ヒズボラのイスラエル攻撃

今日はこの話題です。
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1.ヒズボラのロケット攻撃


4月12日夜、イランの支援を受けるレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラは、イスラエルに向けて50発以上のロケット弾を発射しました。

ヒズボラのマナール通信によると、イランの支援を受けたレバノンの組織は、イスラエル軍の砲陣地に数十発の自走式多連装ロケット砲(カチューシャロケット弾)を発射したと発表。アルジャジーラは、レバノン南東部の国境の村の上空で航空迎撃ロケット弾が爆発したと報じています。

また、アル・アラビーヤ・​​ニュースチャンネルは、ヒズボラがゴラン高原のイスラエル軍施設を爆撃したと報じ、さらにレバノンメディアの情報として、イスラエル航空機がベイルート上空を飛行したと付け加えています。

これについて、イスラエル軍のダニエル・ハガリ報道官は、レバノンからイスラエルに向けてロケット弾が発射されたと述べ、ロケット弾のほとんどは迎撃されたと発表。撃墜されなかった機体は広場に落下し、死傷者は出なかったとしています。

また、イスラエル国防軍はまた、ヒズボラがイスラエル北部に向けて発射した爆発物を積んだ無人機2機を防空部隊が撃墜したと発表し、更に発射場への砲撃も行ったと述べています。

12日夜の攻撃は、レバノン南部のアイタ・アッシュ・シャブで、工作員が集められていたヒズボラが使用する複数の建物を攻撃したとイスラエル国防軍が発表してから間もなく行われていることから、ヒズボラのミサイル攻撃はこれに対する反撃とも、シリアのイラン総領事館に対するイスラエルによる攻撃の報復ともどちらともとれる微妙な攻撃です。

ヒズボラが打ったミサイルはその殆どが迎撃されたということですけれども、一部には、イランの報復に先立ってイスラエルの防空システムであるアイアン・ドームを弱体化させることが目的だという指摘もあります。

もしそうだとすれば、ヒズボラはイランの別動隊としての働きをしたことになります。


2.対応に追われるイスラエル


この攻撃を受け、12日夜、イスラエルのネタニヤフ首相、ヨアブ・ガラント国防相、イスラエル治安機関の責任者らはテルアビブの国防省本部で3時間会談し、イランの脅威を踏まえた治安状況を確認しました。

イスラエルの安全保障高官は評価会議後、「パニックになる必要はない。イランが攻撃するなら、準備して迎撃する時間は十分にある」と述べ、匿名の情報筋は、「アメリカ人やその他の勢力と最大限の協力がある……我々は最高の準備状態にある」と語っています。

この日、ガラント国防相は、ヘルジ・ハレヴィ国防軍参謀長と共に、アメリカ中央軍(CENTCOM)の長官マイケル・エリック・クリラ大将と会談し、軍および防衛システム含め、対応策を調整しています。

また、別のアメリカ国防当局者は、アメリカの軍事資産がこの地域に移転されているとした上で、「地域抑止努力を強化し、アメリカ軍の戦力防護を強化するため、追加資産をこの地域に移転する……我々の敵はイスラエルとアメリカの間に楔を打てると考えているが、実際はその逆だ。それらは我々を近づけ、我々の間のつながりを深めることになる。我々は肩を並べて戦っている」と語っています。

イスラエル軍のハガリ報道官は「イランによる攻撃の可能性に関する報告や声明を受け状況を検証し、さまざまなシナリオに対する計画を承認した」とテレビ放映された声明で述べ、イスラエル軍は民間人に対して警戒を怠らないよう求めています。

こうした中、インド、フランス、カナダ、オーストラリア、ポーランド、ロシアなどは自国民に対し中東地域への渡航を控えるよう要請。ドイツは、イランとイスラエルの緊張関係が急激に高まるリスクと、ドイツ国民がイランで恣意的に逮捕されるリスクの双方があるとして、自国民にイランから出国するよう呼びかけています。


3.やめろ


4月12日、アメリカのバイデン大統領は記者団から、イランへのメッセージについて問われ、短く「やめろ」と答え、イランが「遅かれ早かれ」イスラエルを攻撃する可能性があるとした上で、「我々はイスラエルの防衛に専念している。我々はイスラエルを支援する。我々はイスラエルの防衛を支援するが、イランは成功しないだろう」と述べました。

また、ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官も、イランによるイスラエル攻撃は現実的な脅威と述べています。もっとも、攻撃が起こり得る時期などの詳細については明らかにしていません。

この前日11日、アメリカ政府当局者は、イランによるイスラエルへの攻撃を想定しているが、アメリカを戦争に巻き込むほどの規模にはならないとの見方を示しています。

昨日のエントリー「中東戦争は回避されたか」でイランは、報復については制御されたものでありエスカレートさせないと、アメリカに伝えていることを紹介しましたけれども、アメリカの情報機関は、イランは地域の代理人を利用してイスラエルに多数の攻撃を仕掛ける計画を立てていることを非常に明確にしている、と見ているようです。

この「地域の代理人」の一つがヒズボラだと考えると、今回のミサイル攻撃は、やはりイランのイスラエルへの報復攻撃の一環であり、アイアンドームの破壊あるいは弱体化という、ある意味「露払い」をさせているのだと見ることもできます。


4.板挟みのバイデン


ただ、アナリストらは、バイデン大統領のイスラエルに対する「鉄壁の」支援は、地域戦争を回避するというアメリカの明言した目標と矛盾しつつあると指摘しています。

外交を推進するシンクタンク、クインシー研究所の執行副社長トリタ・パルーシ氏は、「バイデン氏はこれまで絶対に悲惨だった手法をさらに強化しようとしている」と語り、バイデン大統領は、イラン大使館を攻撃し、国際法に違反し、地域のアメリカ軍を危険にさらしたイスラエルを叱責すべきだったと述べています。

そして、バイデン大統領のイスラエル支援発言について「これによりイスラエルは緊張を緩和する動機を完全に奪われた」とイスラエル政府に褒美を与えていると説明し、「それは、制限を知らず、国際法を気にしないイスラエルの戦略を形作るのに役立った。なぜなら、彼らはバイデンが何があろうとも自分たちを支持すると理解するようになったからだ」と指摘しています。

パルーシ氏は、「大局的に見れば、バイデンには常に明らかに緊張を緩和する道があり、それはガザでの停戦を推進することだ……停戦があればイラク民兵による米国への攻撃も止まり、フーシ派の攻撃も止まり、イランとイスラエル、イスラエルとヒズボラの間のエスカレーションも止まっただろう」と、中東全域で高まる緊張に対する最善の解決策はガザ戦争を終わらせることだと強調しています。

また、シンクタンク国際政策センターの上級研究員シナ・トゥーシ氏は、危機に対するアメリカのアプローチについて「彼らは地域内の他のすべての当事者に自制を呼び掛け、イラン人には『エスカレートするな』と絶えず言い続けているが、一方でイスラエル人には全く罰せられずに行動するよう奨励している」と「偽善的で矛盾している」と述べています。

トゥーシ氏はイランが報復を誓約したのは、地域戦争を望んでいないテヘランの強い反応を引き起こすことなく、アメリカとイスラエルが危害を加えることができると信じているという認識によって部分的に動かされていると指摘。その一方、イランは確固たる線引きを望んでいると述べています。

更に、ジョン・ホプキンス大学国際情勢教授ヴァリ・ナスル氏は「現在、圧力はイランではなくイスラエルとアメリカにかかっています。そして……えぇ、イラン人が行動しないことを期待して、イランに向けられた脅迫的な発言がたくさんあります。しかし、最初に賽を投げたのはイスラエルだった……そして今、人々は結果となり得るものを避けようとしています……アメリカの立場は戦争の拡大を望んでいないということです。彼らはイランとの戦争に巻き込まれることを望んでいない。彼らはガザ戦争が地域戦争になることを望んでいない……彼らは水面下でイスラエルに何かを言っているのかもしれないが、表向きにはイランに対しても戦争をエスカレートさせないよう警告しようとしているのだと思います」とバイデン大統領が11月の大統領選再選を目指す中、どの国も外交政策において国内政治と闘わなければならず、「そアメリカでは、イスラエルの防衛に鉄壁の保証を与えることはすでに当然のことだ」と指摘しています。

そして、アメリカの対イラン外交を支持するワシントンD.C.に本拠を置く団体、全米イラン系アメリカ人評議会(NIAC)の政策責任者、ライアン・コステロ氏は、もしアメリカがイスラエルの報復攻撃に参加すれば、壊滅的な結果を招く可能性があるとし、「それは本当に無謀で、確実に地域全体を悲惨で血なまぐさい紛争に陥らせることになるだろう」と警告しています。

更に、コステロ氏は、これまでのアメリカの姿勢は抑止に重点があり、紛争解消には軽視されているとも指摘しています。

このように、すでにアメリカは、イスラエルへの無条件支援の提供とガザ紛争の拡大阻止という相反する2つの優先事項の間で板挟みになっているというのですね。

自分の再選のために、中東戦争を起こすのか、バイデン政権も瀬戸際に追い詰められているのかもしれませんね。




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