岸田総理の連邦議会演説

今日はこの話題です。
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1.大絶賛された岸田総理の連邦議会演説


4月12日、アメリカを公式訪問した岸田総理は、日本の首脳としては約9年ぶりに、連邦議会上下両院の合同会議で演説を行いました。

演説は大盛況で、20回近いスタンディング・オベーションが起きるなど、多くの米議員の心を掴んでいました。

共和党のステファニー・バイス下院議員は、岸田氏がウクライナ支援で米国と連携していく姿勢を示したことなどに関し「米市民が聞く必要があるメッセージだ」と強調。共和党の保守強硬派の反対で軍事支援の追加予算が未成立の中、支援の重要性を説いた岸田総理をたたえ、民主党のクリス・クーンズ上院議員はウクライナ支援などを巡り「われわれは今、政治的な分断や相違を抱えている」と述べ、岸田総理の演説は「非常にタイムリーで力強かった」と評価しました。

また、共和党のフレンチ・ヒル下院議員は「米国のリーダーシップは不可欠だが、米国だけでやる必要はない」とのメッセージは、「米外交が80年もの間望んできたものだ……見事な演説で素晴らしかった……日米の安全保障、外交、経済における関係は力強い超党派の支持で築かれている」とも語りました。

更に共和党のマイク・ジョンソン下院議長は声明で、「安全で安定したインド太平洋地域に向けたビジョンを聞けて光栄だ」と賛辞を述べています。

facebookで200万人近いフォロワーを抱える、名門ボストン大学の歴史学の教授のヘザー・コックス・リチャードソン氏も、岸田総理が演説の中で、「アメリカはこれまでに世界の国際秩序を作り、世界の自由と民主主義を擁護し、より良い世界への取り組みを果たすために、 尊い犠牲を払った」とアメリカの功績に言及することで、「『アメリカ人とは一体何者なのか』を、アメリカの議員たちに思い出させようとした」と、現在のアメリカの議員が失いつつあるものを、岸田総理が呼び起こそうとした事を高く評価しています。

また、米三大ネットワークのNBCとCBSは、岸田総理の演説のフル動画をYouTubeに投稿しており、ここでも絶賛の声が米国やアジア地域から殺到しているようです。

また、テレビプロデューサーのデーブスペクター氏も、BSフジプライムニュースで「完璧だったと思いますよ、米国民の一部は『トランプイズムは孤立主義』と警鐘をならしています。他方で、共和党議員の中でも良識のある人は演説の内容を"なるほどな"と納得して聞いていたと思います……そういう意味では、完璧だったと思います」と述べ絶賛しています。




2.こういう言い方なら一緒に働こうと思えるよ


件の議会演説全文は官邸のサイトに掲載されていますけれども、前述したリチャードソン教授やデーブスペクター氏が例示した箇所はおそらく次の下りだと思われます。
米国は、経済力、外交力、軍事力、技術力を通じて、戦後の国際秩序を形づくりました。自由と民主主義を擁護し、日本を含む各国の安定と繁栄を促しました。そして必要なときには、より良い世界へのコミットメントを果たすために、尊い犠牲も払ってきました。

およそ人類は、権威主義的な国家に抑圧されるような、つまり、追跡され、監視され、自己の内心の表現を否定されるような生き方はしたくない。米国の政策はそのような前提に基づいていました。

米国は、自由こそが人類にとっての酸素のようなものだと信じていました。

この世界は、米国が引き続き、国際問題においてそのような中心的な役割を果たし続けることを必要としています。

しかし、私は今日、一部の米国国民の心の内で、世界における自国のあるべき役割について、自己疑念を持たれていることを感じています。

この自己疑念は、世界が歴史の転換点を迎えるのと時を同じくして生じているようです。ポスト冷戦期は既に過ぎ去り、私たちは今、人類史の次の時代を決定づける分かれ目にいます。

米国が何世代にもわたり築いてきた国際秩序は今、新たな挑戦に直面しています。そしてそれは、私たちとは全く異なる価値観や原則を持つ主体からの挑戦です。
13日、togetter.comでも「岸田総理の演説、アメリカ人に良い意味でぶっ刺さり大激論を引き起こす」と纏められています。

いくつか拾うと次の通りです。
2024-04-13 08:28:48 Mi2 @mi2_yes
演説終了後、米議会議員が列をして岸田総理サイン会、記念撮影する光景が続いた。

2024-04-12 11:29:54 Mi2 @mi2_yes
米議会で岸田文雄総理大臣が演説
日本の国会でこんな拍手を受ける事ないと笑いとって始まった。

・中国の軍事動向は、今までにない最大の戦略的な挑戦だ。挑戦は続いてる
・たった一人で国際秩序を守る理由はない。米国と肩を組んで立ち上がっている
・日本は控えめな同盟国から強い同盟国へ自ら変革

2024-04-13 12:37:26 Patrick Fox @RealCynicalFox
PM Kishida’s speech struck a very precise tone of unity. When compared to the rhetorical abuse the US has been receiving from some corners of Europe, it was a breath of fresh air.

“We know you’re doing a great deal & we’re with you.”

VS

“Give us more or you’re betraying us.”


(機械訳)
岸田文雄首相の演説は、非常に的確な一致団結のトーンを打ち出した。 米国がヨーロッパの片隅から受けている暴言と比較すれば、それは新鮮な息吹だった。

"我々は、あなた方が素晴らしいことをしていることを知っている。

VS

"もっとよこせ、さもなくば我々を裏切るのか"

2024-04-13 02:23:26 剣kenn @hskenncutter
おお…

やっぱり岸田総理の演説がアメリカ人に刺さってるじゃないか。ウクライナ支援についてヨーロッパから口汚く非難されることにウンザリしているアメリカ人が、岸田総理のように言ってくれれば我々も一緒に働こうと思うよ…みたいな議論をしている‼️

2024-04-13 12:30:51 ベルモン太(カクレカメ) @BeturaGrossa
岸田さん
人心掌握術がすごい
アメリカ国民感情を味方に付けたら最強だ
次の大統領選どっちに転んでも日本がイニシアチブ取れる

2024-04-13 01:41:01 smoking troutangler @pipetrout
@mi2_yes 外交儀礼にしても大統領一般教書演説の時の反応との温度差が信じられない位の歓待ぶりに驚く
特に共和党議員もニコニコしているのは久し振りに見る気がする

2024-04-13 08:32:15 剣kenn @hskenncutter
岸田総理演説へのアメリカ人の反応おもしろいな!

米国の資源だって有限なのに、ウクライナを支援しないのは裏切り行為だみたいに言われることに苛立っている。ところが岸田総理はそういう言い方をしなかったので好感されている。「モノには言い方ってものがあるだろう」と。なるほどねー。

2024-04-13 12:44:37 剣kenn @hskenncutter
「言い方を心得ている」岸田総理の演説は、アメリカ人にとって新風を吹き込むような印象を与えたらしい。このことについて「岸田総理は明らかにアメリカの政治をよく理解している」と評している人もいた。おもしろいもんだなあ。

2024-04-13 12:50:51 あおば @3yVlmx89msOsPSc
「強者の苦悩」にかつてボッコボコに殴り殺された側が寄り添い、「それは傀儡になってるわけでもなく自分の国益にもなるから」とも自己主張する
「お前が始めた物語だろ、俺らのためにも逃げんなよ」をここまで上手く言える、言えた国が他にあるか?
本当にとんでもないスピーチだった

2024-04-13 14:42:57 S.W. Humanism🇷🇴 @mattariura
『反米的な文脈で長年罵倒されてきた』アメリカの側に寄り添った岸田さんのスピーチの価値は大きいと思います。

岸田演説の

>一部の米国民の心の内で、世界における自国のあるべき役割について、自己疑念を持たれていることを感じています。

のくだりが米国で大議論を引き起こしている‼️

2024-04-13 13:26:03 剣kenn @hskenncutter
一切名指しせずに米議会の孤立主義者たちを批判してのけたとか、同盟国に男らしくなれと言われるとは(´ω`)トホホ…とか、共和党側からも「こういう言い方なら一緒に働こうと思えるよ」とか、本当に面白い反応だらけだ。
アメリカ国内でも、「岸田総理の言い方が上手かった」、とか「アメリカの政治をよく理解している」などと評価され、特に「一部の米国民の心の内で、世界における自国のあるべき役割について、自己疑念を持たれていることを感じています」の一文が大議論を呼んでいると紹介しています。

おおむね、アメリカには絶賛だったようです。


3.Selfーdoubt


一方、アメリカで大議論を呼んでいるという「一部の米国民の心の内で、世界における自国のあるべき役割について、自己疑念を持たれていることを感じています」の一文をもって、まったく評価に値しないと批判する見方もあります。ジャーナリストの山口敬之氏です。

件の一文は英語原文だと次のようになっています。
And yet, as we meet here today, I detect an undercurrent of self-doubt among some Americans about what your role in the world should be.
岸田総理が「自己疑念」と述べた部分は英語で「self-doubt」という言葉なのですけれども、山口氏によると、この言葉は英語では「もの凄く悪い、自信のない状態を示す」のだそうで、この前後の下りと合わせて読めば、ウクライナ支援予算に反対し、止めている共和党を批判したことになると指摘。日本の代表として、民主、共和のどちらにも偏ってはいけないというタブーを侵していると批判しています。

山口氏は、「自己疑念」なんて言い方は、日本語としてもおかしいだけでなく、外務省の英語使いでも絶対に言わないと述べています。

そして、この「self-doubt(自己疑念)」を使うことで、アメリカの分断の片方に日本の首相が加担することになるとした上で、岸田総理がバイデン政権の犬であることの証明だとし、この演説原文はバイデン政権側の人間が書いた文章を翻訳したのを読んだだけではないのかと厳しく批判しています。

この通りだとすれば、アメリカでウケたというのは、主に、民主党側あるいは民主党寄りの人達であって、分断のもう片方である共和党側ではそうでもないか可能性が出てきます。

実際、山口氏は岸田総理が「self-doubt(自己疑念)」という言葉を吐いたとき、共和党のマイク・ジョンソン下院議長が「おい何言ってんだこいつは」と、頭に来ている顔をしていると指摘しています。




4.同盟国である中国


この議会演説前日の4月10日、岸田総理はバイデン大統領と首脳会談を行い、その後共同記者会見を行っています。

そこで、日中外交に関する見解を問われた岸田総理は「同盟国である中国と、失礼…」と、「同盟国である米国」と発言すべきところを誤って発言する場面がありました。岸田総理はすぐに間違いに気付き、慌てて言い直したのですけれども、同行筋からは、非公式夕食会、歓迎式典、首脳会談などと行事が目白押しであることから、疲れが出たのではないかとの見方も出ていたようです。

同盟国アメリカを中国に言い間違えるなど、普通に考えると有り得ないことです。

最初筆者は、先述の山口氏の指摘を下敷きに、あまりにアメリカが岸田総理をポチ扱いにするのに、岸田総理がキレて、「あまりに馬鹿にするなら、裏切って中国につくぞ」と警告する意味で、わざと口を滑らせたのでないかと思いました。

そこで、件の発言前後の映像を確認しました。発言は次の通りです。
共同通信の中久木です。 岸田首相とバイデン大統領に質問します。 日米首脳会談では、中国による武力や威圧による一方的な現状変更の試みに対する強い反対を確認し、対応能力の強化で一致しました。

現在の状況下で、日米は防衛力を強化すべきでしょうか? 中国は軍拡に夢中になり、強圧的な行動を強めるかもしれない。 それが(聞き取れない)リスクだ。 分断を避けるために、日米はどのように対応すべきでしょうか?

岸田首相:(通訳しながら)それでは、まずその質問にお答えします。 今回の日米首脳会談において、日米両国が法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を断固として守り、強化すること、そして日米両国がグローバル・パートナーとしてそのために協力していくことを確認しました。

中国に関する課題については、武力や強制による一方的な現状変更の試みに反対するというご指摘も含め、日米がグローバル・パートナーとして緊密に連携していくことで一致しました。

また、先に申し上げたように、我々は中国との対話を継続し、中国と協力して共通の課題に取り組んでいく。 そして、大統領と私は、そのような対話の重要性についても確認した。

同盟国である中国と、…失礼、同盟国である米国との確固とした信頼関係に基づき、我々は中国に対し、大国としての責任を果たすよう求め続けていく。

私が一貫して掲げてきた日本の方針は、中国との相互の戦略的関係を包括的に推進し、双方の努力によって建設的で安定した日中関係を構築することである。 これは、私が一貫して堅持してきた立場である。 今後も、あらゆるレベルで中国との緊密なコミュニケーションを求めていきます。

私からは以上です。
映像を見る限り、本気で言い間違えたように見えます。ただ、その直前の中国と対話するの下りで、岸田総理は演台に掛けた両手の指をしきりに動かし、また人差し指で鼻の下を一回擦っています。

筆者は、2022年06月23日のエントリー「しどろもどろの岸田総理と破壊力満点の立花党首」でも取り上げましたけれども、岸田総理は自身の心理状態が割と動作に出る方でなのではないかと思っています。

心理学では手で鼻をさわるのは、「ウソ」をついているときで、手をしきりに動かすのは頭をフル回転させて考えていることを表しているとされています。

これはただの邪推かもしれませんけれども、同盟国は中国と言い間違える直前の、中国外交に関する部分で鼻を触ったことを考えると、日米首脳会談でバイデン大統領から中国に対するなんらかの示唆を受け、それを思い返しているうちに上の空となって、そのまま「同盟国である中国」と言ってしまったようにも見えます。

なんとなれば、アメリカの要求にアタフタしているのではないかとさえ。

報道では、日米首脳会談でより強固な日米関係を構築する云々となっていますけれども、裏には何かあったかもしれないと頭の片隅に置いておいてもよいかもしれませんね。




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この記事へのコメント

  • naga

    アメリカ議会での演説は、演説させてくれる代わりにウクライナへの援助で武器支援はできないのだから金を出せ、と言われて演説させてもらったんじゃないかと思ってしまいます。
    2024年04月23日 17:25