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1.イスラエルのイラン攻撃
4月19日、アメリカの複数のメディアはアメリカ政府当局者の話として、13日から14日にかけてイランによる大規模攻撃に対する報復措置として複数のミサイルを発射したと伝えました。
CNNテレビは、政府当局者の話として、攻撃の対象となったのは、核関連施設ではないとしていると報じています。
一方、イランのメディアはイラン中部のイスファハン州で爆発音があり、無人機を迎撃したものだと伝え、核施設を含めた重要施設に被害は出ていないとし、イラン国営通信もこれまでのところ、上空からの大規模な攻撃や爆発は報告されておらず、ミサイル防空システムによる迎撃は行っていないと伝えています。
19日午後の段階では情報が錯綜しているのですけれども、ロシアのスプートニクは、現時点での各メディアの報道で分かっていることとして次のように述べています。
イランメディアによると19日、中部イスファハンの空港近くで少なくとも3回の爆発があり、軍の対空防衛システムがドローンに対応した。国営IRNA通信は、対空防衛システムは国内の他の複数地域でも作動したと伝えた。これら報道を受け、19日の市場はドルが幅広く上昇し、金は1%上昇、S&P先物は1%下落しました。北海ブレント原油先物も2%上昇して1バレル=88.86ドルと上昇しました。
米メディアは当初、イランの施設を #ミサイル攻撃 と伝えていたが、イラン側は否定。爆発音はイラン軍の対空防衛システムによるもので、損害も発生していないとしている。
イランのタスニム通信は、イスファハンのイランの核施設は、完全に安全な状態にあると伝えた。その後、米CNNは米高官の話として、「イランの核施設はイスラエルの攻撃目標ではなかった」と報じた。
米ブルームバーグ通信によると、#イスラエル は今後24~48時間以内にイランへの攻撃を行うと米側に予告していた。
米FOXニュースは軍事筋の話として、攻撃は「限定的だった」と指摘。また、CNNは米国防省関係者の話として、「米国はイスラエルのイラン攻撃を支援しなかった」と伝えた。
イラン攻撃が報じられるなか、イスラエル北部でも防空警報が発令された。
映像は防空システムが作動したイラン北部のタブリーズの様子として、タスニム通信が紹介したもの。19日早朝に不審な飛行物体が撃墜されたが、その後の状況は落ち着いているという。
2.イスラエルの面子
イランメディアもアメリカメディアも、攻撃は限定的だったと報じていますけれども、レバノンのベイルートを拠点とするニュースメディア「ザ・クレイドル」は、16日付の記事でアメリカ政府が外交の裏ルートを使って、イランによる大規模な報復攻撃を受けてテルアビブが「面子を保つ」ことを可能にする、イスラエルの攻撃に報復しないようテヘランに要請していたと報じています。
件の記事の概要は次の通りです。
・イランの軍事安全保障関係者が『クレイドル』紙に独占的に明かしたところによると、今週末のイランによるドローンとミサイルによる報復攻撃を受けて、アメリカはイスラム共和国に連絡を取り、イスラエルに「面子を保つための象徴的な攻撃」を許すよう求めたという。アメリカは、イスラエルのイランへの報復攻撃を限定的で"象徴的"なものにするために、イランに要請し、また西側メディアにリークしたとのことですけれども、なにかアメリカが「使いぱしり」のように見えなくもありません。少なくとも往年の威厳は全く感じられません。
・「イランは、面目を保つために象徴的な攻撃を政権にさせるよう仲介者からメッセージを受け取り、イランに報復しないよう要請した」と、匿名を条件にこの情報筋はクレイドル紙に明かした。
・テヘランは仲介者から出された提案を "完全に拒否 "し、イスラエルによるイラン国内への攻撃には断固とした即時の対応がとられると改めて警告した。
・この返事は、外務省ではなく、イスラム革命防衛隊(IRGC)の職員がテヘランのスイス特使に直接伝えたものだという。クレイドル紙の情報筋によれば、IRGCが直接返信することにしたのは、「アメリカに強い警告を送るため」だという。
。「イランは、米国とイスラエル政権の統合レーダー網と対ミサイルシステムをすべて困惑させることに成功した。イランの軍関係者は、「アメリカは、この地域を最大限に守るために、駐機していた衛星を起動させたが、惨敗した」と付け加えた。
・今回の暴露は、アメリカの国防当局者が西側メディアに対し、イスラエルがイランに対して「限定的な対応」をすることを期待していることを明らかにしたものである。
・とはいえ、米政府高官は、イスラエルの分裂した戦争内閣内での議論が続くなか、テルアビブは国防総省に「最終決定」を説明していないと強調した。
・「アメリカは軍事的対応に参加するつもりはない。しかし、彼らはイスラエルが事前にワシントンに対応計画を伝えることを期待している。
・イスラエルは、ダマスカスにあるイラン領事館をイスラエルが空爆したことへの報復として、イスラム共和国が数百発の無人機、弾道ミサイル、巡航ミサイルを発射した今週末のイランの作戦に対応すると公言している。
・イスラエル陸軍参謀総長のハレヴィ中将は日曜日、イスラエル南部のネヴァティム空軍基地から発言した。
・イランのアリ・バゲリ・カニ外務副大臣は月曜夜、国営テレビに対し、イスラエルからの報復に対するテヘランの対応は「数秒のうちに行われるだろう」と語った。
3.表舞台に出たイランイスラエル戦争
今回のイランとイスラエル双方の報復攻撃について、BBC国際編集長のジェレミー・ボウエン氏は、「イスラエルとイランの戦争、陰の世界から表舞台に」という記事で次のように述べています。
イスラエルはイランに対して自衛する方針だが、西側諸国は中東全域の戦争を避けようとしている。西側諸国はイラン・イスラエルの対立が中東戦争にエスカレートしないことを望んでいるとしながらも、仮に今回の攻撃で双方一区切りとしたとしても、イランとイスラエルが互いに相手の領土を直接攻撃したという新しい前例を作ってしまったと警告しています。
イラン中部イスファハンで夜中に起きたことについて、イラン当局はたいしたことではなかったという態度をとっている。
イラン当局は攻撃を否定し、国営メディアは小型ドローンをネタにした面白おかしい写真を投稿している。
他方、アメリカ当局者は攻撃があったと話す。そのため、ここでいくつかの疑問が生じる。とりわけ、イラン国内の強硬派は、反撃しようとするだろうか。そしてイスラエルは、追加攻撃の用意があるのだろうか。
イランは現地時間14日未明、イスラエルに向けてドローンやミサイルを発射した。イランがイスラエルを自国領から直接攻撃したのは、前例のないことだった。
19日未明から早朝にかけてのイランへの攻撃は、これに対する反撃だったのかもしれない。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、アメリカのジョー・バイデン大統領との関係をこれ以上悪化させずに、反撃する方法を模索した可能性がある。
バイデン大統領はすでにイスラエルに対して、イランに攻撃されてもイスラエルの「勝ち」なのだから「勝ちを勝ちとして受け止める」よう求め、反撃しないよう促していた。
イギリスをはじめイスラエルに協力する他の諸国も、公の場と外交チャンネルを通じて、イスラエルに自制を求めていた。
イスラエルがもし今回以上にイランに反撃しないのならば、ネタニヤフ戦時内閣にいる元軍幹部たちがそれで納得するのか、それが疑問となる。戦時内閣にいる元将軍たちは、強力な反撃が必要だと主張していたといわれているだけに。
【中略】
しかし、仮に今日の攻撃がこの一連の危機の現時点での区切りになるとしても、新しい前例が作られてしまった。
イランはイスラエルを直接攻撃した。そして、イスラエルはそれに自らも直接攻撃で反応したのだ。
イランとイスラエルの対立が長年続くこの地域で、しばしば対立を律する「ゲームのルール」と呼ばれるものが、変わったことを意味する。
両国が隠然と続けてきた長い戦争は、ついに陰の世界から表舞台に出てきたのだ。
つまり、今後また、ぞろ対立したとき、相手を直接攻撃するリスクが生まれたということです。
4.イランの核ドクトリンが変わる条件
では、今回のイスラエルの攻撃で、イランの更なる報復攻撃があるのか。
4月18日、イラン核センター保護治安部隊の司令官アハメド・ハク・タラブ准将は、イスラエルがイランの核施設の1つを攻撃することを決定した場合、イスラム共和国は核原則を「改訂」する可能性があると述べました。
タラブ准将は、「シオニスト政権が我が国の核センターや核施設に対して行動をとろうとすれば、我々の反応に直面することになるだろう……イラン・イスラム共和国の核原則と政策を修正し、過去に発表された検討事項から逸脱することは可能であり、考えられる」と強調しました。
更にタラブ准将は、テルアビブに対し、核施設は「特定されており、すべての標的に関する必要な情報は我々が自由に使える」とし、革命防衛隊は「特定の標的を破壊するために強力なミサイルを発射する引き金を引いている……シオニスト政権がイランに対して侵略行為を行った場合、軍から受ける打撃は『真実の約束』作戦のように歴史に記憶されるだろう」と述べています。
また、同じく18日、イランのアブドラヒアン外相はニューヨークでのCNNの独占インタビューで「イスラエル政権が再び冒険主義に乗り出し、イランの利益に反する行動をとった場合には、我々の次の対応は即時かつ最大限のレベルで行われるだろう」と語りました。
冒頭で取り上げた、イラン中部のイスファハン州で爆発音があったと報じられたのは、アブドラヒアン外相のこの発言の数時間後でした。
今のところ、イランは「即時かつ最大限の」報復を行うでもなく、先述したBBCのジェレミー・ボウエン氏が述べているように「たいしたことではなかった」という態度を見せています。
CNNは、アメリカ政府高官の話としてイスラエルがアメリカにイランの核施設は標的にしていない、と伝えたと報じ、19日、国際原子力機関(IAEA)は、イスラエルがイランを攻撃したとの報道に関連し、イラン核施設は被害を受けていないと確認し、引き続き状況を注視すると発表していますから、イランの核施設には被害はないようです。
あとは、イランがイスラエルのこの攻撃が「象徴的」かつ「限定的」なものとして、スルーしてくれるかどうか。
緊張の日々が続くことは避けられそうもありませんね。
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