中東戦争は回避されたか

今日はこの話題です。
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1.イランが報復攻撃を延期


4月11日、イラン政府が、アメリカ政府に対し、イラン核合意の再建に向けた協議再開に同意すれば、イスラエルへの直接報復攻撃をしないとの意向を伝えたことが明らかになりました。

報道によると、このメッセージは、4月7日にオマーンを訪問したイランのホセイン・アミラブドラヒアン外相によって伝えられたとのことです。

関係筋によると、アミラブドラヒアン外相はオマーンとの会談で、ガザ恒久停戦を含む要求が満たされることを条件にエスカレーションを緩和する意向を示し、また、係争中の核開発計画を巡る協議の復活も求めたようです

アメリカ情報機関に詳しい関係者は、イランはダマスカス大使館敷地への攻撃への対応が「制御され」、「エスカレートするものではない」ものであり、「地域の代理人を利用してイスラエルに多数の攻撃を仕掛ける計画を立てている」ことを「非常に明確にしている」と述べています。

これについて、イラン情報筋の1人は、イランが支援する抵抗枢軸のメンバーがいつでもイスラエルを攻撃する可能性を排除せず、アナリストらはその可能性を報復手段の1つだと指摘しています。

もっとも、アメリカ情報筋に詳しい関係者によると、イランの報復攻撃はアメリカに対して「エスカレートするものではなく、アメリカの関与を望んでいない」とし、イランがシリアとイラクの代理民兵に標的を指示するつもりはないとも示唆しています。

いずれにしても、イランがイスラエルへの直接報復攻撃を延期したことで、ひとまず事態のエスカレートを避ける形となりました。


2.アメリカの働きかけ


ただ、あれほどイスラエルに対する報復を強く宣言していたイランがなぜ土壇場で延期の判断を下したのか。

これについては、どうやらアメリカの水面下の働きがあったようです。

アメリカのマクガーク中東政策調整官は在シリアのイラン大使館への空爆を受け、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、カタール、イラクの外相と電話で会談し、イスラエルとの緊張を緩和すべきだとのメッセージをイラン外相に送るよう求めています。このマクガーク調整官の要請を受け、4ヶ国の外相はイラン外相と連絡を取り、緊張緩和を求めるメッセージを送ったことを明かしています。

イラン外務省も、イランが報復攻撃延期を伝えた前日の10日、サウジ、UAE、カタール、イラクの外相とイラン外相と電話会談し、地域の緊張について議論したと発表しています。

この辺りの事情に詳しいある関係者は匿名を条件に「我々が合意に達することではなく協議について話しているのであれば、その見返りによってアメリカが巻き込まれる地域的エスカレーションのリスクが最小限に抑えられるのであれば、代償を払う価値は十分にあると思われる」とアメリカはイランとの核協議の再開に同意する可能性が十分にあると語ったそうです。

これが本当であれば、アメリカはイランとの核合意協議再開というカードを切って、イランの報復攻撃を防いだことになります。

もっとも、イランにしても、核合意協議再開という外交的勝利を得たという訳でもないようです。

政治リスク専門コンサルティング会社「ユーラシア・グループ」のアナリスト、グレゴリー・ブリュー氏は、ハメネイ師が「戦略的難題に陥っている」と述べ、「イランは抑止力を回復し、抵抗戦線の同盟者間の信頼を維持するために対応しなければならない。しかしその一方で、抑止力を回復するために報復すれば、おそらくアメリカの支援もあり、さらに大規模で破壊的なイスラエルの対応をもたらす可能性が高い」と指摘しています。

また、国際危機グループのアリ・バエズ氏は、イランのジレンマは「面目を保つ方法で報復する方法を見つけ出すことだ……イスラエルはアメリカよりもはるかに予測不可能だ……最高指導者は、イスラエルへの攻撃が、達成したいと期待していた抑止効果をもたらすどころか、むしろ回避したいと望んでいたエスカレーションをあおるだけかもしれないことを明らかに懸念している」と述べています。

イランはイランで事態のエスカレーションを避けたいと望んでいるが、抵抗戦線の同盟者との信頼を保たなければならないというジレンマを抱えているというのですね。


3.我々はイランとの戦争を望まない


では、問題のイスラエル自身は、イランとの戦争を望んでいるかというとそうでもないようです。

イスラエルのカッツ外相は、イタリアの「レプブリカ」紙のインタビューで、イランの報復攻撃について次のように述べています。
・もしイランが我々を直接攻撃すれば、我々はイランを攻撃するだろう。そして、ダマスカスの総領事館破壊に対する報復として、イランの同盟民兵組織がそれを実行するなら、我々も彼らを攻撃するつもりだ……そしてハマスは、ガザ南部からの軍隊の撤退が戦争の終結を意味するなどと誤魔化してはならない

(イスラエル国防軍第98師団のハーン・ユニスからの撤退について)
・そこでの任務は完了した。しかし、我々にとっては何も変わらない。我々はアル・シファ病院でやったのと同じように、標的を絞った軍事作戦を続ける」 参謀本部の決定により、人質解放に関するハマスとの合意が促進される可能性がある

(ガザ当局によれば、犠牲者は3万3千人に上る)
・北部では当初、ハマスは民間人を人間の盾として利用したが、住民が南部に避難すると状況は改善した。残念ながら今でもそういうケースはありますが、意図的にそうしているわけではありません。 IDF はルールに従い、管理されています。対照的に、ハマスは意図的に罪のない人々で囲い込み、学校、モスク、病院に基地を建設する。テロリストたちがアル・シファ病院に戻ってきたため、IDFは再びアル・シファ病院で活動しなければならなかったが、我々は誰も傷つけなかった(...) 私の知る限り、我々は民間人を一人も殺さずに、200人のテロリストを排除し、そのうち800人を逮捕した。ハマスがアル・シファに戻ったのは、自国民の運命には興味がなく、彼らはテロリストだからだ

・Wck(世界セントラル・キッチン組織)で起こったことを非常に残念に思う。私は個人的に亡くなった経営者の政府に電話して哀悼の意を表した。イスラエル国防軍参謀本部は一部の指揮官を解雇し、この訴訟は軍事法廷に持ち込まれた。私たちはまた、より同期を取り、間違いを繰り返さないようにするために、外国機関の上級代表者によるフォーラムを設立した。しかし、もしハマスが、拉致された人々を返還せずに停戦に達するためにこれらすべてを利用できると考えているなら、それは間違っている

(ダマスカスでのパスダランに対する攻撃の後、イランからの軍事的反応が予想されている)
・イスラエルには攻撃の責任はない……しかし、イランは我々に報復すると発表した。我々はそれを恐れてはいない。我々はイランとの戦争を望んでいないが、もしイランが我々を直接攻撃すれば、我々は対抗するだろう……レバノンのヒズボラとイエメンのフーシ派は、し​​ばらくの間、ゴラン川とエイラート川にロケット弾を発射している。これまでのところ、私たちは限定的な方法で対応してきた。ダマスカスへの報復としてレバノンからテルアビブにミサイルが到着し始めれば、イスラエルは飛行機と兵士を派遣するだろう。問題は、西側諸国がイランとイスラム過激主義の危険性を真剣に受け止めていないことだ」

・イランは――カッツも観察しているが――蛇の頭だ。彼は我々を破壊するためにヒズボラに150発のミサイルを提供した。ヨーロッパ、米国、国連はイランを阻止し、核兵器を取得するのを阻止しなければならない。西側諸国は大きな間違いを犯している。イランを経済的に制裁し、圧力を感じさせなければならない。そうでなければイランは第二の北朝鮮になってしまうだろう

(ガザの戦後計画について)
・ハマスが敗北すれば、国際社会はストリップに対する責任を負うことになる。しかし、ガザを管理する者が誰であろうとも、新たなテロ組織に遭遇した場合に備えて、イスラエルに安全保障問題への介入の可能性を残しておかなければならない(...)今日、イスラエルにはネタニヤフ首相だけでなく、政治指導者もいない。その仮説を支持す。 10月7日以降、私たちの世論はもはやユダヤ国家の安全がパレスチナ人に依存することを望んでいない。ハマスですら二つの国家を望んだわけではない。彼らはイスラムのカリフ制を望んでいる
一見、強気の発言に見えなくもありませんけれども、イランの報復攻撃について言っていることは、要するに「イランが我々を直接攻撃すれば、我々はイランを攻撃する」と「我々はイランとの戦争を望まない」の2点です。

これは言い換えれば、「自分から手はださない」、「戦争したくない」ということです。土下座とはいいませんけれども、外交メッセージとしては、許しを請うものに近いように見えます。

これは何らかの外交ルートを通じて、イランに伝えられ、であるが故にイランは直接報復攻撃を止めたのではないかと思います。


4.板挟みのネタニヤフ


その一方、イスラエルのネタニヤフ首相は同じ9日に、ラファへの攻撃発言をしています。

ネタニヤフ首相は基地で行われた新兵募集に関するイベントで、「我々は、ラファを含めて、ハマスの大隊の排除を完了する。世界には我々を止める勢力はない……多くの勢力がそうしようとしているが、役に立たない。なぜなら、この敵は一度やったら、二度と同じことはしない。存在しなくなるからだ」と語りました。

ネタニヤフ首相はこのイベントで、三つの目標があると発言。ハマスに連行された人たち全員の帰還とハマスの撲滅、ガザがイスラエルの脅威にならないと確実にすることの3点を挙げました。

そして、ネタニヤフ首相はさらに四つ目の目標として、ハマスはイスラエルの破壊を目的としたイランの「悪の枢軸」の一部だとして、ハマスを倒すことは悪の枢軸を倒すことでもあると付け加えました。

ネタニヤフ首相は前日の8日に、「本日、カイロでの協議に関する詳細な報告を受け取った。われわれは目標達成に向けて継続的に取り組んでいる。まずは人質全員の解放とハマスに対する完全な勝利を達成することだ……この勝利にはラファへの侵攻およびラファにいるテロリスト部隊の排除が必要だ。それは必ず起こる。日程は決まっている」と述べていますけれども、具体的な日付は明らかにしていません。

もっとも、このネタニヤフ首相の発言に対し、アメリカ国務省のマシュー・ミラー報道官は定例会見で、イスラエルによるラファ侵攻の日程についてアメリカは説明を受けていないが、いずれにせよイスラエル軍によるラファへの全面侵攻を望んでいないと発言しています。

また、バイデン政権高官は、ネタニヤフ氏は、イスラム組織ハマスの撲滅とイスラエル人の人質解放を見据えた停戦交渉の成立という大きな圧力のなかでバランスを取ることに苦慮しているとし、ラファ攻撃発言は、国内での政治的立場が弱体化したことを受けた「虚勢」とみていることを明かしています。

今現在、ネタニヤフ首相は板挟みにあっています。

4月8日、イスラエルのベングビール国家安全保障相は、ネタニヤフ首相がラファでの地上作戦の計画を放棄すれば、政権を維持してきた連立政党からの支持を失う可能性があるとし、ネタニヤフ氏が、ハマスを打倒するためのラファへの大規模な攻撃を開始することなく戦争を終結させることを決断すれば、ネタニヤフ氏に首相を続ける権限はなくなるとの見方を示しました。

ベングビール氏は極右政党「ユダヤの力」の出身で、過去にも同じ発言を繰り返しています。

昨年11月末に戦闘が一時休止された時も、休止期間後すぐにパレスチナ自治区ガザ地区への攻撃を再開しなければ、政権から外れるつもりだと宣言、今年1月には、極右政党「ユダヤの力」の会合で、「もし戦争をやめるなどという決定が下されたら、私は政権の一員でなくなるだろう」と言明。強硬派の「ユダヤの力」が現政権の一角を担うことは、国土に強く影響しているとも強調しています。

ベングビール氏にはテロ組織を支援した容疑やアラブ系に対する人種差別をあおった容疑で有罪となった過去があり、今年に入ってはパレスチナ人を集団でガザの外へと移住させ、事実上、イスラエル人を入植させるよう呼びかけています。

国際社会からは停戦圧力、国内世論からは人質解放と退陣、連立与党からはガザ攻撃と身動きできない状況になっているように見えます。

事態の収束には、もはや、ネタニヤフ政権の退陣・総辞職しかなくなってきたのではないかと思いますね。


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