6ヶ国は「ハマスへの非難の言及がない」などとして反対。日本は当事者からの更なる説明が必要だなどとして投票を棄権しました。

採択後、パレスチナの代表は、決議の採択に感謝する一方で、「決議案に反対票を投じた国や、棄権した国の立場は理解しかねる」と批判しています。


4.イスラエルは核に手を伸ばすのか


4月4日といえば、アメリカのバイデン大統領とイスラエルのネタニヤフ首相が電話会談を行った日です。この日、ネタニヤフ首相はバイデン大統領から支援の見直しを示唆されています。

イランの報復が目前と見られているなか、世界から孤立するイスラエルは、どんどんと追い込まれつつあると思われるのですけれども、そうなると懸念されるのが核使用による一発逆転です。

昨年11月にイスラエルの閣僚が、パレスチナ自治区ガザに核爆弾を落とすのも選択肢だと発言して物議を醸し、国内外の非難で処分されたことがありましたけれども、3月25日、アメリカのティム・ウォールバーグ下院議員が地元選挙区の行事で、アメリカがガザ地区に対する人道支援のために港を建設することについて質問を受け、「我々は人道支援に一銭も使ってはならない……それは長崎や広島のように早く終わらせなければならない」と述べました。

その発言は、動画でネットにアップされ、大変な騒ぎとなりました。

ウォールバーグ議員側は「冷戦時代に育った人として核兵器の使用を擁護するわけではない……私は、イスラエルとウクライナが米軍に害を及ぼさない方式で、それぞれの戦争で迅速に勝たなければならないという点を伝えるために隠喩を使った……私の意図は報道とは正反対……戦争が早く終わるほど罪のない人命被害を減らすことができる」と釈明していますけれども、意図がどうであれ、核は事態を一気に終わらせるものである、という考えがあることを意味しています。

追い詰められたネタニヤフ政権が同じことを考えないとは限りません。

イスラエルは核兵器保有について否定も肯定もしない「曖昧政策」を公式政策としてとり続けています。1979年9月22日、南アフリカ近海の南インド洋はるか上空で、秘密裡に核実験が行われたとの説があり、2013年12月6日には、イスラエルの元国会議長アブラハム・バーグ氏が、講演の席で、核兵器と化学兵器の保有を認める発言を行ったと伝えられています。

ストックホルム国際平和研究所によると、2022年1月時点の推計で、イスラエルは90発の核弾頭を保有しているとされています。

7日になって、イスラエルはガザ南部から1部隊を除く大半の兵士を撤退させたと発表。更に、エジプトで行われる新たな停戦協議に代表団を派遣するとしました。

果たしてネタニヤフ政権が停戦するのか、あるいは破滅の核戦争を選ぶのか。非常に危険な領域に入ったかもしれませんね。



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