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1.止まらぬ円安
円売りの動きが止まりません。
4月27日、外国為替市場で円相場が1ドル=158円台に下落しました。およそ34年ぶりの円安水準です。
これは、前日26日に日本銀行が現在の金融政策を維持することを決めたことを受け、日米の金利差が当面縮まらないとの見方が広がり、より高い金利で資金を運用しようと円を売ってドルを買う動きが強まったからだと見られています。
これまで鈴木財務相や財務省は円安に対し口先介入を繰り返していました。
1ドル=152円台後半で取引されていた4月11日午前、財務省の神田真人財務官が記者団に「過度な変動は国民経済に悪影響を与える。足元の動きは急であり、行き過ぎた動きに対してはあらゆる手段を排除せずに適切な対応を取っていきたい」と述べ、その後に鈴木財務相も同様のコメントをしたものの相場は反転せず、午後には更に一段安となり153.28円で取引を終えています。
4月16日には、円相場は154円台に突入。鈴木財務相は閣議後記者会見で「必要に応じて万全の対応をしていきたい……行き過ぎた動きなのか、急激な動きなのかについて見解を言うことはふさわしくない」とコメントしたのですけれども効果はありませんでした。
26日には1ドル155円台後半まで値下がりし、鈴木財務相は、閣議のあとの記者会見で、「為替政策については、タイミングや具体的な手段について述べることはできない。政府としては、引き続き、しっかりと為替市場の動向を注視し、万全な対応を取っていきたい」と述べ、円安が日本経済に与える影響について「プラス面とマイナス面の両方があるが、今は物価高騰対策が重要な政策課題であり、マイナス面への懸念を持っている」と述べました。
26日は156.50円で取引を終えたのですけれども、翌27日には一気に158円台です。よほど日銀の金融政策維持決定が効いたということだと思います。
2.非常に稀かつ例外的な状況
4月25日、アメリカのイエレン財務長官はロイター通信の公開インタビューに応じました。インタビューでの主な要旨は次の通りです。
・インフレをFRBの目標2%に戻すには失業率の増加や経済の他の分野の冷え込みが必要であることを示すものとは考えていない。ここでのファンダメンタルズはインフレが正常な水準に戻り続けていることと一致しているインタビューでイエレン財務長官は、日本円の価値がファンダメンタルズから外れているかと質問されたのですけれども、直接の回答は避け、「非常に稀かつ例外的な状況」でのみ行われるべきだ、と、事実上の牽制を入れています。
・インフレ対策が引き続きジョー・バイデン大統領の最優先事項である。
・私が最も注目しているのは個人消費と投資支出の強さだ。最終需要のこれら2つの要素は、昨年の成長率と一致しており、米国経済は引き続き堅調な強さを示している。
・ドル高は米国の成長と金融引き締め政策のもう一つの副産物だ
・為替介入は市場が過度のボラティリティで無秩序な「非常にまれかつ例外的な状況」にのみ行われるべきだ
・全ての主要国に期待するのは、為替レートが市場で決定されるということであり、これは主要7ヶ国(G7)のコミットメントでもある
・中国の政策立案者らは電気自動車、太陽光パネル、その他のクリーンエネルギー製品の過剰な産業能力に問題があることを認めているが、それに対処する必要がある
・この問題は先週、ワシントンで開催された国際通貨基金と世界銀行の春季会合に合わせて行われた米中会談で集中的に議論された
・中国の過剰生産は米国、欧州、日本、メキシコ、インドの製造業者の存続を脅かしているが、この問題は1日や1週間で解決されるものではない
・したがって、中国が懸念を認識し、それに対処するために行動を開始することが重要だ。しかし、私たちはその間に私たちの業界が消滅することを望んでいない。したがって、私は何もテーブルから外したくない
・凍結されたロシア中銀資産から得た収益をウクライナ支援に活用するという主要7ヶ国(G7)財務相らが協議中の提案について、資産を完全に没収することなく実現可能だ。
・これは資産差し押さえを懸念する国々が広く支持できるアプローチであり、利息の一部は融資などを通じて前倒しできる可能性がある
・このアプローチは6月の首脳会議に先立ってG7諸国で議論されているいくつかの選択肢の1つである
日本にとっては、先述の神田財務官が指摘したように「足元の動きは急で、行き過ぎた動き」と見ていて、介入を考えているのなら、イエレン財務長官のいう「非常に稀かつ例外的な状況」との擦り合わせがそれなりに必要になるかもしれません。
3.円安は日本経済にプラスになる
中長期でみれば、今の円安トレンドは2022年3月くらいから始まっているのですけれども、2022年4月、安倍元総理は、当時120円台だった円安について、党の議員連盟の会合での挨拶で「今の水準で右往左往する必要は全くない。日本のように輸出の工業力があり、外国からの観光客が再び戻ってくれば、円安は、日本にとって間違いなくプラスの環境になる……金融政策を為替に活用しないことが基本的な考え方であり、円安に金融政策で対応することは間違いだ。金利を上げて経済を冷やせば、スタグフレーションに入り、経済が非常に惨めになることは明らかだ」と、日銀が金利上昇を抑え込むために実施している措置を支持する考えを強調していました。
この年の6月には円相場は130円台に突入しているのですけれども、2022年6月14日ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演した嘉悦大学の高橋洋一教授は円安について次の様に述べています。
飯田)アメリカの場合は、インフレ率をどうするかということが政策課題になってきているのですか?高橋教授は円安は日本経済に対し輸出入の差し引きでプラスになるとし、輸出の恩恵を受けにくい中小企業対策、内需対策をすべきだと述べています。
高橋)全体で8%くらいですからね。下がると思っていたら、5月に少し上がってしまった。
高橋)日本で「円安」と盛んに言うではないですか。報道を見ると「とても悪いことなのか」と思いますが、ファクトとしては、円安になると実質国内総生産(GDP)は上がるのです。自国通貨安は自分の国には有利であり、他の国には不利ということで、「近隣窮乏化」などという言い方をします。近隣窮乏化というのは、周りの人には迷惑な話であるということです。
飯田)周りの国にとっては。
高橋)日本国内で批判が出るということが、私は不思議ですね。普通は海外から批判が出るのです。「日本だけがよくて、他の国は大変だよ」という文句が来るのです。
飯田)お前だけよくていいよなと。
高橋)そういう文句がくるのだけれど、いまのところきていないのはラッキーです。10%くらい円安になるとGDPは1%くらい上がるので、有利な話なのです。こういう話をすると「中小企業は」という話題になりますが、為替というのは、中小企業には円安は不利です。ただし、エクセレントカンパニーには有利です。
飯田)超優良企業には。
高橋)輸出比率が全然違うためです。輸出は世界市場で行わなければいけないから、比較的エクセレントカンパニーには有利なのです。輸入は誰でもできるのですが、中小企業は輸出比率が低い。そういう意味では、円安の恩恵を得にくいのは間違いありません。それでも、プラスマイナスを合わせるとプラスの方が大きいので、GDPが増えるということです。
高橋)GDPが増えるのだから、政策対応は簡単なのです。円安で大変な輸入業者や中小企業への対策をすればいいということです。
飯田)大企業の収益が増える、イコール税収も増えるので、その部分を再分配すればいい。
高橋)例えば、企業収益が過去最高の企業が多いはずなのです。ということは法人税収も大きくなる。それを再分配すればいいので、政策対応は簡単です。GDPが減るような状況での政策対応は大変だけれど、GDPが増えるときは簡単です。
高橋)「円安だ」と大騒ぎしていますが、「GDPが増える」ということはどこも書かないのです。不思議です。内閣府の経済モデルでも言えるし、世界のOECDやIMFの経済モデルでも同じです。
飯田)経済モデルは。
高橋)IMFの経済見通しだと、今年(2022年)の予想は日本だけが去年より成長率が高くなるのですよ。それは円安だからです。
飯田)ニュースの見出しとしては「東京市場で円・株・債券トリプル安」ということを言っていまして、1ドル=135円台前半までいきました。1998年10月以来、およそ24年ぶりです。日経平均株価は昨日(13日)、800円を超す値下がりとなり、2万7000円割れ。長期金利の10年国債利回りが年率で0.255%まで上昇。価格は下落したということですが、日銀の目安を超えてきたではないかというようなことも言われています。産経新聞は悪い円安論という言い方です。
高橋)実質国内総生産(GDP)が増えて「悪い」と言われると、どうしていいのかわかりません。株と為替だけの話をすると、エクセレントカンパニーにはプラスだから、エクセレントカンパニーで構成される株価は円安がプラスになるのですよ。過去の例を見ても、為替が安くなるときに株が高くなる場合はかなり多いです。
飯田)為替が安くなるときには。
高橋)今回どうして株が下がったかと言うと、アメリカの要因があるわけです。株は2つの要因で決まっていて、為替とアメリカです。アメリカの影響が大きいと、こういうことが起こるのです。
飯田)今回のように。
高橋)債券の方は安くなったと言うけれど、イールドカーブ・コントロールで金利を一定にさせる。はっきり言うと10年金利で0.25%に収まっているから、これ以上にはならないですね。
飯田)ここから先は日銀が間に入っていく。
高橋)それはそれでけっこうなことなのですけれどね。金利が安い状態だから、GDPも増えるということなのです。それなのに、一面だけを見て100円ショップがどうのこうのと言うでしょう? 完全に一面だけのストーリーというやり方で、全体を見誤っている報道です。
飯田)全体を見誤る。
高橋)これはマクロ経済の話だから、全体の話をしないとダメです。マスコミがストーリーテラーとして、1つの例からすべてを説明したがることはよくあることですが、マクロ経済の説明のときにはほとんど間違いになります。
飯田)社会的なドキュメンタリーではよくある手法ですが、経済でやろうとしているのですか?
高橋)1つのことで説明してしまって、「GDPが増える」という話は説明しない。それはダメなのです。マクロ経済としては「GDPが増える」ということで説明が終わるのです。もちろんプラスマイナスはありますが、全体では増えるということです。
円安のいまこそ内需対策をすれば景気は上がる ~追い風である「円安」だけでいいと対策しない政府
飯田)「10%円安になるとGDPが1%程度増える」ということですが。
高橋)大体1%増えます。
飯田)円安が始まったのは、当然ながらウクライナ情勢によるところがありました。2月の水準だと、私が記憶しているのは1ドル=110円台ぐらいだったと思うのですが。
高橋)そうですね。
飯田)そうすると、いま135円ということは、20%ぐらいは円安ということですよね。
高橋)日本の経済成長率がこれで持っているようなものです。
飯田)GDPが2%増えると考えれば。
高橋)そうですね。逆に言うと、内需の話がきちんとできていない。例えば補正予算は全然足りていません。その部分をきちんとやっていないけれど、円安で持っているという感じです。内需への対応をもう少しきちんとやれば、上がるのです。
飯田)そうですよね。経済協力開発機構(OECD)の予測を見ると、日本は大体1.8~1.9%の成長と。「あれ?」と思うのは、為替で説明がついてしまうことですね。
高橋)大体はそうですよ。逆に言うと、内需対策をサボっているということなのです。だから「こういうときに内需対策をすれば、ダブルパンチでちょうどいい」と私は思いますけれどね。フォローウィンドが吹いているから、「これはチャンス」と思えばいいのですが。
飯田)追い風。
高橋)だけど、「追い風だけでいい」と思ってしまっているのでしょう。
飯田)追い風で進んでいるから、漕がなくていいやと。
高橋)そんな感じになってしまっているのですね。
高橋)いろいろな発言でも強制貯蓄論というものがあって、自然に爆発するということで、景気対策をサボるのです。強制貯蓄論が出たときには、「少しでも火を点けたらすごいよ」と私は言う方なのですけれどね。具体的に言うと、例えばGo To トラベルです。
飯田)Go To。
高橋)東京都民割が人気なのでしょう?
飯田)そうですね。
高橋)国の方もやればいいのだけれど、参議院選挙のあとに全部先送りしているのです。すべて検討になっている。いまやれば本当に火が点きますよ。
飯田)このタイミングでやると、ちょうど「夏休みはどうする?」という人たちが。
高橋)参議院選挙以降だと、夏休みに間に合わないかも知れないという不安が業者にもあるのですよ。参議院選挙以降であれば夏休み直前になりますね。
飯田)7月10日だと直前です。そのぐらいの時期には、もう予約を取ってしまっています。
飯田)仮に経済対策で景気が「ドーン」と上がるとなると、インフレ率も高まるのではないかと思いますが、いかがですか?
高橋)逆に言うと、景気対策を行って所得が上がれば、簡単に転嫁できるという意味で、そちらの方がいいのです。少しインフレ率が高くなっても構いません。インフレ率が高くなっても、景気対策で所得が十分に上がっていれば大丈夫なのです。逆に、インフレ率が高まらないように所得を少なくすると転嫁できないから、企業の方にしわ寄せがいってしまって、最後は雇用に影響するのです。
飯田)なるほど。インフレ率は高まるかも知れないけれど、賃金などが……。
高橋)賃金も上がるから。
飯田)経済成長も高まって、実質部分でプラスになっていれば大丈夫だと。
高橋)他の国の方がインフレになっている部分だけ、最終需要があるという意味で、まだまともなのです。日本は最終需要がないけれど、インフレにもなりにくいので、そちらの方がよくない状況です。
飯田)需要がないから、今度は「生産を縮小しよう」ということになってしまう。
高橋)コストアップが価格転嫁できなかったら、事業を縮めて、最終的には雇用に影響します。ですからインフレになっても「けしからん」ということではなくて、「インフレになっても十分なくらいにお金を景気対策で撒け」というのが正しいのです。
では、今の円安について高橋教授はどう見ているのか。
4月25日、高橋教授はX(旧ツイッター)で「マスコミは円安が日本経済に悪いというが、円安による政府の外為特会の益、国民一人当たり30万円を配れば、円安でいいというけどな」とツイートしています。
要するに内需対策をしろといっている訳です。
同じく25日、「医療・介護保険における金融所得の勘案」に関する自民党のプロジェクトチームが発足し保険料の算定対象を広げるため本格的な検討を始めたと報じられています。
そこでは、所得に応じて徴収される医療や介護の保険料の算定に、株式配当などの金融所得を反映することが話し合われるとのことですけれども、内需拡大とは逆行する動きです。
政府は少子化対策だなんだと保険料を上げ、税金でなんとかしようとしていますけれども、であれば、減税をして、若年層に金を流す政策を推進すべきだと思いますね。
マスコミは円安が日本経済に悪いというが、円安による政府の外為特会の益、国民一人当たり30万円を配れば、円安でいいというけどな。 pic.twitter.com/TnHitThKGv
— 高橋洋一(嘉悦大) (@YoichiTakahashi) April 25, 2024
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ルシファード