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1.新型インフルエンザ等対策政府行動計画改定案
4月16日、重大な感染症への対応をまとめた「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」の改定案が判明した。
現在の行動計画は2013年策定で、約10年ぶりの抜本改定となります。
改定案では、武漢ウイルスでの経験を踏まえ、感染症の科学的な知見が不十分な流行初期の段階でも、医療体制の逼迫の恐れがあれば緊急事態宣言などの「強度の高い措置を講じる」と明記。国民生活や社会経済活動への影響を勘案し、状況に応じて必要最小限の地域、期間とすることも盛り込みました。
武漢ウイルスの対応では、平時からの準備が不十分で初期に混乱した上、長期化を想定しておらず国民の行動制限を求める緊急事態宣言が繰り返されたことに批判がありました。
そこで、改定案では緊急事態宣言や、蔓延防止等重点措置を巡り、状況に応じた考え方を示し、初期でも強い対策で感染症を封じ込めることを念頭に対応。病原体の情報が集まってくれば、性質によって対応を変えるとしています。
政府は来週にも「新型インフルエンザ等対策推進会議」で議論し、パブリックコメントを経て、夏に改定される見込みとのことです。
ただ、これには批判の声もあり、免疫学者の宮沢孝幸氏は「効果があったのかの検証せずに」と疑義を呈し、ヤフコメでも「緊急事態宣言などの「強度の高い措置を講じる」とありますが、ワクチンも強度の高い措置に含まれそうだと思うのは私だけでしょうか? 国内のルールからこっそり変えていき外堀を埋め、パンデミック条約をスムーズに通そうとしてるのではないかとまで考えてしまう」などといった警戒の声もあります。
効果があったのかの検証せずに。
— 宮沢孝幸(Takayuki Miyazawa) (@takavet1) April 17, 2024
感染症流行初期でも緊急事態宣言 行動計画、10年ぶり抜本改定(共同通信)https://t.co/jYoV0L6s9a
2.国立健康危機管理研究機構
4月9日、厚労省は次の感染症危機に備える新たな専門家組織「国立健康危機管理研究機構」を2025年4月に創設すると発表しました。
これは、病原体などを研究する国立感染症研究所と、感染症の治療などにあたる国立国際医療研究センター(NCGM)が統合したものです。患者の診療と基礎研究などを一体的に行うと共に、感染症に関する国内外の情報を集約し、政府に科学的知見を助言するなどを目的としたもので、機構の略称は「JIHS(Japan Institute for Health Security)」。
ただ、アメリカ疾病対策センター(CDC)に倣って「日本版CDC」とも呼ばれているようです。
JIHSは、指揮命令系統を強化するため内部に「危機管理総局」を設置して対応にあたるとしていて、平時から国内外の感染症の情報を収集し、厚生労働省などに定期的に報告するとしています。
また、感染拡大時には研究開発や医療支援の部門などとも連携し、薬やワクチンなどの開発につなげるほか、診療対応の手引きなども策定するとしています。
準備委員会に出席した武見敬三厚労相は「感染症に関するあらゆる情報をつなぎ、革新的な研究や投資を呼び込む好循環を生む組織にしてほしい……新たな機構は世界を牽引する『感染症総合サイエンスセンター』であることが求められる。感染症に不安を抱くことのない社会の実現に向けた第一歩となるようにしたい……将来起こる感染症のパンデミックで日本が国際社会で重要な役割が担えるよう、支援と協力をお願いする」と話しました。
この会見について、近現代史研究家の林千勝氏は「武見氏以外の会見メンバーの表情が冴えない、目が死んでいる、憮然としている、空気が淀んでいる !」とツイートしているのが筆者には引っかかりました。
本当にJIHSが「感染症に不安を抱くことのない社会の実現」に資する機構であれば、もっと晴れやかな表情を見せてしかるべきだと思うからです。まるで、彼らが、次のパンデミックが目の前に迫っていることを知っているのではないかとさえ。
何故次のパンデミックがすぐ来ることを知ってるの? pic.twitter.com/BXFAOaS06U
— 高梨愛 (@vtmgnMPF12dEdKv) April 10, 2024
3.エボラウイルスの動物実験開始
3月27日、国立感染症研究所は、東京都武蔵村山市にある村山庁舎のBSL4施設で、治療薬の効果を確かめることを目的に、エボラ出血熱の原因となるエボラウイルスなどをマウスに感染させる動物実験を開始したと報じられています。
これは、この日行われた地域住民らを対象とした説明会で明らかにされたもので、国立感染症研究所によると、感染症法で最も危険度が高い「1類」に指定されている4種類のウイルスをマウスに感染させたとしています。
今後、既存薬などが活用できるかどうかを評価する実験を行うとしていますけれども、これについて、大阪肛門科診療所の佐々木みのり副院長は、「結構ビッグニュースだと思ったのだけれど、なぜかあまり話題になっていないのでブログで採りあげます」と述べ、次のように述べています。
・万が一、漏れたら大変です。当然、誰もが心配することでしょう。佐々木みのり氏によると、件の記事にはヤフコメがついていて、それらからいくつかを紹介しているのですけれども、その中で青太字にした箇所のくだりを拾うと次の通りです。
・近隣住民の方は説明会に参加したとはいえ、不安は拭いきれないと思います。
・ヤフコメにも同じような意見が溢れていました。
・原発事故と同じで何か起こっても「想定外だった」と言い訳しそうで怖いです。
・武蔵村山市にBSL4の施設があるということだけは頭の片隅に置いておきましょう。
・武漢の二の舞にならないよう厳重な管理をお願いします。
〇研究・実験は必要だろうが少なくとも厳重管理された離島などですべきだろう。このように管理や安全性について心配する声を取り上げ警鐘を鳴らしています。
〇生物兵器テロなどに利用されたらコロナ騒動どころで無いだろう。
〇空気感染で無い事だけが唯一の救いなだけで、流出すればパンデミックの可能性はある訳で。
〇感染したら数日でほぼほぼ死ぬから厳戒態勢に入れば感染拡大はしなさそう。
〇他に感染する前に宿主が死んでしまっては他に広まらない。
〇エボラやマールブルグといった危険なウィルスを保管しているのに村山庁舎の警備体制は民間警備員が常駐しているのが昼間2名・夜間1名というのはお粗末な気がする。警察官が常駐して原発並みの警備体制が必要だと思う
〇離島のほぼ無人島とか、人里離れた山奥に特殊施設作ってやるとか。
〇人口密集地でやるのは、仮に絶対安全でも周辺住民はストレスになりそうですよね。
〇実際のエボラも次の町や村まで一日(以上?)かかりそうなアフリカ大陸に比べて、密度が高い日本では万が一を考えたら封じ込めは難しそう…
もし、エボラウイルスが流出しようものなら、そのパニックは武漢ウイルスの比ではないかもしれません。
4.想定内の安全と想定外のリスク
もっとも、この武蔵村山市のBSL4施設については、国立感染症研究所は、地元住民に対し説明会やBSL4施設への見学会を何度も設けるなど、理解促進に努めています。
国立感染症研究所は、地元住民から受けた質問を纏め、それらに対し回答しているのですけれども、それらの中から管理や安全性に関わると思わるものを拾うと次の通りです。
平成27年2月17日 国立感染症研究所
質問1:近隣にウイルスを取り扱うBSL4施設があると、感染しないか心配です。
①BSL4施設で取り扱うウイルスは極めて微量で、厳重に保管されるため、通常、施設外の環境中にエボラウイルスが漏れることはありません。
②また、BSL4施設で取り扱うウイルスは、培地と呼ばれる液体の中に存在し、粉末状や霧状(エアロゾル)では存在しませんし、感染経路についても、ヒトとヒトとの接触による感染であり、空気感染・飛沫感染は起こりません。
③さらに、外気中では短時間で死滅しますので、BSL4施設からウイルスが飛散して感染することはありません。
質問2:エボラウイルス等が、外部に漏れる危険性はないですか?
①ウイルス及び感染させた動物はBSL4施設内の密閉されたグローブボックス内でのみ取り扱われます。
②グローブボックスの外にウイルス等が漏れない仕組みになっています。
・グローブボックス内の空気を含むBSL4施設内空気は、必ず高性能フィルター(HEPAフィルター)を二重に通してから排気されます。ウイルスが排気に含まれることはありません。
・BSL4施設で生ずる廃液は、高圧蒸気滅菌および薬物滅菌処理されます。
・ウイルスは培地と呼ばれる液中に存在し、空気中に飛散することはありません。
③感染研BSL4施設は定期的に点検されます。
質問3:震度6強以上の大地震動による災害が生じたら、建物が倒壊してウイルスが外部に漏れる恐れはありませんか?
①BSL4施設のある8号棟は、震度6強から7に達する程度の大地震動が発生しても国土交通省が示す施設の耐震性能において「構造体の補修をすることなく建築物を使用できる」水準となっています。
②このため、建物が倒壊することによりウィルスが建物の外部に漏れる恐れはないと考えています。
③なお、その他の災害も含め、万一ウィルスが建物の外部に漏れたとしても、質問1で説明しているとおり、ヒトに感染する恐れはありません。
質問4:エボラウイルスを取り扱う職員が感染し、周辺住民にも二次感染する恐れはないのですか。万一、職員が感染した場合、どのような対応を行うのですか?
①担当職員は、感染事故を起こさないように十分なウイルス取扱いの訓練・教育を行っています。
②さらに、ウイルスを取扱っている期間は、体温測定等担当職員の健康管理を厳重に行います。
③BSL4施設で取り扱うエボラウイルス等は、接触感染以外でヒトに感染することはありません。万一職員が針刺し事故等により感染したとしても、発熱など症状がでるまでの数日間はヒトに感染させることはないことから、周辺住民の皆さんに二次感染させることはありません。
④万一針刺し事故等により職員の感染が疑われる場合には、すぐに国立国際医療研究センター(新宿区)に搬送し、適切に治療がなされます。
質問5:感染研施設が、犯罪やテロの標的となる可能性があるのではないですか?
①これまで感染研がテロの標的となったことはありませんが、村山庁舎では、警備員の常駐や監視カメラ等による警戒を行うほか、警察等と連携した警備体制をとっています。
②さらに、平成26年度の補正予算により、監視カメラの増設等のセキュリティ強化を図ることとしており、今後とも、更なる警備体制の強化に努めてまいります。
質問7:BSL4施設は、人家から遠く離れた場所に設置するべきではないですか?
①BSL4施設は、ウイルスを厳重に封じ込める安全対策を講じた施設ですので、人家から遠く離れた場所に設置する必要はありません。
②また、BSL4施設には、患者の診断・治療への迅速な対応が求められるのに加え、研究者や施設管理等のための人員確保が必要なことから、その立地にはアクセスの良さも求められます。
質問9:これまで発生したエボラ出血熱の疑い例の検査はBSL3施設で実施できたようですが、感染した患者の検査のためだけならBSL4施設は不要なのではないですか?
①BSL3施設において実施可能な検査法は限られており、エボラ出血熱の患者であるかどうかの判定には有効ですが、感染が確定した患者の治療や退院判断のために必要な、より詳細な情報の把握には対応できません。
②感染した患者の治療や退院判断のためには、ウイルスそのものを検査することが必要であり、このような検査はBSL4施設でなければ実施できません。
③また、感染が確認された患者の血液等は、BSL4施設で取り扱うことが、安全対策のためには最善の方法です。
平成27年3⽉17⽇ 国⽴感染症研究所この質問回答の通りであれば、エボラウイルスが外に漏れる心配はなさそうですけれども、あくまでもそれは想定の範囲内である限りのことです。もし大規模テロとか、震度7強といった想定外の事態が起こればどうなるか分かりません。
質問2:WHOの文書(1997年)では、BSL4施設は住宅地に隣接してはならないとされているのではないのですか?
・①この文書は、病院内や研究所における検査室・実験室の設置に関するものです。その場合には、検査室・実験室は建物内では一般の人が出入りする区域から離れた場所に設置すべきであるとしています。
・②WHOは2004年にも同様の文書を出しており、建物内での検査室・実験室に関することと明確に述べています。
“Therelativelocationofthelaboratoryanditsancillaryareaswithrespecttoeachotherandtothebuildingsasawholemustbeconsidered.
-Whereverpossiblelaboratoriesshouldbesitedawayfrompatient,residentialandpublicareas,althoughpatientsmayhavetoattendandprovideordeliverspecimens”(WHO,1997)
質問3:諸外国のBSL4施設で、針刺しや実験動物の逃げ出し、ウイルスの拡散などの事故は発生したことはありますか?
・①諸外国のBSL4施設で実験動物が逃げ出したという報告はありません。
・②ただし、実験従事者が針刺し等により感染した、あるいは感染が疑われた事例はあります。
®1976年英国ポートンダウン研究所において,エボラウイルス感染モルモットの肝臓組織を誤って針刺しすることにより感染。回復している。
®1980年代ロシアにおいて、詳細は不明だが、マールブルグウイルスに感染し、1名死亡。
®2004年ロシアのBSL4施設でエボラウイルス感染モルモットからの採血時に針刺し事故により感染し死亡。
®2009年ドイツ(ハンブルグ)のBSL4施設でエボラウイルスの針刺し事故が報告されているが、感染したかは否かは不明。
質問4:国立感染症研究所では、過去、針刺しや実験動物の逃げ出し、ウイルスの施設外への漏洩などの事故が発生したことはありますか?
・①これまで、実験動物の施設外への逃げ出しや、ウイルスの施設外への漏洩が起きたことはありません。
・②また病原体に関わる実験中に起きた針刺しは、平成7年から26年の20年間に13件報告されましたが、実験者への感染は起きていません。
・③なお、戸山庁舎で実験中に季節性インフルエンザウイルスの培養液の飛沫が目に入り、実験者が結膜炎になったが抗体は上がらなかった例が1件あります。
質問5:遺伝子組換えなどにより、ウイルスが想像もできない危険なものに変異する可能性があるのではないですか?
・①遺伝子組換え実験は、様々な法律に基づいて規制されており、そもそもウイルスが想像もできないような危険なものに変異する可能性があるような実験を行うことはできません。
・②予想に反して病原性が高いウイルスができる可能性は完全には否定できませんが、そのような場合は、直ちに実験を止める義務があります。
・③国立感染症研究所では、国民の健康の向上を目的として、遺伝子組換え実験を行っていますが、法律を遵守し、研究内容の透明化(開示)に努めます。
質問6:放射線は空気中にあっても測定できるが、ウイルスは測定できず危険ではないですか?
・①放射性同位元素の測定は、放射線にも種類があり、簡単に測定できるものとできないものがあり、測定できないものは、気がつかずに口から入って内部被曝する危険性があります。
・②そもそも、前回のご質問でも回答いたしました様に、エボラウイルスは本来、空気中に漂っているわけではありませんので、空気中のウイルス量の測定に意味はありません。
・③なお、放射性同位元素には、自然界に長期間存在するものがあり、たとえばセシウム137は半分の量になるまでに約30年かかります。一方、ウイルスは超低温で凍結保存すれば安定ですが、熱、光、乾燥に弱く速やかに感染能力を失います。
質問7:建物が壊れた場合、どのような行為をすれば人へ感染する可能性がありますか?
・①前回も述べましたが、BSL4施設の建物が倒壊することによりウイルスが建物の外部に漏れ感染することはないと考えています。
・②仮に建物内部でウイルスが安全キャビネット外に出るようなことが起こったとしても、ウイルスは液体の中に存在しエアロゾル(飛沫核)では存在しないので、空気感染・飛沫感染は起こりません。
・③仮にBSL4施設が倒壊したとして、それにより人が病原体に感染するのは、直後にその場所に人が行き、感染予防(ゴム手袋やゴーグル等の装着)なしで、病原体が含まれるサンプル等に自ら直接触れる場合しかないと考えられます。
質問9:一番東側の施設の排気口(24時間稼働)が住宅地の方向を向いており、不安だという声がありますが、安全なのでしょうか?
・①ご指摘の施設は、4号棟で主に実験動物を飼育している建物です。
・②東側(住宅側)に出ているダクト2台は、1階の機械室内に空気を送り込む吸気口となっており、排気しているものではありません。
・③また、吸気口側の音量を計測すると70dBとの測定値であるため、2台のファンを停止いたしました。
・④なお、将来的には建物の北側に吸気口を新たに設置する工事を予定しています。
先述した、佐々木みのり医師は「原発事故と同じで何か起こっても、想定外だった、と言い訳しそうで怖いです」と述べ、記事のヤフコメにも「警察官が常駐して原発並みの警備体制が必要だと思う」といった意見もあります。
政府が次のパンデミックを想定した動きを見せている中、こんなタイミングでエボラの動物実験を始めた、と報じられると何か裏があるのではないかと疑ってしまいそうになります。
それでも、BSL4施設や感染研に対し、国民が厳しい監視の目を絶えず注ぐことで、それがプレッシャーとなって、より安全管理に配慮せざるを得なくなる可能性はあると思います。
現地住民もそうでない人も、この手の研究には、関心を持ち、常に厳しい目線で注意を促していくことも必要ではないかと思いますね。
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